By 平林 和哉

　２番ポッド。１敗プレイヤーが並ぶこの卓において、ベスト８に入るために予想される必要な成績は２-０-１。
　すなわちあと２戦は負けられないのだ。

　ここで激突するのは、互いにグランプリトップ８を２回経験している梅原と山口。

　グランプリ・横浜2012準決勝では梅原が勝利したマッチだが、今回の軍配はどちらに上がるだろうか。

山口 聡史 vs. 梅原 啓。リベンジ成るか、再び退けるか

ゲーム１

　梅原に渡された初手は《山》１枚のものだった。さすがに始められず、梅原のテイクマリガンでゲームが開始する。

　山口が《銅の甲殻》を出せば梅原は《吸血鬼の裂断者》。
　続けて山口《ヴィーアシーノの殺戮士》、梅原《嵐血の狂戦士》と互いにマナを使い続け、激しいダメージレースが起こりそうな立ち上がりとなった。

　ここで山口が盤面通りに《銅の甲殻》を《ヴィーアシーノの殺戮士》に装備するかで長考。
　《名も無き転置》や《稲妻》等の除去でテンポを取られる展開を嫌ったか、ここでは手拍子に装備することを選ばなかった。

　慎重に《拘引》で《嵐血の狂戦士》の処理に向かうのだが、梅原は対照的に《アッシェンムーアの抉り出し》を。
　後手だからと受けに回るのではなく、積極策で打開を図ろうとする。

　慎重な山口はここでも《恨み唸り》で《アッシェンムーアの抉り出し》を処理するのだが、裏目に出たか梅原の続くアクションは《血まみれ角のミノタウルス》狂喜！
　手札には無いものの《力強い跳躍》による勝ち筋が無くなることを嫌ったか、山口は《銅の甲殻》を装備するのみに留め、《ヴィーアシーノの殺戮士》を戦闘には参加させない。

山口 聡史

　５/５《血まみれ角のミノタウルス》の存在で大幅有利となった梅原、《吸血鬼の裂断者》《血まみれ角のミノタウルス》を攻撃に回すと《血のオーガ》までもが狂喜。

　《血のオーガ》こそ《銅の甲殻》をまとった《ヴィーアシーノの殺戮士》と相打つものの、山口が再展開した《ヴィーアシーノの殺戮士》《血のオーガ》（狂喜なし）にも構わずの突撃。
　一気呵成の構えだ。

梅原 啓

　山口は《吸血鬼の裂断者》を《血のオーガ》で受け止め、《血まみれ角のミノタウルス》は通し、ぎりぎりまで盤面を維持しようとするのだが、この攻防で山口のライフは２。
　ここで梅原が《ゴブリンの投火師》を追加したことにより、山口に残されたのは２ターンとなってしまう。

　あと２ターン。この局面で山口が《ミラディンの十字軍》を展開。
　最後のドロー次第でもしや、といった状況に。

　だが山口にターンは返ってこなかった。
　梅原の続くドローは《帆凧》。《血まみれ角のミノタウルス》が空を飛び、山口の希望を奪い去った。

山口 ０-１ 梅原

ゲーム２

　先手の山口がテイクマリガンしたのを受け、梅原は初動３ターン目かつ《山》しか無い手札をキープ。

　そして山口はワンマリガン後にも逡巡していた。
　理由は第２ターンに明かされる。２枚目の土地が無かったのだ。

　これにより山口の展開は大幅に遅れてしまう。
　以降２枚目、３枚目の土地こそ引けたものの、この間梅原は《鎌切り》《血まみれ角のミノタウルス》狂喜と走り始め、山口も《太陽打ちの槌》、《拘引》を《血まみれ角のミノタウルス》と耐えようとするのだが。

　急戦こそが赤黒狂喜の信条。事故気味の相手を叩き潰すことは最も得意なフィールドだ。
　《血まみれ角のミノタウルス》こそ《拘引》されたものの、狂喜された《血のオーガ》《吸血鬼の裂断者》と並べ立て、《平地》３枚で動きのない山口に《ゴミあさりのドレイク》。
　事故から復旧する時間を与えない。

　４枚目の土地として《山》を引いたものの、完全に手遅れだった。

山口 ０-２ 梅原

　２ゲーム目の事故は仕方ない。では分水嶺はどこにあったのだろうか。

　それは１ゲーム目、山口が《銅の甲殻》を《ヴィーアシーノの殺戮士》に装備せず、《拘引》を《嵐血の狂戦士》につけたことだろう。

　この時点で山口には後続がおらず、除去でテンポをとられる可能性、そして除去の的になりたくなかったのがその選択理由だった。

　しかし現実には誤算の連続だった。
　《嵐血の狂戦士》に続いたのが《アッシェンムーアの抉り出し》で、立て続けに強カードが現れたため看過できず、《恨み唸り》を使った末の《血まみれ角のミノタウルス》。

　もちろんこれは結果論だ。
　結果的に梅原が除去を持っていなかったとはいえ、仮に３ターン目《銅の甲殻》装備で勝っていたとしても、その選択肢が裏目に出る未来もあったのだから。

　だが。それでも。
　勝てる可能性があったなら、何故選択できなかったかを考えてしまう。
　それがマジックプレイヤーというものだろう。

　結果として梅原がグランプリ・横浜2012準決勝同様に山口を下す結果となった。
　梅原は３度目のグランプリ・トップ８まであと１勝。

　山口もわずかながらにベスト８の可能性は残し、いずれにせよ２勝でプロツアーの参加権がもらえる位置で14回戦を迎えることとなる。