READING

開発秘話

Latest Developments -デベロップ最先端-

一問一答への旅

authorpic_samstoddard.jpg

一問一答への旅

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2014年4月25日


 皆さんが『ニクスへの旅』のプレリリースの準備をするのに合わせて、今週は私のTwitterに寄せられた『ニクスへの旅』やデベロップ全般に関する質問のうちいくつかにお答えしようと思います。

一問一答をやります!『ニクスへの旅』やデベロップ全般の質問があれば私までお送りください。


@samstod どんなマナ基盤にするかはどうやって決めてるんだ? 何で定番の《エルフの神秘家》じゃなくて2マナのマナ・クリーチャーなんだ?


 総論として、我々はスタンダードに1マナのマナ加速がありすぎる状態からゆっくりと離れていっています。マジックとその色のバランス取りという中にはそれらのマナ・カーブをどう設定するかを決めることがあり、緑の全ての3マナ・クリーチャーが2ターン目に出てくるという仮定でバランスを取る場合、大量の1マナのマナ加速を使うデッキしか存在しにくくなります。そうしたデッキを使ってさえ、1マナの加速をプレイしてそれが死ななかった場合と、それが死んだことで堅実さを失う場合で、緑デッキの動きに格差が生じます。緑の力がそれほど1マナ加速に頼っていない場合、我々は他の場所に重点を置くことで、緑のマナ・カーブをもう少し興味深いものにすることができます。

 基本的に、スタンダードで1マナ加速がいなくなったところを見たことはありませんが、3種類の異なる1マナ加速が存在した『イニストラード』〜『基本セット2014』環境のようなスタンダードは多分もうないでしょう。


一問一答をやります!『ニクスへの旅』やデベロップ全般の質問があれば私までお送りください。


@samstod ミノタウルス部族は全てのロードで推されているのは明白。何故これらを支える軽いミノタウルスがほとんどないのか?


 その理由の大部分は、クリエイティブがミノタウルスのサイズに制限を課したことによるものです――パワーとタフネスの合計を最低でも5にするよう多くの圧力がかかりました。『神々の軍勢』と『ニクスへの旅』が出てきた時に、デベロップは何とかして軽いミノタウルスを何種類か作りましたが、1マナのものを作ることを正当化するのはとても困難でした。今考えれば、全体的に見て確かに、ミノタウルス・デッキのマナ・カーブを満たすことは我々がもっと上手い方法を見つけられたはずの事柄の1つでしたが、我々がセットに取り組む時間は本当に限られていて(特にアートの発注前となると)、これは途中で挫折した事柄の1つにもなったのです。

ld_wk16_296_cardartcropped_felhidepetrifier.jpg

一問一答をやります!『ニクスへの旅』やデベロップ全般の質問があれば私までお送りください。


@samstod 星座でやりたかったけどカード・パワーの問題でできなかったことはありますか? あと何で《血清の幻視》とか{U}のキャントリップがないんですか?

 最初の質問について――たくさんあります。星座は、エンチャントだけが持っている、エンチャントが戦場に出たときに誘発する特殊な能力で、従って我々は満足行く範囲にそれを収めるのに注意する必要がありました。これは親和の抱えていた、親和(アーティファクト)を持ったアーティファクト・カードが他の親和(アーティファクト)を持った呪文を軽くしてしまうという問題に似ています。1〜2マナの星座持ちが多いと、ゲーム中に何度も誘発するせいでひどく面倒な、信じられないほど小さな効果を持つことになるでしょう。我々は強力な効果の大部分をよりコストの高い(4マナ以上)クリーチャーで起こすことに決め、それらの能力を誘発させるために星座カード以外を必要とした星座デッキを存在させることができました。それらは依然として《開花の幻霊》でカードを引くために《マナの花》や《安全の領域》を使うことができますが、星座クリーチャーを対処された場合にはある種の脆さが出てしまいます。

 {U}のキャントリップについては、新しいカードを作るとモダンで問題を起こすかもしれないだけでなく、スタンダードに必要だと感じませんでした――ので省かれました。


一問一答をやります!『ニクスへの旅』やデベロップ全般の質問があれば私までお送りください。


@samstod 「完全上位互換」(《鋤引きの雄牛》と《ラゴンナ団の先駆者》)が同じブロックにいることについてどう思ってますか?


 それは最適とは言えず、実際内部でも論争の大きなポイントになっていました。我々は毎セットごとににバニラ・クリーチャーを(少なくとも1色につき1つ)入れるのが好きで、そうすることで問題の発生を我々自身で防いでいることを意味しています。もし白の2マナ域に常に《旅する哲人》よりも弱いものを作らなければならない場合、どんなバニラを最初のセットに入れか考えることしか選択肢がないのです。

 結局、そのブロックが進行するにつれて、我々はリミテッドと構築に必要なカードを作っていきます。我々は《ラゴンナ団の先駆者》はその位置に適正なカードで、0/3英雄的はそうではないと感じました。


一問一答をやります!『ニクスへの旅』やデベロップ全般の質問があれば私までお送りください。


@samstod リミテッドや構築のランダム性を調整するためにどんな基準に従ったり、どんな手段を使っていますか? 全体的にランダム性についてどう考えていますか?


 特別な基準はありませんが、リミテッドのパワー・バランスのために多くを試み、ランダム性を高めるために最も強力なカードを高いレアリティにしています。《シヴ山のドラゴン》や《大型化》のようなカードは、健全なリミテッドのゲームを行いアドバンテージを取っていくようなことをしなくても、勝てる方法を作り出す爆弾カードの典型例です。

 構築において、我々の目的は、異なるアーキタイプのデッキが十分な数存在し環境が常に変化し続けることと、誰もが自分の得意とするものを見つけられることです。その中で、我々はハイリスク・ハイリターンなデッキ(去年のナヤ・ブリッツを考えて下さい)や、安定性のとても高いデッキ(一般的にはコントロール・デッキです)や、その中間のものがあってほしいと思っています。プレイヤー達が安定性の高いデッキや低いデッキを使いたいのであれば、彼らはそうできます。

 マジックにおける運と実力の全体的なバランスは、我々がそれらにどうあってほしいかが関係していると考えています。運と実力のバランスが取れていることで、経験の少ないプレイヤーが常に負けっぱなしになるわけではありませんが、トップレベルのイベントの結果を見ても運ゲーだとは感じません。プロツアーやグランプリのトップ8を見てみると、その顔ぶれはプロ・プレイヤーと勝ち上がってきた新星の健全な比率になっている傾向にあります。レイド・デューク/Reid Dukeやウィリアム・ジェンセン/William Jensen、オーウェン・ツァーテンウェルド/Owen Turtenwaldらをひとまとめとして北米のグランプリのトップ8を見るならば、努力を惜しまなければ常に結果を残せると示されていると思います。

一問一答をやります!『ニクスへの旅』やデベロップ全般の質問があれば私までお送りください。


@samstod デザインの仕事がいい出来だった場合は修正箇所が多い場合よりもデベロップの仕事量は少なくなる?


 修正箇所による場合はまれで、より大事なのはデザインが良いメカニズムと魅力的なレアのあるセットを送ってくるかどうか――これがデベロップで作るのが難しい2つのものです。そのセットのコモンとアンコモンの大部分はリミテッドのプレイに適応するようにたくさん変更されることになり、従ってデザインがそれらのための優れた枠組を持っていれば、その後にデベロップが修正を加えるのはかなり簡単なのです。

 メカニズムがデベロップにとって困難なのは時間が原因です――我々はイラストを決定し始めてから数週間しか時間がなく、そして我々がそのメカニズムの1つが上手くいかないことを心配した場合、それらのカードのイラスト発注を後回しにしなければなりません。またそれはリミテッドのプレイテストに重大な影響を及ぼし、その範囲は我々が行うテストの大部分に及びます。幸運にも、デザインとデベロップの間にある「デヴァイン」期間は、大抵の場合問題を抱えているメカニズムを特定するのにとても役立ち、デザイン・チームがそのセットのデベロップが本格的に始まる前に答えを考え出すようにします。

 レアに関しては、デベロップはしばしば単体でクールであることよりも上手くプレイできるカードや役割を埋めるカードに焦点を当てるので、デザインから送られる適切な調整が可能なとてもクールなカードは正に「神」の「送り」物と言えます。そうでなければ、そのセットはメタゲームで必要な役割はこなしてもフレーバーに欠けるカードばかりになってしまうでしょう。

一問一答をやります!『ニクスへの旅』やデベロップ全般の質問があれば私までお送りください。


@samstod @maro254が以前「『テーロス』の《エファラの管理人》のようなカードはシールドやドラフトで大艦巨砲主義的な英雄的戦略を推奨するために作られたのだ」と発言していたのですが(続く)


@samstod 《アクロスの猛犬》はこの方針に反したこれらのカードに対する制限がない対策です。これにはどんな理由があるのですか?


 確かに我々は『テーロス』3つの環境においてはそうしましたが、『ニクスへの旅』によってゲーム・プレイのペースを変えるためにわざとそこから離れました。『テーロス』の背景にあるコンセプトは「クリーチャーを詰め込んで合体ロボを作ろう」だったのですが、それほど深さがあるわけではありませんでした。我々はこのブロックを通して、単に新しい合体パーツを追加するだけでない、他の何かにゲーム・プレイを進化させたかったので、このセットに《アクロスの猛犬》のようなカードを加え、ただクリーチャーを大きくしようとするだけのプレイヤーを咎め、そしてより広く並べる戦略がこのブロックの終わりまでに存在できるようにしました。

 今回はここまでです。もしあなたが今後の一問一答に投げてみたい質問をお持ちでしたら、私まで送ってください。

 ではまた来週お会いしましょう。

サム(@samstod)より

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索