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グランプリ・京都2017
未来のトップ・プロを目指して――ゴールド・レベル・プロ候補の次世代たち
By 矢吹 哲也
つい先日、プロ・プレイヤーズ・クラブの更新が発表され、さまざまな変更が提示された。
しかし大多数のマジック・プレイヤーにとってプロ・シーンの変化は遠い世界の話であり、プロツアー出場選手についても一部のトップ・プロを除いてあまり身近な存在ではないかもしれない。
プロツアーへの参加権利を得るために越えなければならない壁は高い。
そしてプロツアーへ継続参戦するために挑まなければならない戦いはさらに厳しい。
上記の更新記事でも言及されている通り、「プロ・ポイントを獲得するのに最適な場所がプロツアー」であるため、継続的にプロツアーへ参加する権利を持たないプレイヤーがレベル・プロになる道は極めて険しいのだ。
しかしその中でも、わずかなチャンスをものにして躍進を遂げようとするプレイヤーたちがいる。ここでは、今大会グランプリ・京都2017および来週開催される今シーズン最後のプロツアーであるプロツアー『破滅の刻』で成功を収めれば、「ゴールド・レベル」獲得――つまり「プロツアーへの継続参戦」が確実になる、次世代の注目プレイヤーを紹介しよう。
松本 郁弥/Matsumoto, Fumiya(石川)
現在のプロ・ポイント:22点
グランプリ・京都2016(チーム戦)で3位、そしてグランプリ・クアラルンプール2016で自身初のグランプリ優勝を成し遂げた松本は、プロツアー『霊気紛争』でプロツアー・デビューを飾った。その後プロツアー『アモンケット』にも出場し、来週のプロツアー『破滅の刻』への参加権利も持つ彼は、デビュー以来の継続参戦を維持し、ルーキー・オブ・ザ・イヤー・レースの8位につけている。
このグランプリに向けてはプレリリースでシールドに触れ、プロツアーも見据えたドラフトの練習では、彼の地元コミュニティで初めてドラフト合宿が行われたという。現時点で松本がゴールド・レベルへ達するにはプロツアーで12勝4敗以上の成績が必要だが、このグランプリでプロ・ポイントを1点追加できれば、そしてもう1点と重ねるごとにその可能性はさらに開けていく。
取材時点の初日序盤ではシールドの出来に渋い顔を見せた松本だが、「ゴールドになることはかなり意識しているので、なれるよう力を尽くします」と力強い眼差しを送る。
石原 隼/Ishihara, Jun(神奈川)
現在のプロ・ポイント:25点
今シーズン、石原のプロツアーでの活躍は目覚ましいものがあった。プロツアー『カラデシュ』では11勝4敗1分でプロ・ポイント10点を稼ぐと、続くプロツアー『霊気紛争』でも11勝5敗で再び10点獲得。来週末のプロツアー『破滅の刻』でもう一度10点――つまり11勝を収めれば、ゴールド・レベル達成となる状況だ。
だが彼いわく「その代わりグランプリで全然勝てない」らしく、事実、6つあるグランプリ・キャップもシーズン終盤の現時点でひとつしか埋まっていない。今大会に向けてはMagic Onlineを中心に練習を重ねているものの、「なぜか勝てない(理由もわからない)」という苦しい状況だ。プロツアーの構築部門についてもメタを絞り込めておらず、「ゴールドは難しいかな」と心許ない。
しかしそう語る彼の目に宿る火は消えていない。最後に漏らした「今大会トップ8入賞でもうひとつ(プロツアーの)権利欲しいですね!」という言葉に、彼のしたたかさを感じるのだ。
川崎 慧太/Kawasaki, Keita(大阪)
現在のプロ・ポイント:19点
グランプリ・北京2017での準優勝が記憶に新しい川崎は、今回のプロツアー『破滅の刻』で3度目のプロツアー出場となる。ゴールド・レベル達成のためにはプロツアー・トップ8入賞(またはこのグランプリでプロ・ポイントを1点上乗せした上でプロツアー12勝以上)が必要となるため、川崎も「『ゴールド・レベルいきます!』とはちょっと言えないですね」と控えめな姿勢だ。
「これまで2回プロツアーに出たものの、どちらも10勝6敗で(次のプロツアーの参加権利が得られる)11勝まであとひとつ届かなかった。だから今回は、11勝5敗の成績でプロツアー継続参戦を目標にします。今はとにかく場数を踏んで、プロツアーという特別な大会に慣れなくてはいけないので」
来シーズンについても「プロツアー参戦継続」を目標に掲げた川崎。足りない経験を重ね、開花のときを待つ。
藤村 和晃/Fujimura, Kazuaki(大阪)
現在のプロ・ポイント:23点
昨シーズン、グランプリ・名古屋2016とグランプリ・北京2016でトップ8に入賞し、今シーズンもさまざまなイベントでその姿を見せる藤村は、着実にプロ・ポイントを獲得しゴールド・レベルが視野に入るところまで来た。
彼自身も「そろそろ勝つときが来たでしょ」と自信を見せるが、プロツアーへの練習は「距離が近い分練習時間を取れるかと思いきや、逆に『行くぞ!』という強い気持ちが湧きにくかった」と独特の感覚を言葉にした。それでも「最近は多くのプロがチームでプロツアーを戦っている中で、僕みたいな個人で戦うプレイヤーでもやれるんだぞってところを見せたいですね」と意気込みを語る。
しかし藤村独自の哲学では、ゴールド・レベルは目標ではないそうだ。「もちろんゴールドになればチャンスが増えますけれど」と前置きした上で「プロ・ポイントにはあまり縛られたくない」と言う。彼は、「常に自分を最前線に置いて練習を積んでいける環境であれば、MOPTQでもRPTQでも良い。自分を追い込めることが大事なんです」とマジックへの取り組み方を語った。そしてその先に目指すものは――「僕は、プロツアーで優勝するためにマジックやっているので」の力強い言葉だ。
トップ・プロと比較して実績の少ない彼の発言を大言壮語だと切り捨てるのは容易い。だがそれは、今後の彼が証明していくことだ。目標は大きい方が良いだろう。
来週、彼の挑戦がまたひとつ始まる。
熊谷 陸/Kumagai, Riku(宮城)
現在のプロ・ポイント:30点
グランプリ・東京2016王者の熊谷は、今シーズン出場した3つのプロツアーで64.6%の安定した勝率を見せ、着実にポイントを稼いでいった。特に構築部門での活躍は目を引くもので、世界選手権への招待枠にも関わる「スタンダード・マスター」のレースでは7位タイにつけている。
現在30点のプロ・ポイントを保有する熊谷は、プロツアーでの9勝6敗1分以上の成績を収めるか、またはこのグランプリで2点を上乗せすれば来週のプロツアーに参加した時点でゴールド・レベルが確定する。そのため今大会のことも強く意識し、練習はリミテッドを重点的に行ったという。
またプロ・プレイヤーズ・クラブの変更について尋ねると、「周りの友人たちにより身近な目標ができるので、良いと思います」と、彼を取り巻くコミュニティの充実ぶりも垣間見せた。
「ゴールド・レベルは、昔からの夢でした。カバレージで活躍を読んでいたプロたちに今自分が近づいているのは奮い立ちます。すべてのプロツアーに参加するプレイヤーになり、さらに上を目指していきます」
ラウンドの合間に自身のデッキの動きを繰り返し確認する彼の背は、夏の京都に負けない熱がこもっている。
無論、ここで紹介したプレイヤーの他にもトップ・プロへの階段を登らんと意気込む者は多くいる。そして今回がプロツアー初出場というプレイヤーも多くいる。トップ・プロによる至高の戦いはプロツアーの華だが、彼らに追いつこうとするプレイヤーの熱意にも注目したいところだ。
新たなトップ・プロの登場に期待しよう。
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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