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グランプリ・上海2017

観戦記事

第9回戦:兒嶋 竜弥(大阪) vs. Yam, Wing Chun(香港)

By Masashi Koyama

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兒嶋 竜弥(写真左) vs. ヤン・ウィンチャン(写真右)

 プロツアー『破滅の刻』準決勝。あと一歩のところで決勝進出まで漕ぎつけながら、プレイミスにより涙を飲んだヤン・ウィンチャン/Yam, Wing Chun。

 彼の仲間の大声援と、それを一心に受けながら無念の敗退を遂げた彼の姿が記憶に残っている方も多いだろう。

 そのヤンは続くプロツアー『イクサラン』で初日全勝を果たし、あの決勝ラウンド進出がフロックではないことを証明し、世界の強豪として名を馳せた。

 そのヤンが持ち込むのはもちろん、「ラムナプ・レッド」。栄光を掴み、そして失望を味わった相棒だ。

 このグランプリ・上海2017でもここまで8勝0敗と全勝街道を突き進んでおり、もはや「ラムナプ・レッド」を使わせれば世界有数のプレイヤーであると言って差し支えないだろう。

 そのヤンと全勝をかけて戦う兒嶋竜弥は初めてのフィーチャーマッチ登場とのことで、リラックスしているヤンとは対照的に緊張した面持ちで9回戦へ挑むこととなった。

 普段は大阪でMagic Onlineを中心に友人たちと調整を重ねており、プロツアー予備予選を回っている兒嶋にとって、ここでの勝利は念願のプロツアー参加権利獲得に向けて大きな前進となる。使用デッキは自身で微調整を加えたギョーム・マティノンの「ジェスカイ副陽」だ。

 ともに戦う仲間たちと海を越えて参戦したこの上海の地で、ジャイアント・キリングを果たし初日全勝を掴むことができるか。

 ふたりは試合開始のアナウンスが流れるとガッチリと握手を交わした。

ゲーム1

 後手ヤンが《ボーマットの急使》から2ターン目に《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》という絶好の......だが値千金の先手を得ていた兒嶋がこれを《本質の散乱》で弾く立ち上がり。

 先後逆であれば兒嶋のアクションがないままに、ヤンのもとに2体のクリーチャーが並んでいたわけで、ここを捌くことができたのは大きいだろう。

 一方、出足をくじかれたヤンは《地揺すりのケンラ》を召喚。これが通り3点のクロックが兒嶋へ向け攻撃を開始する。

 すでに3枚のカードを追放している《ボーマットの急使》のために{R}を常に残しており、いつでも能力を起動することができる状況だ。

 この《ボーマットの急使》に対し、土地を並べ続ける兒嶋は《蓄霊稲妻》を向けるが、ヤンは《稲妻の一撃》を兒嶋へ投げつけたうえで能力を起動。結果、2枚から3枚へと手札の枚数を増やすこととなる。

 その増えた手札から《ボーマットの急使》《アン一門の壊し屋》を唱えたヤン。血気盛んに攻勢へ向かうのだが......兒嶋が唱えたのはヤンの軍勢を一掃する《残骸の漂着》!

 これで攻め手を失ったヤンは8枚の土地が並びつつもターンを返すのみだ。2枚並んだ《ラムナプの遺跡》を1枚生け贄に捧げ、兒嶋のライフは7。

 一方、《残骸の漂着》以外は《選択》と《灌漑農地》のサイクリングくらいしかアクションを起こしていない兒嶋は淡々とターンを返す。

 ヤンは《稲妻の一撃》を兒嶋に打ち込み残りライフは4。

 ここで《天才の片鱗》でライブラリーを掘り進み、《アズカンタの探索》を設置した兒嶋。2枚目の《天才の片鱗》に対し、ヤンは《ショック》を打ち込む。

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冷静にヤンの攻勢を捌く兒嶋

 兒嶋はこれを《不許可》で回避し、ヤンがコントロールする《ラムナプの遺跡》により実質2のライフを必死の思いで守る。

 何とか最後の2点を削りたいヤンだが、砂漠カードも火力呪文も引き込めず、対し兒嶋は《至高の意志》で手札を整える。

 ヤンは《熱烈の神ハゾレト》を引き込み、プレイ。ここで兒嶋が《水没遺跡、アズカンタ》を起動すると、勝利を呼び込む《副陽の接近》が!

 これを手札に加えた兒嶋は《奔流の機械巨人》から《本質の散乱》を「フラッシュバック」。

 追撃の手を持たないヤンは兒嶋が《副陽の接近》を慎重にプレイすると、即座に大量の土地をライブラリーへと戻した。

2度唱えるまでもなく「ラムナプ・レッド」に絶望を与える1枚

兒嶋 1-0 ヤン


ゲーム2

 ヤンが《ボーマットの急使》から《地揺すりのケンラ》、3ターン目に《ピア・ナラー》を並べる超絶ロケットスタート!

 兒嶋は3ターン目に《焼けつく双陽》でこの猛攻を捌くが、次なるヤンの戦力はライフ回復を許さない《暴れ回るフェロキドン》。

 一気呵成に勢い良く攻撃を仕掛けるヤンに対し、兒嶋は深呼吸をしながら、落ち着いて《遵法長、バラル》から《暴れ回るフェロキドン》に《蓄霊稲妻》を差し向け、盤面上の脅威を一通り対処する。

 が、やはり序盤からダメージを重ねられており、残る兒嶋のライフは9。そこへヤンは2枚の《稲妻の一撃》を差し向ける。兒嶋は1枚を《不許可》、さらに2枚続けてプレイされた《損魂魔道士》のうち1枚を《奔流の機械巨人》からの《不許可》で打ち消し、逆に攻勢へ打って出る。

 後がないヤンは《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》を引き込むが、続くターンアタックを許可した兒嶋の手札からはやはり《残骸の漂着》!

 ヤンは先ほどのゲームと同じく2枚並んだ《ラムナプの遺跡》を起動し、1枚を生け贄に捧げ兒嶋の残りライフは4。

 あと2点、あと2点を削ることができればヤンの初日全勝への道は途切れない。砂漠カードを引き込めば呪文を唱えることなく兒嶋のライフを削りきることができる......

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最後の2点を削るべく懸命にプレイするヤン

......が、その願いが届くことはなかった。

 2ターンアクションを起こさず手札を溜めたヤンはまず《地揺すりのケンラ》。これを兒嶋が《暗記》で弾くと、ヤンはこれが本命だと言わんばかりに《反逆の先導者、チャンドラ》をプレイ!......が、これも同じく《暗記》で対処され、そして続くターンに兒嶋は《副陽の接近》を唱えたのだった。

兒嶋 2-0 ヤン


兒嶋 竜弥がグランプリ・上海2017初日全勝!

 試合後、ゲームを見ていた仲間たちが兒嶋のもとに駆け寄る。それを見た兒嶋はプレッシャーから開放されたかのように、試合中の緊張した表情から打って変わって笑顔を見せた。

 友人たちのほとんどが初日突破を決めており、兒嶋と仲間たちの快進撃は明日も続く。

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