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エターナル・ウィークエンド・アジア2018

戦略記事

What is Old School?~ようこそ、1994年のマジックへ~

Yohei Tomizawa

 これまでヨーロッパ、北米で開催されてきたエターナルフォーマットの祭典『ETERNAL WEEKEND』が、『ETERNAL WEEKEND Asia 2018』としてついに日本上陸! このイベントでは2日間かけて、計5つのフォーマットでチャンピオンを決めることになっている。

 よく見ると、ヴィンテージ、レガシーに混じって、聞きなれないものが一つ。

オールドスクール

 何だろうと調べてみると「Old School 93/94」というルールの元、ヴィンテージのように《Black Lotus》は1枚制限、方や《露天鉱床》は4枚(!)使用可能、と現在では考えられないフォーマットのようだ。

 マジック関連でわからないことがあれば知りたくなるのが、プレイヤーの性。この記事では知られざる「オールドスクール」の世界、「Old School 93/94」のルールについて、簡易的にまとめてみた。

 早速、「オールドスクール」の世界を見ていこう!

使用可能カードセット
  • 『アルファ版』
  • 『ベータ版』
  • 『アンリミテッド』
  • 『アラビアン・ナイト』
  • 『アンティキティー』
  • 『レジェンド』
  • 『ザ・ダーク』
  • 『フォールン・エンパイア』
  • 小説『Arena』のプロモーション・カード2種類(《闘技場》、《Sewers of Estark》)

 ルール名にもなっている「Old School 93/94」とは、1993~1994年に発売されたカードセットのみを使えることを意味している。つまりは上記の8セットと1冊の小説に付属していた2枚のカードたちだ。

 この構成は終生不変。スタンダードのようにどこかのセットが脱落することもなければ、ヴィンテージのように新しく参入することもない。本当に1993~1994年の2年間のマジックを永遠に楽しめる環境なのだ。

禁止カード

 このフォーマットで禁止となっているのは、いわゆるアンティ・カードと呼ばれるもの。勝者が無作為に選ばれたデッキのカードを手にするため、デッキ枚数も変動してしまい、対戦にも大きな影響を及ぼしてしまう。発売初期には、現在では到底考えられない挑戦的なデザインがみられる。

制限カード

 制限カードに指定されているのは、ヴィンテージでもお馴染みのパワー9たち。優良ドローソースが少ないことから、瞬間的に大量のアドバンテージを獲得できるカードは軒並み制限とされている。

 興味深いのは《イス卿の迷路》だろう。《露天鉱床》があるにも関わらず、土地カードが制限となっている。恒久的にダメージを防ぎ、多大なアドバンテージを得ることができるのは理解できるが、対策カード不足ということだろうか。とても興味深い。

マナ・バーンの復活

 『基本セット2010』導入時に廃止されたマナ・バーン(フェイズ終了時の余剰マナによるダメージ)がルールとして復活している。

 強力な《Mishra's Workshop》は、使いきれなければ自身に牙をむく諸刃の剣。忠実に1993~1994年の環境を再現しているのだ。

代表的なデッキ

 ここでは本年5月4~6日の3日間に開催された『ETERNAL WEEKEND EUROPE 2018』(参考)オールドスクールの覇者、プロツアー・コロンバス2004のチャンピオンでもあるピエール・カナーリ/Pierre Canaliのデッキを取り上げたい。

Pierre Canali - 「ブルー・ムーン」
Eternal Weekend Europe 2018 Old School 93/94 優勝 / Old School 93/94[MO] [ARENA]
7 《
2 《
4 《Volcanic Island
2 《真鍮の都
4 《ミシュラの工廠
1 《Library of Alexandria
1 《露天鉱床
-土地(21)-

4 《セレンディブのイフリート
-クリーチャー(4)-
1 《Black Lotus
1 《Mox Ruby
1 《Mox Sapphire
4 《稲妻
1 《Ancestral Recall
1 《太陽の指輪
4 《対抗呪文
1 《マナ吸収
1 《Chaos Orb
1 《Time Walk
4 《心霊破
3 《血染めの月
1 《Timetwister
1 《Wheel of Fortune
2 《魔力消沈
3 《火の玉
3 《地震
1 《Braingeyser
1 《回想
-呪文(35)-
4 《赤霊破
3 《青霊破
4 《魔力流出
1 《血染めの月
2 《支配魔法
1 《地震
-サイドボード(15)-

 モダン・フォーマットにも存在する「ブルームーン」の原型は、なんと1994年にあったのだ! 打ち消しとドロー手段は少ないものの、そもそも《血染めの月》さえ着地すれば、相手は機能不全。火力呪文が多く採用されており、戦場のコントロールとフィニッシュ手段を兼ねている。

 この他にも世界初のコントロールと呼ばれた制限カードの束「The Deck(現在では5色)」や、重いデッキとドロー呪文を目の敵にした《地獄界の夢》と《トーラックへの賛歌》が強力な「黒青《地獄界の夢》」、「ジェスカイ」や「ティムール」カラーの優良カードを集めた「グッドスタッフ」等がある。

 デュアルランドはあるが《汚染された三角州》のようなフェッチランドがないため、マナベースが弱く、2色ながら色事故を起こすこともしばしば。単色はリソース回復が難しく、ガス欠に陥りやすい。多色、単色それぞれメリット・デメリットを抱え、妥協点を模索しながらデッキ構築がなされている。

魅力

 1993~1994年にリアルタイムでプレイしていた方にとっては、まさに「青春」そのもの。牧歌的で懐かしい世界が広がっている。

 同時に普遍的な環境であるにも関わらず、最強デッキはない。『ETERNAL WEEKEND EUROPE 2018』では「ブルー・ムーン」が勝者となったが、メタゲームは変動し続けている。カードセットは増えないにも関わらず、最強デッキはなく、メタゲームが変動する。

 永遠に終わることのない、マジックの根本的な楽しさが「オールドスクール」にはあるのだ。


 「Old School 93/94」が定める「オールドスクール」の環境について見てきたが、如何だったろうか。

 『ETERNAL WEEKEND Asia 2018』オールドスクールでは、一体どのデッキが優勝となるのか。これまでなかったようなデッキも現れるのか。

 今日一日、見慣れぬ世界を、一緒に旅していこう。

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