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EVENT COVERAGE
2019ミシックチャンピオンシップⅥ(リッチモンド)
2ndドラフト:井川 良彦のドラフトピック ~流れが良すぎて気分良彦~
ミシックチャンピオンシップにおいてかかっているものは賞金だけではなく、人によってはそれ以上のものがかかっている場合もある。
2019年のプロイベントは、今回のイベントが終わればあとは12月に開催されるMTGアリーナのイベントである2019ミシックチャンピオンシップⅦ(MTGアリーナ)を残すのみだが、3か月前に公開された「マジックのeスポーツの未来」という記事によれば、「2019年の『挑戦者』で獲得ミシック・ポイント上位4名は、MPL入り」「その他のプレイヤーについては、MTGアリーナとテーブルトップそれぞれにおいて、該当するイベントの獲得ミシック・ポイント上位8名がライバルズ・リーグ入り」ということとなっている。
そして現在、「挑戦者」たちのミシックポイントのスタンディングにおいて、MPL入りも狙えるほどの上位に食らいついている日本人プレイヤーがいた。
Card Rush Pros所属のプラチナレベル・プロ、井川 良彦。
2019年はミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019での準優勝に始まり、グランプリ・シアトル2019でも準優勝を飾るなど、長年のプロツアートレイン歴で蓄積した努力がようやく花開いた形だ。しかもそのタイミングがちょうどプロ制度の変更と重なり、これ以上なく追い風が吹いた格好となっている。
テーブルトップ側のイベントは今回で2019年最後となるため、テーブルトップのミシックポイントで上位に位置している井川にとっては、今回ポイントを大きく上乗せできれば、ライバルズリーグはもちろんMPL入りまで見えてくる。そのボーダーは、他の上位プレイヤーの成績次第でもあるのだが、概ね11勝5敗くらいとのこと。今回井川は4勝4敗の成績で初日を突破したため、2日目は7勝1敗という大勝が目標となる。
そのためには、2日目のドラフトラウンドでは是が非でも3-0しておきたいところ。そんな井川のピックをお届けしよう。
1パック目
- 1-1 《厚かましい借り手》(他候補:《オークヘイムのレインジャー》《硫黄投石器》)
- 1-2 《欲深い衝動》(他候補:《雷声のカミツキガメ》《機械仕掛けの召使い》)
- 1-3 《フェアリーの荒らし屋》(他候補:《鋼爪の槍》)
- 1-4 《フェアリーの荒らし屋》
- 1-5 《煮えたぎる大釜》(他候補:《選択》《羽ばたき狐》《跳ね橋》)
- 1-6 《ヴァントレスの聖騎士》
- 1-7 《群れの番人》
- 1-8 《胸躍る可能性》
- 1-9 《切望するマーフォーク》
- 1-10 《選択》
- 1-11 《よろめく鎧》
- 1-12 《華やかな葬送》
- 1-13 《籠城の準備》
- 1-14 《籠城の準備》
青単へと一直線。
初手で引き当てた神話レアの《厚かましい借り手》を悩まずにピックすると、2手目のクアドラプルシンボル同士の二択では《欲深い衝動》をピック。
カードパワーや青緑よりも青黒をやりたいということもあっただろうが、何より初手で《オークヘイムのレインジャー》を流している以上、この判断は限りなく正解に近いと言える。なぜなら下家が《オークヘイムのレインジャー》をピックして、次に《雷声のカミツキガメ》をこれ幸いとピックした場合、 井川 (青単) →下家 (緑単)という完璧な棲み分けが早くも3手目にして実現することになるからだ。
あとの問題は井川が実際に青単をやれるかどうかだったが、そんな心配は杞憂だった。強力なアンコモンである《フェアリーの荒らし屋》を2枚連続でピックすると、一周した《切望するマーフォーク》《選択》も回収し、青単を継続しながら《群れの番人》《胸躍る可能性》《華やかな葬送》でタッチ白/赤/黒も覗くという、ほぼ完璧なポジションを確立したからだ。
2パック目
- 2-1 《カボチャ変化》
- 2-2 《具眼の主、エレノラ卿》
- 2-3 《具眼の主、エレノラ卿》
- 2-4 《黄金の卵》
- 2-5 《通路の監視者》
- 2-6 《魔法の眠り》
- 2-7 《湖での水難》
- 2-8 《共に逃走》
- 2-9 《月明かりの掃除屋》
- 2-10 《真実の愛の口づけ》
- 2-11 《巨人の串》
- 2-12 《ドワーフの鉱山》
- 2-13 《永遠の若さ》
- 2-14 《のどかな農場》
そして2パック目も井川の勢いは止まらない。初手は青単なら「一徹」でボーナスを得られる《カボチャ変化》。さらに2手目と3手目は2枚ピックした《フェアリーの荒らし屋》とも相性の良い《具眼の主、エレノラ卿》!
下家との棲み分けが成功していることを示す良い流れはさらに続き、6手目という遅い手順で除去カードである《魔法の眠り》を回収。3マナ~4マナ域のクリーチャーが足りない以外、かなり理想的な状態で3パック目を迎えることとなった。
3パック目
- 3-1 《秘本の略奪者》
- 3-2 《雷声のカミツキガメ》
- 3-3 《鋼睨みのグリフィン》
- 3-4 《魔法の眠り》
- 3-5 《ヴァントレスの聖騎士》
- 3-6 《選択》
- 3-7 《狂ったネズミ飼い》
- 3-8 《雷声のカミツキガメ》
- 3-9 《突き破り》
- 3-10 《極小》
- 3-11 《物語への没入》
- 3-12 《記憶盗み》
- 3-13 《尊きグリフィン》
- 3-14 《敬愛される王女》
3パック目の初手こそ他に青いカードのないパックで仕方なく《秘本の略奪者》を押さえておくにとどまるものの、2手目で《雷声のカミツキガメ》、4手目で《魔法の眠り》、5手目で《ヴァントレスの聖騎士》と、卓に一人しかいない青単ならではの恩恵を次々と享受していく。
さらに極めつけは見ていない最後のパック、3-8で流れてきた2枚目の《雷声のカミツキガメ》!
強力なカードを2枚ずつ揃えることでゲームの再現性すら担保した、環境でも屈指の成功ドラフトでもって井川はピックを終えたのだった。
――「ドラフト、流れがとても良かったですね。ということで記事のタイトル、『流れが良すぎて気分良彦』にしても問題ないですか?」
井川「ああ、なんでもいいよ(笑) 流れはさすがにやばかったね」
井川「ただデッキ構築の最後、24枚目を《よろめく鎧》と《黄金の卵》のどっちにするかだけ3分くらい使って悩んで、結局3ターン目をパスしたくないから壁役として《よろめく鎧》にしたけど、《黄金の卵》だったかなー。微妙だなー」
ピックが完璧でも、デッキ構築も完璧にできるとは限らない。井川の場合、あまりにカードが取れすぎてしまったことで、「24枚目に何を入れるか」という微妙な選択が発生した。圧倒的な成功ドラフトができたとて決して慢心せず、敗着となる可能性が高い部分を真摯に潰そうとする姿はまさしくプロプレイヤーと呼ぶにふさわしいだろう。
――「このデッキは100点満点で何点くらいでしょうか?」
井川「個人的には90点くらいある手応えなんだけど……ここは師匠のなかしゅー (中村 修平) 先生に聞いてみましょう」
中村「これは……なるほど、85点ですね。オレの85点は相当高いよ」
井川「やった!」
その後井川は2連勝したものの11回戦目で惜しくも敗北を喫し、6勝5敗という成績で2ndドラフトを終えた。残りはスタンダードラウンド5回戦、はたして井川はMPL加入に足るミシックポイントを稼ぎ出すことができるのか。
16 《島》
-土地(16)- 2 《フェアリーの荒らし屋》 1 《通路の監視者》 1 《切望するマーフォーク》 1 《厚かましい借り手》 1 《よろめく鎧》 1 《秘本の略奪者》 2 《雷声のカミツキガメ》 2 《ヴァントレスの聖騎士》 2 《具眼の主、エレノラ卿》 1 《鋼睨みのグリフィン》 1 《月明かりの掃除屋》 -クリーチャー(15)- |
2 《選択》 1 《煮えたぎる大釜》 1 《極小》 1 《共に逃走》 2 《魔法の眠り》 1 《欲深い衝動》 1 《カボチャ変化》 -呪文(9)- |
1 《ドワーフの鉱山》 1 《のどかな農場》 1 《突き破り》 1 《敬愛される王女》 1 《湖での水難》 1 《永遠の若さ》 1 《巨人の串》 1 《黄金の卵》 1 《群れの番人》 1 《胸躍る可能性》 2 《籠城の準備》 1 《記憶盗み》 1 《狂ったネズミ飼い》 1 《真実の愛の口づけ》 1 《華やかな葬送》 1 《尊きグリフィン》 1 《物語への没入》 -サイドボード(18)- |
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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