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Play Design -プレイ・デザイン-

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スタンダード総括『破滅の刻』版

Melissa DeTora / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2017年9月1日

原文はこちら

 みなさんこんにちは、そして「Play Design -プレイ・デザイン-」へようこそ。今週は現在のスタンダード・フォーマットについてと、プレイ・デザイン・チームの考える将来のスタンダードについてお話しします。もしあなたがサム・ストッダート/Sam Stoddardの「Latest Developments -デベロップ最先端-」の読者だったなら、このスタンダード総括が過去のものとは少し違うのがわかると思います。わたしは主に何がうまくいって、何がそうではなかったについて、そしてスタンダードをより良くするためのわたしたちの計画について話そうと思います。

 今年はスタンダードが荒れた年でした。わたしたちは多くの間違いを犯し、その結果いくつかのカードを禁止せざるを得ませんでした。他のデザイナーが禁止について詳しく述べているので、わたしは何を間違ったかについては触れませんが、わたしたちは将来同じ間違いをしないように積極的に取り組んでいます。

汎用性のある回答

 最初にわたしたちが取り組んだことはより多くの回答を印刷することでした。これはわたしたちがしばらく言っていたことです。わたしたちは1年先の仕事をしていて、皆さんはこの声明の結果を真に見ることになるのは『イクサラン』以降になりますが、わたしたちはこれらの回答のうちいくつかを『破滅の刻』に入れることができ、その1つが《削剥》です。《削剥》以前は専用の回答以外でアーティファクトに対処するのはとても大変でした。わたしたちはもっとメイン・デッキに入れられるものを必要として、そして《削剥》が生まれました。

 スタンダードにはクリーチャーは破壊できても機体は不可能な呪文や、プレインズウォーカーを破壊できてもアーティファクトは不可能な呪文などが存在しました。回答は効果的ではなく、多くのゲームが適正な回答を適正な時に持っているかどうかで決まっていました。効果的な回答の不在は、マルドゥ機体や《霊気池の驚異》のような先に仕掛けるデッキをプレイするのが基本的により安全で、コントロールやミッドレンジのようなデッキは本当に苦しいということでした。強力な回答の存在はそれら全てを変えたいという望みであり、わたしたちには『破滅の刻』でそれが見え始めています。


《削剥/Abrade(HOU)》 アート:Jonas De Ro

何にでも入るカード

 わたしたちがより注意をするもう1つの事柄が、何にでも入るカード、とくにアーティファクトです。わたしは20年マジックをプレイし、『ウルザズ・サーガ』からスタンダードでの禁止を見てきて、アーティファクト・セットがあるときには常に禁止が出ていることに気がつきました。《記憶の壺》、親和、《石鍛冶の神秘家》(厳密にはアーティファクト・セットのものではありませんが、これの禁止はアーティファクト・ブロックである『ミラディンの傷跡』ブロックの強力な装備品の結果でした)、《密輸人の回転翼機》は全てアーティファクトを基にしたセットの一線を越えたカードの例です。

 アーティファクトは無色であるという独特の性質を持ち、それはつまりどんなデッキにも色を気にせず入れることができるということです。いくつかのアーティファクトが強すぎる場合には突然、何をしようとしているかに関わらず、それらをプレイしないことが間違いになってしまいます。《密輸人の回転翼機》はその良い例です。これは初めての機体であり、わたしたちは構築フォーマットで機体を強いものにしたかったので、少し強く推しすぎてしまいました。『カラデシュ』の発売直後、プレミア・レベルののトップ8になったデッキリストの大部分には、4枚の《密輸人の回転翼機》が入っていました。

 《霊気池の驚異》はもう1つの例です。これはエネルギーをプレイする必要があるというデッキ構築上の制限がありますが、コンボ・デッキを可能にするこのカードもやはり無色のカードです。これをデッキの軸にする必要があるにも関わらず、どの色の組み合わせでもこれをデッキの軸にすることができます。

 問題なのはアーティファクトだけではありません。時にはそのカードをプレイしないのが間違いになるぐらい強すぎるカードがあり、そのようなカードはスタンダードの多様性を損ないます。

 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を例に挙げてみましょう。このカードは特に同じフォーマットの他のカードと比較すると単純に強すぎる、とわたしが感じたカードです。これを戦場から取り除くためには特定種類の回答、基本的には複数の回答を必要とします。プレインズウォーカー除去を持っていても、対処すべきトークンが残っています。ソーサリー速度のクリーチャー除去ではこれに対処できず、時にはその紋章で即座にゲームに勝つことができます。このカードは驚異的な汎用性があり、対処が難しすぎます。

 さまざまなデッキに入る強力なカードは結果的にスタンダードの多様性を損ないます。わたしたちは《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》をこれがスタンダードで使える間にアグロでもミッドレンジでもコントロールでも見かけ、そしてそれは1枚のカードのカードのあるべき姿ではありません。

『破滅の刻』スタンダード

 では、現在のスタンダードを見てみましょう。わたしは《霊気池の驚異》の禁止でようやくスタンダードが良いところに行けたと思います。複数のマーキタイプでさまざまなデッキが見かけられます。以下は「Magic Online」リーグやプレミア・レベルのイベントで結果を残したデッキをアーキタイプ別に分けたものです。

アグロ
  • マルドゥ機体
  • ラムナプ・レッド
  • 黒単ゾンビ
  • 黒緑巻きつき蛇
ミッドレンジ
  • ティムール・エネルギー
  • 赤緑ランプ
  • 白青モニュメント
コントロール
  • 青赤コントロール
  • 白青《副陽の接近》
  • 青黒コントロール
コンボ
  • 《王神の贈り物》デッキ
  • 赤緑打撃体

 このフォーマットの特徴を述べていきましょう。

 プレイヤーはテーマやメカニズムをデッキの軸にしています。ゾンビ、+1/+1カウンター、エネルギーはトップメタのデッキで結果を残しています。これらのデッキが一貫性を持って機能するのに十分な強さのカードとシナジーが存在します。

 プレイヤーはデッキの軸になる単一のカードを見つけました。わたしは《王神の贈り物》と《副陽の接近》デッキがスタンダードに現れたことを見てとても満足しています。これらのカードはどちらもフューチャー・フューチャー・リーグでたくさん使われ、わたしはこれらが楽しいところに持っていくことができたと感じています。これらはどちらも特定の方法でデッキ構築を要求する7マナのカードなので、わたしたちはこれらがスタンダードで使われないかもしれないことは分かっていました。このフォーマットが速すぎたりシナジーが高すぎた場合、これらのカードは使われなかったでしょう。

 グッドスタッフ・デッキは強力です。時には1つのデッキに最強のカードを全部詰め込みたいと思うことがあります。わたしはそれが良い戦略でほとんどの場合は機能すると思いますが、シナジーのレベルが高すぎる場合はそれらのデッキが機能しない傾向にあります。カードがどんなデッキにでも入りすぎるかマナ基盤が強すぎる場合、これらのデッキは過剰に使われてそのフォーマットは多様性のないものになるでしょう。わたしが持っているこれの最高の例は、『タルキール覇王譚』『戦乱のゼンディカー』スタンダードで、このフォーマットは4色ミッドレンジに支配され全ての人が同じ強力なカードをプレイしていました。『破滅の刻』スタンダードではグッドスタッフ・デッキは青赤コントロールの形でのみ見られます。

 単純なデッキと複雑なデッキが良い割合で存在しています。わたしたちは複雑すぎる過去のフォーマットを見てきました。すぐに思い出されるのは『異界月』スタンダードです。現出、昂揚、そしてエムラクールはプレイするのが驚異的に難しいデッキでした。『破滅の刻』ではそのようなものは全く見られません。アグレッシブなデッキはかなり真っ直ぐですが、ゾンビやマルドゥ機体はもう少し複雑なプレイ・パターンも持っています。もっとも重要なのは、これらのデッキはどれも複雑さの一線を超えているものがなく、真っ直ぐなデッキでもたくさんの重要で興味深い決断があるということです。

 一部のデッキは極めて孤立的です。デッキが孤立的な場合、それらは新しいセットが出たり新しいデッキが出現したときに進化しません。エネルギーは極めて孤立的なメカニズムで、ティムール・エネルギーや赤緑打撃体のようなデッキをプレイしているなら、プレイできるカードは本当に限られます。必要なのは全てエネルギーかエネルギーの恩恵を受けるカード(打撃体の場合は強化呪文)です。そのフォーマットの進化に際し、これらのデッキは実際に変化しません――そしてこれらデッキが強すぎると、メタゲームの回転が少なくなり淀んでしまいます。


 『破滅の刻』スタンダードは完璧ではありませんが、わたしたちにはトンネルを抜けた先の光が見え始めています。わたしは物事は良くなっていくだけだと思います。プレイ・デザイン・チームはガソリンで、わたしたちはマジックに情熱的でこれを可能な限り最高のゲームにしたいと思っています。ローテーションは間近で、わたしたちは『イクサラン』とともに新鮮で新しい世界に踏み出そうとしています。わたしはみなさんがこの新しいスタンダードで考え出すものを見ることになって興奮しています!

今週のプレイ・デザイン・チーム

 先週、日本の若いプレイヤーのグループがユース・アンバサダー・プログラムの一環としてウィザーズ・オブ・ザ・コーストを訪問しました。彼らはウィザーズを見学し、わたしたちの地元のお店をいくつか訪れ、素敵なマジックの記念品をもらって、開発部のゲーム・デザイナーとマジックをプレイしました。

 この子たちはマジックを愛していて、そしてわたしたちと素晴らしい時間を過ごしました。彼らのその若さでの技術とマジックに対する知識に、わたしは本当に感心しました。情熱的な子どもたちが大好きなマジックをプレイし、彼らのマジックのヒーローに会えたのは素晴らしいことです。

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後列左からアダム・プロサック、ダン・バーディック、メリッサ・デトラ
前列、未来のプロツアー・チャンピオン、舩曳倫太朗くん。

 今週は以上です!

 ではまた次回。

メリッサ・デトラ (@MelissaDeTora)

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