- HOME
- >
- EVENT COVERAGE
- >
- 2019ミシックチャンピオンシップⅤ(MTGアリーナ)
- >
- 2019ミシックチャンピオンシップⅤ(MTGアリーナ)メタゲームブレイクダウン
EVENT COVERAGE
2019ミシックチャンピオンシップⅤ(MTGアリーナ)
2019ミシックチャンピオンシップⅤ(MTGアリーナ)メタゲームブレイクダウン
2019年10月14日
MTGアリーナで行われる史上2度目のミシックチャンピオンシップ、「2019ミシックチャンピオンシップⅤ(MTGアリーナ)」が今週末に始まる。『エルドレインの王権』導入後のスタンダードで行われる本大会では、MPL選手32名と挑戦者36名が、その勇気を試される場に臨む。彼らはローテーション直後の新鮮なスタンダード環境を探究し、賞金総額750,000ドルを懸けた戦いに挑むのだ。
むかしむかし……
……あるところに、68のデッキリストの中で最も多く採用されたカードがありました。
冗談はさておき、今大会で最も多く採用されたカードは169枚で《むかしむかし》だった。それに続くのが、《ハイドロイド混成体》(156枚)と《成長のらせん》(138枚)だ。他に『エルドレインの王権』のカードで採用枚数が多いものとして、《寓話の小道》(128枚)、《探索する獣》(98枚)、《王冠泥棒、オーコ》(94枚)が挙げられる。ワイルドカードをどれに使おうか迷っている方は、これらに使えば比較的安心だろう。
さて、最も多く採用されたカードの話はまだまだ序の口に過ぎない。ここではメタゲーム全体を分析していく。68のデッキリストから各アーキタイプの代表的なリストを取り挙げ、新たなスタンダード環境に起きている出来事を見ていこう。
この画像は4人以上の使用者を集めたアーキタイプをまとめたものであり、メタゲームの79.5%を示している。残りの20.5%についても後ほど触れていく。
とりわけ目立つのが、《死者の原野》の存在感だろう。最も人気を集めた「バント・ゴロス」は、使用率33.8%と他を圧倒している。そこに「ゴロス・ファイアーズ」や「4色ゴロス」も加えれば、実に42.7%ものプレイヤーがゾンビ・トークンの群れを生み出すつもりでいるのだ。《風景の変容》がスタンダードから去ってもなお、《死者の原野》は爆発的な力を見せつけている。それでは早速、今大会のナンバーワン・デッキから詳しく見ていこう。
バント・ゴロス――33.8%
2 《森》 1 《平地》 2 《島》 2 《繁殖池》 1 《神秘の神殿》 1 《茨森の滝》 1 《シミックのギルド門》 2 《寺院の庭》 1 《花咲く砂地》 1 《セレズニアのギルド門》 2 《神聖なる泉》 1 《平穏な入り江》 1 《アゾリウスのギルド門》 1 《疾病の神殿》 1 《ゴルガリのギルド門》 1 《ボロスのギルド門》 1 《調和の公有地》 1 《ヴァントレス城》 2 《寓話の小道》 4 《死者の原野》 -土地(29)- 3 《樹上の草食獣》 4 《不屈の巡礼者、ゴロス》 1 《帰還した王、ケンリス》 2 《裏切りの工作員》 1 《豆の木の巨人》 1 《王国まといの巨人》 3 《ハイドロイド混成体》 -クリーチャー(15)- |
4 《成長のらせん》 4 《むかしむかし》 4 《迂回路》 2 《時の一掃》 2 《時を解す者、テフェリー》 -呪文(16)- |
2 《拘留代理人》 2 《狼の友、トルシミール》 1 《裏切りの工作員》 2 《夏の帳》 3 《敬虔な命令》 1 《霊気の疾風》 2 《神秘の論争》 2 《夢を引き裂く者、アショク》 -サイドボード(15)- |
このデッキは《樹上の草食獣》や《成長のらせん》からゲームを始め、マナ加速から可能な限り素早く《不屈の巡礼者、ゴロス》や《王国まといの巨人》、《ハイドロイド混成体》を繰り出すことを目標としている。そして7枚目の土地を置けば、あとは《死者の原野》の能力を誘発させ続け、たやすくゾンビの軍団を生み出せるだろう。(このデッキには28~29枚の土地が採用されており、そのほとんどが異なる名前であるため、《死者の原野》の能力の条件を簡単に満たせるのだ。)ゾンビの群れを生み出す他にも、《不屈の巡礼者、ゴロス》の起動型能力を駆使して圧倒的なカード・アドバンテージを得ることもできる。
《むかしむかし》のおかげで、このゲーム・プランは驚くほど安定して遂行できる。また、終わりなきゾンビの進行は、ミッドレンジとの相性を必勝レベルまで押し上げている。ゲーム後半の消耗戦において「バント・ゴロス」を上回るのは難しいだろう。
上記で挙げたサンプルは、MPLコア・スプリットでディビジョン優勝を果たしたセス・マンフィールド/Seth Manfieldが登録したものだ。つまりこのデッキはすでに、本大会の2日目進出を決めている。同じくディビジョン優勝者のカルロス・ロマオ/Carlos Romãoもこのアーキタイプを選択し、2日目からの戦いに臨んでいる。両者のデッキリストには、わずかながらも違いが見受けられる。例えば、ロマオは《王国まといの巨人》をマンフィールドより1枚多く採用しており、その分《時の一掃》を1枚減らしている。《豆の木の巨人》を増やして《樹上の草食獣》を減らしているのも印象的だ。また、マナ基盤やサイドボードにも多少の差異がある。とはいえ、軸となる部分はおおむね共通しており、両者とも同系戦に備えた切り札も用意している。例えば《帰還した王、ケンリス》はゾンビの群れに速攻を与えたり、《豆の木の巨人》にトランプルを与えたり、他にも余ったマナの使い道として優れている。
現時点では、メタゲームを支配している「バント・ゴロス」が「倒すべきデッキ」であることは間違いないだろう。そして幸運にも、このデッキを倒す方法はいくつもある。適切な相互作用と戦略を駆使すれば、「バント・ゴロス」とて劣勢に立たされる可能性はあるのだ。早速、他のアーキタイプも見ていこう。
シミック・食物――16.2%
10 《森》 5 《島》 4 《繁殖池》 4 《神秘の神殿》 1 《ギャレンブリグ城》 -土地(24)- 4 《金のガチョウ》 2 《枝葉族のドルイド》 1 《マラリーフのピクシー》 1 《楽園のドルイド》 4 《探索する獣》 4 《意地悪な狼》 4 《ハイドロイド混成体》 -クリーチャー(20)- |
4 《軽蔑的な一撃》 4 《むかしむかし》 4 《王冠泥棒、オーコ》 4 《世界を揺るがす者、ニッサ》 -呪文(16)- |
4 《大食のハイドラ》 3 《恋煩いの野獣》 2 《夏の帳》 3 《霊気の疾風》 3 《神秘の論争》 -サイドボード(15)- |
このアーキタイプは「シミック・ミッドレンジ」とも呼ばれるが、《金のガチョウ》や《王冠泥棒、オーコ》、《意地悪な狼》といった『エルドレインの王権』で新たに登場した「食物」関連のカードを駆使しているため、ここでは「シミック・食物」と記載する。これらのシナジー満載のカードは、3ターン目まで理想通りに展開できればまず負けないほど強力な動きを見せる。《世界を揺るがす者、ニッサ》から大量のマナを生み出し《ハイドロイド混成体》につなげる動きも、勝利への近道となるだろう。
「シミック・食物」にはさまざまな形が見受けられるが、私としては特に、上記で挙げたリスト――カイ・ブッディ/Kai Budde、アンドリュー・クネオ/Andrew Cuneo、リード・デューク/Reid Duke、ウィリアム・ジェンセン/William Jensen、ガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassif、シャハール・シェンハー/Shahar Shenharが登録したものに注目している。彼らの構築で特に目を引くのが、メインから4枚採用された《軽蔑的な一撃》だ。
《軽蔑的な一撃》は、現在のメタゲームと完璧に噛み合った1枚と言えるだろう。ゲームの形勢を一変させる《不屈の巡礼者、ゴロス》や《時の一掃》を打ち消して、対戦相手が時間を稼ぐのを的確に妨害できる。軽いマナ域に寄せたアグロ・デッキが多くないと予想される環境なら、理想的な回答となるだろう。確かに《時を解す者、テフェリー》が《軽蔑的な一撃》のプレイを妨げるものの、「シミック・食物」は《時を解す者、テフェリー》を打ち倒せる速攻持ちのクリーチャーを十分に備えている。
ゴルガリ・出来事――8.8%
8 《森》 6 《沼》 4 《草むした墓》 4 《疾病の神殿》 2 《寓話の小道》 -土地(24)- 4 《エッジウォールの亭主》 4 《穢れ沼の騎士》 3 《楽園のドルイド》 2 《真夜中の騎士団》 4 《恋煩いの野獣》 4 《残忍な騎士》 3 《探索する獣》 2 《悪ふざけの名人、ランクル》 -クリーチャー(26)- |
2 《軍団の最期》 1 《グレートヘンジ》 2 《採取 // 最終》 3 《アーク弓のレインジャー、ビビアン》 2 《世界を揺るがす者、ニッサ》 -呪文(10)- |
2 《クロールの銛撃ち》 1 《打ち壊すブロントドン》 1 《夜の騎兵》 1 《虐殺少女》 2 《夏の帳》 2 《害悪な掌握》 1 《軍団の最期》 2 《夢を引き裂く者、アショク》 2 《はぐれ影魔道士、ダブリエル》 1 《戦慄衆の将軍、リリアナ》 -サイドボード(15)- |
当初は多くのプレイヤーがリミテッド向けのメカニズムだと想定していた「出来事」は、構築でも十二分に強力であることを証明している。《エッジウォールの亭主》と《恋煩いの野獣》は相性最高の組み合わせであり、《残忍な騎士》は現環境最高の除去の1つだ。
ピオトル・グロゴウスキ/Piotr Głogowskiは、「ゴルガリ・出来事」を手にMPLエルドレイン・スプリットのサファイア・ディビジョン優勝を果たしており(それにより、12月開催の「2019ミシックチャンピオンシップⅦ(MTGアリーナ)」の2日目シード権を獲得した)、今大会にも同じデッキで挑むのは理に適っている。《軍団の最期》は、ゾンビ・トークンに対する最高の回答となるだろう。MPL当時のリストから《暗殺者の戦利品》を抜いて《アーク弓のレインジャー、ビビアン》に変えているものの、全体的な構成は成功を収めた形を維持している。
《幸運のクローバー》は非採用となっているが、これは出来事テーマにそこまで比重を置いておらず、コピーする出来事持ちのカードが十分にないためだ(だからグロゴウスキの構築は出来事をサブテーマに据えた「ゴルガリ・ミッドレンジ」とも言えるだろう)。その分空いた枠には、《悪ふざけの名人、ランクル》のような回避能力持ちの脅威が採用されており、ゾンビ・トークンの群れを飛び越えていける点も見逃せない。一方で瀬尾 武史は《幸運のクローバー》の力を信じ、このアーティファクトと《恋に落ちた剣士》による必殺のドレイン・コンボも搭載した「ゴルガリ・出来事」を本大会に登録している。
バント・ランプ――7.4%
7 《森》 1 《島》 4 《繁殖池》 2 《神秘の神殿》 4 《寺院の庭》 4 《神聖なる泉》 2 《ヴァントレス城》 2 《寓話の小道》 -土地(26)- 4 《金のガチョウ》 2 《樹上の草食獣》 4 《楽園のドルイド》 3 《拘留代理人》 1 《裏切りの工作員》 4 《ハイドロイド混成体》 -クリーチャー(18)- |
4 《むかしむかし》 2 《成長のらせん》 4 《王冠泥棒、オーコ》 2 《時を解す者、テフェリー》 4 《世界を揺るがす者、ニッサ》 -呪文(16)- |
2 《恋煩いの野獣》 3 《意地悪な狼》 2 《狼の友、トルシミール》 2 《夏の帳》 3 《軽蔑的な一撃》 1 《集団強制》 2 《夢を引き裂く者、アショク》 -サイドボード(15)- |
ここ数年、スタンダード環境の大きな発展はチェコ共和国・プラハにある住宅に端を発している――スタニスラフ・ツィフカ/Stanislav Cifkaとオンドレイ・ストラスキー/Ondřej Stráskýが住む家だ。「4色・戦慄衆の指揮」、「バント・風景の変容」、そして「ケシス・コンボ」は、この2人組の手によって発明され、広まっていったのだ。とりわけツィフカは、環境に合わせてデッキを調整し、有効なカードに変える優れた感覚を有している。この2人が(1000人ものミシック・ランクのプレイヤーたちを相手に競う)厳しいMCQWを勝ち抜いて本大会への参加権利を獲得したとき、新たなスタンダード環境で彼らがどんな革新を起こすのか、世界中から注目された。
2人はマーティン・ジュザやグジェゴジェ・コワルスキ/Grzegorz Kowalski、オリバー・ティウ/Oliver Tiuと手を組んで本大会への準備を進めた。彼らが導き出した結論は、3ターン目《世界を揺るがす者、ニッサ》の実現に全力を注いだ「バント・ランプ」だ。《金のガチョウ》と《むかしむかし》4枚に、《樹上の草食獣》2枚、そして2マナのマナ加速要員を複数採用したこのリストは、夢のように爆発的なスタートを驚くほど安定して実現している。「ゲーム後半に《死者の原野》を突破できないなら、より速く動けばいい」という発想は素晴らしい。メインから投入された《裏切りの工作員》は、早ければ4ターン目に《死者の原野》を奪い取り、素早いマナ加速を強力に活かせるだろう。
白をタッチした主な理由は、ゾンビ・トークンの群れに対する最高の回答の1つである《拘留代理人》だ。それを《時を解す者、テフェリー》で手札に戻せば、再びゾンビ・トークンを一掃できる。
このデッキには《金のガチョウ》と《王冠泥棒、オーコ》による食物シナジーは採用されているものの、メインから《意地悪な狼》を採用していない。その点が「バント・食物」との大きな違いだろう。チェコ勢は口を揃えて「デッキには自信がある」と言う――「ゴロス」デッキと十分に渡り合えて、他のあらゆるデッキに対して有利だと。
ゴロス・ファイアーズ――7.4%
1 《平地》 2 《島》 1 《沼》 1 《山》 1 《森》 1 《神聖なる泉》 1 《アゾリウスのギルド門》 1 《寺院の庭》 1 《セレズニアのギルド門》 1 《蒸気孔》 1 《天啓の神殿》 2 《繁殖池》 1 《神秘の神殿》 1 《茨森の滝》 1 《シミックのギルド門》 2 《踏み鳴らされる地》 1 《ボロスのギルド門》 1 《ゴルガリのギルド門》 3 《寓話の小道》 4 《死者の原野》 -土地(28)- 4 《願いのフェイ》 3 《不屈の巡礼者、ゴロス》 2 《帰還した王、ケンリス》 3 《豆の木の巨人》 1 《裏切りの工作員》 3 《ハイドロイド混成体》 -クリーチャー(16)- |
4 《成長のらせん》 3 《轟音のクラリオン》 4 《迂回路》 4 《創案の火》 1 《時の一掃》 -呪文(16)- |
1 《裏切りの工作員》 2 《敬虔な命令》 1 《栄光の好機》 1 《牢獄領域》 1 《漂流自我》 2 《時の一掃》 1 《呼応した呼集》 1 《戦争の犠牲》 1 《次元の浄化》 1 《次元を挙げた祝賀》 1 《王冠泥棒、オーコ》 1 《時を解す者、テフェリー》 1 《龍神、ニコル・ボーラス》 -サイドボード(15)- |
《迂回路》、《不屈の巡礼者、ゴロス》、《死者の原野》と見慣れたカードが並んでいるが、この(ミシックチャンピオンシップ王者オータム・バーチェット/Autumn Burchettなどが登録した)アーキタイプは、「バント・ゴロス」とは大きく異なる動きをする。
赤をタッチすることで手に入れたのが、このデッキの主軸たる《創案の火》だ。実質的に使えるマナの増え方は《荒野の再生》を思い起こさせるが、こちらは色マナの制限もなく、爆発的な動きを実現できる。例えば《創案の火》をプレイしてすぐに《轟音のクラリオン》で盤面を一掃し、続くターンには《願いのフェイ》から《龍神、ニコル・ボーラス》を持ってきて唱えられるのだ。また、サイドボードから《漂流自我》を持ってきて《死者の原野》を指定するのも、極めて効果的だ。
しかも、それらを唱えても土地はすべてアンタップ状態のままなので、《帰還した王、ケンリス》にマナを注ぎ込みさらなるアドバンテージを獲得できるのだ。
グルール・アグロ――5.9%
10 《森》 9 《山》 4 《踏み鳴らされる地》 -土地(23)- 4 《生皮収集家》 4 《ザル=ターのゴブリン》 3 《楽園のドルイド》 2 《クロールの銛撃ち》 4 《砕骨の巨人》 4 《グルールの呪文砕き》 4 《探索する獣》 3 《スカルガンのヘルカイト》 -クリーチャー(28)- |
4 《むかしむかし》 3 《争闘 // 壮大》 2 《エンバレスの宝剣》 -呪文(9)- |
2 《レッドキャップの乱闘》 3 《恋煩いの野獣》 2 《打ち壊すブロントドン》 1 《変容するケラトプス》 2 《ショック》 2 《夏の帳》 3 《ドムリの待ち伏せ》 -サイドボード(15)- |
ゾンビ・トークンの軍団に対して効果的なのは? 回避能力!
世界王者ハビエル・ドミンゲス/Javier Domínguezと3人の挑戦者が選択した「グルール・アグロ」は、回避能力と速攻を持ちあわせた戦略だ。回避能力は《スカルガンのヘルカイト》の飛行や《探索する獣》のブロックされない能力、《グルールの呪文砕き》のトランプルとさまざまだが、どれを引いても2/2のゾンビの軍団に対して効果を発揮するだろう。
《エンバレスの宝剣》と《争闘 // 壮大》のおかげで、このデッキは決定力も凄まじい。残りライフ17点の対戦相手が、4/4のクリーチャーであなたの《探索する獣》をブロックしたとしよう。きっと相手は、まだまだ安全だと思うだろう。 だがその場面で《エンバレスの宝剣》と《壮大》を放てば、《探索する獣》はパワー9の二段攻撃、接死、トランプル持ちとなり、(トランプルと接死の相互作用により)突然、致死量のダメージを与えられるのだ。このデッキが叩き出せるダメージの量は、決して侮れない。
こちらの画像は、使用者数3人以下のアーキタイプをまとめたものだ。残りの20.5%を分析に加えて、スタンダードの競技環境の多様性を見ていこう。
バント・食物――4.4%
6 《森》 1 《平地》 2 《島》 4 《寺院の庭》 4 《繁殖池》 4 《神聖なる泉》 3 《寓話の小道》 -土地(24)- 4 《金のガチョウ》 4 《楽園のドルイド》 2 《枝葉族のドルイド》 4 《拘留代理人》 4 《探索する獣》 4 《意地悪な狼》 4 《ハイドロイド混成体》 -クリーチャー(26)- |
2 《むかしむかし》 4 《王冠泥棒、オーコ》 4 《世界を揺るがす者、ニッサ》 -呪文(10)- |
1 《秋の騎士》 1 《狼の友、トルシミール》 1 《大食のハイドラ》 2 《夏の帳》 4 《軽蔑的な一撃》 3 《霊気の疾風》 2 《ガラスの棺》 1 《否認》 -サイドボード(15)- |
このデッキは「バント・ランプ」とかなり似通った構成だが、主な違いとしては3ターン目《世界を揺るがす者、ニッサ》には全力を注がず、メインから《意地悪な狼》を採用するなど食物関連のシナジーを重視していることが挙げられる。この形を使用しているのは、マルシオ・カルヴァリョ/Márcio Carvalho、ジェシカ・エステファン/Jessica Estephan、アンドレア・メングッチ/Andrea Mengucciの3名だ。
マルドゥ・騎士――4.4%
2 《山》 1 《平地》 2 《沼》 4 《聖なる鋳造所》 4 《血の墓所》 4 《神無き祭殿》 4 《試合場》 3 《寓話の小道》 -土地(24)- 4 《熱烈な勇者》 4 《漆黒軍の騎士》 4 《尊い騎士》 4 《イタチ乗りのレッドキャップ》 4 《黒槍の模範》 4 《鼓舞する古参》 4 《評判高い挑戦者》 3 《真夜中の死神》 -クリーチャー(31)- |
1 《軍団の最期》 1 《祖先の象徴》 3 《エンバレスの宝剣》 -呪文(5)- |
3 《朽ちゆくレギサウルス》 4 《死霊の金切り声》 3 《害悪な掌握》 1 《軍団の最期》 2 《地盤の裂け目》 2 《復讐に燃えた血王、ソリン》 -サイドボード(15)- |
「バント・ゴロス」を倒すのに最も有効な手段の1つは、軸を変えて攻め立てることであり、このデッキはその思想をさらに先鋭化させたものだ。燃え上がるほどの速度で攻める必要に迫られた結果、「大量の」1マナ域を投入するに至ったのだ。《試合場》のおかげでこのデッキは3色の1マナの騎士を採用でき、極めて素早く攻め手を展開できる。
エリック・フローリッヒとともに上記のリストを選択したベン・スターク/Ben Starkは、《イタチ乗りのレッドキャップ》も採用することで1マナ域の枚数を16枚まで増やしている! なおスタークはMPLコア・スプリットのディビジョン優勝者であるため、すでに本大会の2日目進出を決めている。正直に言って、《イタチ乗りのレッドキャップ》が構築の競技イベントで2日目に進出するカードだとは思っていなかったが、《鼓舞する古参》や《評判高い挑戦者》を活かせるクリーチャー・タイプを持っている点は一考に値するだろう。
サイドボードからは、《地盤の裂け目》の採用を見事なテクニックとして取り挙げたい。これは《死者の原野》を破壊できるだけでなく、立ち並ぶゾンビによるブロックを1ターン無効化する優れものだ。
他に目を引くサイドカードとしては、《エンバレスの宝剣》を装備させれば止めようがない脅威に変わる《朽ちゆくレギサウルス》が挙げられるだろう。行弘 賢が提出した「マルドゥ・騎士」ではメインから《朽ちゆくレギサウルス》と《エンバレスの宝剣》が4枚ずつ採用されており、この破壊的なコンボに信頼を置いていることが伺える。
セレズニア・出来事――4.4%
8 《森》 8 《平地》 4 《寺院の庭》 1 《アーデンベイル城》 -土地(21)- 4 《エッジウォールの亭主》 4 《フェアリーの導母》 4 《巨人落とし》 2 《亜麻色の侵入者》 3 《群れの番人》 4 《恋煩いの野獣》 4 《探索する獣》 4 《敬慕されるロクソドン》 -クリーチャー(29)- |
4 《むかしむかし》 2 《不敗の陣形》 3 《開花 // 華麗》 1 《黒き剣のギデオン》 -呪文(10)- |
2 《秋の騎士》 2 《夏の帳》 2 《浄光の使徒》 2 《敬虔な命令》 2 《ガラスの棺》 2 《議事会の裁き》 2 《大集団の行進》 1 《黒き剣のギデオン》 -サイドボード(15)- |
(マーク・ドナルドソン/Mark Donaldson、クリスティアン・ハウク/Christian Hauck、ステファン・シュワルツ/Stephan Schwarzの3名が選択した)「セレズニア・出来事」は、《エッジウォールの亭主》と《フェアリーの導母》の組み合わせが目を引くデッキだ。攻めの速度を上げるためにかなりの数の1マナ域を採用しており、さらにメインデッキでは《大集団の行進》ではなく《探索する獣》を優先している。
上記のリストでは(《恋煩いの野獣》の出来事《切なる想い》を含めて)18枚もの1マナ域を採用しているため、《敬慕されるロクソドン》を3ターン目に安定して「召集」でき、かなり早い段階で強力な戦線を築けるだろう。盤面が膠着したら、《安全への導き》で《敬慕されるロクソドン》を手札に戻し、さらに+1/+1カウンターを置いていく。あるいは《フェイの贈り物》で《恋煩いの野獣》に飛行を与えて空から攻めれば、対戦相手がどれだけ多くのゾンビ・トークンを並べても問題ないだろう。
4色ゴロス――1.5%
1 《平地》 1 《島》 1 《山》 2 《森》 2 《神聖なる泉》 1 《平穏な入り江》 2 《寺院の庭》 1 《花咲く砂地》 1 《セレズニアのギルド門》 2 《繁殖池》 1 《神秘の神殿》 1 《シミックのギルド門》 1 《ボロスのギルド門》 1 《グルールのギルド門》 1 《イゼットのギルド門》 1 《ゴルガリのギルド門》 1 《疾病の神殿》 1 《ヴァントレス城》 2 《寓話の小道》 4 《死者の原野》 -土地(28)- 3 《樹上の草食獣》 4 《不屈の巡礼者、ゴロス》 1 《帰還した王、ケンリス》 2 《王国まといの巨人》 1 《裏切りの工作員》 4 《ハイドロイド混成体》 -クリーチャー(15)- |
4 《成長のらせん》 4 《むかしむかし》 2 《轟音のクラリオン》 4 《迂回路》 3 《王冠泥棒、オーコ》 -呪文(17)- |
1 《拘留代理人》 1 《秋の騎士》 1 《狼の友、トルシミール》 1 《裏切りの工作員》 1 《夏の帳》 3 《敬虔な命令》 2 《牢獄領域》 1 《時の一掃》 1 《次元の浄化》 3 《夢を引き裂く者、アショク》 -サイドボード(15)- |
ケンジ・エガシラ/Kenji Egashiraのリストは、本大会を支配する「バント・ゴロス」から少し離れた形で、《轟音のクラリオン》の採用と3枚入っている《王冠泥棒、オーコ》が特徴的だ。
サイドボードには《夢を引き裂く者、アショク》の姿が3枚見受けられ、彼が他の《死者の原野》デッキにしっかり備えてきていることが伺える。《夢を引き裂く者、アショク》1枚で《不屈の巡礼者、ゴロス》、《迂回路》、《肥沃な足跡》の機能を阻害でき、「土地を持ってくる」という重要な動きを止められるのだ。
ジェスカイ・ファイアーズ――1.5%
2 《島》 2 《山》 1 《平地》 4 《蒸気孔》 3 《天啓の神殿》 3 《聖なる鋳造所》 1 《凱旋の神殿》 4 《神聖なる泉》 1 《ヴァントレス城》 2 《寓話の小道》 4 《次元間の標》 -土地(27)- 4 《願いのフェイ》 2 《帰還した王、ケンリス》 -クリーチャー(6)- |
3 《可能性の揺らぎ》 4 《轟音のクラリオン》 1 《牢獄領域》 4 《創案の火》 1 《抽象からの抽出》 2 《時の一掃》 4 《覆いを割く者、ナーセット》 4 《時を解す者、テフェリー》 3 《主無き者、サルカン》 1 《人知を超えるもの、ウギン》 -呪文(27)- |
1 《古呪》 1 《栄光の好機》 1 《真実の愛の口づけ》 1 《永遠神の投入》 1 《時の一掃》 1 《戦争の犠牲》 1 《戦慄衆の指揮》 1 《集団強制》 1 《次元の浄化》 1 《有事の力》 2 《夢を引き裂く者、アショク》 1 《龍神、ニコル・ボーラス》 1 《主無き者、サルカン》 1 《目覚めた猛火、チャンドラ》 -サイドボード(15)- |
《死者の原野》(や《願いのフェイ》、《帰還した王、ケンリス》)と組み合わせた《創案の火》の力については先ほど取り挙げたが、このエンチャントは「ジェスカイ・コントロール」の形でも完璧に機能する。ジェスカイにする利点の1つは、そのマナ基盤のおかげで《覆いを割く者、ナーセット》と《抽象からの抽出》を採用できることにあり、ガス欠にならず《創案の火》による呪文の連打を続けられる。
《主無き者、サルカン》もまた、ジェスカイのマナ基盤にぴったり合う1枚で、「バント・ゴロス」にとってかなりの脅威となる。他のプレインズウォーカーとともに使うことで、ゾンビ・トークンやソーサリーの全体除去では止められない高速のクロックを形成できるのだ。
最後にもう1つ、特筆すべきことを挙げよう。「ジェスカイ」でもサイドボードから《戦争の犠牲》を持ってきて、緑や黒マナが出る土地を1枚もコントロールすることなく唱えるのは本当に驚くべきことだ。《創案の火》は、クールなアイデアを必ず実現してくれるカードなのだ。
ジャンド・ミッドレンジ――1.5%
1 《沼》 3 《山》 4 《森》 4 《血の墓所》 4 《草むした墓》 4 《踏み鳴らされる地》 4 《寓話の小道》 -土地(24)- 4 《成長室の守護者》 4 《リックス・マーディの歓楽者》 4 《砕骨の巨人》 4 《グルールの呪文砕き》 4 《朽ちゆくレギサウルス》 4 《探索する獣》 1 《変容するケラトプス》 4 《スカルガンのヘルカイト》 -クリーチャー(29)- |
1 《軍団の最期》 3 《争闘 // 壮大》 3 《エンバレスの宝剣》 -呪文(7)- |
3 《軍勢の戦親分》 3 《強迫》 2 《夏の帳》 3 《溶岩コイル》 3 《害悪な掌握》 1 《軍団の最期》 -サイドボード(15)- |
これは、《朽ちゆくレギサウルス》か《探索する獣》と《エンバレスの宝剣》を組み合わせることをテーマに据えたデッキだと見受けられ、私にはカレブ・ダーワード/Caleb Durwardがなぜその道を選んだのか想像することはできる。先ほどから何度か述べた通り、「バント・ゴロス」に正面から挑んで乗り越えることはできないが、軸を変えることはできる。巨大な二段攻撃持ちを作り上げてすぐにゲームを終わらせるというプランは、とりわけインスタント除去を持たない「バント・ゴロス」に対してこの上なく効果的だ。
ダーワードのリストは1マナ域に欠け、2マナ域もゲーム中盤にカード・アドバンテージを得ることを考慮して採用されたものだ。そのため「グルール・アグロ」並みの速度はないものの、見誤ってはいけない。速攻に回避能力、強化呪文……このデッキは強打に満ちている。
赤単行進――1.5%
18 《山》 3 《エンバレス城》 -土地(21)- 4 《熱烈な勇者》 4 《焦がし吐き》 4 《ブリキ通りの身かわし》 4 《リムロックの騎士》 4 《遁走する蒸気族》 4 《砕骨の巨人》 4 《朱地洞の族長、トーブラン》 -クリーチャー(28)- |
4 《災厄の行進》 4 《舞台照らし》 3 《無頼な扇動者、ティボルト》 -呪文(11)- |
4 《軍勢の戦親分》 4 《ショック》 4 《溶岩コイル》 3 《実験の狂乱》 -サイドボード(15)- |
本大会で赤単を使用するのは、リー・シー・ティエン/Lee Shi Tianただ1人だった。赤単はもっといるだろうと予想していた私にとっては、少々驚きの結果だ。しかしながら、リーはMPLコア・スプリットのディビジョン優勝を果たしているため、すでに2日目進出を決めている。
『エルドレインの王権』で、《災厄の行進》から3点ものダメージを生み出し得る《朱地洞の族長、トーブラン》という新戦力を得たのは大きい。これにより、現在のメタゲームで理想とされる「高速で相手を倒す」戦略が実現できている。「バント・ゴロス」側としては、ゾンビによる大軍団を築き上げるためにできるだけゲームを引き伸ばしたいところだが、超アグレッシブな赤アグロ戦略はたやすくその目論見をすり抜けていく。
リーのリストで目を引くのは、メインに火力呪文が採用されていない点だろう。《ショック》も《殺戮の火》も、《批判家刺殺》も入っていない。その代わりに、繰り返しダメージを与えられるものを詰め込んでいるのだ。この発想は、「バント・ゴロス」が支配しているため焼き払いたいクリーチャーがいない環境において、有効な選択に見える。たしかに《恋煩いの野獣》や《探索する獣》に対しては有利を取れないが、「赤単行進」デッキが「バント・ゴロス」に対してこの上なく好相性であることは間違いないだろう。リーの本大会でのさらなる活躍に期待したい。
ラクドス・サクリファイス――1.5%
8 《沼》 6 《山》 4 《血の墓所》 2 《ロークスワイン城》 4 《寓話の小道》 -土地(24)- 4 《大釜の使い魔》 3 《どぶ骨》 3 《漆黒軍の騎士》 2 《忘れられた神々の僧侶》 4 《波乱の悪魔》 4 《真夜中の死神》 2 《災いの歌姫、ジュディス》 -クリーチャー(22)- |
4 《初子さらい》 4 《魔女のかまど》 3 《アングラスの暴力》 1 《軍団の最期》 1 《魔性》 1 《炎の侍祭、チャンドラ》 -呪文(14)- |
1 《悪ふざけの名人、ランクル》 4 《強迫》 3 《害悪な掌握》 1 《軍団の最期》 2 《炎の一掃》 2 《恐怖の劇場》 1 《魔性》 1 《炎の侍祭、チャンドラ》 -サイドボード(15)- |
最後に、私の個人的なお気に入りデッキを紹介しよう。「バント・ゴロス」との相性はわからないが、このデッキに詰まったあらゆるコンボにはクラクラするほどの魅力を感じる。
《魔女のかまど》か《忘れられた神々の僧侶》と《初子さらい》? いいね。
それらで楽しんでいるうちに、《真夜中の死神》は追加のカードをもたらし、《波乱の悪魔》は1点を飛ばしまくる。《波乱の悪魔》の能力は、対戦相手が何かを生け贄に捧げても誘発するため、相手が食物・トークンや《寓話の小道》を起動するとダメージを与えられるのだ。
私はこのデッキの動きすべてが好きだ。ミゲル・ダ・クルス・シモエンス/Miguel da Cruz Simõesが、私たちを含めたデッキ職人を先導してくれることを願っている。
結論
こうして、『エルドレインの王権』導入後のスタンダード環境は定まった。果たして強力無比な「バント・ゴロス」が日曜日の舞台も支配するのか、それとも果敢に挑んだプレイヤーたちが勝利を手にするのか? 私の見解を述べるなら、「バント・ゴロス」は倒せるデッキだと考えている。超高速戦略や有効な回避能力持ちの脅威、あるいは適切な相互作用を用意してきた選手たちは、きっと報われることだろう。
だがそれは、現時点では推測に過ぎない――この戦いの結末を見るのが待ちきれない。14の異なるアーキタイプと68人の勇士が激突する2019ミシックチャンピオンシップⅤ(MTGアリーナ)は、素晴らしいショーになるだろう。アメリカ・ロングビーチを舞台に勇躍するデッキ同士の対決は、10月18日午前9時(PDT)より twitch.tv/magic にて生放送でお届けする。お見逃しなく!
(Tr. Tetsuya Yabuki)
2019ミシックチャンピオンシップⅤ(MTGアリーナ) 日本語生放送 日程・放送時間・放送ページ
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
RANKING ランキング
NEWEST 最新の記事
-
2024.11.12観戦記事
The Week That Was: 熱烈な勇者の帰還|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.27観戦記事
第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権 決勝戦|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.26トピック
第30回マジック世界選手権 トップ8プロフィールとデッキリスト|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.26観戦記事
Magic World Championship 30 Day Two Highlights|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.25観戦記事
Magic World Championship 30 Day One Highlights|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.25戦略記事
The Spiciest Decklists of Magic World Championship 30|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権