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グランプリ・神戸2017

観戦記事

第10回戦:川上 紘司(静岡) vs. 杉山 優(岐阜)

By 森安 元希

 雲一つない晴天を受けて、神戸の人工島ポートアイランドからは瀬戸内海の水面が白く輝いて見える。

 熱気と涼し気な潮風がほどよくミックスされた天候のなか、ポートアイランドの一角にある神戸国際展示場ではグランプリ・神戸2017、2日目が開催されていた。

 参加者2800人を超えたグランプリ・神戸2017。その1日目、9戦全勝者は10人を数えている。

 そのうちの1人、川上 紘司が「モダンは環境がカオスすぎる」と評するように、全勝者のデッキタイプの内訳は多種多様だ。

 その中でもとりわけ対照的な2つのデッキタイプが激突した。

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川上 紘司 vs. 杉山 優

 川上は「緑赤トロン」だ。

 《ワームとぐろエンジン》や《解放された者、カーン》といった強烈にして重厚なパーマネントを展開する、モダン最重量デッキの1つ。

 エルドラージとのハイブリッドはない。川上も「使い慣れている」と語るように、デッキはモダンのなかでも長寿なものだ。

 オールバックのヘアスタイルに黒メガネ、和装でまとめて盤面を見つめる姿を見たことがあるグランプリ・プレイヤーは多いだろう。

 使い慣れたデッキ、着慣れているスタイル。普段通り、緊張なく対戦へ挑んでいるようであった。


 対する杉山 優も全勝者の1人だ。

 今グランプリ、2度目のフィーチャー・マッチにこれから立ち向かおうとしている。

 1日目第7回戦で登場した1度目のフィーチャー・マッチでは、青黒型マーフォークこと「ブラックバス」を持ち込んだ高尾 翔太に勝利していた。

 その杉山のデッキは、「ボロスバーン」。

 《ゴブリンの先達》という最速のクリーチャーを擁し、《稲妻》《ボロスの魔除け》という最大効率の火力で締める。

 「緑赤トロン」が最重量なら、「ボロスバーン」はモダン最軽量だ。

 川上同様、杉山も「使い慣れている」ことを理由に、デッキをチョイスしている。

 モダンに親しみ深い2人が下した、正反対の結論によって導かれたデッキ同士が、ぶつかり合う。

ゲーム 1

 先手を取った川上から、《燃え柳の木立ち》から《彩色の星》とスタート。

 杉山ももちろん、動いてゆく。フェッチランドで《》を探しつつ《渋面の溶岩使い》で攻勢の意志を示した。

 2ターン目、川上は《古きものの活性》で《ウルザの鉱山》を見つけてから、《探検の地図》を設置。

 杉山、《聖なる鋳造所》をアンタップインして《渋面の溶岩使い》でアタック。川上ライフ、19。

 川上は《炎の斬りつけ》で《渋面の溶岩使い》を対処。《ウルザの魔力炉》もセットして、3種類揃い踏みが確定した。

 杉山はそのターン終了時に《ボロスの魔除け》4点モード。川上ライフ、15。

 トロンのビッグ・アクションが間に合うか、その前にバーンが焼き切るかのタイム・アタックだ。

 杉山の手札は《ボロスの魔除け》《稲妻のらせん》《裂け目の稲妻》《頭蓋割り》《焼尽の猛火》。

 《焼尽の猛火》で対象に取れるクリーチャーが出てくれば、16点分火力。既に火力カード自体は足りているようだ。

 《探検の地図》でウルザトロン3種を揃えた川上が示すアクションの内容にかかってくる。

 川上が3種3枚を倒してプレイしたのは、《解放された者、カーン》。

 [+4]能力で杉山の手札を削ってゆく。現状最も不要牌に近い《焼尽の猛火》が追放された。

 《解放された者、カーン》が登場しても、杉山の動きは変わらない。《ボロスの魔除け》4点モードをプレイヤーに当てていく。川上ライフ、11。

 ここで3枚目の土地を引いた杉山は《裂け目の稲妻》を待機させて、ターンエンド。川上は再び《解放された者、カーン》の[+4]起動、杉山は引いていた《焼尽の猛火》を追放する。

 ここで川上は少し悩んで、次手を示した。2枚目の《解放された者、カーン》をプレイ。再び[+4]能力を起動して、杉山の手札を根こそぎ奪う戦法だ。

 杉山は《頭蓋割り》を追放して、《稲妻のらせん》をプレイ。もちろん《解放された者、カーン》には見向きもしない。手札を枯らしつつも川上のライフを8にまで落とし込む。

 ターンが帰ってきて待機が明けた《裂け目の稲妻》をプレイ。川上ライフ、5。

 そのままトップデックした《裂け目の稲妻》を通常プレイして、川上ライフ、2。

 2枚の《解放された者、カーン》を活用してもなお、火力を押し込まれ続ける川上。

 ひと息をついて、ここで初めて《解放された者、カーン》の動きを変えた。


川上 紘司

 [-3]能力。戦場のパーマネント1つを追放する。というシンプルな能力で、杉山の《聖なる鋳造所》を追放。

 続いて《世界を壊すもの》をプレイ。もう1枚の《聖なる鋳造所》も追放。

 余剰マナで《歩行バリスタ》をX=1で置いて、盤石の盤面として川上はターンを終えた。

 対する杉山のリソースはこの時点で手札0枚、《》1枚のみだ。

 一見すれば絶望的だが―...ここまで一直線に攻め続けてきた結果、川上のライフは1マナ火力1枚の圏内だ。

 《稲妻》、《溶岩の撃ち込み》、《裂け目の稲妻》。

 それぞれ4枚ずつだとすれば、ライブラリーに合わせて、残り10枚。確率的には5分の1程度だが―...

 パンパン!

 川上はアップキープに柏手を叩いた。5分の1を引くために。そして、ドロー。

 ......引いたカードは、1マナだ!

 《ゴブリンの先達》。

 川上は力なく、《ゴブリンの先達》をプレイしてターンを終える。

「もろたで!」 興奮気味に、確信が口をついた川上。

 その言葉が示すように、《解放された者、カーン》の[-3]能力で杉山の最後の《》を割ると、杉山に逆転手はなくなった。

川上 1-0 杉山


ゲーム 2

 杉山が悩んで始めたスタートハンドは《溶岩の撃ち込み》、《頭蓋割り》2枚、《ボロスの魔除け》と、土地3枚。

 13点分というハイスコアな火力があるが、逆に恒常的なダメージソースとなるクリーチャーがいない。

 《溶岩の撃ち込み》プレイでゲームの開始の合図がかかる。川上ライフ、17。

 2ターン目、《ボロスの魔除け》プレイ、川上ライフ、13。

 3ターン目、引いてきた《ボロスの魔除け》プレイ、川上ライフ、9。

 手札には《頭蓋割り》2枚が残り、必要な火力は3点だ。

 ここで引いたカードは......再びの《ゴブリンの先達》。アタックを仕掛け、川上ライフ、7。川上がめくったトップは《自然の要求》だ。

 火力をその身に浴びつつウルザトロン3種を揃えていた川上、タップアウトで《ワームとぐろエンジン》をプレイ。

 《自然の要求》を確認できている杉山は、初めて川上のエンドに動かず《頭蓋割り》を溜めた。


杉山 優

 川上のターン。

 川上はもちろん《ワームとぐろエンジン》で攻撃を仕掛け、絆魂で回復したい。

 杉山は《頭蓋割り》でそれに待ったをかける。川上、それに対応して《ワームとぐろエンジン》へ向けて《自然の要求》をプレイ。

 だが、さらに杉山が2枚目の《頭蓋割り》を唱えたことで、川上は1点もライフを得られなかった。川上ライフ、1。

 ここもまた、杉山は火力を引かなければならないシーンだった。

 《自然の要求》が解決され、4点の回復はないが《ワームとぐろエンジン》は破壊されているので3/3の接死トークンと絆魂トークンが生成されている。

 しかしゲーム1との違いは、杉山の手札は枯れていなかったということだ。

 前のターン、《頭蓋割り》2枚を構えるために手札に溜めていた《溶岩の撃ち込み》を解き放つ。

川上 1-1 杉山


ゲーム3

 杉山、ゲーム2のスタートハンドと一転して、今度は《ゴブリンの先達》2枚、《僧院の速槍》2枚、《渋面の溶岩使い》に《溶岩の撃ち込み》とフェッチランドという生物ハンドだ。

 後手1ターン目、順当に《ゴブリンの先達》をプレイする。

「負けたかな。」

 《紅蓮地獄》や《炎の斬りつけ》のようなカードを現時点で持っていない川上は、軽快に先手1ターン目から攻撃を仕掛けてくる《ゴブリンの先達》を見て、口三味線ではなく本心をつぶやいた。

 そして杉山が後手2ターン目にして手札に唯一不足していたリソース、土地を引くと《ゴブリンの先達》《僧院の速槍》を続けざまにプレイ。

 川上は攻撃を受けてライブラリートップをチラリとだけ確認して、それが土地でないことを確認したあと、カードを片付けた。

川上 1-2 杉山


 最重量「トロン」 対 最軽量「バーン」。

 1分足らずで終えたゲーム3だけを見れば「バーン」デッキの面目躍如だが、ゲーム1とゲーム2はたった1ターン1枚、1手のすれ違いの差しかない僅差であった。

 この1手のすれ違いの中に、モダンフォーマットが詰まっている。

「《頭蓋割り》2枚あって、良かったぁ!」

 ゲーム2の最終盤を振り返り、杉山がマッチの感想として締めくくった。

 実際、2種類のライフ獲得カードを乗り越えるためには、《頭蓋割り》2枚しかなかったのだ。

 今は杉山が勝ちをおさめたが、次は川上かもしれない。それほどバランスは均衡しているようだ。

 空調がコントロールされて涼しいはずの国際展示場室内だが、激戦の熱は確かにプレイヤーたちを温めてゆく。

 グランプリ・神戸2017、2日目が始まった。

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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