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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ティムール・タワー(スタンダード)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ティムール・タワー(スタンダード)
by 岩SHOW
グランプリ・静岡2017春の裏ではグランプリ・ポルトアレグレ2017が開催されていた。ブラジルといえば日本からはよく地球の裏側と表現される、遠く離れた地(ブラジルの人たちもそういう表現するのかな?)。そう考えると、やっぱりマジックってのは凄いゲームだなぁと。
この2つのグランプリに違いがあるとすれば、それはTOP8か。静岡はプロツアーを彷彿とさせる、「マルドゥ機体(バリスタ型も含む)」6人という偏った結果に。対するポルトアレグレは、「コピーキャット」あり「黒緑昂揚」ありと散った形に。こういった違いがなぜ生まれたのか、それを考察するのも面白い。
ただ差異だけでなく、共通点もある。ティムール(緑青赤)カラーの《電招の塔》デッキが勝ち上がっている点だ。
静岡ではTOP4、ポルトアレグレでは優勝している。『アモンケット』発売までの間、有力デッキとなることは間違いないだろう。今日はこの2つのデッキを見てみることにしよう。
3 《森》 3 《島》 2 《山》 4 《植物の聖域》 2 《伐採地の滝》 4 《尖塔断の運河》 4 《霊気拠点》 -土地(22)- 4 《奔流の機械巨人》 -クリーチャー(4)- |
4 《霊気との調和》 4 《蓄霊稲妻》 3 《否認》 2 《手酷い失敗》 2 《焼夷流》 2 《自然廃退》 1 《予期》 3 《コジレックの帰還》 3 《虚空の粉砕》 2 《不許可》 4 《電招の塔》 4 《天才の片鱗》 -呪文(34)- |
2 《ナーナムの改革派》 4 《牙長獣の仔》 4 《不屈の追跡者》 2 《払拭》 1 《自然廃退》 1 《否認》 1 《虚空の粉砕》 -サイドボード(15)- |
まずはポルトアレグレ優勝デッキから。「ティムール・タワー」は「青赤コントロール」をベースに進化したデッキである。以前、ヤソさん(八十岡翔太)が謎のデッキを使っていると紹介した。《電招の塔》を軸に組まれたこのデッキは瞬く間に世界中に広まり、使用者を伸ばした。その結果より洗練されたリストとなり、このグランプリを迎えるに至ったわけだ。
《電招の塔》を設置し、後はインスタントを構える。これだけで、「コピーキャット」デッキはコンボを狙えなくなり、「マルドゥ機体」のクリーチャーのほとんどに対処可能となる。どっしり構えた青赤の打ち消し&除去デッキが骨格であり、そこに緑の要素が加わっている。
1ターン目に唱える呪文としては最高レベルの《霊気との調和》でマナを安定させる。このカードの採用により、土地の枚数を22枚まで抑えて、よりインスタントを引きやすい構築が成り立っている。エネルギーも2個得られて、小回りの利く効率の良い呪文である。
《自然廃退》は同じ電招系のデッキにも、《キランの真意号》や《新緑の機械巨人》を用いるアグロにも、《霊気池の驚異》デッキにも撃つところがある、今環境のユーティリティー枠。《解呪》系の呪文がメインから投入されているなんて、なんだか懐かしい。それだけ、今のスタンダードがアーティファクト環境なんだろうね。
先にも述べた通り、インスタントを用いて盤面をコントロール。《電招の塔》はコントロール要素でもあり、プレイヤーを焼くフィニッシャーでもある。そして詰め所で《奔流の機械巨人》で一気にケリをつける! このリストでは、この手のコントロールデッキが苦戦する《屑鉄場のたかり屋》対策として《焼夷流》と《手酷い失敗》を採用しているのが特徴的だ。
サイド後は《牙長獣の仔》《不屈の追跡者》を投入して殴っていくプランも狙える。《奔流の機械巨人》しかクリーチャーを見せていない状態であれば、サイド後に《致命的な一押し》をデッキに残すプレイヤーはそうそういない。この隙に飛び出したクリーチャーで、序盤からライフを詰めていこうというわけだ。
この作戦は初見の相手には突き刺さり、このテクニックを知っている相手にはこのモードに変形するのか否か、読み合いの勝負を仕掛けることができる。今日はひとまず、これを覚えておいてほしい。
3 《森》 2 《島》 2 《山》 4 《植物の聖域》 3 《伐採地の滝》 4 《尖塔断の運河》 4 《霊気拠点》 -土地(22)- 4 《奔流の機械巨人》 -クリーチャー(4)- |
4 《霊気との調和》 3 《ショック》 4 《蓄霊稲妻》 3 《予期》 3 《否認》 2 《霊気溶融》 1 《自然廃退》 2 《不許可》 2 《虚空の粉砕》 4 《電招の塔》 4 《天才の片鱗》 2 《粗暴な排除》 -呪文(34)- |
4 《守られた霊気泥棒》 2 《不屈の追跡者》 4 《逆毛ハイドラ》 1 《自然廃退》 1 《否認》 1 《粗暴な排除》 2 《慮外な押収》 -サイドボード(15)- |
こちらは静岡TOP4、プロツアー初出場にしてTOP8入賞の経験もある棚橋雅康のリストだ。こちらのメインは同じクリーチャー対策の枠を《霊気溶融》に割いている。直接的な除去ではないが、クリーチャーを無力化してくれる上にエネルギーまでくれるニクいやつ。《キランの真意号》を沈黙させることができるのはオイシイ。
あとは《粗暴な排除》で機械巨人を使い回して無茶苦茶狙えるようになっている。これはぜひとも一度味わってほしい。
こちらのリストもサイド後は《不屈の追跡者》をイン、さらに追加のアタッカーとして......エネルギーデッキと相性の良い《逆毛ハイドラ》も採用。
このハイドラが......強いんだなこれが。このカードと電招デッキの相性の良さは、プロツアー『アモンケット』地域予選においてレインボーこと藤村和晃が使用し勝利したことで広く知られるようになった。この時の藤村および静岡20位の市川ユウキのリストではハイドラがメインから使用されている。メインからか、サイドから。スタイルが分かれていることもまた、このサイドプランにとっては追い風かもしれない。メインで見なかったけどハイドラ用で全体除去を残すかあるいは......と相手が困ってくれるだけでも儲けもん。ガードを下げた相手は、この成長する怪物を止める手立てなく打ちひしがれることだろう。
このように、メインデッキにない攻め手段をサイド後投入してゲームを有利に導く戦略をアグレッシブ・サイドボーディングと呼ぶ。マジックにおいてはかなり古い時代から取られてきた手法である。今のスタンダードにおいては、このサイドボード後にデッキのベクトルが変化する、というのは当たり前の光景となっている。特に顕著なのがこのアグレッシブ・サイドボーディングをとる「ティムール・タワー」と、軽量ビートから軽いクリーチャーを抜いてプレインズウォーカーとコントロール関係のカードに置き換えて中速デッキへと変貌する「マルドゥ機体」。世は変形サイドボーディング時代......というのは言い過ぎか。
まあそれはさておき、マジックの歴史で古くから見られた手法であるというのなら......実際にどんなデッキがそれを用いてきたのか、知りたくないかい? 今週は変形ギミックを搭載したデッキを紹介していこう、題して「変形デッキウィーク」! それじゃまた明日!
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