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グランプリ・北京2015
決勝チームドラフト:渡辺 雄也のピック
By Atsushi Ito
賞金、名誉、プロポイント......様々なものがかかったこのグランプリ・北京2015の決勝ドラフトだが、今回、渡辺 雄也にとってはまた別の大きなものがかかっていた。
すなわち、8回目のグランプリ優勝をもって、カイ・ブッディ/Kai Buddeに並んでいるグランプリ最多優勝記録を抜き去り優勝回数が単独で1位となるところ、その8回目を達成するチャンスが久しぶりに巡ってきたのである。
はたして渡辺は、前人未到の偉大なる記録を打ち立てることができるのか。
ここではそんな渡辺の決勝チームドラフトのピックを追ってみよう。
卓の席順はウェスコー→市川→ホーエン→渡辺→フロン→三原。
1パック目
(以下、カッコ内は他の候補)
- 1-1 《竜使いののけ者》 (《乱動の噴出》/《バーラ・ゲドを滅ぼすもの》/《敵対》/《掴み掛かる水流》/《多勢》/《棘撃ちドローン》)
- 1-2 《空中生成エルドラージ》 (《鈍化する脈動》/《ウラモグの失却させるもの》/《コジレックの歩哨》/《噛み付きナーリッド》)
- 1-3 《悪魔の掌握》 (《コーの絡め捕り》/《タジュールの獣使い》)
- 1-4 《ヴァラクートの捕食者》 (《グール・ドラズの監視者》/《培養ドローン》)
- 1-5 《ヴァラクートの発動者》 (《威圧ドローン》)
- 1-6 《噛み付きナーリッド》 (《陰惨な殺戮》/《泥這い》)
- 1-7 《敵対》 (《威圧ドローン》)
- 1-8 《噛み付きナーリッド》 (《オラン=リーフの発動者》)
- 1-9 《ムラーサのレインジャー》 (《異常な攻撃性》)
- 1-10 《髑髏砕きの補充兵》 (《大群の殺到》)
- 1-11 《領地のベイロス》
- 1-12 《大地の武装》
- 1-13 《天使の贈り物》
- 1-14 《間欠泉の忍び寄り》
ファーストピックはかなり強めのパックから爆弾レアの《竜使いののけ者》をピック。赤の強力カードが多いのが懸念材料だが、裏を返せば《敵対》《多勢》《棘撃ちドローン》のうちの1枚は帰ってきそうということでもある。手堅い初手と言えるだろう。
転機となったのは6手目。1パック目の全てのパックを見終えたこの巡目で《噛み付きナーリッド》を見た渡辺はおそらく考えたのだろう。
赤は本線としても2色目の候補として、《空中生成エルドラージ》を取ったはいいものの青は明らかに流れが悪く、また黒はこれまで流したカード的にフロンが黒をやっていそうで2パック目の流れが悪くなりそうなのと、「欠色」カードをスルーし続けてきたのに赤黒をやるという筋の悪さが気にかかる。白はそもそもカードを見ていない、では緑は?
ここで渡辺は1-2のパックを想起する。《空中生成エルドラージ》をピックしたあのパックはそこそこ強いパックだった。もしあまり強くない色である緑を押し付けるために、そのパックの《噛み付きナーリッド》がここまで回ってくるようなことがあれば......
この間、30秒。渡辺は《噛み付きナーリッド》を手に取っていた。
そして運命の分岐点。1-2の返しとなる1-8、誰にもピックされずに残っていた《噛み付きナーリッド》を回収!
この瞬間、卓内の緑のカードは渡辺が全て独占する権利を得たのだ。
ドラフト巧者の渡辺らしい、一周するカードの性質まで見越した素早い切り込み。これぞプロのピックと評するべきだろう。
2パック目
(以下、カッコ内は他の候補)
- 2-1 《下生えの勇者》(《希望を溺れさせるもの》Foil)
- 2-2 《アクームの石覚まし》
- 2-3 《進化する未開地》
- 2-4 《石の怒り》
- 2-5 《突き抜けの矢》
- 2-6 《霞の徘徊者》
- 2-7 《オラン=リーフの発動者》
- 2-8 《血統絶やしのワーム》
- 2-9 《自然の繋がり》
- 2-10 《髑髏砕きの補充兵》
- 2-11 《成長のうねり》
- 2-12 《大地の武装》
- 2-13 《ヴァラクートへの撤退》
- 2-14 《砂岩の橋》
パックを開けた渡辺は大いに苦悩する。
自分の本線、赤緑「上陸」にこれ以上なくハマるパーツである《下生えの勇者》と、どのようなデッキにもタッチで入ってしまうお化けレア、《希望を溺れさせるもの》。はたしてどちらをピックするべきなのか?
時間は40秒ほどしかない。上家のホーエンは青をやっているだろうか? だがやっていないとしても流したらやられてしまう......あるいは《下生えの勇者》を流しても、1パック目の様子を見る限り緑は卓に自分1人、もしかしたら返ってくるなんてことも......
いや、都合のいいことは考えられない。相手は世界最強のチームなのだ。この《下生えの勇者》は流したら最後、二度と出会えないカードだと思っていい。それは前提だ。その上でどちらをピックするかなのだ。《希望を溺れさせるもの》だってきっとタッチできる。《進化する未開地》がピックできなかったとしても、《肥沃な茂み》でも《生命湧きのドルイド》でも《自然の繋がり》でもいい、それが緑の強みだ。
だが一切の前提条件を無視すれば《下生えの勇者》の方が二段階くらい上、確実に勝てるカードだ。これがチーム戦だとしても、まず自分が勝たなければ話にならない。対戦相手、ウェスコーに勝つためには自分のデッキを強くするべきだ。《希望を溺れさせるもの》は、ホーエンの対戦相手となる三原には厳しいカードになるかもしれないが、三原ならきっと何とかしてくれる......
そう考えたのかは定かではないが。
とにかく渡辺は《下生えの勇者》をピックし、《希望を溺れさせるもの》をホーエンに流した。
この判断が吉と出るか凶と出るか。それは対戦で明らかとなる。
3パック目
(以下、カッコ内は他の候補)
- 3-1 《荒廃した森林》 (《破滅を導くもの》/《荒廃の一掴み》)
- 3-2 《オラン=リーフのハイドラ》
- 3-3 《完全無視》
- 3-4 《ニッサの復興》
- 3-5 《垂直落下》
- 3-6 《目なしの見張り》
- 3-7 《ヴァラクートの発動者》
- 3-8 《タジュールの獣使い》
- 3-9 《オラン=リーフの発動者》
- 3-10 《成長のうねり》
- 3-11 《果敢な血王》
- 3-12 《ニルカーナの暗殺者》
- 3-13 《ニルカーナの暗殺者》
- 3-14 《間欠泉の忍び寄り》
3パック目はスタートこそ地味なパックだったものの、2手目でホーエンから《希望を溺れさせるもの》のお返しとばかりに最高のトスを受ける。《オラン=リーフのハイドラ》は「上陸」デッキにおいて最高のレアといっても過言ではない。
また3-4で流れてきた《ニッサの復興》も、「上陸」を一度に3回も誘発させることができる優秀な呪文だ。
最終的には3パック目の緑の出が悪くそこまで強化はされなかったものの、渡辺のデッキはそれでも十分に強力なものとなったと言えるだろう。
しかし、これはチーム戦なのだ。
《下生えの勇者》と《希望を溺れさせるもの》との2択。その判断がホーエン 対 三原の戦いにどのような影響を及ぼすのか。
間もなく決勝戦が始まる。渡辺の大記録、成就なるか。
9 《森》 7 《山》 1 《荒廃した森林》 1 《進化する未開地》 -土地(18)- 1 《竜使いののけ者》 2 《オラン=リーフの発動者》 2 《噛み付きナーリッド》 1 《アクームの石覚まし》 2 《ヴァラクートの発動者》 1 《下生えの勇者》 1 《ヴァラクートの捕食者》 1 《血統絶やしのワーム》 1 《ムラーサのレインジャー》 1 《髑髏砕きの補充兵》 1 《領地のベイロス》 1 《オラン=リーフのハイドラ》 -クリーチャー(15)- |
2 《成長のうねり》 1 《垂直落下》 1 《自然の繋がり》 1 《石の怒り》 1 《敵対》 1 《ニッサの復興》 -呪文(7)- |
-サイドボード(0)- |
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