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2019ミシックチャンピオンシップⅥ(リッチモンド)
第12回戦:中道 大輔(東京) vs. 八十岡 翔太(東京) ~達人のスピード~
中道「くー、当たってしまうとは……」
八十岡「まあ4敗は日本人いっぱいいるからしょうがない。ここからは知り合いばかりだよ」
2日目のスタンダードラウンド初戦、日本人対決でMPLプレイヤー・八十岡 翔太を相手取ることになったのは、グランプリ・千葉2019の王者・中道 大輔だ。
八十岡「次回のプレイヤーズツアーの権利は?」
中道「ないですね。なので構築4-1目指したいです」
2人の成績はどちらも7勝4敗で、すでにトップ8入賞の目はほぼないものの、ここから5回戦を4勝1敗という成績で切り抜けることができれば、来年2月に名古屋で開催されるプレイヤーズツアーの権利が獲得できるというライン。無論MPLプレイヤーである八十岡には関係のない話だが、中道にとっては国内PTに出られるチャンスということで、重大な関心事となる。
中道のデッキはスゥルタイ・食物なのに対し、八十岡は自らデザインしてMPLエルドレイン・スプリット優勝の礎となった《総動員地区》入りの純正シミック・食物。今大会のトップメタ同士の対決、はたして中道は八十岡という壁を乗り越え、PT権利獲得に望みをつなぐことができるか。
ゲーム 1
先手でオープニングハンド7枚を手に取った八十岡が少し顔をしかめる。それもそのはず、内容は《神秘の神殿》1枚を含む土地5枚に《金のガチョウ》2枚というもの。
シミック・食物というデッキは3ターン目以降毎ターンパワーカードを叩きつけていくことで相手にプレッシャーをかけて押しつぶすのがコンセプトだが、この手札ではそのパワーカードが全く欠けている状態である。
さすがにマリガンする……かと思いきや、八十岡は強気にキープを宣言。2ターン目に《金のガチョウ》を置きつつ《神秘の神殿》を処理しながら占術すれば、うまくすれば《世界を揺るがす者、ニッサ》や《ハイドロイド混成体》にたどり着くことができるかもしれない。実際、3ターン目に5マナ出ることが確定しているというのはかなり受け入れ枚数が多い状態ではある。フラッドのリスクはあるものの、そのバリューを評価しての判断だろう。
対する中道はマリガンし、《湿った墓》《森》《害悪な掌握》《王冠泥棒、オーコ》《王冠泥棒、オーコ》《ハイドロイド混成体》という7枚から、重なっている《王冠泥棒、オーコ》をライブラリーの下に戻してゲームがスタートする。
はたして八十岡の初動《金のガチョウ》に対し中道がタップインを処理で返した2ターン目、八十岡の第1ドローは《王冠泥棒、オーコ》。だが八十岡は少し考える素振りを見せただけでこれを出さず、当初のプラン通り2枚目の《金のガチョウ》を出しつつ《神秘の神殿》を置いてターンエンド。占術は上だ。
そして中道が引き込んだ《楽園のドルイド》を送り出した返し、八十岡は《王冠泥棒、オーコ》から[+1]能力を使用。食物・トークンを大鹿にして3点アタックし、クロックで先行する。この《王冠泥棒、オーコ》は中道の《害悪な掌握》で即座に落ちるものの、八十岡はなおも2枚目の《王冠泥棒、オーコ》を出して[+1]を使用し、6点クロックを作り上げて攻め立てる。
中道 大輔 |
5マナ目に到達した中道も《王冠泥棒、オーコ》を送り出し、[+2]で食物・トークンを生成するが、八十岡は[+1]で3体目の大鹿を生み出し、全力で中道の《王冠泥棒、オーコ》を落としにいく。忠誠度は6で《楽園のドルイド》がチャンプブロックしても守れないため、中道はこれを受け入れるしかない。
だがここで、さすがに初手のキープが祟って後続を出せない八十岡に対し、6マナに到達した中道が《ハイドロイド混成体》を「X=4」で送り出してライフを14まで引き戻すと、返すターンのドローを確認した八十岡の"Blazing Speed"な手がついに止まる。
盤面には《王冠泥棒、オーコ》と《金のガチョウ》、食物・トークンが1枚、大鹿は3体。詰めきれるかどうかを八十岡は時間をかけて計算する。そして意を決すると、[+1]で4体目の大鹿を生み出しつつ、さらに3枚目の《王冠泥棒、オーコ》をプレイ!
これも[+1]で使用し、最後に残ったパーマネントである《金のガチョウ》すらも大鹿に変換して5体の大鹿で一斉攻撃。うち1体は《ハイドロイド混成体》のブロックによって落とされるものの、12点が通って中道の残りライフはたったの2点。クリーチャーの頭数は2対4。中道に2アクションを要求した形だ。
しかし中道もさるもの、要求に応える《金のガチョウ》2体を送り出すと思わず八十岡が「つえー(笑)」と漏らす。4マナを立ててターンを返す中道。
後続を引けなかった八十岡は大鹿4体でアタック、これは《ハイドロイド混成体》《金のガチョウ》《金のガチョウ》の3体ブロックと食物・トークンの起動によるライフゲインで相殺される。そしてエンド前に中道が余った2マナで《むかしむかし》を唱えると……そこには《意地悪な狼》が!
食物・トークンを生け贄に捧げながら格闘してターンを返すと、残る八十岡の大鹿は2体。中道の場には4/4の《ハイドロイド混成体》と《楽園のドルイド》、そして食物・トークンが1枚。大鹿がもう1体増えて殴ってきても耐えられるし、ターンが返ってくれば4/4が2体で大鹿を迎え撃てる。
どうにか命をつないだ、さあここから反撃だ……と、いうところで。
おもむろに八十岡が《王冠泥棒、オーコ》で[+2]を宣言する。中道を倒しきれないまでも、まだしも打点が増える[+1]ではなく。
それはすなわち、八十岡も有効札を引き込んだということ。繰り出されたのは《意地悪な狼》!食物・トークンを生け贄に、大鹿相手には鉄壁のブロッカーだった4/4の《ハイドロイド混成体》がついに処理されると、大鹿2体のアタックは《楽園のドルイド》のチャンプブロックと食物・トークンの起動でお茶を濁すしかなく、結果として中道の戦線は一気に瓦解してしまう。
やがて返すターンのドローを確認した中道は、速やかにカードを片付けた。
中道 0-1 八十岡
長い試合だったように見えて、ここまでの試合時間はたったの10分。八十岡が大鹿を作っては殴るという早いゲーム展開だったとはいえ、互いに事故らず回った「食物」同型戦とは思えないほどのスピーディな決着である。
もちろん八十岡のプレイが"Blazing Speed"であることもその原因として挙げられるが、それだけでなく中道のプレイスピードも相当に早いのだ。
リソース管理、コンバット、プレインズウォーカーの能力起動……判断に悩む事項は多々あれど、あくまで思考のテンポを崩さずに一定のリズムで互いに次々と一手を繰り出していく様はまるで舞のよう。達人同士の同型戦とはかくも流麗なものなのか……そう感じさせるほどの迫力が、2人の戦いにはあった。
ゲーム 2
2ゲーム目の立ち上がりは、1ターン目は互いに《金のガチョウ》の鏡打ちで、2ターン目もどちらも食物・トークンの生成のためにマナを構えるというもの。
そこから中道が3ターン目も《草むした墓》タップインのみでターンを返すと、《意地悪な狼》を持っていた八十岡は先に仕掛けるか少考の末、こちらも《繁殖池》タップインでターンを返す。
すると4ターン目、《寓話の小道》から《島》をサーチした中道がついに仕掛ける。《意地悪な狼》をプレイし、八十岡の《霊気の疾風》に対して《金のガチョウ》からのマナで《神秘の論争》を合わせたのだ!
だが。
そのカードについては、1か月前の2019ミシックチャンピオンシップⅤ(MTGアリーナ)の時点で八十岡はすでに評していた。
いわく、「1マナの《謎めいた命令》」であると。
《神秘の論争》にスタックして合わせられたのは、《夏の帳》! これにより《霊気の疾風》は《神秘の論争》に打ち消されることなく、《意地悪な狼》はライブラリートップへと戻る。それでいて、なおも八十岡はカードを1枚引けているのだ。
そしてこの一合が、実質このゲームのすべてだった。
返すターン、フルタップでノーガードの中道に対して八十岡が送り出したのは《世界を揺るがす者、ニッサ》!
八十岡 翔太 |
中道も《意地悪な狼》を出し直してクリーチャー化された《森》を除去するのだが、返すターンに八十岡は潤沢なマナから《ハイドロイド混成体》を「X=6」でプレイしつつ、なおも[+1]能力で土地をクリーチャー化して中道のライフを攻め立てる。
中道も遅れて「X=4」の《ハイドロイド混成体》を出して必死に追いすがろうとするのだが、《世界を揺るがす者、ニッサ》が定着した時点で行動回数の差は歴然だ。
そして八十岡が《ハイドロイド混成体》とクリーチャー化した土地2体による12点アタックののち、《金のガチョウ》で食物・トークンを生成しつつ《意地悪な狼》を出して中道の《意地悪な狼》を打ち取ると、どうやっても勝ち目のなくなった中道は投了を告げたのだった。
中道「2枚構えられたら厳しいですわ……」
中道 0-2 八十岡
2ゲーム目、八十岡のサイドイン・アウトは《むかしむかし》《楽園のドルイド》を1枚ずつ抜いて《夏の帳》2枚だけを入れる、というものだった。通常の感覚では理解できないような微差を突くようなサイドボーディングだが、最後にそれについて聞いてみると、八十岡は何でもないことのように答える。
八十岡「先手後手で多少違って、先手の場合はあと《霊気の疾風》を3枚にして代わりに《楽園のドルイド》を4枚に戻すだけだね。もう同型戦のサイドは全部決まってるから悩まないよ」
このマッチが終わるまで、結局20分とかからなかった。だが八十岡が"Blazing Speed"でプレイできるのは、「食物」同型戦における圧倒的に繰り返された反復練習が下地にあるからだ。
中道にせよ八十岡にせよ、サイドイン・アウトを悩まないくらい使い込まれたデッキだからこそ、そのプレイが達人のものとして我々の眼に映るのだろう。
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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