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Play Design -プレイ・デザイン-

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責め苦のサイクル

Melissa DeTora / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2017年6月23日

原文はこちら

 新しい「Play Design -プレイ・デザイン-」コラムの第1週にようこそ。わたしはメリッサ・デトラ、マジック開発部のプレイ・デザイナーです。みなさんのほとんどが『破滅の刻』のプレビュー・カードを見にここに来ているのはわかっているのですが、その前にみなさんわたしの署名をここで見たことがないと思うので、少し自己紹介をさせてください! わたしはマジックを20年プレイしていて、プロツアーに18回参加しました。プロツアーのトップ8に1回と、同じくグランプリのトップ8に2回入っています。2015年にウィザーズで働き始めて、1年後に契約が満了したときに離れました。6か月後に戻ってきて、2017年4月にフルタイムのプレイ・デザイン・チームのメンバーとして雇用されました。

 ウィザーズに戻ってきてから、わたしが仕事をしてきたデベロップ・チームの1つが『破滅の刻』でした。このセットはわたしがチームに加わったときにはデベロップの最後の数か月だったので、メカニズムとほとんどのカードのデザインは確定していました。わたしたちはリミテッドのバランス取りと、スタンダードの形作りだけをしなければいけませんでした。

 わたしは会議のときに頻繁に「このカードはトーメントを持っていた」とか「あなたのアップキープにトーメントする」ようなことを耳にしました。トーメントがこのセットのメカニズムにないことと、この単語が『オデッセイ』ブロックの第2セットの名前以外に何も意味していないことを考えると、変なことを言っているように聞こえました。

 そのトーメントとは、『破滅の刻』に以前あった、クールでフレーバー豊かながらも、不健全なゲームプレイを引き起こすせいでボツになったメカニズム、ということをわたしはすぐに学びました。これがそのメカニズムの挙動です。

 トーメント――各対戦相手は土地でないパーマネント1つを生け贄に捧げるかカード1枚を捨てるかしないかぎり、3点のライフを失う。

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 一見するとこのメカニズムは面白そうです。これは対戦相手に不利ですが興味深い3つの中から1つ選択することを迫ります。問題なのは、こういったメカニズムがカードの多くについていると、その決断の興味深さがどんどん少なくなってしまうことです。あなたのクリーチャーのほとんどに《貪欲なるネズミ》の誘発型能力がついていたり、「これが戦場に出たとき、対戦相手1人を対象とする。その対戦相手は3点のライフを失う」という能力を持っているところを想像してみてください。もしこのメカニズムがあなたのデッキのほとんどのカードについていたなら、ゲームは同じようになり始めてしまいます。

 ゲームの序盤、リソースが軽いときには対戦相手は多分3点のライフを失うほうを選びます。ゲームの後半は、対戦相手は余った土地を持っているか、投げ捨てる用の消耗したクリーチャーを何体か持っているかもしれません。どのゲームも同じようになり始めます。ゲームの序盤はライフを選び、後半はカードを捨てるか盤面に影響しないクリーチャーを生け贄に捧げます。それらがいなくなると、対戦相手はもっと強いクリーチャーを生け贄に捧げることを強いられます。全体的に、毎回ライフを11点ぐらいから始めることはあまり楽しくないですし、対戦相手がトーメントしてくることを怖がってカードを抱えておくことはさらに楽しくありません。

 もしトーメントのメカニズムがたまにしか出てこないなら、その決定は対戦相手だけでなく、あなたにとっても、もっと興味深いものになります。多分あなたはトーメント・カードを対戦相手がカードを失うようにするためにライフが少なくなるまで持っておくでしょう。対戦相手の手札がなくなるまで待つかもしれません。全体的にそのゲーム・プレイがより戦略的で楽しいものになります。最終的に、デザイン・チームはこのメカニズムをこのセットから切り落とすことに決めましたが、この能力を持った垂直サイクルを残しました。1つはコモン、1つはアンコモン、そしてもう1つはレアにあります。

 《毒の責め苦》は1枚の除去呪文以上の働きをするので、このセットでのわたしのリミテッドでのお気に入りのカードの1枚です。これはコンバット・トリックになったり、テンポを取ったり、2対1を取ったり、対戦相手の手札の最後の1枚を叩き落としたりできます。これを唱える正しいタイミングは常に分かりやすいとは限りません。それでも、このカードは概ね「クリーチャーを1体除去して、対戦相手に3点」と読めます。

 お次はアンコモンです。

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 このカードはリミテッドでのデッキの核、もしくはコントロール・デッキのフィニッシャーを想定して作られています。このカードは、これを唱えたそのターンに何もしないという古典的な理由で、アグレッシブなデッキではすごく強いというわけではありません。リミテッドで4マナの投資というのは大変で、対戦相手が最初の1~2ターンにライフを失うことを選ぶと、あなたはうまくいっていないと感じるかもしれません。その4マナを使って盤面を何かの方法で構築することもできました。これをデッキに入れるのが正解かどうかを判断するのは難しいのです。

 とは言っても、これが3ターン以上戦場に留まればこの効果はどんどん強くなっていきます。最終的には対戦相手はライフを失うことを選べなくなって、他のリソースを失わないといけなくなります。これは対戦相手がカードを捨てる条件を満たすために土地を全部置いたり呪文を唱えたりしないことを選ぶかもしれないということで、そして彼らの手立てが尽きた場合や、あなたが《荷降ろし》などを持っている場合、彼らは毎ターンクリーチャーを失うということを意味しています。

 このカードは見た目よりも強く、デザイン段階でのトーメント・メカニズムの強さを表しています。

 わたしはこのカードの強さについて、プレイテストでケン・ネーグル/Ken Nagleとドラフトしたときに学びました。わたしはそのドラフトで、これは自分のコントロール・デッキに入れるには弱すぎると思って流したのですが、それはケンのデッキでプレイされました。結局わたしたちは何回か削り合いのゲームをして、《スカラベの責め苦》はわたしに対して素晴らしい仕事をしました。わたしは最終的に打ち消し呪文を含む手札の全てを失ってしまい、それはつまり、そのゲームを終わらせるケンの爆弾レアの安全が確保されたということでした。その爆弾レアは、って? 次のプレビュー・カードです。

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 ただの《火の玉》ではなくて、もっと強力です。これに払ったマナは1点ではなく3点になります。これで決着がつきますか? そうではありません。これをX=1か2で唱えても大したことは起こりませんし、4で唱えても毎回あなたが思うほど強いわけではありません。対戦相手はこのカードに関する全ての選択を行います。対戦相手は土地の束を捨てたり、ダメージを受けたり、いくつかトークンをサクったり、その3つを組み合わせたりできます。彼らはただ死ぬのではなく、いつでもその盤面を削ることができます。結果としては、対戦相手が一番重要性の低いリソースを失って、ゲームを続行できるように一番いい選択をすることになります。

 とは言っても、このカードはゲームを終わらせることができます。これをランプやコントロールで大きな数字でプレイすれば、対戦相手には適切なリソースを持っておく方法がありません。たとえそうしたとしても、相手の盤面は壊滅しているでしょう。

 わたしたちはプレイヤーに、リミテッドと、うまくいけばスタンダードでも、コントロールやミッドレンジのフィニッシャーとしての選択肢として提供するために、《霰炎の責め苦》をトーメント・サイクルのレアカードとして入れたいと思いました。このカードの目標は頻繁に唱えられることがないようにすることでした――でもこれが唱えられたときは、ものすごいことになります。

 トーメント・サイクルについてはこれでおしまいです。わたしの最初の「Play Design -プレイ・デザイン-」の記事を読んでくださってありがとうございます。以前「Latest Developments -デベロップ最先端-」だったこの記事の枠で、新しい名前の新しい記事をお届けします。わたしたちのチームはこの記事を使ってプレイ・デザインの全てについて話していく予定です。この記事の主な焦点はわたしたちのスタンダードのバランスのとりかたのような舞台裏の事柄ですが、このチームが仕事中にどんなやり取りをしているかなどの個人的なお話も紹介しようと思います。あなたと同じく、わたしたちはみんなマジックのプレイヤーです。そして、皆さんにとって有意義な存在になりたいと思っています。

 ではまた次回お会いしましょう。

メリッサ・デトラ (@MelissaDeTora)


(編訳より:次回以降の「Play Design -プレイ・デザイン-」コラムは、原文掲載(毎週金曜)の10日後(翌々週月曜)の翻訳掲載となります。)

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