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2019ミシックチャンピオンシップⅣ(バルセロナ)

戦略記事

2019ミシックチャンピオンシップⅣ(バルセロナ) 初日メタゲームブレイクダウン

Frank Karsten
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2019年7月26日

 

 イーライ・ラヴマン/Eli Lovemanが制したミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019からまだ数か月ほどしか経っていないが、モダンのメタゲームは大きな変化を遂げている。

 『灯争大戦』と『モダンホライゾン』の導入はモダン史上かつてないほどの影響を与え、『基本セット2020』でもいくつか優れたカードが環境に加わった。その上、わずか数週間前に《黄泉からの橋》が禁止されたばかりだ。こういった環境の激変を受けて、ここバルセロナに集ったプレイヤーたちのモダンのデッキ選択はどのようになったのか?

アーキタイプ 使用者数 使用率
ホガーク 98 21.4%
イゼット・フェニックス 48 10.5%
エルドラージ・トロン 42 9.2%
人間 38 8.3%
白青コントロール 38 8.3%
ジャンド 36 7.9%
トロン 19 4.2%
ウルザ・ソプターソード 19 4.2%
バーン 18 3.9%
ドレッジ 17 3.7%
赤単フェニックス 10 2.2%
ホガーク・ドレッジ 7 1.5%
赤緑ヴァラクート 6 1.3%
ネオブランド 5 1.1%
鱗親和 4 0.9%
ボーグルズ 3 0.7%
「純鋼の聖騎士」コンボ 3 0.7%
虚ろな者 3 0.7%
マルドゥ・パイロマンサー 3 0.7%
スノーシフト 3 0.7%
The Rock 3 0.7%
その他 34 7.4%

「ホガーク」が圧倒的な勢力を築く

 

 《黄泉からの橋》がなくとも、《甦る死滅都市、ホガーク》は依然としてこのカードを中心にデッキを構築できるほど極めて強力な1枚であり続けている。以下のような展開を思い浮かべてみてほしい。

 これは出来過ぎというものだが、それでも多くのプレイヤーがこのデッキを選択した理由が垣間見えるだろう。21.4%という使用率は、モダンにおいては信じられないほど高い数字だ。しかも、これには(《甦る死滅都市、ホガーク》を1枚採用することがある)「ドレッジ」や「ホガーク・ドレッジ」(《甦る死滅都市、ホガーク》3枚と《縫い師への供給者》4枚を採用した形)が含まれていないのだ。《甦る死滅都市、ホガーク》は、間違いなく今大会の最注目カードであろう。

 サンプルリストとして、ある参加者のメイン・デッキのみを以下に掲載する。

「ホガーク」サンプルリスト
2019ミシックチャンピオンシップⅣ(バルセロナ) / モダン[MO] [ARENA]
3 《黒割れの崖
3 《血染めのぬかるみ
3 《汚染された三角州
3 《新緑の地下墓地
2 《血の墓所
2 《宝石鉱山
2 《草むした墓
1 《
-土地(19)-

4 《屍肉喰らい
4 《墓所這い
4 《縫い師への供給者
3 《傲慢な新生子
4 《恐血鬼
4 《サテュロスの道探し
3 《ゴルガリの凶漢
4 《復讐蔦
4 《甦る死滅都市、ホガーク
-クリーチャー(34)-
4 《信仰無き物あさり
3 《稲妻の斧
-呪文(7)-

 4枚採用されているカードは大半の使用者に共通しており、デッキの核となっている。その一方で、残りの枠をどのように埋めるかについてはさまざまな意思が見受けられた。上記のサンプルリストでは《傲慢な新生子》や《稲妻の斧》、《ゴルガリの凶漢》を採用しているが、《墓所破り》や《ロッテスのトロール》、《叫び角笛》、《狂気の祭壇》、《面晶体のカニ》といった墓地を肥やすカードを採用するデッキもあれば、《致命的な一押し》や《暗殺者の戦利品》、《虚空の力線》といった干渉手段を採用する形もあった。

 しかし最適な構築が共通見解を得ていないとはいえ、《甦る死滅都市、ホガーク》や《復讐蔦》、《恐血鬼》をコストなしに戦場へ戻す戦略が強力であることは、今大会の参加者の多くが認めているということだ。

「イゼット・フェニックス」が2番手につく

 

 変わるものもあれば変わらないものもある。数か月前のミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019では、「イゼット・フェニックス」が2番手の勢力を占めた。そしてこの週末も、それは変わらなかった。

 サンプルリストとして、ある参加者のメイン・デッキのみを以下に掲載する。

「イゼット・フェニックス」サンプルリスト
2019ミシックチャンピオンシップⅣ(バルセロナ) / モダン[MO] [ARENA]
4 《沸騰する小湖
4 《尖塔断の運河
3 《
2 《
2 《蒸気孔
1 《焦熱島嶼域
1 《溢れかえる岸辺
1 《汚染された三角州
-土地(18)-

4 《氷の中の存在
4 《弧光のフェニックス
-クリーチャー(8)-
4 《信仰無き物あさり
4 《稲妻
4 《血清の幻視
4 《手練
4 《思考掃き
3 《外科的摘出
1 《炎の斬りつけ
1 《溶岩の投げ矢
4 《魔力変
2 《紅蓮術士の昇天
1 《炎のアリア
1 《約束の終焉
1 《マグマの陥没孔
-呪文(34)-

 このデッキにもいくらかのアップグレードが行われている。《炎のアリア》は、クリーチャー除去や墓地対策カードを回避できる勝ち手段だ。《約束の終焉》も、これ1枚で《弧光のフェニックス》を戦場に戻せる強力な追加戦力となっている。《溶岩の投げ矢》や《マグマの陥没孔》といった1枚挿しのカードも、ドロー呪文満載のこのデッキなら容易に引き込めるだろう。

 このデッキの核を成しているものは変わらず、ドロー呪文の数々だ。それらは《氷の中の存在》や《弧光のフェニックス》を探し出し、その能力を活かし、ライブラリーを掘り進め、さまざまな形でこのデッキを支えている。変わらないものもあるのだ。

「エルドラージ・トロン」が3番手に

 

 ミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019では「トロン」デッキが最多勢力を誇り、またさまざまな色の「エルドラージ」デッキが存在した。今大会、「2019ミシックチャンピオンシップⅣ(バルセロナ)」では、ほとんどの「トロン」や「エルドラージ」使用者が「エルドラージ・トロン」を手にしたようだ。

 サンプルリストとして、ある参加者のメイン・デッキのみを以下に掲載する。

「エルドラージ・トロン」サンプルリスト
2019ミシックチャンピオンシップⅣ(バルセロナ) / モダン[MO] [ARENA]
4 《エルドラージの寺院
4 《ウルザの鉱山
4 《ウルザの魔力炉
4 《ウルザの塔
3 《爆発域
2 《荒地
1 《魂の洞窟
1 《幽霊街
1 《海門の残骸
-土地(24)-

3 《歩行バリスタ
4 《作り変えるもの
4 《難題の予見者
4 《現実を砕くもの
2 《終末を招くもの
-クリーチャー(17)-
4 《探検の地図
4 《虚空の杯
2 《精神石
3 《四肢切断
4 《大いなる創造者、カーン
2 《全ては塵
-呪文(19)-

 「エルドラージ・トロン」の隆盛を支えるのは、『灯争大戦』でモダンに最も大きな影響を与えたであろう1枚、《大いなる創造者、カーン》だ。8/8トランプルのあのカードを止められる《罠の橋》をもたらしてくれるのも強力だが、《大いなる創造者、カーン》の真価は《ウルザの鉱山》、《ウルザの魔力炉》、《ウルザの塔》でマナを加速してからの《マイコシンスの格子》という動きや、《作り変えるもの》や《難題の予見者》といったプレインズウォーカーを守るブロッカーがいるときにこそ発揮されるのだ。

それでも7.5%を占める「その他」

 「その他」の分類には、以下のようにさまざまなデッキが詰まっている。

  • バント・氷雪カンパニー:2人
  • 献身の侍臣:2人
  • エスパー・コントロール:2人
  • ゴブリン:2人
  • ジェスカイ・コントロール:2人
  • マルドゥ・「死の影」:2人
  • マーフォーク:2人
  • アブザン・「死の影」:1人
  • 親和:1人
  • アミュレット・タイタン:1人
  • バント・氷雪:1人
  • 献身の豊穣:1人
  • 献身の新生化:1人
  • 4色氷雪:1人
  • グリショールブランド:1人
  • ホロウホガーク:1人
  • 感染:1人
  • イゼット・ウィザード:1人
  • ジェスカイ・追加ターン:1人
  • 赤単「ケルドの炎」:1人
  • ラクドス・エレメンタル:1人
  • 赤エルドラージ:1人
  • ストーム:1人
  • ウルヴェンワルド横断》搭載型「死の影」:1人
  • 予想外のエムラクール:1人
  • 白青探索:1人
  • 唸りプリズン:1人

 今大会も刺激に満ちたものになっている。全参加者のデッキリスト(現時点ではサイドボードの枚数を伏せてある)は、こちらだ。(編訳注:リンク先は英語。デッキリストの翻訳は後日掲載いたします。)

最も多く採用されているカードは――《虚空の力線

 (メインとサイドを合わせて)全デッキから集計した、最も多く採用されている土地でないカードの上位8枚は以下の通りだ。

カード名 総採用枚数 メイン・デッキ採用枚数 サイドボード採用枚数
虚空の力線 836 73 763
信仰無き物あさり 747 747 0
思考囲い 497 118 379
恐血鬼 496 496 0
稲妻 478 471 7
甦る死滅都市、ホガーク 422 422 0
縫い師への供給者 416 416 0
復讐蔦 388 388 0

 全体で最も多く採用されたカードが《虚空の力線》であることから、今大会の参加者たちは《甦る死滅都市、ホガーク》の脅威に備えて来ているようだ。メイン・デッキからの採用枚数も無視できる数字ではなく、「ホガーク」デッキへの警戒の強さを物語っている。全カードの採用ランキングは後日掲載予定だが、最も多くサイドボードに採用されたカードが《安らかなる眠り》と《墓掘りの檻》であることはここで述べておこう。

 さて、果たしてこれで十分なのだろうか? 「ホガーク」デッキを打ち倒すには、墓地対策カードが何枚必要なのか? 少なくともある程度は備えて来たデッキたちは、どのような活躍を見せてくれるのか? 「ホガーク」以外の78.6%から飛び抜けるデッキは出てくるのか?

 2日目進出デッキの分析は明日お届けするのでお楽しみに。そしてもちろん、twitch.tv/Magicでの生放送もお見逃しなく!

 

(Tr. Tetsuya Yabuki)

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RESULTS

対戦結果 順位
最終
16 16
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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