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2020プレイヤーズツアーファイナル
2020プレイヤーズツアーファイナル 勝率まとめとトップ8分析
2020年7月30日
ほぼ1年分のイベントが、類を見ない精鋭揃いの「2020プレイヤーズツアーファイナル」へと収束した。そして145人の招待選手たち(参考記事:英語)は、《荒野の再生》に支配された環境の中で14回戦におよぶスタンダード構築戦を戦い抜いた。この記事ではスイスラウンドにおける各デッキの活躍を振り返り、その上で今週末に行われる決勝ラウンドの予想をしていこうと思う。
先週末のスイスラウンドについての情報が欲しい方は、以下の(YouTuberのNizzahonによる)動画もご覧いただきたい。2020プレイヤーズツアーファイナルの全デッキを集計し、採用枚数の多いカードがまとめられている。
2020プレイヤーズツアーファイナルにおけるアーキタイプ一覧と勝率まとめ
まずは、2020プレイヤーズツアーファイナルの予選ラウンド14回戦における、各アーキタイプのマッチ勝率(引き分けや同系戦、不戦勝を除く)を以下の表にまとめた。
アーキタイプ | 使用者数 | マッチ勝率 |
---|---|---|
ティムール再生 | 57 | 52.2% |
4色再生 | 22 | 54.5% |
バント・ランプ | 17 | 46.5% |
緑単アグロ | 9 | 39.4% |
白単アグロ | 8 | 47.3% |
ジャンド・サクリファイス | 7 | 51.6% |
ラクドス・サクリファイス | 6 | 47.2% |
アゾリウス・コントロール | 3 | 57.1% |
エスパー・ミッドレンジ | 3 | 40.0% |
スゥルタイ・ランプ | 2 | 42.9% |
赤単アグロ | 2 | 35.7% |
マルドゥ・ウィノータ | 1 | 76.9% |
黒単アグロ | 1 | 76.9% |
4色プレインズウォーカーズ | 1 | 64.3% |
ラクドス騎士 | 1 | 57.1% |
4色ヨーリオン | 1 | 33.3% |
エスパー・ドゥーム | 1 | 33.3% |
バント・フラッシュ | 1 | 0.0% |
スゥルタイ墓地 | 1 | 0.0% |
エスパー・ラッツ | 1 | 0.0% |
「4色再生」が予選ラウンドを圧倒した
使用者6名以上のアーキタイプの中で最も高い勝率を記録したのは、「4色再生」だった。このデッキは、「ティムール再生」を基盤としながら、主に《時を解す者、テフェリー》や《ドビンの拒否権》を採用するために白をタッチした形だ。それらの白のカードはターン終了時に放たれる巨大な《発展 // 発破》を防ぎ、他の《荒野の再生》デッキに対して優位に立てる。全体の半数を超えるプレイヤーが《荒野の再生》デッキを使用した環境で、「同系戦」における優位性の大切さが証明されたというわけだ。
グランプリ・フェニックス2020で今大会への参加権利を獲得したベン・ウェイツ/Ben Weitzは、ベテランならではの抜け目のなさで予選ラウンド1位通過を果たした。彼の使用したデッキリストは以下の通りだ。
1 《森》 2 《島》 1 《山》 1 《平地》 3 《繁殖池》 4 《寺院の庭》 3 《神聖なる泉》 4 《ケトリアのトライオーム》 4 《ラウグリンのトライオーム》 2 《ヴァントレス城》 1 《爆発域》 4 《寓話の小道》 -土地(30)- 2 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》 1 《厚かましい借り手》 -クリーチャー(3)- |
4 《成長のらせん》 2 《ドビンの拒否権》 1 《霊気の疾風》 4 《神秘の論争》 4 《荒野の再生》 4 《サメ台風》 4 《発展 // 発破》 4 《時を解す者、テフェリー》 -呪文(27)- |
2 《幽体の船乗り》 2 《ムウォンヴーリーの世捨て人、ジョルレイル》 1 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》 2 《帰還した王、ケンリス》 4 《ガラスの棺》 1 《ドビンの拒否権》 3 《陽光の輝き》 -サイドボード(15)- |
クリーチャー主体のデッキはほとんど活躍できなかった
2020プレイヤーズツアーファイナルでは、白単、緑単、赤単とさまざまなクリーチャー主体のデッキが登場したが、成績はどれも振るわなかった。例えば「緑単アグロ」の勝率は39.4%とかなりの苦戦が伺え、「赤単アグロ」はさらに低く35.7%という結果だった。会場全体の半数以上のプレイヤーがメイン・デッキに《霊気の疾風》を搭載している状況では、厳しい戦いを強いられたのだろう。(ほとんどの「ティムール再生」デッキが、メイン・デッキに2枚か3枚《霊気の疾風》を採用している。)
現環境に対する解答となることが期待された「白単アグロ」と「エスパー・ミッドレンジ」も、予選ラウンドの勝率は50%に届かなかった。「白単アグロ」は「再生」デッキに対して高い勝率を記録したものの、他のデッキへの勝率が芳しくなく、後退した形だ。(行弘 賢が《時を解す者、テフェリー》と《朽ちゆくレギサウルス》に注目して組み上げた)「エスパー・ミッドレンジ」は、理論上は「再生」デッキに強く見えたが、実際には打ち倒せなかったようだ。
今大会の大活躍デッキ:「マルドゥ・ウィノータ」と「黒単アグロ」
使用者1名のメタ外のアグロ・デッキ2つが、それぞれ10勝3敗1分の成績でトップ8に入賞した。その結果を見るに、「マルドゥ・ウィノータ」と「黒単アグロ」は今大会の大活躍デッキと言えるだろう。
1 《山》 2 《平地》 1 《沼》 4 《聖なる鋳造所》 1 《凱旋の神殿》 4 《血の墓所》 4 《神無き祭殿》 1 《静寂の神殿》 4 《サヴァイのトライオーム》 1 《エンバレス城》 2 《寓話の小道》 -土地(25)- 4 《無私の救助犬》 1 《漆黒軍の騎士》 3 《帆凧の掠め盗り》 3 《ラゾテプの肉裂き》 1 《将軍の執行官》 3 《災いの歌姫、ジュディス》 3 《悲哀の徘徊者》 1 《軍勢の切先、タージク》 4 《バスリの副官》 4 《軍団のまとめ役、ウィノータ》 4 《敬慕されるロクソドン》 -クリーチャー(31)- |
4 《急報》
-呪文(4)- |
1 《湧き出る源、ジェガンサ》
-相棒(1)- 1 《巨人落とし》 2 《荒廃甲虫》 1 《帆凧の掠め盗り》 1 《将軍の執行官》 2 《軍勢の戦親分》 1 《ドラニスのクードロ将軍》 1 《帰還した王、ケンリス》 2 《敬虔な命令》 1 《灯の燼滅》 1 《取り除き》 1 《害悪な掌握》 -サイドボード(14)- |
長年の競技プレイヤーであり配信者としても古参の1人であるマイケル・ジェイコブ/Michael Jacobは、トップ8へ至る道の中で7回対峙した「再生」デッキをことごとく破った。「マルドゥ・ウィノータ」デッキは、《急報》や《ラゾテプの肉裂き》といったカードで戦線を横に広げ、《軍団のまとめ役、ウィノータ》の能力を大量に誘発させることを狙う戦略だ。このデッキが『基本セット2021』で得たものは多い。《軍団のまとめ役、ウィノータ》の能力を誘発させられるだけでなく破壊不能で守れる《無私の救助犬》。それから、《バスリの副官》や《帆凧の掠め盗り》は《軍団のまとめ役、ウィノータ》の能力で戦場に出せる。
ジェイコブは赤のカードの採用枚数を抑え、よく見受けられる《軍勢の戦親分》や《軍勢の切先、タージク》、《エンバレスの宝剣》といったカードの代わりに《悲哀の徘徊者》を採用した。《霊気の疾風》の対象となるカードを減らし、メイン・デッキから採用された《霊気の疾風》に対してわずかながら優位を得たのだ。また、《エンバレスの宝剣》を採用しないことで、《湧き出る源、ジェガンサ》を相棒として採用できるようになった。このように入念に調整されたリストだからこそ、予選ラウンドで「再生」デッキを次々と打ち破れたのだ。
19 《沼》 4 《ロークスワイン城》 2 《総動員地区》 -土地(25)- 4 《どぶ骨》 4 《漆黒軍の騎士》 4 《帆凧の掠め盗り》 2 《黒槍の模範》 2 《死より選ばれしティマレット》 4 《狩り立てられた悪夢》 1 《残忍な騎士》 4 《騒乱の落とし子》 3 《悪ふざけの名人、ランクル》 -クリーチャー(28)- |
3 《強迫》 4 《無情な行動》 -呪文(7)- |
1 《残忍な騎士》 1 《悪意に満ちた者、ケアヴェク》 3 《苦悶の悔恨》 3 《闇の掌握》 3 《害悪な掌握》 4 《肉儀場の叫び》 -サイドボード(15)- |
グランプリ・名古屋2019の優勝で今大会への参加権利を得た熊谷 陸は、「黒単アグロ」デッキでトップ8入賞を果たした。「黒単アグロ」の典型的な戦略は《朽ちゆくレギサウルス》に《悪魔の抱擁》をつける動きだったが、熊谷はそれが《厚かましい借り手》や《陽光の輝き》に弱いことを見抜いたに違いない。そこで彼は、《狩り立てられた悪夢》でメタゲームに挑むことにした。《狩り立てられた悪夢》は、クリーチャーの少ない「再生」デッキに対してはほとんどデメリットなしに運用でき、またコンボを阻止するために《強迫》や《帆凧の掠め盗り》がメイン・デッキから採用されている。
そして「黒単」最大の強みとは? 対戦相手が1ゲーム目に《霊気の疾風》を引いたら、完璧に無駄なドローになることだ。熊谷は今大会において、最善の色を選択し最善のリストを組み上げた。それは、トップ8入賞という形で報われたのだ。
決勝ラウンド来たる
ここまで、予選ラウンドにおける各デッキの活躍を振り返った。次は間もなく始まる決勝ラウンドに目を向けよう。決勝ラウンドは、2ゲーム先取のマッチによるダブルエリミネーション形式で行われる。ただし例外が1つあり、プレイヤーズツアーファイナル王者を決するグランドファイナルは、「2マッチ先取」で行われる。
現時点ではトップ8の対戦組み合わせは決まっていない(原文掲載時)。予選ラウンドの順位に基づいて決められるのではなく、ランダムに決められるからだ。決勝ラウンドにおける対戦組み合わせは、7月31日(PDT)に公開される予定だ。トップ8ブラケットの発表は、7月31日正午(PDT)よりtwitch.tv/magicにて、マリア・バーソルディ/Maria Bartholdi、セドリック・フィリップス/Cedric Phillips、マーシャル・サトクリフ/Marshall Sutcliffe、ポール・チェオン/Paul Cheonによる生放送でお伝えする(放送は英語のみです)。
(編訳注:放送にてトップ8の対戦組み合わせが発表されたため、組み合わせを含めた画像を掲載しております。)
あわせて、トップ8プロフィールやトップ8デッキリストもぜひご覧いただきたい。
トップ8の顔ぶれは、現在のメタゲームが反映されたものになった――「再生」デッキが2種類合わせて4つ、そしてもう4つはさまざまな戦略に分かれている。注目すべきは、「決勝ラウンドでも《荒野の再生》が他を圧倒し、王座を守るのか?」それとも「挑戦者の1人が王冠を奪うのか?」ということになるだろう。
そこで、予選ラウンドにおけるアーキタイプ別の勝率をもとに各プレイヤーの勝率予想を立てて、優勝可能性の順位付けをしてみた。私の計算は単純なもので、実現しないマッチアップは勝率50%とし、ブラケットの構成は考えず、サンプルサイズの小ささやデッキリストの内容による調整は行わず、先攻/後攻による有利も考慮していない。
言ってしまえば、あまり当てにならないランキングだ。しかし、トップ8デッキそれぞれの予選ラウンド中の相性差を見て順位予想をするのもまた、1つの楽しみ方だろう。
1位:マイケル・ジェイコブ(マルドゥ・ウィノータ)(Twitter)
マイケル・ジェイコブは革新的なローグ・デッキを手に、予選ラウンドを通して7回対峙した「再生」デッキをことごとく破った。決勝ラウンドにおいても「再生」デッキの使用者が4名いるため、彼は非常に良い位置にいる。特に、クリーチャー主体の戦略にとって悩みの種となる《空の粉砕》がメイン・デッキから採用されている「アゾリウス・コントロール」と当たらなければ、優勝の可能性は最も高いだろう。私としても応援したい。
2位:熊谷 陸(黒単アグロ)(Twitter)
今大会におけるもう1つの大活躍デッキを使う熊谷 陸も、予選ラウンドにおいて「再生」デッキに対する高い勝率を記録した。さらに、第2回戦ではマイケル・ジェイコブにも勝利している。熊谷が2番目に優勝の可能性が高いと私は見ている。
3位:クリストファー・ラーセン/Christoffer Larsen(ジャンド・サクリファイス)(Twitter)
先月の「プレイヤーズツアー・オンライン2」で準決勝まで駒を進めたクリストファー・ラーセンは、《波乱の悪魔》を駆使して再びトップ8の舞台へ上がった。彼は「マルドゥ・ウィノータ」や「黒単アグロ」と当たるのは歓迎だが、「ティムール再生」を使うプレイヤーにはブラケットの反対側へ行ってほしいと思っていることだろう。
4位:ラファエル・レヴィ/Raphaël Lévy(アゾリウス・コントロール)(Twitter)
MPL選手にして殿堂顕彰者のラファエル・レヴィが使う「アゾリウス・コントロール」だが、予選ラウンドにおけるアーキタイプ別勝率をもとにしたトップ8の予想勝率は、50%を切っている。「再生」デッキとの相性がかなり不安なのだが、彼はトップ8へ至るまで「再生」デッキとの対戦をほとんど回避してきた。しかし「再生」デッキ以外は餌食にできるのだ。
5位:アレン・ウー/Allen Wu(ティムール再生)(Twitter)
今大会のスイスラウンドを2位で通過した「マジック25周年記念プロツアー」王者アレン・ウーは、ベン・ウェイツとの対戦を除いて先攻か後攻を選ぶことができる。しかしながらトップ8には「ティムール再生」への対策を尽くしたデッキが多く、「マルドゥ・ウィノータ」や「4色再生」との相性は非常に悪い。
6位:パトリック・フェルナンデス/Patrick Fernandes(ティムール再生)(Twitter)
もう1人「ティムール再生」でトップ8に入ったパトリック・フェルナンデスは、夢に見るだけだったトップ8入賞が現実のものとなったことを、まだ信じられないでいる。自身初のトップ8入賞は心から嬉しい出来事だったが、しかしこれから始まる決勝ラウンドには厳しい戦いが待ち受けている。
7位:ベン・ウェイツ(4色再生)(Twitter)
純粋にアーキタイプの視点で見ると、「4色再生」は「ティムール再生」以外のほとんどのデッキに対して厳しい戦いになることが予想される。とはいえ長年にわたり目標としていたトップ8入賞を果たした彼は、決勝ラウンドの結果に関わらず満足できるだろう。
8位:クリストフ・プリンツ/Kristof Prinz(4色再生)(Twitter)
開幕を9連勝で飾ったプリンツは、選択したデッキを極めてうまく使えることを大いに示した。また白をタッチしたことで、他の「再生」デッキに対する優位性を得ることができた。しかし、その4色というマナ基盤の不安定さと遅さによって、他のデッキに対する相性は損なわれている。私の計算では、決勝ラウンドにおける予想勝率は8名の中で最低値だ。
改めてトップ8の顔ぶれを見ると、面白い決勝ラウンドになりそうだ。「再生」デッキを攻略するべく挑むアーキタイプが4つも登場したため(戦略もコントロール、持久戦、急戦とさまざまだ)、その結果が楽しみだ。
トップ8ブラケットの発表は、7月31日正午(PDT)よりtwitch.tv/magicにて(英語)、そしてプレイヤーズツアーファイナル決勝ラウンドは8月1日午前9時(PDT)より同じくtwitch.tv/magicにて生放送でお届けするので、お見逃しなく!
2020プレイヤーズツアーファイナル決勝ラウンド 日本語版放送ページ・放送日程
日本語版放送出演者:最終日
- 司会・実況:大和周平(@YamatoColors)
- 解説:八十岡翔太(@yaya3_)
- 解説:市川ユウキ(@serra2020)
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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