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ミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019
ミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019 2日目の注目の出来事
2019年4月27日
イギリス・ロンドンのテムズ川沿いで行われているミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019には500名を超えるプレイヤーが参戦し、プレリリースの要素を含んだ大会形式で2日間にわたる激戦が繰り広げられた。そして、優勝を争う選手は8名まで絞られた。
今大会には多くの「初めて」があった。『灯争大戦』がひと足早く競技の舞台へ上がり、「ロンドン・マリガン」が導入され、試合開始前にデッキリストの交換が行われた。新たな施策がいくつも試され、プレイヤーたちはそれらに適応すべく最善を尽くした。ここでは、2日目の競技で私たちが目にした、特に注目の出来事をご紹介しよう。
マッチ・フロアより
『灯争大戦』がミシックチャンピオンシップの舞台に登場し、これまでにないプレインズウォーカー満載の環境に馴染みのない者はいるだろうと予想された。だが、まさかここまで「馴染みのない」者がいるとは思わなかった。
In what I think is a PT/MC first, my opponent did his first EVER draft on day two of a Pro Tour. #MythicChampionshipII
— Nick Prince (@nicknprince) April 27, 2019
プロツアー/ミシックチャンピオンシップの歴史を見ても初めてのことだと思うんだけど、2日目に当たった対戦相手が「これが初めてのドラフト」だって。
飛行機の関係でドラフト・ラウンドをまるごと失っても、モダン・ラウンドで4勝1敗すれば2日目へ進出できる。つまりそういうことだ。
この週末に起きたサプライズはこれだけではない。さて、《紅蓮術士の昇天》と《有毒の蘇生》はどのように機能するのか? いや、リッチ、君には聞いていない。
今日は猫の日
ドラフト・ラウンド1番卓では、MPL選手のジャン=エマニュエル・ドゥプラ/Jean-Emmanuel Deprazが文句なしに素敵なデッキを組み上げた。《幸運な野良猫》4枚に《アジャニの群れ仲間》3枚、そして「増殖」を行うカード群……絶対楽しいに決まっている。《幸運な野良猫》が《幸運な野良猫》を強化し、それらが攻撃すれば《アジャニの群れ仲間》に+1/+1カウンターが置かれていく。そして《ファートリの猛竜》やその他の「増殖」を行うカードが、猫の群れを手がつけられないほど強くするのだ。
1回のドラフトでこれだけ多くの猫が見られるのは珍しい。特定のコモンが1回のドラフトで現れる枚数は平均して2.4枚しかなく、4枚以上現れる確率は(独立であると仮定して)およそ21%ほどだ。《アジャニの群れ仲間》が3枚現れる確率はさらに低いだろう。それらを考えると、ドゥプラがこの一風変わったデッキを組み上げ2勝1敗の成績を収めたことはまさに快挙と言えるだろう。『灯争大戦』リミテッドは可能性に満ちていることを示す出来事であった。
《ムウォンヴーリーの酸苔》の活躍
今大会を迎えるにあたって、参加者は全員「ロンドン・マリガン」の存在を意識していた。試験運用として今大会で導入されたこのマリガン・ルールでは、「あなたがN回目のマリガンを行うとき、あなたはカードを7枚引き、その後N枚のカードをあなたのライブラリーの一番下に望む順番で置く」という処理が適用される。手札事故で「ゲームにならない」事態を緩和するための施策だが、これは「トロン」のような特定のカードの組み合わせを必要とするデッキの安定性を高めるものでもあった。
だから予選ラウンドの2日間を通して「トロン」が最も多くの使用者数を集めたのは、驚くことではないだろう。2日目も41人(全体の12.8%)のプレイヤーが「3ターン目《解放された者、カーン》」を決めるべく、ときには初期手札が3枚か4枚になるまで「ウルザ・ランド」を探し求めた。
そんな状況の2日目でただひとり、《ムウォンヴーリーの酸苔》を使用しているプレイヤーがいた――チェン・グエン/Thien Nguyenだ。この呪文はマナ加速で《原始のタイタン》や《風景の変容》へつなげるだけでなく、最も人気を集めた「トロン」デッキに対する最高の回答でもあることを見せつけたのだ。
3枚採用された《ムウォンヴーリーの酸苔》は、非常に有効であることを証明した(なお彼以外の全参加者のリストを合わせても、このカードの採用枚数は彼のメインデッキに採用された3枚に満たない)。予選ラウンド16回戦を経て、グエンは予選第1位でトップ8へ進出したのだ。
「トロン」デッキ2つと「人間」デッキ3つがトップ8へ
トップ8入賞プレイヤーの各デッキは以下の通りだ。
- チェン・グエン(タイタン・シフト)
- イーライ・ラヴマン/Eli Loveman(人間)
- アレクサンダー・ヘイン/Alexander Hayne(トロン)
- ブライアン・ブラウン=デュイン/Brian Braun-Duin(人間)
- エイドリアン・ジウ/Adrian Zhu(トロン)
- クリス・カヴァルテク/Chris Kvartek(人間)
- ハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguez(イゼット・フェニックス)
- マット・スパーリング/Matt Sperling(親和)
とりわけ良い結果を残したのが、「人間」だった(もちろん参加者全員人間だが、ここではデッキのことを指す)。「人間」デッキのモダン・ラウンド勝率は、54.3%だった。また、勝率52.7%でそれに続く「イゼット・フェニックス」も、今大会において良いデッキ選択だったと言えるだろう。それらがトップ8に名を連ねたのは驚くことではない。
その一方で、「トロン」デッキが使用者2名をトップ8に輩出したのは驚くべきことだろう。「ロンドン・マリガン」の恩恵を大きく受けたデッキではあるものの、その分警戒され、多くのプレイヤーが「ウルザトロン」完成を阻止するべく《減衰球》や《高山の月》(あるいは《ムウォンヴーリーの酸苔》)のような対策カードを備えていた。そのせいか、「トロン」の勝率は平均を下回る47.7%だった。それでもなお、エイドリアン・ジウとアレクサンダー・ヘインの2名がこのデッキをトップ8まで導いたのだ。
ブライアン・ブラウン=デュインが自身初のミシックチャンピオンシップ・トップ8入賞
6年にわたる挑戦を経て、ついに「BBD」が成し遂げた。ミシックチャンピオンシップの常連でMPL選手でもありながら、これまで数々の失敗を受け入れてきた彼にとって、これがどれほど大きな出来事なのか……言葉にするのは難しい。予選ラウンド第16回戦にて自身初のミシックチャンピオンシップ・トップ8入賞を確定させる握手を交わした彼だが、それでもまだ信じられずにいた。
「不思議なもんだよね」と、彼は目を丸くする。「会場の97%のプレイヤーより絶対に俺の方が練習したと自信を持って挑んだ大会でも、8勝8敗で終わることもあるのに。たしかに『人間』デッキは使い込んでいるけど、今回モダンの練習はそこまで重ねてこなかった」
世界選手権2016王者は、その経歴にまたひとつ大きな実績を加えた。今度こそ真の「トップ・プレイヤー」になった彼を、ミシックチャンピオンシップ最終日の舞台が待ち受けている。
(Tr. Tetsuya Yabuki)
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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