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マジックフェスト・京都2019

観戦記事

第14回戦:覚前 輝也(大阪) vs. 林 眞右(愛知) ~瀬戸際の赤単同型戦~

伊藤 敦

「『武蔵の人たちには当たりたくない』って言ってたら当たるんだもんなぁ」

 残り2ラウンド、絶対に負けられない2敗ライン。その状況でフィーチャーマッチに現れたのは、初日を全勝で終えていた、愛知の古豪でありHareruya Hopes所属の林 眞右。かつて14歳にしてグランプリトップ8に入賞し、2002~2004年ごろにかけてプロツアーに出場していたという伝説的な経験を持つ男だ。

 そんな林の対戦相手は、「英雄譚」インタビューにも登場した覚前 輝也。前のラウンドではBIGsの加藤が駆る「単色キラー」ことジェスカイ・コントロールに惜しくも敗北を喫してしまったが、それでもここにきて2敗。まだトップ8の可能性は残っている。

 活躍していた時代こそ微妙に違うものの、覚前も2004年の日本選手権でトップ8に入ったことがあり、プロツアー初出場も実は2005年と、そこから長いブランクがあったとはいえ「古豪」と言っても差し支えない経歴ではある。その意味では、キャリア的には重なる部分も多い印象の2人だ。

 しかも彼らのデッキは、奇しくもともに赤単。覚前はタッチ黒で林はタッチ緑だが、同型戦においてはそのタッチの部分はほとんど用をなさない。したがって問われるのは、純粋に赤単というデッキをどちらがうまく使いこなせるかということになるだろう。

 ここで勝てばトップ8懸けのバブルマッチへ望みをつなげる。負ければ一転、賞金を争う3敗ラインへ。

 そんな瀬戸際での同型戦が、いま始まった。

 
覚前 輝也 vs. 林 眞右
 
ゲーム1

 先攻は覚前が《》セットのみでターンを終えると、林は《狂信的扇動者》を走らせる。これに対して覚前は《リックス・マーディの歓楽者》で《危険因子》をディスカード。

 後攻2ターン目、林に早くも岐路が訪れる。赤単同型戦において乗り越えなければならない壁。先攻3ターン目の《ゴブリンの鎖回し》をケアするか否か。一瞬逡巡する林だが、手札に土地がないこともあり、割り切って《ヴィーアシーノの紅蓮術師》を送り出す。

 だが覚前は無情にも鎖を回す。あまりにもイージーすぎる0対2交換。

 対し、3枚目の土地を引けていない林はやむをえず《遁走する蒸気族》を送り出すのだが、なおも覚前は《リックス・マーディの歓楽者》と《ゴブリンの鎖回し》の攻撃で5点を入れて林のライフを12に落とすと、戦闘後に《舞台照らし》を「絢爛」でプレイ。めくれたのは《》と《ギトゥの溶岩走り》で、そのまま両方プレイした上で《遁走する蒸気族》には《ショック》を当てる。

 
覚前 輝也
 

 流れるような無駄のない展開で相手のクリーチャーを捌き、クロックを追加する覚前。

 そして林がなおも3枚目の土地を引けずにターンエンドしたところで、エンド前に《魔術師の稲妻》が本体に撃ち込まれる。

 林も《ショック》2枚で《ギトゥの溶岩走り》と《リックス・マーディの歓楽者》を捌くのだが、《ゴブリンの鎖回し》の攻撃が通ると残りライフは6点。そして2ターン目に捨てられていた《危険因子》を「再活」されると、さすがに4点は支払えない。

 しかも結局そのまま3枚目の土地が見えず、わずか5分の間に林は投了を余儀なくされてしまった。

覚前 1-0 林

 
ゲーム2

「先手で」

 1ターン目はどちらもタップインで、林の2ターン目の《遁走する蒸気族》を覚前が《稲妻の一撃》で捌く立ち上がり。

 だが、林にはまたしても3枚目の土地がない。やむなく《狂信的扇動者》アタックから《舞台照らし》でどうにか《》と《宝物の地図》を追放し、セットランドでターンを終えるが、ここで再び覚前の《ゴブリンの鎖回し》が《狂信的扇動者》を薙ぎ払う。

 返すターン、《舞台照らし》でめくれたリソースを無駄にしたくない林は《宝物の地図》を置いてエンド。対して覚前は《ゴブリンの鎖回し》のアタック後にまずは《舞台照らし》。そして公開されたのは……《ショック》と、あろうことか《凶兆艦隊の向こう見ず》。林の墓地には、今さっき唱えたばかりの《舞台照らし》があるというのに!

 しかも覚前は、4枚目の土地をしっかりと持っている。そのままセットして《凶兆艦隊の向こう見ず》から林の墓地にあった《舞台照らし》を「絢爛」で唱えると、追放されたのは《ギトゥの溶岩走り》と《リックス・マーディの歓楽者》。このターン、一気に3枚分のアドバンテージを確定させた格好だ。

 林も《宝物の地図》でエンド前に占術しつつ、メインで《ゴブリンの鎖回し》をブロッカーとして呼び出すのだが、返す覚前は追放領域から見えていた《リックス・マーディの歓楽者》《ギトゥの溶岩走り》を出すと、手札から魔術師の稲妻を唱える!

 
林 眞右
 

 頼みの綱の3/3先制攻撃をたった1マナで対処されてしまった林は、エンド前とアップキープの起動で《宝物の地図》を変身させるのだが、どうにも間に合っていない。

 それでも《遁走する蒸気族》を出し、《燃えがら蔦》《ショック》と唱えて覚前の《リックス・マーディの歓楽者》を焼いてターンを返すのだが、覚前はこの《遁走する蒸気族》にも《稲妻の一撃》を打ち込む。

 宝物・トークンは2枚。手札は1枚。もしここで《稲妻の一撃》を持っていればゲームの趨勢はイーブンに戻りうるところ……だが林は、ゆっくりと《遁走する蒸気族》を墓地に置く。5点アタックを受け、残りライフは6点。

 さらにダメ押しの《舞台照らし》でめくれたのは、《血の墓所》と……《凶兆艦隊の向こう見ず》。

 通常ドローと宝物・トークンを使ってのドローで生きる道がないか模索する林だったが、やがてポツリとこう呟いた。

「……負けた」

覚前 2-0 林

 

「武蔵強すぎるなー。やっぱり武蔵は当たり損(笑) 以前もナベ (渡辺 雄也) くんに当たって0-2で負けたしなー」

 土地が詰まった不運があったとはいえ、MTGアリーナで1か月回し込んだという覚前の赤単は、さすがに仕上がりが一味違うという印象だった。

覚前「みんな『この環境はジャンケン』で言ってるじゃないですか。でも強いデッキがたくさんあったとき、赤単は一番事故が少ないんですよ。なので、このデッキが一番良いと思う」

 特に覚前の赤単は、単色ベースで色事故しないことに加え、《リックス・マーディの歓楽者》と《危険因子》でスクリュー・フラッド両面のケアもある。MTGアリーナで月間上位8名に入ったという事実は、そのわずかな優位性こそが最後はモノを言う環境であるということを、確かに示していた。

覚前「あと1勝、勝てるかな」

 グランプリ・静岡2018(レガシー)に続いての、国内グランプリ2連続戴冠。その伝説の実現に向けて、覚前はいよいよ最終ラウンドのバブルマッチに臨む。

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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