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グランプリ・広州2016
デッキテク:石井泰介の「蔵の開放」
by Masashi Koyama
石井泰介というプレイヤーをご存知だろうか?
競技イベントシーンに詳しい方なら、もしかすると彼の愛称である「マンモスさん」のほうが通りがいいかもしれない。
石井は古くから関東でトーナメントプレイヤーとして活躍を続けている古豪で、プロツアーへの予選システムが今のようにプロツアー予備予選(PPTQ)、プロツアー地域予選(RPTQ)の二段階方式に変わる前の、プロツアー予選(PTQ)の頃から積極的に地方への遠征を行うほどにマジックに情熱を注いてきた。
その彼の情熱が花開いたのがグランプリ・北九州2009だ。
初日を全勝で終えた石井は2日目も順調に勝ち進むと、準決勝では彌永淳也、そして決勝では後に殿堂入りを果たす大礒正嗣を破って、堂々のグランプリ戴冠を果たした。
そんな石井のマジックに対する情熱は今も途切れることなく続いていて、このグランプリ・広州2016にも「モダンをもっとプレイしたいから」という理由で国境を越えて参戦している。
そんな石井はプロツアー『神々の軍勢』以降、モダンでたったひとつのデッキを使い続けているという。
早速、石井の力作、「《蔵の開放》」をご覧いただこう。
3 《平地》 2 《島》 4 《アダーカー荒原》 4 《ダークスティールの城塞》 4 《墨蛾の生息地》 2 《アカデミーの廃墟》 1 《幽霊街》 -土地(20)- 2 《猿人の指導霊》 1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 -クリーチャー(3)- |
4 《オパールのモックス》 4 《彩色の星》 4 《テラリオン》 1 《写本裁断機》 4 《胆液の水源》 4 《予言のプリズム》 3 《飛行機械の鋳造所》 1 《弱者の剣》 1 《加工》 4 《クラーク族の鉄工所》 3 《信仰の見返り》 3 《蔵の開放》 1 《求道者テゼレット》 -呪文(37)- |
1 《呪文滑り》 3 《僧院の導師》 4 《アーティファクトの魂込め》 3 《残響する真実》 3 《神聖の力線》 1 《神の怒り》 -サイドボード(15)- |
――最初にこのデッキを組まれたのはどのようなきっかけですか?
石井「結構長くて......最初は確かバレンシアで開催されたプロツアー......プロツアー『神々の軍勢』に参加するためにデッキを探していたところで、知り合いが『Magic Onlineに面白いデッキがあるよ』とデッキリストを教えてくれて、それをベースに改良して今に至る感じかな。」
もともとプロツアーへ持ち込んだデッキだったという《蔵の開放》を、石井は3年以上に渡って愛用しているという。
このデッキの基本的な動きは、まず《彩色の星》や《胆液の水源》《テラリオン》といった「墓地に落ちるとカードが引けるアーティファクトを並べ、《クラーク族の鉄工所》でそれらを生け贄に捧げる。そうしてマナを増やしライブラリーを掘り進めながらながら《蔵の開放》か《信仰の見返り》を唱えると、生け贄に捧げたカードが全て戦場に戻ってくるので、この手順を複数回繰り返すことで、勝ち手段である《引き裂かれし永劫、エムラクール》にアクセスすることができる、というものだ。
サブプランとして《弱者の剣》《飛行機械の鋳造所》コンボが搭載されており、複数の勝利手段を内包する構造となっている。
その他にも石井いわく《クラーク族の鉄工所》と《弱者の剣》《飛行機械の鋳造所》があれば、
- 《弱者の剣》を《飛行機械の鋳造所》で生け贄に捧げ、飛行機械・トークンを生み出す。
- そのトークンを《クラーク族の鉄工所》で生け贄に捧げ{C}{C}を生み出し、そのうち{C}で《飛行機械の鋳造所》で《弱者の剣》を生け贄に捧げる。
- 《飛行機械の鋳造所》の能力を解決する。飛行機械・トークンが戦場に出て、それにより《弱者の剣》が戦場に戻る。
- 1に戻る。
......という手順を繰り返すことで、好きなだけライフとマナを手に入れることができる、という勝ち筋もあるとのことだ。
その他にも《写本裁断機》を絡めたコンボもあり、なかなかにひとり回しが楽しそうなデッキである。
――どのような対戦相手が苦手なマッチアップなのでしょうか?
石井「このデッキの一番の弱点はサイドボード後のゲームにとても弱いという問題で、《石のような静寂》《安らかなる眠り》のようなアーティファクト対策と墓地対策の両方でダメージを食らうという構造的な問題があって......アーティファクト対策は《戦争の報い、禍汰奇》《古えの遺恨》《ハーキルの召還術》、墓地対策は《安らかなる眠り》に《大祖始の遺産》などいろいろあるけど、一番厳しいのは《トーモッドの墓所》! 《蔵の開放》で帰ってきちゃうから(笑)」
――他のデッキに対する相性はどうなのでしょうか?
石井「ジャンドは少し有利だと思っていて、バント・エルドラージ相手は不利だと思っているけど、結果的には五分くらいなのかな。感染などのキルターンが速いデッキは苦手だね。あとは白のヘイトベア(《スレイベンの守護者、サリア》など対戦相手を妨害できるクリーチャーが多く入っているデッキ)は本当にキツい!」
――モダンはメタゲームが移り変わりやすいフォーマットだと思うのですが、どのように対応しているのですか?
石井「そこはサイドボードの話になるんだけど、今は《アーティファクトの魂込め》や《僧院の導師》で殴り切るプランを模索しているところだね」
また、石井はこのデッキについて「本質的にはTier3くらいのデッキ」とも語っており、苦労するマッチアップも多いようだ。
ただ、一般的には知られていないデッキだからこそ、もぎ取れる勝利もあるという。
石井「いわゆる『わからん殺し』の部分は確実にあるね。例えば、対戦相手が《漁る軟泥》で追放するカードを間違えて勝つようなこともあるし」
相手のデッキの動きが分からなければ適切なプレイをすることは難しい。モダンという広大なカードプールが使えるフォーマットにおいて、「知られていない」ことは間違いなくアドバンテージになる。
さて、石井の「《蔵の開放》」デッキはいかがだったろうか?
デッキがぐるぐる回る様が圧巻なこのデッキ。コンボデッキがお好きな方はぜひ一度手に取ってみてはいかがだろう。
最後に、ふと気になったので石井に他のデッキを試したりはしていないのか訪ねてみた。
石井「(プロツアー『神々の軍勢』以降)このデッキを気に入って、ずっと使い倒しているんだ。他のデッキはそれからは使っていないかな。」
そう語る石井からはこのデッキに対する愛情がひしひしと感じられた。
ぜひ、皆さんも「使い倒せる」デッキを見つけてみてほしい。
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