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開発秘話

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果敢のデベロップ

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果敢のデベロップ

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2014年11月7日


 今週はジェスカイ特集ということで、『タルキール覇王譚』でのジェスカイのメカニズム――果敢についてお話ししようと思います。『タルキール覇王譚』での個別の氏族のメカニズムを見てみると、果敢は私のお気に入りで、そして最初にプレビューされて以来人々が大きく意見を変えたものだと考えています。今回はこのメカニズムに関する取り組みと、このメカニズムから読み取ることができる、成功したマジックのメカニズムについてお話ししようと思います。

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シンプルさを保つ

 『タルキール覇王譚』はデベロップに回ってきたときに多くの難しさを抱えていました。デベロップの主な目的の1つはゲーム・プレイを楽しくバランスの取れたものにすることですが、そのセットの複雑さを、我々がマジックの健全さにとってベストだと信じているレベルに保つこともその1つです。セットの複雑さにはある程度の変化の余地がありますが、我々はスタンダードに『時のらせん』ブロックや『ローウィン』ブロックのレベルのセットを発売しようとは思いませんでした。これはつまり、デベロップがセットのパワーのどの部分を推すかを考える必要があることとよく似ていて、デザインとデベロップが一緒に取り組んで、セットの複雑さを推すことが可能かつ必要である部分を考え出していくということです。

 『タルキール覇王譚』では、変異が収録されていることによってこのセットの複雑さの多くが消費されています。変異はルール的な面倒くささと盤面の複雑さの両方を兼ね備えているので、我々はこのセットの残りの部分は、このメカニズムの場所を空けるためにもう少し簡単であるようにする必要がありました。もし『タルキール覇王譚』に変異がなければ、我々はほぼ確実に氏族のメカニズムをより複雑にしたか、現在変異の占めている空間を覆う他の全体的なメカニズムを見つけていたでしょう。

 私がここで分けておきたいことは、メカニズムの質と複雑さの概念です。メカニズムはゲームをより面白くするという観点から多くのことをします。変異や果敢のようにメカニズムは、時には盤面に複雑さを少し加え、そして物事をより楽しくします。他のメカニズム、例えばキッカーなどは、決断に奥深さを与え、呪文を唱えるときに追加の選択肢を加えることができます。メカニズムが複雑であることは、そのメカニズムの独自性を増加させる一方、その複雑さに見合うだけのものをゲームに追加する必要があります。我々はマジックの歴史上、とても興味深く、しかし書いてあるほどは上手く機能せず、それらの収録されたセットが不利益を被ったメカニズムを多く作ってしまいました。

 私の考えでは、マジックの複雑さの中で占めている空間の期待に本当に応えていないメカニズムの例として、族系光輝窮地憑依などが挙げられます。これらの多くは面白い動きをしますが、かなり複雑であり、それらの存在を正当化するほど十分なものをゲーム・プレイに加えません――繰り返しますが私の考えでは、です。これは、これらのメカニズムが存在しなかったほうが世界が良くなると言っているわけではありません。しかし私は、我々が何とかしてもっと分かりやすくゲーム・プレイ全体に良い影響を持ったメカニズムを見つければ良かったと思います。カード上の空間を適正化するメカニズムを作る方法を見つけ出すことは、マジックのデザインとデベロップの最大の挑戦の1つです。これは言うほど簡単なことではありません。

シンプルな喜び

 マジックの最良のメカニズムの一部は最も単純で常磐木メカニズムになっています。それらを当然とするのは簡単ですが、多くのゲーム・プレイが飛行、トランプル、速攻、警戒、そして先制攻撃のような最も基本的なメカニズムによって決まっています。我々が何度もそれらを使うので、マジックがそれらからどれだけ有用性を得ているかを忘れるのは簡単なことです。しかし我々がこれらの常磐木メカニズムを使わずにセットを1つ作れば、どれだけこれらのメカニズム全てがマジックのクリーチャー戦の基本的なパラメータを定めているかがとてもはっきりするだろうと思います。これらのメカニズムは、他のキーワード能力がマジックをどのセットでも同じであり、また異なってもいると感じられるようにする、十分なスパイスを加えることを可能にします。

 私の考えでは、果敢を最も素晴らしい成功に導いた方法の1つは、それがとてもシンプルでありながら、しかし攻撃やブロック、手札とマナの温存、そしてデッキ構築に影響を与えたことです。果敢を持ったカード単体では変異クリーチャーのような盤面の複雑さを加えることはありませんが、それをコントロールするプレイヤーにクリーチャーを守るために戦闘中に《果敢な一撃》や《運命編み》を使うことを可能にさせます。もしくは《ジェスカイの学徒》とマナを立てていれば、2体の変異で攻撃すると1体を簡単に倒されてしまうリスクを与えて踏みとどまらせることも可能にさせます。果敢クリーチャーはあらゆるインスタントをコンバット・トリックに変え、我々の求めている「ジェスカイは狡知の氏族である」ということを感じさせるものを具現化します。

 我々がメカニズムが本当に成功しているかを見る測定基準の1つは、それらが構築フォーマットとリミテッドの両方のデッキ作成にどのように影響を与えるかを見ることです。例えば上陸は、デッキにフェッチランドと一緒にデッキにアグレッシブなクリーチャーを入れることを推すことで構築フォーマットに影響を与えましたが、『ゼンディカー』リミテッドのデッキ作成にはほとんど影響を与えませんでした――ほとんどのアグレッシブなデッキが、恐らく通常よりも多くの土地をプレイすること以外は。一方、果敢はプレイヤーにそのデッキの土地とクリーチャーとそれ以外の呪文の比率に関して多くのことを考えさせました。私は我々が果敢の構築フォーマット用デッキを作ったときに、単にカードを引くためや除去のためだけではない、《急報》や《ヘリオッドの槍》のようなクリーチャーでないカードに大きく注目したことは分かっていました。

適正なバランスを見つけ出す

 果敢に取り組む上でデベロップが苦労したことの1つは、魅力的かつ適正なパワー・レベルを見つけることでした。我々が果敢(当時はカンフーと呼ばれていました)に取り組み始めたとき、初期のデザインの多くを一見よく似ていた『ゼンディカー』の+2/+2する上陸クリーチャーを元にしていました。しかしながら1つ大きく違うのは、我々が『ゼンディカー』の上陸に取り組んでいたときは、軽いクリーチャーが毎ターン上陸するのは簡単だったことでした。例えば《ステップのオオヤマネコ》はゲームの大部分で1マナ2/3として存在していました。プレイヤーは自分自身が毎ターン土地をプレイするところを思い浮かべるのはとても簡単であり、そしてフェッチランドに書かれていることは明らかに強力でした。それらはマナ・カーブに沿って上陸クリーチャーを出しながら毎ターン上陸を可能としたので、見た目以上に強力でした。一方、マナ・カーブに沿って果敢クリーチャーを出しながら毎ターン果敢を誘発させるのは基本的に不可能です。

 果敢に取り組んでいるときに、プレイヤーが毎ターンクリーチャーでない呪文を唱えるのを想定するのは難しいことが分かりました。そしてデベロップが果敢カードに適正な数字を予想して調整を行ったとき、とても弱そうに見えるという意見をもらいました。さて、デベロップの仕事は物事を適正なパワー・レベルであるようにすることですが、正確だからといって弱そうに見えることは望んでいません。上陸と果敢の違いの1つは、リミテッドでプレイヤーが毎ターン土地を1枚場に出すのはとても簡単ですが、2枚は難しいため、構築とリミテッドの両方に適正なパワー・レベルのカードが得られました。一方、リミテッドで毎ターンクリーチャーでない呪文を1つ唱えるのは一般的ではなく、2枚以上となると非常に困難です。我々は果敢を+1/+1ではなく+2/+2にしようと試みましたが、上陸が基本的にソーサリー速度なのでその大きなボーナスがリミテッドに良く合っていたこと、そして果敢は1ターンに2回インスタントを唱えたゲームにおいて我々が求めた以上に強いことがすぐに分かりました。

 結局、我々は「クリーチャーでない呪文」と「+1/+1」が果敢クリーチャーに適正な数字であると分かり、このキーワード能力をいじくり回すのではなく、これを持たせるのに適正なクリーチャーを探しました。上陸クリーチャーのようにするのではなく、我々はそれらのクリーチャーにとても質のいいサイズを与えました。例えば《道の探求者》は果敢なしでは構築レベルより少し劣ると考えられますが、果敢を得て適正な範囲になりました。また我々は対戦相手のブロックの判断をもう少し難しくするために、果敢クリーチャーにもう少し追加のタフネスを与え、そして果敢の誘発が守るクリーチャーの数を可能な限り最大にしました。

 最終的に、我々は果敢をリミテッドで間違いなく強力であるところに持って行き、最終的にスタンダードでも果敢を持ったカードが影響を持つと信じられるだけの見込みがあるようにできたと思います。実際に《僧院の速槍》が既にレガシー、軽いキャントリップのたくさんあるフォーマットで成果を上げています。将来果敢を持ったカードがいくつかモダンで見かけられるようになったとしても、私は驚かないでしょう。

 今週はここまでです。来週はアンコモンのデベロップについて、そしてそのレアリティの恩恵と挑戦についてお話ししようと思います。

 ではまた来週お会いしましょう。

サムより (@samstod)

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