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ドラゴン、ドラゴン......猫ドラゴン

Gavin Verhey / Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing

2017年8月8日

原文はこちら

 まだ信じられないが、ようやくここまできた。

 『統率者(2017年版)』のデザインが始まったのは、2015年11月10日だ。

 ブライアン・ホーレー/Bryan Hawleyのデベロップ・チームにこのセットを提出したのが2016年3月14日。

 この仕事が始まって以来、このセットにとても素晴らしいカードが数多く収録されていくのを私は見続けてきた。どれだけ素晴らしいものであるかを誰でもいいから伝えたい、という欲求が常にあった。しかし私はそれらを秘匿しなければならなかった。

 今まではね。

 いよいよだ。ついに来た。

 2017年8月8日。『統率者(2017年版)』について話せる最初の日だ。

 そして、話すべきことはいくつもあると思う。

 何から始めようか?

 そうだな、デザイン初日に私が知った3つの事柄について話すことから始めるのはどうかな。

1.私のチームの素晴らしさについて

 私は、私のデザイン・チームが優秀である、ということをすぐさま理解した。どんなメンバーか、って? ああ、紹介させてくれ!

ガヴィン・ヴァーヘイ/Gavin Verhey(リード)
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 『Archenemy: Nicol Bolas』のデザイン・リードを務めた直後、私は『統率者(2017年版)』に関わる機会を得た――とても嬉しかったさ! (『Archenemy: Nicol Bolas』では新しい計略を作るのみだったので、)これは私にとって、マジックの新しいカードを生み出す内容が含まれるものとしては初めてのデザイン・リードとなるセットであり、その作業を行う上で『統率者(2017年版)』は最適なものだった。そしてセットを最も素晴らしいものとするため(それと、とんでもないカードを生み出してしまう深みにはまりすぎないよう)、最高のチームが一緒に中身を作り上げてくれた。

面白い事実:私がウィザーズの開発部で仕事をしたいと思ったのは11歳の時だ。そして今、私はここでセットのリードをしている! どうもどうも!


マーク・ゴットリーブ/Mark Gottlieb
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 マジックの開発部に数多くいるマークの一人、ゴットリーブは、この会社で長年にわたって信じられないほどのデザイン能力を発揮してきている。ルール・マネージャーでもありデザイナーでもあるという強固な土台があるため、彼は何がうまくいき、何がうまくいかないかを適切に判断することが可能だ。私がリードする中で、チームがその専門的な知識の援助を受けられるという点から、彼はかけがえのない存在だった。

 何がよくて何がうまくいっていないのか、自分のデッキからそれらを把握していく彼の驚くべき手腕を、あなたも知ることができるだろう。この『統率者』チームでは、全員がデッキを1つデザインしている――つまり、各々が自分のデッキでプレイテストを行い、それを改善していくことに集中したということだ。私自身は全員のデッキを管理していたが、チームのメンバーはそれぞれ自分のデッキについて微調整したり新しいカードを試してみることができる。マークのデッキは猫デッキだった!(猫デッキについて知らないのであれば、昨日公開されたマーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterの記事を見よう。)マークが猫デッキを提示してきたとき、みんなはそれに疑念を持っていたが、彼の本能はそれが人を引き付けるデッキだと告げていた――そしてマークは全面的に正しかった!

面白い事実:皮肉にも、デザイン期間にチーム内で最もやりすぎなメカニズムを提示してきたのはマークだったが、それは最終的には採用されずに終わった。(詳しくは別の機会に話したい。)


ベン・ヘイズ/Ben Heyes
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 ベンは、ゲーム・デザインにおいてとりわけ必要とされる技術とアート、その両方のバランスを保てる人物だ。私は、彼が極めて優れたトップダウン・デザインを思いつく様子を見てきているが、彼はそれと同時に、セットの働きを把握するためにスプレッドシートをかみ砕く作業もこなしている。過去の『統率者』セットにかかわり、『統率者(2016年版)』のリードも務めた彼の経験は、我々が『統率者(2017年版)』のために行った多くのことを形とする助けになった。

 このチームでは、ベンがデベロップとの窓口となり、デザイン・チームがデベロップ・チームと協力してメカニズムやカードを作れるように尽力した――このセットのためにそのデザイン能力を発揮しながらね! その工程の後半でベンは、リード・デベロッパーのブライアン・ホーレーに協力するためデベロップ・チームへと異動した、という話を明日聞けるだろう。(彼に自己紹介をしてもらうつもりだ。)

 ベンは今日紹介するデッキのデザイナーでもある!

面白い事実:ベンと私は、何年も前から一緒に仕事をしている――ウィザーズに来るずっと前からね。プロツアー・サンファン2010開催前夜、私は自分自身が手掛けたローグ・デッキのリストを彼に手渡した......すると彼はそれを用いた構築戦で全勝してみせたんだ! プロツアーからマジックの開発に至るまで、彼と私は長い間お互いにカードのやり取りをしてきたのさ。


ジュール・ロビンス/Jules Robins
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 ジュールは開発部で最も信頼できる人物のひとりだ。彼に企画を渡せば、難なくこなしてくれる――私の要望より10%多い成果を引っ提げてね。よくあることなんだが、カードのアイデアについて彼とやり取りしなければならない状況とあれば、彼自身が逼迫している状態だと断言できる時でさえ、協力するための時間を作ってくれる。彼の仕事ぶりにはすぐさま感心させられることとなったので、開発部に常駐してもらえるのは喜ばしいことだ。

 それと彼は会話中、思いつくたびに言葉のもじりやダジャレを挟んでくるところがあって、私はそれが総合的には確かに良い結果につながっていると思っている。

 『統率者(2017年版)』で一緒に働き始めた時、ジュールはまだ新人だったけれども、今や開発部のニューフェイスと言える時期はとっくに過ぎ去っている。現在、彼の席は私のすぐ隣だ。ジュールがウィザーズに加わって以来、私がリードしてきた(まだ発表されていないものも含んでいる)すべてのデザイン・プロジェクト・チームにジュールが参加していることを考えると、とてもやりやすい環境だね。したがって、この相関関係から以下のことが導き出される。私が担当したセットを気に入ってくれたなら、私のおかげ。気に入らないとすれば、彼のせいだ。(ちょっとしたジョークだよ。後者もおそらく私のせいだね。)

 ジュールがデザインしたデッキについてはまだ秘密だ――知りたければ今週の記事をチェックしていこう!

面白い事実:ジュール・ロビンスと出会った後、彼があまりにも信頼できるので、私が持っているナマケモノのぬいぐるみにジュールと名付けた。それについて話すと長くなるので置いておく。


ケリー・ディグス/Kelly Digges(クリエイティブ代理)
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 ケリーはフルタイムのチーム・メンバーではなかったので、会議やプレイテストには来なかった。しかし彼が行った、途方もなく価値のある仕事がある。それはセットのほとんどのカードのフレイバーを作り上げたことだ。つまり、みんなに披露するための新しい登場人物を想像する、私が作りたいと思っていたとんでもないカードの実現を考えつく、そして個人的にお気に入りな点として、昔の登場人物を登場させるためのカードを作り出す、という成果を生み出したことになる。(例えば、私は新しいミリーの制作を可能としてくれたことをとても喜んでいる。)

 ケリーは総合的なクリエイティブの権威で、彼に頼るためにそのデスクまで行って奇妙な質問を投げかけたときに見せてくれるその意欲はありがたい。後で分かる通り、このやり取りこそが、このセットでの私のお気に入りとなった1枚のカードを生み出したんだ。

面白い事実:機会があれば、ケリーにストーリーを語ってもらうといい。どの話でもかまわない。20分後には、床に座り込んであごを手に乗せ、マジックのこれまでのストーリーに思いをはせている自分自身に気付くだろう。すごいんだよ。ケリーの机へちょっとした質問をしに行ったのだが、最終的にホマリッド戦争の話に聞き入ってしまい、会議に遅れてしまった、というようなことが何度かあるくらいね。誰かのためにウィキペディアがあるように、我々にはケリーがいる。

2.4つのデッキでやることについて

 これまでの『統率者』シリーズでは通常5つのデッキが登場したのに、今年は4つだということに気付いたかもしれない。なぜだろうか?

 そうだな、あなたが知らないかもしれない、開発部のチームについての話をしよう。

 マジックの開発部は、いくつかのチームが組み合わさっている。デザインやプレイ・デザイン、そして調査デザインについてすら知っている人もいるだろう。しかしめったに話題に上らないが非常に重要なチームとして、プロダクト・アーキテクチャー・チームの存在がある。

 そのチームは、グレート・デザイナー・サーチ仲間であるマーク・グローバス/Mark Globusが率いている。プロダクト・アーキテクチャーの目標の1つは、セットを幅広い視点から眺めて、伝えたい内容を絞って特徴が伝わるようにリリースすること、そしてもっとも重要な点は、1万フィート離れた位置からの眺めでも、我々がそれで何をしているのかわかるようにする、ということだ。

 このチームが数多くのリサーチを終えたのちに決定したことの1つが、今年はデッキの数を4つにするということだった。なぜ5つではなく4つに? 統率者戦を新しく始めるプレイヤーに最高の体験を与えるには、4人で対戦してもらうのが一番だと我々が考えているからであり、デッキを4つリリースすることは、それが新規プレイヤーにとって最高の体験であるという考えを形にしたものだ。それに、新しいカードを追加することで各デッキをより盛り上がるものにしたいとも考えていた。

 そう。今回は各デッキに新カードを追加する! 私は新カードの枚数を減らさないことがとても大事だと感じていたが、実際に『統率者(2017年版)』には『統率者(2016年版)』と同じ数の新カードが採用されている――各デッキは新しくもさらに魅力的なものとなったぞ!

 とはいうものの、それは挑戦だった。これまではデッキを色ごとに分けて、各デッキに1枚となるカードのサイクルもあった。しかし今回はすんなりとはいかない。(『統率者(2014年版)』のようにデッキを各色ごとに分けたり、『統率者(2016年版)』のようにそれぞれ1色が抜けたデッキにする、というような方法で)単にデッキを色ごとに分ければいいとはならないし、カードを5色分のサイクルで作ろうとすると、必然的にどれか1つのデッキに2枚入ることとなってしまう。

 これをうまく解決したのが、私が知った3つ目の事柄で......

3.部族デッキでやることについて!

 プロダクト・アーキテクチャーが把握したもう1つの点は、5つのデッキという手法から離れた場合、デッキを作るための新しい手法が必要になる、ということだった。これまでは色を用いていた。5という数字はマジックにおける黄金比だ。単色、2色、3色、さらには4色の組み合わせですら全てうまく機能する。しかし色の組み合わせについてほとんど使い切ってしまったという理由から言っても、ちょうどよい転換期だったと思う。

 そうして、彼らがたどりついた別の優れた解決策こそが、色ではなくテーマでデッキを構築するという方法なんだ。

 そう、『統率者(2017年版)』からの『統率者』セットは、色ではなくテーマに沿ったデッキとなる予定だ。

 そしてこの時点では、ショーン・メイン/Shawn Main(惜しまれながら会社を去った――しかしながら、『破滅の刻』をしっかりリリースしてくれた!)が立てたこの計画は、他の商品ラインナップや今後の『統率者』セットのことを考えれば、最も理にかなった結論だったと思われる。

 彼の計画? 部族さ!

部族(Tribal)

〔形〕クリーチャーの特定のサブタイプを参照する効果を持つ。部族デッキは、1つだけのサブタイプを持つクリーチャーを使って構築されることが多く、通常はそのタイプのクリーチャーをそれぞれ強化したり、あるいはそのタイプのクリーチャーの数によって拡大するようなカード(《威厳あるカラカル》や《誇り高き君主》など)何種かを中心にする。

 ああ、この判断は即決できるものではなかった。私と私のデザイン・チームがこの発想を掘り下げ、成功の見込みが全くないと判明したならば、彼にもう一度別の案を考えなければいけないと伝えることになる。

 しかし今回は、逆の結果となった。

 部族はその骨の周りにたっぷりと肉をまとっていて、それを題材にセットを作れる、ということがすぐに判明したからね。今までにも部族統率者デッキは組まれてきているものだし、そのプレイヤーに追加の素材を渡せるのは素敵なことだ。

 さて、これがデザイン初日。これらが我々が知りえた3つの事柄となる。

 それで?


みんなのための部族デッキ

 私たちが最初に取り組んだのは、どの部族デッキを組むかの判断だった。よい選択肢はいくらでもあった――そして、全てが公開されてからの来週には、それぞれをどのように選択したかについて話すつもりだ!(絶対にね!)

 しかし我々が最初に議論したことがもう1点あった。プレイヤーの好きな部族がどれであっても役に立つカードを入れることがいかに重要か、ということだ。今回は4つのデッキで4つの部族をサポートしたが、マジックにはもっともっと多くのクリーチャー・タイプが存在する。なので私は、プレイヤーの好きな部族がバーバリアンであってもビーストであっても、射手であってもエイヴンであっても、お気に入りの部族デッキを組むためのさらなる道具が手に入るようにしたかった。

 したがって、これらのデッキは部族デッキであり、かつ特定のクリーチャー・タイプ向けの部族カード数枚を特色としてはいるものの、それぞれのデッキにはどんな部族デッキであってもその色を使っているなら採用できるカードというものも含まれている。

 それは我々が初期に議論した事柄の1つにもつながっている。あるコモンについてだ。

 各『統率者』セットには、各デッキ共通のコモンカードが1枚用意されていた。そして私は、それもテーマに合わせたいと思ったんだ。全員が数枚ずつカードをデザインし、マーク・ゴットリーブがそれを1つに絞った。

 我々はそれを試しはじめたが、それは明らかに成功だった。これからの統率者戦で、みんながよく見るカードになると思う。

 いよいよだ。ついに『統率者(2017年版)』のカードを紹介できる。これを書いている手が震えるよ。(よくある表現ってだけじゃない。興奮のあまり本当に震えているんだ。)

 さあ行こう。世界は、《祖先の道》を得た。

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 色を整えるだけでなく、占術を何度も繰り返せる? いやあ、このカードは定番になるんじゃないかな。

 最低でも、あなたが統率者を唱えるたびに占術できる。(統率者がプレインズウォーカーでなければね。すまない、『統率者(2014年版)』!)同じクリーチャー・タイプを持つカードをデッキに満載するだけで――通常は簡単に実現可能だ――ゲーム進行中に何度も占術が使用可能だ。そうだな、例えば、統率者がたまたま人間だったとしても、そのまま支障なくデッキに入れられる人間の数というものは多くないかもしれない。

 しかし全力の部族デッキを組むとしたらどうだろう? とんでもないことになるね! 色マナを整えながら、ほぼ毎ターン占術できるようになる。基本的には同じクリーチャー・タイプを持つカードをさらに見つけたいわけだから、部族デッキにとって占術は最高のボーナスだ......しかも結果的には繰り返し占術し続けられる!

 ああ、それから去年のメカニズム、共闘との相性も抜群だって話はしたかな? 統率者2人でクリーチャー・タイプを4つ準備できる――バァーン!

 《祖先の道》は素晴らしいということが分かった......そして必須カードだということも分かった。

 なぜかって? 部族デッキには、必然的に大きく目立つ問題点が2つ発生するからだ。

 1つ目。統率者戦で大量のクリーチャーを展開することは、極めて危険だ。全体除去呪文が大量に存在するフォーマットなので、手札を使い切ってから《神の怒り/Wrath of God(EMA)》1枚に出遭うだけでも、立ち直れなくなるかもしれない。

 2つ目。部族シナジーを機能させるためには、デッキに大量にクリーチャーを入れる必要があり、結果としてデッキに入れる非クリーチャー呪文が切実な問題となる。統率者デッキが通常用いるような、驚異的な非クリーチャー呪文を満足に入れるほどの枠が用意できなくなる。その格差を埋めるためにも、部族ボーナスのあるカードが必要となるわけだ。

 そしてありがたいことに、『統率者(2017年版)』は部族デッキを援護してくれる。

 我々が早期に思いついた他のものとしては、部族重視のデッキであれば極めて強力な、非クリーチャー・カード5枚のサイクルがある。部族を問わず、同じタイプのクリーチャーをたくさん採用しているなら、素晴らしいものとなるだろう。

 今日紹介するデッキから1枚お見せしよう(待っていてくれ――どんなデッキかはすぐにわかる)。

 カードを引くのは好きだよね? であれば《同族の発見》を見てくれ!

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 部族デッキを使うと全体除去を撃たれそうで不安かな? その部族のすべてのクリーチャーが最低でもカードを1枚引いてくれるなら、心労は大したことないだろう。そのクリーチャーが残れば、攻撃でさらにカードを引ける。

 そしてそれは、トークンの束を生み出すときに何が起こるかについてまだ触れていない! ゴブリン・デッキの《軍族童の突発/Hordeling Outburst(KTK)》は「カードを3枚引き、1/1を3体生成する」になる。エルドラージ・デッキに入れればすべてのエルドラージ・落とし子とエルドラージ・末裔でカードが引ける。そして、ああ、この世界のどこかの誰かが、エレメンタル・デッキで《火猫の襲撃/Firecat Blitz(JUD)》と一緒に使ってくれることを願うよ。

 《同族の発見》は青い部族デッキの土台となるだろうし、他の4枚も使っているところをかなり見かけるようになると思う。注目していてくれ!

ドラゴンに勝るものなし

 昨日あなたは、猫デッキについて知ったはずだ。中には驚いた人もいるだろう。ともあれ、緑白の猫デッキはマジックの部族として最も象徴的なものだとは言えない。(とはいうものの、最も素晴らしいものの1つであることに間違いはなく、このセットに採用できたことを嬉しく思っている。)

 その逆側を見てみよう。

 私にとっての『統率者(2017年版)』の目的の1つは、素晴らしい、かつ意外なデッキを最低1つは送り出すことで、その一部は猫が担った。しかし同様に、素晴らしい、かつ人気の中心にあるデッキも1つは作りたかった。

 では、そのデッキについて教えよう。伝えるのは4つの単語だ。

 5

 色

 ド
 ラ
 ゴ
 ン

 !

(感嘆符もまぎれもなく単語である、ということは念押ししなければならないだろう。)


アート:Jaime Jones

 我々はこれまで色のサイクルを使って5つのデッキを提供してきたため、5色のデッキを作ることができなかった。5色のデッキを5つ作るのはちょっと問題だが、色の制限を取り払うことで、5色デッキがメニューに戻ってきたぞ!

 我々は5色デッキが成立する可能性を秘めたデッキをいくつか調べてみた。5色すべてに存在するため、我々が考慮したものの1つがエレメンタルだ。スリヴァーは人気のある選択肢だが、2人が同じデッキを買って対戦すると悪夢のような状態に陥ることが分かった。同様にスピリットも検討された。(そして最終的には、スピリット・デッキを組みたいプレイヤーのために、5色ドラゴンの統率者の1つはスピリットでもあるようにした。)

 しかし実際のところ、かっこいいドラゴンというアピールを上回るものはない。ドラゴンは間違いなくマジックで最も人気のあるクリーチャーだ。誰もが好きなのは――魅力的なドラゴンを1つのデッキに山ほど詰め込むことだ。

 『統率者(2017年版)』の各デッキは部族テーマをメインとしているが、もし部族に興味がないとしても、それぞれにサブテーマが設定されているため、デッキにそれらのクールな新カードを採用することもできる。例えば、猫デッキには装備品のサブテーマがあるぞ。

 ドラゴンのサブテーマは? ランプだ! ドラゴンとランプ呪文の組み合わせ――何か気に入らないところでもあるかな?

 ドラゴンの話をするのだから、それらを少し見ていこう!

威光の届く範囲

 我々がデザインにおいて解決しなければならなかった大きな課題の1つは、部族デッキについて回るいくつかの問題点に対処することだった。我々はすでにそのうちの1つ、部族デッキを組むために必要なクリーチャーの量が、統率者戦で成功する傾向にあるものとは相容れない、ということについては議論済みだった。

 部族デッキを構築する時に出てくるもう1つの問題は、普段の統率者戦では採用しないようなカードをデッキに多く採用しなければならない、というものだ。例えば猫デッキを組むとして、最初の数枚は素晴らしい猫を用意できる。しかし最後のほうでは、大したことのない猫がいくつか入ってしまうだろう。つまり、それでも使いたいと思わせるほどの、さらなる魅力が必要になるということだ。それに加えて、クリーチャーを十分入れられるようにもしたい。

 我々はいくつか異なるメカニズムを調査し、ようやく部族を使いたいと思わせるに足る、デッキ全体に影響を与えるものを見いだした。その素晴らしいカードは1枚だけじゃないぞ――そして、それを統率者とするだけで、デッキすべてがより素晴らしいものになるんだ。

 デザイン上ではそれを「コーチ/coach」と呼んでいだ。そしてそれは「威光/eminence」として知られることになる。

 威光を持つカードを見てみよう。

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 まず何よりも、驚きが先に来る。なんてデカさだ! 大きさを強調するために、周りの空に鳥を飛ばす表現は、たまにある。が、なんといっても飛んでいるのは鳥じゃなくてドラゴンなんだ!

 そして次に言うべきことは......ようやく《始祖ドラゴン》をカード化できたことに大興奮している! 『インベイジョン』の小説を読んで《ドロマーの従者/Dromar's Attendant(INV)》を見てからずっと、心の奥で《始祖ドラゴン》のことを忘れずにいた。だからケリーがこのセットに採用する選択肢として《始祖ドラゴン》を――多元宇宙すべてのドラゴン族の原点を――提案したとき、私はすぐに乗ったんだ。《始祖ドラゴンの末裔/Scion of the Ur-Dragon(TSP)》と一緒に使うのも素晴らしく、フレイバー的にもうまくいった。

 よし、では威光について話そう。

 それは部族を前面かつ中心へと押し出し、デッキが高らかに部族を名乗るようになり、部族特有のゲームプレイをも生み出すものだ。威光を持つクリーチャーを統率者として用いる全てのゲームで、その部族を意識するようになるだろう。素晴らしいね。

 さて、威光を昔のカードと比べているプレイヤーもいるんじゃないかと思う。こいつとね。

 私はアローロが特にお気に入りというわけではない。統率領域からボーナスを与えるという範囲に存在する、もう1人というだけだ。それで、与えてくれるものは? アローロは好きじゃないが、威光をセットに採用できたのは喜ばしいと私が思っているのはなぜだろうか?

 ああ、そこには大きな違いがある。

 アローロはどんなデッキの統率領域にいても機能し、デッキが何をするかにかかわらず毎ターン少しずつ何かを提供する。そこにデッキ構築の制限はない。

 一方で、威光はうまく使うために工夫を必要とする。一定の方向性に従ってデッキを構築するというコストを払うことになる。それに加えて、単純に毎ターンライフを与えるアローロとは違い、威光は使うカードに影響を与える。それでいて、その影響を取り除くことが難しい。ああ、ドラゴンをより軽いコストで使えるが、使い方は今まで通りで問題ない。あまりにもコストが重いドラゴンたちを使用可能とする助けになるはずさ。

 それと、私が目指したものについて驚きや疑問を持つ人もいるだろうから、説明しておこう。プレイヤーがどんな部族を選んでも機能する、特徴を持たない威光クリーチャーも試してみたが、最終的には採用しないことに決めた。それは良いものだったとは思うが、エキサイティングな要素を持たせつつ、どんな部族と合わせても行き過ぎにならないようにするのは極めて難しい。人気が出ればさらに新しい威光カードに挑戦することはできるが、今回はゲームプレイが妥当な範囲に収まり、かつ最も楽しくなるものを作るため、特定の部族に合わせることとした。

 ネットの掲示板で「これらが1マナ軽かったら、どっちのカードのほうが素晴らしいだろうか?」なんてスレッドを立てたことはあるかな。ああ、《始祖ドラゴン》はそんなプレイヤーの願望を叶えてくれるだろう......少なくとも、ドラゴンについてはね。デッキ構築を楽しんでくれ!

 部族について言えば、各デッキにはその色の新しい伝説の統率者が3枚ある。それぞれ、1枚は部族を強調し威光を持つもの。1枚はサブテーマ(ドラゴン・デッキの場合はランプ傾倒)を中心に構築できるもの。もう1枚は、クールでさまざまなデッキを指揮できる、より汎用的なものだ。

 これはデッキに入っている他の素敵な伝説クリーチャーを勘定に入れていない。そしてデッキの他の伝説といえば......

真のドラゴンの尻尾

 『統率者(2017年版)』から、お気に入りの話をするとしよう。

 先に述べた通り、デザインの新しい挑戦は、カードのサイクルをどうやってデッキに入れていくかを考え出すことだった。我々はどうしても、複数のデッキにまたがって顔を出すアンコモンのサイクルを最低でも1つは入れたかった。(過去の統率者セットでは、複数のデッキに同じアンコモンが入ることはあったが、すべてに共通してはいない。)しかしそこには問題があった。それをクリーチャーにしようとすれば、デッキに適したクリーチャー・タイプでなければならない。各デッキに採用できるカードの制限はほとんど無いが、そのデッキのクリーチャーは同じ部族のタイプを持っていなければならない。

 そうすると、どうすれば全てのデッキにクリーチャーのサイクルを作れるだろうか?

 我々は最初、『ローウィン』にいた変わり身を元に、新しいものを考えていた。しばらく試してみて、問題はなかったものの、使用感が少々奇妙で個性も感じられなかった。変わり身であるだけの極めて無難なカードだったせいもあり、同じ部族を補助するという目的もうまく果たせていなかった。我々が本当にやりたかったのは、1枚のカードに2つのクリーチャー・タイプを持たせて、2つのデッキに入れる、ということだった。

 我々はすべての組み合わせを調べ、それらはうまく収まった。どれもそれらしい仕上がりだ。1つを除けばね。実現するには相当おかしいものが1つ。

 緑の猫ドラゴンだ。

 チームのほとんどのメンバーは、これは無理だと感じていた。しかし私は、可能性をできるかぎり追求するため、これについて少なくともケリーと話をしておきたかった。たぶん、おそらく、私が強烈に推せば、彼は納得できるだけの解決策を見つけ出してくれるだろう。

 そこで私はそうすることにした。こんな感じの会話だったかな。

ガヴィン「やあケリー、変わり身じゃなくて、デッキの部族にまたがるタイプを持つカードを作れないかって話なんだけど」

ケリー「クリエイティブ視点でいえば、変わり身じゃないほうがいいのは間違いないね。何か気になることが?」

ガヴィン「ああ、1枚のカードに2つのクリーチャー・タイプを持たせる。組み合わせは調査済みで、ほぼすべての組み合わせは特に問題ない。そのままで十分だ。だけど、1つ......ちょっと変な組み合わせがあってね」

ケリー「......続きを」

ガヴィン「馬鹿げてるってことはわかってる。たぶん駄目だろう。だけどたぶん、おそらく、もしこれをどうにか出来るとすれば、可能性は薄いが君ができると判断するならだが、その方法はあるだろうか......(ドラマチックな溜め)猫ドラゴンってありえる?」

ケリー「(間髪入れず)ああ、そんなことか。もうドミナリアにいるよ。」

ガヴィン「......何だって?」

ケリー「ワシトラと梅澤の素晴らしい物語を知らないってこと? やあ、じゃあその話をさせてよ......」


 20分が経過し、私は次の会議に確実に遅れることとなった。

 困った時は、ケリーペディア!

 村を悩ますワシトラをどうにかしてもらうため、《Tetsuo Umezawa(LEG)》が呼ばれた。彼らは戦い、そしてその結末は......魚を捧げることで、ワシトラに村を守護してもらう、ということになった。ずいぶん昔に、小説『レジェンド』で書かれた話だそうだ。

 ああ、要求されたのは魚だ。まあ、昔のマジックの物語は奔放だからね。

 戻って猫ドラゴンが成立すると告げた時のチーム・メンバーの表情は絶対に忘れないだろうね。私がこの物語のことを話すまでは、私が猫ドラゴンの存在をでっちあげたと思ってたんじゃないかな。

 私がケリーと行った取り決めは、ドラゴン・デッキにワシトラを加えるとともに、ワシトラの同胞である猫ドラゴンを猫デッキとドラゴン・デッキの両方に入れることだった。

 デザインの過程でそれを提示するたびに、デベロップは猫ドラゴンに対して懸念を持っていた。それも当然だ。猫ドラゴンなんておかしなものに思える。しかし私のチームはそのアイデアに乗り、ゆっくりと、しかし確実に、ほとんどの関係者がそのアイデアを受け入れていった。

 結局、デベロップによりアンコモンの猫ドラゴンはカットされた。(とはいえ、タイプが重なるカード自体はそれぞれのデッキに残っている。見逃さないように!)しかし、ここまで来た時点で、みんな(ジャンド・カラーであるべき)ワシトラが好きになっていたので、ドラゴン・デッキに入れたいという思いがあった。我々は猫ドラゴンというアイデアを上手に売り込んでいたので、それがセットに入る理由を失いすべて削除された後でさえ、その遺産は残っていた。シンシア・シェパード/Cynthia Sheppardの華麗なアートで印刷されるところまでね。

 ご覧に入れよう。《ネコルーの女王、ワシトラ》だ!

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 彼女と出会ったら、貢ぎ物として魚を要求してくるだろう。そうしなければ、後で彼女の同胞が送り込まれることになる。

 彼女の同胞といえば、このトークンはこれまでで最もかわいいものの1つになるだろうね。

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 そしてこれが、理由がなくなってしまってからも、ドラゴン・デッキに猫ドラゴンが1枚残った、という話の顛末だ。

 私と同様に、これに愛らしさと魅力を感じてくれると嬉しいね。

手短に

 話したいことはまだまだある! しかしみんながセットの全体像を知った後のほうが詳しい話をしやすいので、それは来週に残そうと思う。

 このセットは私にとって間違いなく興奮をもたらすものだ。『統率者』のデッキを世に放つ新しい方法と理念から、部族そのものや威光、そしてここで紹介したマジックのとんでもない伝説の知識に至るまで、このセットには途方もない内容が詰め込まれている。本当に、私が楽しんだのと同じぐらいみんなが楽しんでくれることを切に願うよ。

 何か疑問や考え、意見などはあるかな? 統率者のデザイン理念、プロダクト・アーキテクチャー、あるいはただ猫ドラゴンについてなど、もっと知りたいことがあれば何でも聞いてほしい! TwitterTumblr、あるいはBeyondBasicsMagic@Gmail.comに(すまないが英語で)メールを送ってくれれば、いつでも見させてもらうよ!

 みんなが4つのデッキについて知ってからデザインについて詳しく話すため、また来週戻ってくるよ。それまでプレビューを楽しんでくれ! お楽しみに!

Gavin / @GavinVerhey / GavInsight / beyondbasicsmagic@gmail.com

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