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統率者戦向けカードのデベロップ

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" kaoru

2015年11月6日

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 『統率者(2015年版)』における我々の目標の1つは、この製品の第一目標である顧客、統率者戦プレイヤーに最高の体験を提供することです。つまり、統率者戦向けでありつつ、キューブやエターナル・フォーマット、カジュアルな1対1のマジックのゲームにも使えるカードのデザインやデベロップの方法を見つけるということです。

 振り返ってみると《真の名の宿敵》は失敗で、その理由はレガシーでプレイされてウザいからだけではありません。第1の理由は、このカードが多人数戦で強くなかったということです。もしこれが「プロテクション(1人を除いた全ての対戦相手)を得る」だったなら、このような統率者戦プレイヤーに狙いを定めた製品に適したカードになり、レガシーに植え付けることが難しくなっていたでしょう。同時に、我々は実際に《真の名の宿敵》が強力なフォーマットでテストをしていませんでした――したがって、我々はこのカードの強さだけでなくつまらなさも少なく見積もっていたのです。テストでこのカードが唱えられたときに、現実世界でほとんどの場合見られるものと大きく異なるシナリオへ進んでいたのです。

 これは我々が、強力であったりエターナル・フォーマットに適性があるカードを『統率者』の製品に入れないということではありませんが、私は将来我々がエターナル・フォーマットだけでなく統率者戦で機能するように、実際のプレイテストでカードに確かな手応えを持つように、より良い仕事するよう願っています。

 それを受けて、無尽は多人数戦を意識してデザインされました。『コンスピラシー』に取り組んでいた頃を振り返ってみると、そのブレイクスルーの1つはただ座って構えているのではなく、ゲームをかき回すことと積極的であることに見返りを与える意図を持ったメカニズムを作ったことでした。我々が『コンスピラシー』に取り組んでいたとき、デザインが考え出したのが多人数戦で良い規模になり、またゲームを進ませるメカニズムである無尽です。

 《命運の掌握》はプレイヤーの数によって規模が拡大するだけでなく、数多くのドラマを生み出すので、多人数戦で良いポジションにあるカードの例です。他のプレイヤーたちが団結して《命運の掌握》からパーマネントを取り戻そうとするだろうと仮定するのは簡単ですが、それが常に真実とは限りません。多くの場合、1人のプレイヤーの下に深刻な脅威が戻ってくるならば、その他のプレイヤーたちはあなたを生かそうとするかもしれません。このような種類の個別のカード・デザインを、楽しく興味深いゲーム展開を助けるために『統率者』の製品に入れたいと我々は思っています。


《命運の掌握》 アート:Tomasz Jedruszek

 経験カウンターは明確な多人数戦向けメカニズムではありませんが、長引いたゲームで真価を発揮します。カジュアルなデッキで経験カウンターを得られる伝説のクリーチャーを入れたデッキを作ることもできますが、基本的には伝説のクリーチャーを何度も唱え、経験カウンターを得て役立たせることになるでしょう。そうすることで、それらは事実上レベルアップしてゲームを決着に向ける助けをします。ほとんどの経験カウンターを得る伝説のクリーチャーは最初に戦場に出るときには少し弱めですが、ゲームが進むにつれて対戦相手の統率者よりも強くなるでしょう。

単体でクールなカードをデベロップする

 もし我々が『統率者』のデッキにかけられるすべての労力を多人数戦を意識したカードだけにつぎ込んだ場合、統率者戦をこれ以上全体的に楽しくすることがないままデザイン空間をすぐに使い切ってしまうでしょう。そうする代わりに、我々は『統率者』の機会に何か異なるデザインと、推せる物事の境界線を見ようと試しています。

 過去には《漁る軟泥》のような、最初『統率者』で印刷されたカードで後になって再録されてスタンダードやモダンで使っても十分に楽しいと発見されたものがありました。『統率者』の製品で印刷されるカードの大多数は後のエキスパンションに直接現れないことは明白でしょうが、我々がこれを的確なカードとデザインのための実験場としている事実はとても有益です。

 私が話す類のカードのアイデアについて、参考に「合流点」サイクルのカードを見てみましょう。これらは『統率者(2015年版)』のリードデザイナーであるダン・エモンズ/Dan Emmonsによって『タルキール龍紀伝』のデザイン時に作られたものですが、スタンダード向けに簡単にデベロップできると感じるものではありませんでした――しかしながら公正を期すために言うと、その当時これらのカードには3つではなく4つのモードがあったのです。少し検討した後、我々は最終的にファイルの中のそれらを通常の命令サイクルに置き換え、これらは押し出されてこのセットにたどり着くことになりました。

 開発部で働く場合、しばしばマルチバース(我々が内部で使っているカードのデータベース)に、自分がデザインして気に入っているけれども、何らかの理由でセットに使われなかったカードをキープしておく個人的なファイルを持ちます。しばしば、何か新しくエキサイティングなものを探すときに、それらのカードから条件を満たして2度目のチャンスを得ることができるものを見つけます。

 確かに、これらの合流点は適正な強さにするためにデザインとデベロップの両面(同じようにルール面とデジタル面でも)多くの手間が必要ですが、私はその価値があると信じています。マジックのカードのクールな部分の1つは、それらがお互いに支え合っているところです。

 我々が『タルキール龍紀伝』のデザインに取りかかり始めた時、我々はまだカードにテキストを箇条書きにしていなかったので、これらのカードはとても読みにくくプレイしづらいものでした。我々が箇条書きにする技術(これはデジタルの感覚ではなく、ルールの感覚だと思います)を手に入れると、整理されて分かりやすいやり方でこのようなカードを作れるようになり、これらを実装不可能に見えるものから、すぐに皆さんが手に取ることができるようなものにすることができました。

 マジック開発部の素晴らしいところは、繰り返して構築することを好むところです。今や我々はこれらを適切なカードにする能力を持っており、これらは「命令」や「魔除け」のように我々が将来のセット――統率者やスタンダードのセット――へ呼び戻せるものになりました。統率者のセットは、通常のセットには入れる準備ができていないかもしれないメカニズムの実験を可能としますが、それらはとても有望なものです。


《不憫の合流点》 アート:Kieran Yanner

デッキをテストする

 統率者のデッキをデベロップするとき、我々はそれらが向かうであろうより大きな世界に向けた個別のカードのデベロップと、そして各統率者デッキのお互いに対するデベロップの両方を行います。それらのカードで行うゲームが毎回お互いに対してプレイされるとは思っていませんが、我々がこれらのデッキを毎年発売する主な理由の1つは、プレイヤーに統率者戦とマジックの両方に対する出発点を与えるためです。

 我々は、新旧問わずあらゆるプレイヤーのグループが、これらのデッキのうち1つを買ってそれで対戦し、彼らが楽しい時間を過ごせるようにしたいのです。それは何ヶ月も何年も時間をかけてデッキを仕上げ徹底的に知り尽くした人々ほど豊かな統率者戦の体験を引き起こさないかもしれませんが、私はそれでいいと思います。我々はこれらのデッキが統率者戦への入り口であってほしいと思っていて、一方で、これらのデッキを常に人々が自分の好みに合わせて調整するものと同じぐらい楽しいものとして作ることができるとは考えていません。我々が確かにしたいものは、これらのデッキをプレイした後、そのプレイヤーが次のレベルに進みたくなるようにすることです――そしてその大部分は、バランスを取ることです。

 幸運なことに、多人数戦では誰かが支配的になると他のプレイヤーが団結し、あるデッキが残りのデッキよりもいくらか強くても自然とバランスを取るので、多人数戦向けのバランス取りには多くの余地が存在します。それでも、我々はそのことに頼って全ての作業をしているわけではありません。1つのデッキが最強になる考えを持たず、どのデッキを選ぶかを実際に個人の好みで決められるように、我々はこれらのデッキでお互いに何度もゲームをしています。

 またこれらのデッキをデベロップするときに、我々はこれらが単に強いカードを足すだけではない、他の方向に改良できる明確な方法を作りたいと考えています。過去においては、我々はデッキをそのままにして統率者を入れ替えてプレイするというアイデアで、そのデッキの中に代わりの統率者を入れていました。そのデッキが正規の統率者に合わせて作られていて代わりの統率者向けではなかったのでこの考えは上手く機能せず、そのプレイ経験は理想的ではありませんでした。

 『統率者(2015年版)』では我々はそれを許容し、そして多くの同じカードを使うけれどもあなた自身のコレクションからより多くのものを要求する、新しいデッキのための種となる統率者を入れることにしました。例として、《大蛇の大魔導師、かせ斗》は《進化の爪、エズーリ》のデッキで機能しますが、統率者の蛇デッキの出発点にもなり得ます。我々は『統率者(2015年版)』に《大蛇の大魔導師、かせ斗》が機能するように十分な数の蛇を入れていますが、しかし彼女を統率者にするにはいくらかの変更が必要でしょう。

 今週はここまでです。来週はMagic Onlineがサイトジャックするのでこの記事はお休みです――しかしその次の週は初代『ゼンディカー』の6年後に焦点を当てた、特別版Mファイルをお送りします。お楽しみに!

 それではまた再来週お会いしましょう。

サムより (@samstod)

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