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戦略記事

津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ

津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ 新デッキの隆盛と変遷

津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ 新デッキの隆盛と変遷

 こんにちは!

 『タルキール龍紀伝』の発売まで2週間あまりとなりましたが、スタンダード環境はここにきて新デッキの活躍が目立っています。今週は2月21~22日に開催された「グランプリ・メンフィス2015」と、3月7~8日に開催された「グランプリ・マイアミ2015」のトップ8デッキを追いかけていきたいと思います。(各リンク先はの英語イベントカバレージとなります)

 まずは、「グランプリ・メンフィス2015」からご覧ください。

「グランプリ・メンフィス2015」(2月21~22日開催) トップ8

  • 優勝・「スゥルタイ・コントロール」
  • 準優勝・「赤白ビートダウン」
  • 3位・「アブザン・コントロール」
  • 4位・「アブザン・コントロール」
  • 5位・「アブザン・コントロール」
  • 6位・「アブザン・コントロール」
  • 7位・「アブザン・コントロール」
  • 8位・「赤白ビートダウン」

「アブザン・コントロール」の海

 「グランプリ・メンフィス2015」を勝ち上がったアーキタイプは、わずか3種類のみでした。その原因は、5名ものプレイヤーをトップ8に送り込んだ「アブザン・コントロール」の大躍進です。2日目のデッキ分布(「Day 2 Metagame Breakdown」記事より)を見てみると、「アブザン・コントロール」を選んだプレイヤーは合計で10名しかいませんが、その半数がトップ8に進出しているのですから、このアーキタイプがいかに強力だったかが伺えます。

 他に活躍が目立ったデッキとしては、「赤白ビートダウン」が挙げられます。前回ご紹介したときよりも、その存在感を増しており、今では押しも押されぬスタンダードを代表するデッキとなりました。2日目進出率が最も高かったデッキというデータ(上記記事)も、それを裏付けています。

 今回は、その「赤白ビートダウン」から見ていきましょう。

「赤白ビートダウン」

Ben Stark - 「赤白ビートダウン」
グランプリ・メンフィス2015・準優勝 / スタンダード[MO] [ARENA]
9 《
4 《平地
4 《戦場の鍛冶場
4 《凱旋の神殿
3 《進化する未開地

-土地(24)-

4 《道の探求者
4 《魂火の大導師
4 《ゴブリンの熟練扇動者

-クリーチャー(12)-
4 《軍族童の突発
4 《岩への繋ぎ止め
4 《乱撃斬
3 《稲妻の一撃
1 《勇敢な姿勢
4 《前哨地の包囲
4 《かき立てる炎

-呪文(24)-
3 《嵐の息吹のドラゴン
3 《消去
3 《見えざるものの熟達
2 《勇敢な姿勢
2 《弧状の稲妻
2 《龍語りのサルカン

-サイドボード(15)-

 殿堂顕彰者であるBen Starkが使用したのは、メインから4枚もの《前哨地の包囲》が採用された画期的なリストでした。メインデッキから《嵐の息吹のドラゴン》を抜いてしまい、デッキ全体のマナカーブを低く抑えることで、このアーキタイプ最大の強みであった「手数の多さ」にさらに磨きがかかっています。

デッキの強み

 このリストの長所は、前述の通り手数の多さです。

 一般的には1~2枚程度しか採用されない《魂火の大導師》、そして《乱撃斬》までもが4枚採用されたこのリストは、序盤から中盤戦において無類の強さを誇ります。そして《前哨地の包囲》があれば決して息切れすることなく、そのまま対戦相手を圧倒してしまえるという算段です。

デッキの課題

 その反面で弱点はというと、1枚1枚のカードパワーに難があることです。

 マナカーブが低いということは、手数を多くできるメリットがある一方で、カードパワーが下がってしまうデメリットがあります。このデッキは《前哨地の包囲》を4枚採用することでそれを補っていますが、《前哨地の包囲》を引けない、または破壊されてしまった際に、その弱点が浮き彫りになってしまいます。《前哨地の包囲》がこれほどまでに流行った影響で、「エンチャント」対策カードを見かける機会も増えていますし、サイドボードには《嵐の息吹のドラゴン》や《龍語りのサルカン》、または《紅蓮の達人チャンドラ》のような「1枚でゲームを決めうるカード」を多めに採用しておくといいでしょう。

デッキの注目カード

 サイドボードに採用された《見えざるものの熟達》は、「青黒コントロール」に対するマスターピースです。

 設置マナが2マナと軽いので、打ち消し呪文を容易にかいくぐり、「予示」クリーチャーが《精霊龍、ウギン》の[-X]に強い点も評価できます。「青黒コントロール」の《危険な櫃》が減ってきた今だからこそ、《見えざるものの熟達》であったり、《研磨時計》といったカードは明確に「青黒コントロール」対策として機能します。


「アブザン・コントロール」

Brad Nelson - 「アブザン・コントロール」
グランプリ・メンフィス2015 3位 / スタンダード[MO] [ARENA]
2 《
2 《平地
4 《吹きさらしの荒野
4 《砂草原の城塞
3 《ラノワールの荒原
4 《疾病の神殿
2 《コイロスの洞窟
4 《静寂の神殿
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ

-土地(26)-

4 《クルフィックスの狩猟者
4 《包囲サイ
2 《黄金牙、タシグル

-クリーチャー(10)-
4 《思考囲い
3 《胆汁病
4 《アブザンの魔除け
4 《英雄の破滅
2 《骨読み
1 《完全なる終わり
2 《対立の終結
1 《残忍な切断
3 《太陽の勇者、エルズペス

-呪文(24)-
4 《羊毛鬣のライオン
1 《消去
3 《異端の輝き
3 《悲哀まみれ
1 《骨読み
1 《対立の終結
2 《真面目な訪問者、ソリン

-サイドボード(15)-

 今大会の台風の目となった「アブザン・コントロール」。その勝率には目をみはるものがありますが、このデッキが勝ち組となった背景には一体何があったのでしょうか?

デッキの強み

 このデッキは、「赤白ビートダウン」と「緑単信心」が多いメタゲームを的確に掴んで持ち込まれたデッキです。

 デッキリストをご覧いただければお分かりのように、中速のデッキに対して無駄なカードはほとんど採用されていませんし、メインから搭載された《対立の終結》は、このデッキの狙いを明確に表現しています。

デッキの課題

 このデッキが苦手とするのは、初速に特化したデッキ、または長期戦に強いデッキです。

 具体的なデッキとしては、「赤単アグロ」や「青黒コントロール」が挙げられます。前者に対しては単純に軽いカードが少なく、後者に対しては除去カードが無駄になりやすいうえに、《ジェイスの創意》や《時を越えた探索》のようなアドバンテージ獲得手段が明確な差となって現れます。

デッキの注目カード

 《羊毛鬣のライオン》はそれらのマッチアップの相性を改善してくれる1枚です。

 ビートダウンに対しては優秀な壁として、コントロールに対しては攻撃手段として輝きます。この大会以降は、「サイドボードに《羊毛鬣のライオン》」という戦略は広く知られるようになりましたが、「アブザン・コントロール」プレイヤーが《羊毛鬣のライオン》をサイドインしてくるかどうかは実際に試合を始めるまで分かりませんし、《羊毛鬣のライオン》以外に効果のない《胆汁病》や《稲妻の一撃》をサイド後に残したくないので、この戦略は今でも十分に通用します。


「スゥルタイ・コントロール」

Jack Fogle - 「スゥルタイ・コントロール」
グランプリ・メンフィス2015 優勝 / スタンダード[MO] [ARENA]
3 《
2 《
4 《汚染された三角州
4 《華やかな宮殿
2 《欺瞞の神殿
2 《ラノワールの荒原
4 《疾病の神殿
2 《ヤヴィマヤの沿岸
1 《神秘の神殿
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ

-土地(25)-

4 《サテュロスの道探し

-クリーチャー(4)-
3 《思考囲い
4 《胆汁病
2 《軽蔑的な一撃
4 《英雄の破滅
3 《スゥルタイの魔除け
2 《命運の核心
1 《残忍な切断
1 《宝船の巡航
4 《時を越えた探索
2 《悪夢の織り手、アショク
2 《荒ぶる波濤、キオーラ
2 《精霊龍、ウギン
1 《頂点捕食者、ガラク

-呪文(31)-
3 《ラクシャーサの死与え
2 《黄金牙、タシグル
2 《軽蔑的な一撃
2 《否認
2 《ファリカの療法
2 《悲哀まみれ
1 《信者の沈黙
1 《リリアナ・ヴェス

-サイドボード(15)-

 「グランプリ・メンフィス2015」を制したのは、長期戦に特化した「スゥルタイ・コントロール」でした。

デッキの強み

 「スゥルタイ・コントロール」は、長期戦でこれ以上ないほどの強さを発揮します。

 《悪夢の織り手、アショク》、《荒ぶる波濤、キオーラ》、《頂点捕食者、ガラク》、《精霊龍、ウギン》といった豪華絢爛な「プレインズウォーカー」たちは、いかに環境に《英雄の破滅》があるといえど、容易に対処できる軍勢ではありません。

 また、緑を足したことで採用が可能になった《サテュロスの道探し》は、見た目以上に多くの役割をこなしてくれます。土地を供給してくれる能力は3色デッキにとって重要ですし、ほかにも身を挺して「プレインズウォーカー」を守ってくれたり、「探査」用の燃料供給まで賄ってくれます。『タルキール龍紀伝』では「濫用」という新キーワード能力が登場していますが、《サテュロスの道探し》がこれ以上に強くなると思うと恐ろしいですね。

 3色にしたことで受けられるもうひとつの恩恵が、《スゥルタイの魔除け》です。ご存知の通り、現環境には《見えざるものの熟達》や《前哨地の包囲》を中心に危険な「エンチャント」が増えてきているので、それを容易に対処できるのは「青黒コントロール」との大きな違いですね。

デッキの課題

 このデッキの課題としては、長期戦に強い構成であるゆえに序盤の攻防に難があることです。

 デッキ全体に含まれた大量の「タップイン・ランド」とマナ・コストの重いカードは、長期戦では大きな武器となりますが、ビートダウンデッキに対しては大きな足枷となります。そのため、サイドボードにはビートダウンデッキ対策と思われるカードが含まれていますが、「赤単アグロ」の台頭が目立ってきた今ならば、《ファリカの療法》の増量を検討してもいいと思います。

デッキの注目カード

 「アブザン・コントロール」の《羊毛鬣のライオン》よろしく、このデッキも《ラクシャーサの死与え》と《黄金牙、タシグル》による「オフェンシブサイドボード」戦略を採用しています。

 《黄金牙、タシグル》は「青黒コントロール」のサイドボードでもよく見かけるカードですが、このデッキのように大量の「プレインズウォーカー」を搭載したデッキであれば、対戦相手は《英雄の破滅》が何枚あっても足りないような状況に陥ってしまいます。「探査」能力のおかげで、「プレインズウォーカー」と同じターンに登場したりも可能ですし、対戦相手としては非常に対処に困る1枚です。


「グランプリ・メンフィス2015」総括

 「グランプリ・メンフィス2015」を総括するならば、「アブザン・コントロール」と「赤白ビートダウン」に支配された大会だったと言って差し支えないでしょう。優勝こそ「スゥルタイ・コントロール」がかっさらっていったものの、両デッキの活躍はその後のスタンダードにとても大きなインパクトを与えました。


 ここから環境は遅くなっていくのかと思いきや、続くグランプリでは、全く別のアプローチを試みたデッキが結果を残しています。


「グランプリ・マイアミ2015」(3月7~8日開催) トップ8

  • 優勝・「緑白信心」
  • 準優勝・「緑白信心」
  • 3位・「アブザン・ウィップ」
  • 4位・「アブザン・アグロ」
  • 5位・「赤単アグロ」
  • 6位・「赤単アグロ」
  • 7位・「アブザン・アグロ」
  • 8位・「ナヤ・アグロ」

「緑白信心」の大躍進

 そんな中で開催された「グランプリ・マイアミ2015」では、予想外の結果が待ち受けていました。トップ8には「アブザン・コントロール」と「赤白ビートダウン」の姿はなく、突如としてが大量発生した「緑白信心」デッキが、見事に1・2フィニッシュを果たしたのです。

 それ以外のデッキだと、トップ8に2名を送り込んだ「赤単アグロ」が印象的です。ここからは、そんな注目デッキをご覧いただきましょう。

■「緑白信心」

Daniel Cecchetti - 「緑白信心」
グランプリ・マイアミ2015 優勝 / スタンダード[MO] [ARENA]
9 《
2 《平地
4 《吹きさらしの荒野
4 《豊潤の神殿
1 《花咲く砂地
4 《ニクスの祭殿、ニクソス

-土地(24)-

4 《エルフの神秘家
4 《森の女人像
4 《旅するサテュロス
2 《羊毛鬣のライオン
4 《クルフィックスの狩猟者
4 《世界を喰らう者、ポルクラノス
1 《ティムールの剣歯虎
4 《囁きの森の精霊
4 《起源のハイドラ

-クリーチャー(31)-
4 《見えざるものの熟達
1 《払拭の光

-呪文(5)-
2 《羊毛鬣のライオン
2 《再利用の賢者
2 《スズメバチの巣
1 《女王スズメバチ
2 《狩人狩り
1 《異端の輝き
1 《今わの際
1 《セテッサ式戦術
1 《勇敢な姿勢
2 《世界を目覚めさせる者、ニッサ

-サイドボード(15)-
Corey Baumeister - 「緑白信心」
グランプリ・マイアミ2015 準優勝 / スタンダード[MO] [ARENA]
8 《
3 《平地
4 《吹きさらしの荒野
4 《豊潤の神殿
1 《花咲く砂地
1 《マナの合流点
3 《ニクスの祭殿、ニクソス

-土地(24)-

4 《エルフの神秘家
4 《羊毛鬣のライオン
4 《森の女人像
3 《旅するサテュロス
4 《クルフィックスの狩猟者
3 《世界を喰らう者、ポルクラノス
4 《囁きの森の精霊
4 《起源のハイドラ

-クリーチャー(30)-
4 《見えざるものの熟達
2 《払拭の光

-呪文(6)-
3 《加護のサテュロス
2 《再利用の賢者
2 《アラシンの上級歩哨
4 《勇敢な姿勢
2 《異端の輝き
2 《世界を目覚めさせる者、ニッサ

-サイドボード(15)-

 今大会を席巻した「緑白信心」。トップ8に進出できなかったものの、このデッキを使用したBrad NelsonやSam Blackたちも上位入賞を果たしており、このデッキがいかに強力であったかを示しています。

デッキの強み

 このデッキの長所は、なんといってもビートダウンデッキ全般に強いことです。それを強固なものにしているのは、このデッキのトレードマークである《見えざるものの熟達》です。

 この大会前までは、「サイドボードでたまに見かけるカード」程度の認識でしかありませんでしたが、《ニクスの祭殿、ニクソス》から大量のマナを生み出せるこのデッキの《見えざるものの熟達》は、その他のデッキのそれとは一線を画しています。

 毎ターン2~3回起動することもよくある光景で、これほどまでにクリーチャーで占められたデッキならば、「あなたのコントロールするパーマネントが1つ表向きになるたび」に誘発するライフ回復も容易に達成することができます。なお、2枚目以降の《見えざるものの熟達》は無駄カードと思われがちですが、ライフ回復能力は重複するので、決して無駄にはなりません。むしろ複数枚の《見えざるものの熟達》さえ設置できれば、普通の戦闘ダメージで死ぬことはほとんどなくなるので、マナが余っているうちに積極的に唱えておきましょう。

 余談ではありますが、このデッキを使用していたSam Blackは、ミラーマッチでお互いにライフが400点を超えてしまったそうです。それほどのライフを削り切れるデッキはおそらくスタンダードに存在しないでしょうし、本当にビートダウンデッキにとっては悪夢のようなデッキですね。

デッキの課題

 このデッキは今のところ苦手らしい苦手のデッキが見当たりませんが、ミラーマッチを克服する術は必須です。

 お互いが《見えざるものの熟達》を起動し続ける模様は、先ほどとは別の意味で悪夢です。それこそお互いのライフが3桁を超えることもままあるので、これを打破する術は今後に向けた大きな課題です。

 候補としては、(1)《セテッサ式戦術》の増量、(2)《太陽の勇者、エルズペス》の採用、(3)《狩猟の神、ナイレア》の採用などがありますが、《起源のハイドラ》があることを考えると、パーマネントカードが最有力候補となりそうです。Coreyさんのサイドボードに潜む《アラシンの上級歩哨》も、ミラーマッチ対策としての役割が期待できます。

デッキの注目カード

 注目カードは、Danielさんのリストに採用された《ティムールの剣歯虎》。少し用途が分かりづらいかもしれませんが、このカードはミラーマッチで劇的な効果を発揮します。

 もしも、片方のプレイヤーだけが《ティムールの剣歯虎》をコントロールしていた場合、そのプレイヤーは《世界を喰らう者、ポルクラノス》や《起源のハイドラ》を何度でも再利用することができるのです。サイドボード後であれば《再利用の賢者》や《女王スズメバチ》との組み合わせも期待できますし、パーマネントということで《起源のハイドラ》から導ける点も秀逸です。ミラーマッチでは勝敗を決定付ける重要な1枚なので、枠を割く価値が十二分にあると思います。

「赤単アグロ」

Ryan Grodzinski - 「赤単アグロ」
グランプリ・マイアミ2015 5位 / スタンダード[MO] [ARENA]
21 《

-土地(21)-

4 《火飲みのサテュロス
4 《鋳造所通りの住人
4 《僧院の速槍
3 《マルドゥの斥候
2 《ゴブリンの熟練扇動者
2 《ゴブリンの踵裂き

-クリーチャー(19)-
4 《軍族童の突発
4 《乱撃斬
4 《稲妻の一撃
4 《灼熱の血
4 《かき立てる炎

-呪文(20)-
3 《大歓楽の幻霊
1 《鍛冶の神、パーフォロス
3 《巻き添え被害
3 《弧状の稲妻
3 《峰の噴火
2 《力による操縦

-サイドボード(15)-
Brian Lee - 「赤単アグロ」
グランプリ・マイアミ2015 6位 / スタンダード[MO] [ARENA]
21 《

-土地(21)-

4 《火飲みのサテュロス
4 《鋳造所通りの住人
4 《僧院の速槍
2 《大歓楽の幻霊
2 《マルドゥの斥候
4 《ゴブリンの熟練扇動者
2 《ゴブリンの踵裂き

-クリーチャー(22)-
4 《軍族童の突発
4 《乱撃斬
3 《稲妻の一撃
2 《灼熱の血
4 《かき立てる炎

-呪文(17)-
2 《大歓楽の幻霊
1 《ゴブリンの踵裂き
2 《洗い流す砂
2 《灼熱の血
3 《弧状の稲妻
2 《パーフォロスの槌
2 《前哨地の包囲

-サイドボード(14)-

 「緑白信心」と同様に、これもまた急激に勢いを取り戻したデッキが「赤単アグロ」です。「アブザン・コントロール」や「スゥルタイ・コントロール」のような、序盤の攻防に疎いデッキが幅を利かせてきたことで、この手のデッキにも再びチャンスが巡ってきました。

デッキの強み

 このデッキの強み。それはもちろん速度です。

 「赤白ビートダウン」すらも凌駕する手数は環境でも屈指のものですし、これほどまでの速度に対応するためには、デッキ構築の段階である程度意識しておく必要があります。一方で、「グランプリ・メンフィス2015」の結果から導き出された答えは、「いかにしてビートダウンデッキに勝つか」ではなく、「いかにして中長期戦に強くするか」だったのです。そういったメタゲームの転換は、このデッキにとって朗報そのもの。相変わらず《悲哀まみれ》のような対策カードは環境に蔓延していますが、新戦力の「疾駆」クリーチャーたちは、それを打破するのにうってつけです。

 これらのクリーチャーは「疾駆」能力のおかげで、《悲哀まみれ》や《神々の憤怒》に臆することなくアタックを継続できます。特に《ゴブリンの踵裂き》はブロッカーを排除する能力まで付いているので、このデッキにとって対処の難しい《クルフィックスの狩猟者》や《包囲サイ》を無効化できる優れもの。この手の赤いデッキには欠かせない1枚ですね。

デッキの課題

 このデッキの課題は、同大会で大活躍した「緑白信心」をいかに対策するかです。

 「緑白信心」は序盤の動きもしっかりしていますし、それでいてライフ回復能力に長けているので、このデッキにとって対策が難しいデッキです。こちらの望む展開としては、マナ・クリーチャーをこまめに対処して「緑白信心」側の展開を遅れさせることでしょうが、もしもそれが叶わなかったときに押し切れる何かがあれば理想的ですね。

デッキの注目カード

 このデッキの注目カードは《巻き添え被害》です。《力による操縦》との組み合わせも秀逸ですが、このカードの主な役割は《胆汁病》を回避することです。これさえあれば《胆汁病》を考慮することなく自由に展開できますし、《軍族童の突発》もより一層対処されづらくなります。序盤に唱えづらいことだけ玉に瑕ですが、環境から《胆汁病》が減ることはほとんどないので、「赤単アグロ」を使用されているみなさんはぜひ採用を検討してみてください。

「アブザン・アグロ」

Andrew Boswell - 「アブザン・アグロ」
グランプリ・マイアミ2015 7位 / スタンダード[MO] [ARENA]
2 《
2 《平地
4 《吹きさらしの荒野
4 《砂草原の城塞
2 《ラノワールの荒原
1 《疾病の神殿
2 《コイロスの洞窟
2 《静寂の神殿
4 《マナの合流点
2 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ

-土地(25)-

4 《始まりの木の管理人
4 《羊毛鬣のライオン
4 《ラクシャーサの死与え
4 《先頭に立つもの、アナフェンザ
3 《加護のサテュロス
3 《オレスコスの王、ブリマーズ
4 《包囲サイ
1 《黄金牙、タシグル

-クリーチャー(27)-
3 《勇敢な姿勢
4 《英雄の破滅
1 《アブザンの魔除け

-呪文(8)-
4 《思考囲い
2 《自然に帰れ
2 《異端の輝き
3 《悲哀まみれ
1 《残忍な切断
3 《世界を目覚めさせる者、ニッサ

-サイドボード(15)-

 「赤白ビートダウン」デッキの増加に伴い、以前ほどの勢いがなくなってしまった「アブザン・アグロ」デッキ。しかしながら、依然として結果を残し続けているデッキのひとつであり、決して対策を怠ることはできません。

デッキの強み

 序盤から強力なカードを連打できるので、ミッドレンジやコントロールデッキに対して有利なデッキです。

 「アブザン・アグロ」には一般的に10枚前後の「タップイン・ランド」が採用されることが多いですが、このリストは「タップイン・ランド」を減らして《ラノワールの荒原》などの「ダメージ・ランド」を増量することで、序盤から円滑に動けるように工夫されています。

 こうすることで《始まりの木の管理人》の採用も可能となり、以前にも増して序盤の迫力に磨きがかかっています。

デッキの課題

 「ダメージ・ランド」の増加によって序盤のもたつきが解消されたものの、そこから受けるダメージの増加はそのまま弱点に直結しかねません。

 ビートダウンデッキと対峙する際には、「ダメージ・ランド」の枚数が勝敗を左右してしまうので、そういった意味でも「ダメージ・ランド」を《》に変えてくれる《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》は2枚必須と言えます。

 ただし、「タップイン・ランド」であれ「ダメージ・ランド」であれビートダウンデッキに対しては弱いので、どういったリストが良いかは、ビートダウン耐性ではなく、その他の要素で決めるのが好ましいでしょう。

 また、このデッキは除去が少ないため、「緑信心」系統のデッキを苦手としています。これほどまでに「緑信心」デッキが活躍してしまったので、今後は除去呪文の増量を検討してもいいと思います。

デッキの注目カード

 各種「神殿」があまりにも強力ゆえに、序盤にマナを捻出しづらいことから、《始まりの木の管理人》はしばらく活躍の機会がないのではないかと危惧されていましたが、このリストはそんな《始まりの木の管理人》の可能性を示してくれました。

 2ターン目から3/3クリーチャーが攻撃に向かえるのはこれまでにない強みですし、3番目の能力のおかげで長期戦でも抜群の強さを発揮してくれます。これらか「アブザン・アグロ」や、その他のデッキで活躍できるか、要注目の1枚です。

 このリストは《加護のサテュロス》など意外性にも富んでいるので、「アブザン・アグロ」好きの方はぜひこのリストもお試しください。

「グランプリ・マイアミ2015」総括

 「グランプリ・マイアミ2015」では、「グランプリ・メンフィス2015」から一転、ビートダウンデッキの復権が目を惹きました。また、鮮烈なデビューを飾った「緑白信心」は本当に素晴らしいデッキで、環境末期と言って差し支えのないこのタイミングでこんなデッキが登場するなんてびっくりですね。


 『タルキール龍紀伝』にも数多くの魅力的なカードが収録されていますので、次の環境も楽しみです! 個人的には《卓絶のナーセット》に大注目しております!

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最近は全く元気のなかった「青白コントロール」も、これで復権!?

 それでは、また次回の記事でお会いしましょう。

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