EVENT COVERAGE

エターナル・ウィークエンド・アジア2018

インタビュー

インタビュー:レガシー民は「死の影」をどう考えるのか?

Yohei Tomizawa

 マジック生誕25周年を記念して開催された「マジック25周年記念プロツアー」。チーム戦とはいえ、レガシーがプロツアー級イベントで採用されたのは、実に「世界選手権2007」以来。プロプレイヤーによる至高のデッキはあるのだろうかと、期待が高まった。

 果たして、そのデッキは存在した。「マジック25周年記念プロツアー」準優勝、ジョシュ・アター=レイトン/Josh Utter-Leytonが使用した「青黒・死の影」がそれだ。

 モダン・フォーマットでは馴染みのこのデッキはグリクシスからディミーアと色を減らしたが、《汚染された三角州》と《湿った墓》のシステムをそのままに、《意志の力》という力を得て大躍進を遂げた。

 ここでひとつの疑問が浮かぶ。なぜ、このデッキはこれまで成り立たなかったのか。あったとすればなぜ活躍できなかったのか。

 レガシー専門でプレイする、いわゆるレガシー民たちは、この結果をどう受け止めるのか。そして今後はどのような進化・対策の過程をたどるのだろうか。

 そこで普段からレガシーに精通する東西のプレイヤーたちにその理由を伺い、使用する側、対策する側と両視点から今後の展望ついて伺ってみた。

 東西それぞれのレガシーの名手たちの見解をご覧あれ。

  • Q1:なぜ、これまで活躍できなかったのか。
  • Q2:どうのような進化をたどるのか。/どう対策すべきなのか。

「青黒・死の影」を使う側の視点

斉藤 伸夫
shadow_saito.jpg

 関東でレガシーを語るならば、まずは斉藤 伸夫だろう。「第5回 BIG MAGIC Sunday Legacy」優勝を皮切りに、「第1期レガシー神決定戦」準優勝、「第4期レガシー神挑戦者決定戦」優勝と、多くの大規模トーナメントで実績を残している。

 彼が素晴らしいのは自身の成績だけではなく、環境研究や特定デッキの達人へのインタビューを実施し「のぶおの部屋」というコラムとして、常にレガシー界に向けて情報発信を行っている点だ。一介の上手いプレイヤーなのではなく、レガシーコミュニティーを牽引するリーダー的存在なのだ。

A1:

 「青黒・死の影」はなかったのではなく、環境に適合していないため、見かけなかっただけですね。原因は《死儀礼のシャーマン》です。

 デッキの性質上ライフを犠牲にするため、《死儀礼のシャーマン》が厄介な存在でした。(ライフ)12からサイズアップしていきますが、例えば《グルマグのアンコウ》を乗り越えるためサイズを6/6にすると残りのライフは7。これは《死儀礼のシャーマン》の表裏、《稲妻》でぴったり削りきられてしまいます。ライフ管理の難しさから、一線級のデッキとしては活躍できていませんでした。

A2:

 結果は残しましたが、アーキタイプとしては未発達な部分もあります。変化を続けるメタゲームの中で、このままでいいのか。最適解を探し続けています。

 今のところ、手札破壊とカウンターでバックアップする速度だけでゲームしていますが、致命的な弱点としてトップデッキされたしたパーマネントに干渉できません。例えば《罠の橋》でも出されようものなら、戦闘を行うことは非常に難しくなります。《漸増爆弾》がありますが、3ターンとかなり時間がかかるため、《死の影》の強さを活かしきれません。

 なので「青黒・死の影」に対して意識高くなるなら、緑をタッチしてパーマネント対策である《突然の衰微》と《剣を鍬に》のライフをリソースに変換できる《森の知恵》を使う形がいいかと思っています。

高野 茂樹
shadow_takano.jpg

 続いては第1回、第7回、第10回と3度の「BIG MAGIC Sunday Legacy」優勝を誇る高野 茂樹。過去には「エルフマスター」としてひとつのデッキを使いこんでいたが、現在は「奇跡」、「グリクシス・デルバー」と特定のアーキタイプに偏らないオールラウンダーとなっている。

A1:

 デッキ自体は昔からありましたが、環境が合っていませんでした。2度の禁止改定により、頭角を現した感じです。

 これまでは、「奇跡」にはデッキ構成上《師範の占い独楽》と《相殺》に弱く、《剣を鍬に》を《死の影》にプレイされようものなら、2体目の召喚は不可能となってしまいます。

 「グリクシス・デルバー」は構成上似ていますが、相性は最悪。《死儀礼のシャーマン》によるライフコントロールと、《若き紅蓮術士》と《ギタクシア派の調査》のトークンの前に手も足も出ませんでした。

A2:

 パーマネント対策のために色を足すという考えもありますが、僕は肯定的ではありません。一応赤も緑も試しましたが、2色に比べ動きがもっさりとしてテンポが悪く、このデッキの強さを活かしきれていないと感じています。

 パーマネント対策や《剣を鍬に》で得たライフを《森の知恵》でリソースに変更と得られるものは多いのですが、そもそもこのデッキの強みはテンポよく動き、盤面を更地とし、手札を枯渇させて巨大なクロックを突きつけることです。2色ながらこのデッキは要求される色マナが厳しく、{U}{U}、{B}{B}、{U}{B}とどのパターンも要求されます。《思考囲い》と《死の影》を一緒にプレイしようとしたら、《繁殖池》のせいで1ターン空いてしまったとタイムラグが生じるよりは、相手のパーマネントによる対策は割り切る今の2色が好みですね。

「青黒・死の影」を対策する側の視点

有田 雄大
shadow_arita.jpg

 今度は関西のプレイヤーに着目しよう。大阪の有田 雄大は関西で定期的に開催されているレガシーイベント「KMC」はもちろん、「第2回関西帝王戦」でも入賞している。ここでは使用デッキである「奇跡」側の視点で対策について語っていただこう。

A1:

 (自分がカードショップ店員ということを踏まえ)実はよく見ているデッキではあったので、今さらなぜということはありました。ただ、やはりプロの視点を感じざるを得ないものがありました。《再活性》です。たった1種類のカードによって、デッキの完成度は一段階が進んだと感じます。

 デッキの性質上、ペイライフする《湿った墓》を使用するため、最初から劣ったデッキと考え、試さない人が多く、研究が進まなかったのではないでしょうか。

A2:

 デッキがスピード頼みなので、一度クリーチャーを対処されると、脆い印象を受けます。1枚1枚のカードパワーが高い「奇跡」のようなデッキならば、序盤をきっちり除去でしのげば後は悠々と《精神を刻む者、ジェイス》を着地させるだけ。

 サイド後は《剣を鍬に》を《外科的摘出》してから動いてくるようなので、《粛清》など名前違いの除去を増やし混戦に持ち込めば、自然と有利になっていきます。

 そのためこちらの除去に対抗できる3マナ程度の追加のフィニッシャーが必要になりますね。サイドに取られている《最後の望み、リリアナ》は理想的なカードだと思います。

堀 雅貴
shadow_hori.jpg

 最後に「日本レガシー選手権2016 Summer」の覇者、堀 雅貴だ。この結果を受け「のぶおの部屋」にも出演し使用デッキである「Lands」について解説している。関西で定期的に開催されているレガシーイベント「KMC」で腕を磨いている彼には「Lands」視点での見解をいただこう。

A1:

 MOで話題になることはありましたが、一大勢力とはなりませんでした。ですが今回のプロツアーの結果を受け、プロプレイヤーとそれ以外の差を感じました。プロがブラッシュアップした途端、一線級のデッキになったのですから。

 具体的にはメインの《再活性》です。《通りの悪霊》をサイクリングし、ライフを減らしながら1ターン目にクロック確保できる。《通りの悪霊》は《突然の衰微》、《致命的な一押し》、《稲妻》といった除去で対象とならず、沼渡りも黒絡みのコントロールが多い環境に噛み合っています。《再活性》が一線級のデッキへと押し上げたマスターピースですね。

A2:

 (「Lands」は)元々の相性もありますが「青黒・死の影」にとっては厳しいマッチアップになります。《イス卿の迷路》が《死の影》を押しとどめ、《燃え柳の木立ち》と《罰する火》を揃えるだけで、クロックもライフもコントロールできます。

 《壌土からの生命》を《外科的摘出》できなければ土俵に上がれませんし、相性を改善させるなら大胆に《もみ消し》や《不毛の大地》でマナを縛りながらのような戦略も面白いかもしれません。原型は2色ですし、伸びしろは十分にあると思います。


 いかがだったろうか。結果が提示されれば、それを受け、すぐに次の環境へとメタゲームは動き出す。立ち止まることは許されない。新たに生まれた「青黒・死の影」は、もう対策される存在なのだ。

 逆境に対して埋没してしまうのか、それとも色や構成を変えて生き残るのか。すべては《死の影》というカードの、そしてレガシープレイヤーの挑戦である。

 デッキの進化を求めて、今後のレガシー界を見ていこう。

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST