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グランプリ・広州2016

観戦記事

準々決勝:山本 賢太郎(東京) vs. Lim, Zhong Yi(シンガポール)

By Masashi Koyama

 第4回戦で書いた通り、プロツアー『異界月』でプロ・プレイヤーにとってのシーズンの幕引きは等しく皆に訪れ、プレイヤーたちは1年間の戦いを終えることとなった。

 山本はこのプロツアーで追加のプロ・ポイントを獲得することができず、3年連続となるプラチナ・レベル到達を果たすことはできなかった。

 もちろん彼が1年間に渡って残してきた足跡は間違いなく素晴らしいもので、日本のトップ・プロであることは疑いようはないのだが、足りなかったプロ・ポイントはたったの2点。その心中はいかばかりだろうか。

 それでも、山本は新たなシーズンもまたマジックに向き合っている。国を越えはるばる中国は広州まで長い距離を移動し、グランプリ・広州2016へと臨んでいる。

 そして今、彼がいるのはこのグランプリに参加した946名のうち、たった8名しか立つことを許されない決勝ラウンドの場だ。

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 新たなシーズンの第一歩。

 確かな足跡が今ここに。


準々決勝:山本賢太郎 vs. リム・ツォン=イー
ゲーム1

 リムが《僧院の速槍》から《ギタクシア派の調査》という好スタート。

 さらにリムは2枚目の《僧院の速槍》から2枚目の《ギタクシア派の調査》でまずはこの攻撃で山本のライフを14まで落とし込む。

 ひとまずこの動きを減速させようと山本が差し向けた《稲妻》から《僧院の速槍》を《変異原性の成長》で守ると、《思考囲い》で唯一《グリセルブランド》を墓地に送り込む手段である《信仰無き物あさり》を捨てさせ、《稲妻》を本体へ。

 《僧院の速槍》がアタックしてフェッチランドを起動していた山本のライフは4まで落ち込む。

 山本にとって残されたターンは、リムが「果敢」を誘発させる呪文を持っていない状況でない限りこのターンのみだろう。......が、そう上手くコンボを決めることができるはずもなく、《血清の幻視》から《信仰無き物あさり》をフラッシュバックし《グリセルブランド》を墓地に落としターンを返すのみ。

 そしてリムはアンタップするとカードを引き、2体の《僧院の速槍》でアタック......そしてそのままダメージを解決!

 そう、リムは手札にクリーチャー以外の呪文を持っていなかったのだ!

 そして度重なる《ギタクシア派の調査》やフェッチランドでリムのライフはすでに6。

 山本にターンを返すまでもなく、リムは盤面を片付けた。

山本 1-0 リム

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ゲーム2

 山本が《神聖の力線》を戦場に出し、ゲームが始まる。

 山本の初手は、

 リムはフェッチランドから《踏み鳴らされる地》をアンタップイン、《僧院の速槍》から2連続の《ギタクシア派の調査》、続くターンには《死の影》と、自ら血を流しつつ一気に3ターン目にして山本のライフを10まで落とし込む。

 さらにリムの盤面に《墓掘りの檻》が加わり、山本にとっては厳しい状況だ。

 山本は《墓掘りの檻》がなんともならず、リムの《死の影》が充分なサイズに育ったのを見ると、静かに頷き3ゲーム目へと気持ちを切り替えた。

山本 1-1 リム

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ゲーム3

 リムが《野生のナカティル》から《僧院の速槍》、そして《墓掘りの檻》をプレイするロケットスタート。

 山本は《墓掘りの檻》こそ《イゼットの魔除け》でカウンターするが、返すターンの《信仰無き物あさり》で捨てたのは2枚の《御霊の復讐》!

 そう、山本の手札にはシュートすべきクリーチャーがいないのだ。

 それでも、《野生のナカティル》を除去した段階で、残りライフはまだ2桁ある。

 《信仰無き物あさり》も墓地にあり、フィニッシャーを引き込むのは時間の問題かと思われたその矢先。

 リムは《僧院の速槍》に攻撃し、おもむろに《強大化》をプレイ。

 そしてさらに勢い良く飛び出したのは《ティムールの激闘》。

 勝負が決まるのは、一瞬だった。

山本 1-2 リム

 試合後、会場を歩いていた山本と少しの間会話を交わすことができた。

「このマッチアップは少し不利くらいかな。何とかなる相性差ではあるけど。実際、2ゲーム目で(リムが引いたカードが)《墓掘りの檻》でなく《虚無の呪文爆弾》であれば《神聖の力線》があるから勝てたんだけどね」

 勝敗を分けたのはたったの1枚。その1枚が重くのしかかったゲームだったのだ。

 わずかな差で敗れた山本、その彼に対しうまく言葉が見つからなかった筆者に、山本から一言かけてくれた。

「次は京都だね」

 そう、山本はもう前を向いている。今シーズンも彼は新たな目標に向けてマジックをプレイしていくはずだ。

 だから今、ここから未来へ走りだそう。

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