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開発秘話

Latest Developments -デベロップ最先端-

FFLよくある質問集

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FFLよくある質問集

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2016年4月22日


 おおむね1セットに1回、私はフューチャー・フューチャー・リーグのデッキの一部をご紹介していますが、そのことでよく質問をたくさん受けます。なんでこのカードを使ってるの? なんでこのカードを使ってないの? などなどです。今週の「Latest Developments -デベロップ最先端-」では、それらの質問にお答えし、願わくばFFLに関するより良いアイデアを得ていただければと思います。

FFLって何だ?

 デベロップ・チームの全ての人(と「デュエル・マスターズ」からの何人か)は、通常のフューチャー・フューチャー・リーグで週に2回数時間プレイテストを行い、そのセットのリード・デベロッパーに変更の提案を行うために会議をします。

 デベロッパー全体だけでなく、セットの公式FFLチームに属するデザイナーやその他のチームの人々を含んだ、より少数のデベロッパーのグループも存在します。彼らは通常のFFLに加えて、毎週FFLに集中する追加の時間を持っています。それぞれのチームにはリーダーとなるデベロッパーがいて、彼らは通常のFFLよりも少し深いところに潜ろうとします。これらのチームは最強のプレイヤーがなる傾向にあり、残りのFFLがメタゲームを定義すること、どのカードを推すか、どれにバランス再調整を行うか、そして各セットがメタゲームに影響を与えるのに十分な新しいものを持つようにすることを助けます。

 FFLの目標は楽しく、ダイナミックで、バランスの取れたスタンダード環境をつくることです。我々は多くのデッキを作り、お互いにプレイしてその結果に基づいてカードに変更を加えることでそれを行います――直感的でなかったり楽しくなかったりするものや、強すぎたり弱すぎたりするものに調整を施します。

 我々のデベロップの過程の基本的な目標は、近いパワー・レベルのカードを多く作ることです。そして人々はそのプレイスタイルで機能するデッキを作るために、それらのカード間の相互作用を用いることができます。

何でフューチャー・フューチャーなんだ?

 話はランディ・ビューラー/Randy Buehlerが初めてウィザーズに現れたころ、セットに壊れたものがないようにするためにある程度のプレイテストが行われていて、しかし不十分だった時に遡ります。『ウルザズ・サーガ』はそれがどうなっていたかの良い例です。さらに、未来のスタンダードをプレイするフューチャー・リーグが存在しました――しかしそれはすでに完成したセットだけで行われていました。これは極めて有用とはいえないいものでした。ビューラーはスタンダードのプレイテストでカードに変更を加えられるように、もうひとつFを追加しました。

基本スケジュール

 セットにつき、FFLは全部で約6ヶ月かけて行うことが多いです。我々が年に4つセットを出すのと同様に、それらのセットに関連するFFLの期間があります。我々がセットを発売するとき、次の年の同じ時期のセットを完成させるという考えです。

 例えば、『タルキール覇王譚』が出たとき、我々は『戦乱のゼンディカー』を完成させるにあたってなにか大きな見逃しがないかどうか、現実世界の発売後数週間のスタンダードとプロツアーの結果を見ていました。


時を越えた探索》 アート:Ryan Yee

FFLのテスト時にどれぐらいのカードが変更されるの?

 ひとことで言うとたくさん変更されます。セットを作る過程の一部はたくさん繰り返すことであり、それはつまり我々はこのフォーマットのバランス改善と個別のカードを可能な限り楽しいものにするため、毎週変更し続ける必要があるということです。

 詳しい答えはこうです。どのセットも3つの主要な期間に分かれています――1つ目は「覗き見」期間で、デベロップ初期に行われ、そのメカニズムと主要なサイクルを確認し、そしてこれの前のセットにこのセットへ種をまく適正なカードがあるようにします。この時点で、我々は時々メカニズムを調整したり、その前のセットのためのカードをこっそり加えたりします。このセットは洗練されておらず、大きくぶっ壊れたカードがある可能性が高いので、我々はしばしば週ごとに15~25枚、1か月の間変更を行います。

 最終的にはそのセットがFFLの「メイン」になり、我々はデッキのバランスと(うまくいけば)限度を超えた個別のカードがなくなるようにすることに大きく焦点を当てるようになります。8週間前後にわたってそのセットに焦点が当てられ、最終的に最後の数週間で行われる変更は非常に小さなものになります。

 最後には、そのセットがメインでなくなり、しかしFFLにあって変更を加えられる時期になります。この時期のカードの変更の多くは、最新セットへの対応や、単にさらなるプレイテストによってそのカードが強すぎる、もしくは弱すぎると気がついたからです。この時点では、我々は週に0~3枚の変更を行います。

 さて、これは多そうに聞こえますが――実際そうです――しかしこの変更の多くは表面上は比較的小さなものです。3/3が3/2になったり、{2}{R}{R}のカードが{3}{R}になったり、プレインズウォーカーの忠誠度が1上がったりです。これらの変更の目的は、カードを構築フォーマットの外にやるためではなく(もしそうしたいのであれば、普通我々は単にそのカードの挙動を変えます)、我々が知らない強すぎたり弱すぎたりする特定のカードを平等にするためです。

 各セットには数枚、プレインズウォーカーやその他の重要なキャラクターのような、我々がより信頼するカードがあります――しかし我々はマジックは少数のとても強いカードが存在するよりも、多くのカードがかなり近いパワー・レベルにあるほうがより楽しいことを発見しました。

 さて、今のスタンダードを思い浮かべて、私があなたに「明日から《ヴリンの神童、ジェイス》の起動コストがタップではなく{U}になって、《アーリン・コード》の忠誠値が1下がり、《大天使アヴァシン》が彼女自身に破壊不能を与えない」と言ったとします――物事は大きく変化してしまうでしょう。ええ、このような変更が毎週FFLで行われていて、物事をはっきり確定させるのは困難です。

FFLはどれぐらい正確なの?

 我々は発売後1週目と2週目のメタゲームがどのようになるかを計算することに関してはかなり優れていますが、プロツアー後にスタンダードがどのように進化していくかに関してはそうではありません。我々がどれだけプレイしても現実世界の量に比べればごくわずかで、テストではかなり互角に感じられた組み合わせであっても、いくらかデッキを調整して数百マッチを行うと45対55から40対60になり、これは大きな違いです。

 我々はこのフォーマットにある全てのデッキに毎週の輪郭の変化に適応できるメインデッキとサイドボードの十分な手段と選択肢があるようにして、そして他のデッキ自体の変化を食い物にできるようにしようと努めています。シーズンが始まって1か月経つと我々の内部のメタゲームは時代遅れになります。それは構わないことで、我々は楽しい出発点を作ろうとし、人々に物事に対応するための手段を提供し、そしてこのフォーマットが解明されることなく時とともに進化すると信じています。

 我々が強くなりそうだと思うデッキが全くなかったり、主流ではないと思ったデッキの一部がトップメタになってしまうことがあります。それはいいことです――もしあなたがセットのリストを全部読んで実際にプレイすることなく正確に全カードの強さが分かるなら、物事はつまらなくなってしまうでしょう。

最強のデッキを見つけたことはある?

 はいともいいえとも言えます。我々は通常そのアーキタイプのデッキを作りますが、デッキそのものがあることは稀です。実際は我々が最強のデッキの強さを分かっていた場合、その後何かを弱体化するでしょう――もしくはそれに対抗するため他のデッキの何かを強化します。

 我々の目標は、このフォーマットが簡単に解明されないように何が最強であるか我々が分からないようにすることです。我々は最強になりうるデッキがたくさんあるようにして、そして何週間かお互いにプレイした後にだけ実際に何が最強であるか合意が生まれるように――そしてうまく行けば、それでもなお異なる人々の間でいくらかの見解の不一致があるようにしようとしています。

なぜこのデッキにはカードXが入ってないの?

 紹介されたFFLのデッキにあるカードが入っていない理由はたくさんあります――そのカードがまだ存在していなかったか、他のカードがより強力でそのカードが押し出されたのかもしれません。単にそれが十分に強いかどうかを見るために試していたということもありえます。我々がFFLの中で完全に見逃しているカードは存在しますが、多くはありません。

なぜこのデッキにはカードXが入っているの?

 同じように、我々は現実世界の最終的なデッキに入っているよりも多くのカードを試しています。つまり、我々は何かが十分に強いかどうか見るために試しつつも、結局はそうは思わないかもしれないということです。もしくは、我々はメタゲームの中で重要な役割を埋めるためにカードを突然変更したのかもしれません。しばしば完成版とは異なる場合があるので、デッキに入っている全てのカードはそのままのものではありません。


合鍵》 アート:Daniel Ljunggren

どうやってFFLのメタゲームを過剰な対面メタになることから防いでいるの?

 様々なカードを試し、デッキを固定しすぎないことは、1枚のカードに過剰に焦点を当て、何かを完全に見逃さない助けになります。例えば《スラーグ牙》の問題の一部は、我々が《ウルフィーの銀心》をそれと同じスロットでプレイしすぎたことでした。我々がそれを強力な5マナ域として焦点を当てすぎたため、他のカードを十分見ていませんでした。

 今のFFLには《スラーグ牙》ができたころよりもずっと多くの人がいて、より多くの時間を費やしています。しかし我々があるカードを特定のデッキやスロットの「主力のカード」として注目しすぎたなら、《スラーグ牙》問題を繰り返すリスクを背負うことになります。

何でこのデッキが強いと思うの?

 我々はしばしば現実世界で十分な強さがないデッキの公開をたしなめられますが、それには多くの理由があります――変更されたカードがそのデッキを弱くしているかもしれませんし、単に似たようなそれよりも強いデッキがそのデッキのメタゲーム上の居場所を食いつぶしてしまったのかもしれませんし、我々が何かを弱くして最終的にそのデッキのプレイ性を取り去ってしまったのかもしれません。

 全体的に、我々のデッキは現実世界のものよりもはるかに調整不足です。そのうちいくらかは、我々が1つのデッキを繰り返し使う十分な時間がないからですが、大部分はカードにたくさんの変更が加えられるからです。我々は頻繁に1つのデッキに何ヶ月も費やし、そしてそれが十分に強いと信じていますが、ファイルの他のどこかの変更が他のデッキをその上位互換にしてしまいます。我々の初期のコントロール・デッキが他よりも弱くなってしまったり、我々のランプ・デッキがより強力な加速手段によって時代遅れになってしまったりします。発売1週目のスタンダードのメタゲームに似た、調整されていないメタゲームにおいて我々が十分に強力だと見ていたデッキは、普通、繰り返しを経た数週間後のメタゲームには耐えられないでしょう。

モダンのプレイテストしてるの?

 歴史的に我々はごくわずかしかモダンを考慮していませんでしたが、時間とともに変化していき、特に探査とエルドラージが我々が健全と考えるよりもモダンを揺るがしてからはより変わっていきました。

 さて、我々は新しいメカニズムやカードを作るときにはモダンのことをよく考えるようになりましたが、依然としてそれらを使ってモダンのプレイテストはしていません。その理由はモダンが巨大なフォーマットであり、全てを試すのが困難だからです。理想的には、個別のカードがスタンダードで強すぎても、それらはモダンを壊すべきではありません。しかしながら新しいセットがモダンに影響を持つことはこのフォーマットにとって良いことで健全であり、将来のモダンの面白さを維持し続けるでしょう。我々は物事を壊したいとは思っていませんが、いくらかのリスクを負ってでも将来のモダンの健全さを取りに行きます。

 モダンの最新の禁止と解禁のために我々はこれらの変更をテストして、そして私は我々が将来のモダンの禁止解禁のテストに時間をかけることになると思っています。

現実世界がFFLに追いつくにはどれぐらいかかる?

 現実世界で1週目のスタンダードが終わった時点で、我々よりも千とはいかないまでも数百時間は多く費やされています――そしてFFLとは違い、カードが変更されることもないので前提条件が変わることもありません。伝統的に我々はローテーション後にどんな種類のデッキがプロツアーに現れるかについてのかなり優れた予測ができますが、数週間後に人々が実際に何が強いか弱いか、そしてメタゲームに当てはまるかに関する膨大なデータを持っているときにスタンダードがどうなるかについては分かりません。同じように、新しいローテーション後よりも人々が環境を噛み砕くのに数ヶ月費やした時のほうが何が起こるか伝わりやすいので、我々は第2セットでは第1セットよりも正確さに欠けます。


 今週はここまでです。来週は『イニストラードを覆う影』のFFLのデッキリストをご紹介します。

 それではまた来週お会いしましょう。

サムより (@samstod)

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