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EVENT COVERAGE
グランプリ・京都2017
第4回戦:Jon Finkel(アメリカ) vs. 川口 貴志(東京)
By Yohei Tomizawa
今、ヒーローは、いるだろうか。
子供時代、誰もが子供心に憧れた、自分だけのヒーローがいたはずだ。
力強く、弱きを助け、悪を挫く、クールで、等々、好意的な形容が無限に出てくる、そんな自分だけのヒーローを、誰しも心の中にもっていたはずだ。
マジック界にも数多のプレイヤーがいるが、彼ほどのヒーローという言葉が似合う人物を他に知らない。
彼の名は、ジョン・フィンケル/Jon Finkel(アメリカ)。
言わずと知れたマジック黎明期から活躍を続ける、生ける伝説。フィンケルトロン、ジョニーマジック、閣下、彼の呼称を挙げればきりがない。
2005年に殿堂入りし、プロツアー・クアラルンプール2008で優勝した時、英語カバレージの表題は、「The Magic is Back!」であった。
まさにマジックを愛し、マジックに愛され、マジックを体現した男。この男をマジック界のヒーローと称せず、誰がヒーローと言えようか。
さあ、ヒーローによるマジックを始めよう。
ジョン・フィンケル vs. 川口 貴志 |
ゲーム1
先手のフィンケルが《旅行者の護符》をキャストする立ち上がり。クリーチャーとして最初に戦場に出たのは、攻撃的な赤白2色の川口の《オケチラの報復者》。
この2マナクリーチャーに、フィンケルは大いに悩まされることとなる。
続く《ケンラの潰し屋》は《穿刺の一撃》したフィンケルであったが、その間にも《オケチラの報復者》がコツコツとダメージを重ねてくる。
《旅行者の護符》で《森》をサーチすると、《エイヴンの修練者》を召喚し、《オケチラの報復者》へ睨みをきかす。
川口は、フィンケルのデッキを遅いものと判断し、カード・アドバンテージの塊《神託者の大聖堂》を設置、能力で公開された《山》をプレイする。
6枚の土地をアンタップ状態とし、《エイヴンの修練者》をブロッカーとして配置したフィンケル。
フィンケルの思考通り、《オケチラの報復者》が督励状態で攻撃に参加してくる。
『次のターンアンタップされないのなら』、フィンケルがそう考えプレイヤーへダメージを通すと、川口は土地を3枚タップし、目論みを打ち砕く1枚を唱える。
これにより《オケチラの報復者》はアンタップされ、次のターンも攻撃可能となってしまう。
カウンターが3個溜まった《神託者の大聖堂》こそ《暗記 // 記憶》でライブラリーに戻すが、《棘モロク》まで追加され盤面が止まらない。
川口の愚直な攻撃により、フィンケルのライフは8。
川口は、《オケチラの報復者》《猶予の侍臣》《棘モロク》の3体をレッドゾーンへ送りだす。
手札に有効牌がない以上、割り切ってブロックを宣言すると、川口は《凶暴な力》をキャストし、一方的に討ち取りつつ、ダメージを通し残りライフを6とした。
流石のフィンケルといえど、打開策はなかった。
フィンケル 0-1 川口
対する川口は、プロツアー予備予選(PPTQ)を中心に大会へ参加し、経験を積み2不戦勝を含め、ここまでやってきた。
自身が参加した初めてのプロツアーはプロツアー『ゲートウォッチの誓い』。その場へ繋がる道を一歩ずつ、今回も積み上げてきている。
メインデッキを赤白としながら、フィンケルのデッキが遅いと分かると大量のサイドボードを投入し、色を変更する柔軟さとその選択肢が生まれるのは、練習の賜物。
「相手のデッキが遅く、サイズの大きい緑だったので、回避能力の多い青へと変更しました」
ゲーム後に語る川口は、大量のカードを入れ替え、赤白から赤青へデッキをスイッチしていた。
マジックは、相手が誰であろうと、まさにフィンケルであろうと関係ない。勝つことが全てのグランプリで、川口はフィーチャーマッチとは思えないほど落ち着き、淡々と自身のデッキをシャッフルすると、フィンケルにデッキを手渡した。
ゲーム2
川口 貴志 |
川口は、色変更が吉と出たのか《這い寄る刃》、《狡猾な生き残り》、《ケンラの潰し屋》、《神託者の大聖堂》と毎ターンマナを使い切るブン回り。
フィンケルは《旅行者の護符》からティムール・カラーの3色を揃えると、《川ヤツガシラ》を召喚する。
《穿刺の一撃》はなく、《ケンラの潰し屋》は除去できず。またゲーム1のように押し切られてしまうのだろうか。
少しでもダメージを稼げるよう《ケンラの潰し屋》を督励で攻撃に送り出す川口に対し、フィンケルは手札を置き、物憂げな表情で見つめながら《暗記 // 記憶》を唱える。
川口は、ダメージを上げるために《研ぎ澄まされたコペシュ》を《這い寄る刃》に装備し、2点クロックとするが、このダメージは《川ヤツガシラ》の能力と相殺となってしまう。
《這い寄る刃》《狡猾な生き残り》の両方で攻撃に行くことで、《川ヤツガシラ》をブロックへと誘い出し、戦闘ダメージと合わせ《投げ飛ばし》で除去することに成功する。
これで川口の《神託者の大聖堂》によりアドバンテージが傾くかと思われた矢先、フィンケルが召喚したのは《選別ワーム》。
必死に《神託者の大聖堂》を起動する川口だが、公開されるのが土地や小型のクリーチャーばかりであり、攻防に参加できない。
一度、二度《選別ワーム》を攻撃に送り出し、川口のターン終了時に《発射》《マグマのしぶき》、返す自身のターンで《穿刺の一撃》を唱え、盤面を一掃すると全てのクリーチャーをレッドゾーンへ。
川口は《神託者の大聖堂》を起動するも、最後まで状況を打開できるカードが公開されることはなかった。
フィンケル 1-1 川口
ゲーム3
ジョン・フィンケル |
先手の川口は、《実績ある戦闘員》からゲームを始め、《山》をプレイしながら《洞察の探求者》を唱え、変わらず赤青デッキによるビートダウンを目指していく。
対してフィンケルのファーストアクションは、川口の《空からの導き手》を対象とする《マグマのしぶき》。
続くターンから《夢盗人》《侵略ナーガ》と順次キャストするが、これは川口の《穿刺の一撃》《発射》の的になってしまう。
だがフィンケルは除去を2枚使わせた上で、《オベリスクの蜘蛛》を召喚する。
川口は、《実績ある戦闘員》、《洞察の探求者》を攻撃させ、ブロックされた方へ《凶暴な力》を唱えて突破する。
パワーの高いクリーチャーを引けず、思うようにダメージを与えられない川口。
土地を多く引いてしまい、相手のクリーチャーを止める手段を持たないフィンケル。
この拮抗を破ったのは、フィンケルであった。
《エイヴンの修練者》を召喚し、地上と空中のすれ違いのダメージレースを開始すると、《砂の撹拌》でゾンビ・トークンを3体生み出し、地上を完璧に止めてしまう。
川口は土地のドローが続き、《神託者の大聖堂》もマナがない時に《不吉なスフィンクス》が公開され追放となり、その後は土地の公開ばかりと不運が続いてしまう。
川口は《エイヴンの葦原忍び》の瞬速召喚によりゾンビ・トークンこそ討ち取るも、《エイヴンの修練者》と《川ヤツガシラ》の能力を止めることはできず、残りライフは3へと追い詰められてしまう。
それでも《エイヴンの修練者》をブロックすることでライフを残す算段であったが、フィンケルは《発射》を唱え、初戦を白星で飾った。
フィンケル 2-1 川口
試合後
先勝し、主導権を握りながらも、後半ドローに恵まれず、星を落としてしまった川口。
「デッキが弱い」と言うが、まだ諦めることはない、グランプリは始まったばかり。これから5回戦を勝ち進むことで2日目、続くトップ8へと道が開かれる。
川口の物語は終わらない。
グランプリ・京都2017で、フィーチャーマッチで敗北したことで、きっと、今よりも一歩高みへと登るから。
彼自身が、次の、ヒーローになるために。
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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