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グランプリ・千葉2018
「英雄譚」:ゴールドレベル・プロ、佐藤レイ~「ここがスタートライン」~
ゴールドレベル・プロ 佐藤レイ |
フラっと会場に現れては友人たちとひとしきり盛り上がり、そして飄々と優勝をかっさらう。
かつてプロツアーへの予選が一発勝負の「PTQ」と呼ばれていた頃、佐藤レイはそんな男だった。
もちろんこれは私の勝手な印象で、実際にはプレイ中の苦悩はあっただろうし、上位入賞が多い分勝利を逃した時の悔しさも大きかっただろう。
それでも佐藤は悔しさといった感情はほとんど見せず、ひとたびイベントからドロップすればすぐに友人たちを集めて閉場まで賑やかにチームドラフトに興じていた。
そんな佐藤はグランプリ・香港2017でも、10年前のプロツアー予選を彷彿とさせるようにフラっと会場に現れ、そのまま勝ち上がりあれよあれよという間に優勝トロフィーを手にした。
そんな佐藤は今シーズン、その香港での優勝を皮切りにグランプリ・北京2018、グランプリ・シンガポール2018と次々にグランプリトップ8入賞を果たし、当代の「英雄」と呼べるゴールドレベルに到達した。
10年以上、いや15年のマジック歴を経て「グレイビー・トレイン」(シーズンを通じてプロツアーへの参加資格がある状態)に初めて到達した彼の「英雄譚」とは――
Ⅰ マジックとの出会い、リミテッダーとしての開花
佐藤「初めてマジックのブースターパックを買ったのは『プロフェシー』だね。ルールは分からなかったけど絵が綺麗って理由で。《発見の井戸》が当たったのを覚えてるよ」
佐藤がマジックに初めて触れたのは今から18年も前のことだ。当時中学1年生だった彼はもともとゲームが好きだったこともありすぐにマジックへのめり込むことになった。
佐藤「中学生とか高校生の小遣いなんてたかが知れたものだし、スタンダードにまでは手が回らなかったよ。ブースタードラフトであれば遊べたから、マジックのルールはリミテッドで覚えたね。ひたすらドラフトをしてた」
記録の上では2003年2月11日に神奈川県のスタンダードイベントに出場したのが彼の最初の認定イベントとなっているが、彼がもっぱらプレイしていたのは構築フォーマットではなくリミテッドだった。
そうしてリミテッドの腕を磨いた佐藤は、神奈川の草の根トーナメント「PWC」で同年代のプレイヤーたち、今では殿堂顕彰者となった渡辺雄也やプロツアートップ8の経験を持つ石村信太朗らと出会い、彼らと共にグランプリやプロツアー予選といった競技プレイに出場するようになった。
そして、初めての認定イベント参加から約2年後の2005年に、16歳という若さでプロツアー・名古屋2005に出場すると、佐藤はリミテッダーとして開花し、プロツアー予選を何度も突破することになる。
これまで9回ものPTQ優勝。そのうち実に7回がリミテッドフォーマットでの勝利だ。
Ⅱ 他のゲームとの出会い、そして
「PWC」で出会った渡辺雄也らと違い、佐藤はマジックに全力をつぎ込みはしなかった。
佐藤「麻雀に出会っちゃったんだよね。マジックと出会った友達だけじゃなくて普段の(学校などの)友達とも遊べるから、そっちがメインになっちゃったね」
佐藤はマジックとは一定の距離感を保ちながらPTQには参戦するというスタイルを継続していくことになる。
それでも佐藤はひとたびリミテッドのPTQに出場すれば好成績を収め続けた。当時ハマっていた麻雀の経験がマジックに活きたのだという。
佐藤「麻雀とリミテッドは凄く似ているところがあるんだよね。両方とも配られたカードなり牌なり、あらかじめ(プレイヤーによって)格差ができていて、そこから限定された最適なアプローチを取る。取捨選択やリスクの取り方……答えがあることが多くて。あとはきちんとリスクとリターンを把握することろだね。数値とかではなくてふんわりと体系化されたものなんだけど。そのふんわりとしたリスクとリターンを正確に測れた方が最適な構築ができるよね」
佐藤は当時から豊富なゲーム経験から経験則的にリスクとリターンを体系化している。
一介のプレイヤーだった筆者からすれば、あるいはともすればプロツアーを何度も経験している伊藤敦ですら「センス」や「才能」で勝っていると思い込み、羨望と嫉妬の眼差しを向けていた。
だが、そこには確かな努力と豊富なゲーム経験により裏付けされた感覚があったのだ。
Ⅲ 「プロ」になった佐藤レイのこれから
佐藤は麻雀やポーカーなど他のゲームをたしなみつつも、結果としてマジックへ帰ってきた。その佐藤が考えるマジックの魅力とはどのようなものだろうか。
佐藤「マジックはコミュニケーションツールだし、頭脳ゲームだし……これを通して俺は知り合って10年15年続く友達もたくさんいるし、生涯の友達を見つけられる素晴らしいゲームであることは間違いないんじゃない? 自分が中高生の頃にやっていたゲームが今でもこうして大規模なイベントが行われていて……それはこのゲームがうまくできてるからだよね。そういう意味ではすごく感謝してるよ」
今、ゴールドレベルに到達しこれからマジックを広めていく活動もするだろうと言う、文字通り「プロ」となった佐藤に心境の変化はあったのだろうか。これからのマジックへの意気込みを聞いてみると一言目に佐藤らしい答えが返ってきた。
佐藤「変わらないよ(笑)。変わらない」
「やっぱり佐藤レイは佐藤レイだなあ」と半ば嬉しく、半ばがっかりしつつインタビューを終えようとしたところで、佐藤はさらに言葉を紡いだ。
佐藤「まあ、これからが本番って気がするよ。ここが到達点じゃなくて出発点。マジックにこれからコミットしていく者としてのスタートラインにようやく立てたのかな」
ああ、佐藤レイは本当にマジックの「プロ」になったんだ。
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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