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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:赤緑昂揚ランプ(スタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:赤緑昂揚ランプ(スタンダード)

by 岩SHOW

 マナを伸ばして大物を叩き付ける。最近の大型クリーチャーはマナを支払った分だけ強力なように作られているので、それを唱えるのに多大なコストを支払うだけの価値がある。《絶え間ない飢餓、ウラモグ》なんて典型的な例で、これ1枚で劣勢を覆すどころか勝利まで持っていけるレベルのカードである。こういったカードを叩き付けるために土地を戦場に出す呪文を複数回唱えるタイプのデッキを「ランプ」と呼び、特にウラモグ登場後はその姿をよく見るようになった(ランプの意味も含めて詳しくは「赤緑エルドラージ・ランプ」の回を読んでね)。

 『異界月』参入時、このランプ・ビッグマナ系デッキの愛好家が注目したであろうカードは《約束された終末、エムラクール》に違いない。

 もとは13マナだが、墓地に落ちたカードタイプ1種類につきマナ・コストが1つずつ軽くなっていく。もともと10マナのカードを普通に唱えていたランプからすれば、9〜8マナ程度になってくれれば簡単に唱えられるものだ。唱えることさえできれば対戦相手をケチョンケチョンにできるこのエルドラージの親玉、使わない手はないだろう?ということで、プロツアーの場にエムラクールを用いるランプデッキを持ち込んだプレイヤーがいた。プロツアー『異界月』TOP8に勝ち残ったリード・デューク/Reid Dukeの「赤緑昂揚ランプ」だ!

Reid Duke - 「赤緑昂揚ランプ」
プロツアー『異界月』 7位 / スタンダード (2016年8月5〜7日)[MO] [ARENA]
10 《
2 《
4 《獲物道
1 《燃えがらの林間地
2 《溺墓の寺院
2 《見捨てられた神々の神殿
1 《進化する未開地

-土地(22)-

2 《面晶体の這行器
1 《森の代言者
1 《巨森の予見者、ニッサ
2 《墓後家蜘蛛、イシュカナ
1 《ウルヴェンワルドのハイドラ
2 《龍王アタルカ
2 《世界を壊すもの
2 《約束された終末、エムラクール

-クリーチャー(13)-
4 《ウルヴェンワルド横断
4 《発生の器
2 《焦熱の衝動
4 《過去との取り組み
2 《群れの結集
4 《ニッサの巡礼
3 《コジレックの帰還
2 《面晶体の記録庫

-呪文(25)-
2 《節くれ木のドライアド
1 《巨森の予見者、ニッサ
1 《失われた業の巫師
2 《不屈の追跡者
2 《ムラーサの緑守り
1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ
3 《引き裂く流弾
1 《焦熱の衝動
1 《焙り焼き
1 《コジレックの帰還

-サイドボード(15)-

 ランプとは言うもののただのランプではなく、ふんだんに昂揚に関するカードも採用されているのが特徴だ。むしろ、ランプの標準装備であった《爆発的植生》をデッキから排除。ライブラリーから土地を直接戦場に出す類のカードは《ニッサの巡礼》のみとなっており、むしろ昂揚要素の方が強いとさえ言える。

 このデッキの序盤は、土地(マナ)の確保が最優先。《ウルヴェンワルド横断》《発生の器》《過去との取り組み》《ニッサの巡礼》を用いて土地カードを引き込み、《面晶体の這行器》《面晶体の記録庫》などを展開してマナ基盤を築こう。この時、墓地もしっかりと肥やしていくとなおよし。《コジレックの帰還》をしっかりと落としつつ、昂揚も達成したいところだ。

 《ニッサの巡礼》と《発生の器》《過去との取り組み》が同時に手札にある場合、なるべく後者の墓地を肥やすカードを先に唱えていってインスタントorソーサリーが墓地に2枚以上ある「魔巧」状態に仕上げてから巡礼を唱えたい。このデッキの土地の枚数は22とかなり絞り込まれているため、手に入るのであれば1枚でも多くの土地をその手札に入れた方が良いからだ。

 そうやって基盤を作り上げたら、後は大物を呼び出すのみ。大物に繋げるための《墓後家蜘蛛、イシュカナ》で時間を稼いだら、《龍王アタルカ》《世界を壊すもの》そして《約束された終末、エムラクール》でゲームをひっくり返しにかかろう。

 エルドラージ2体は墓地の《コジレックの帰還》を誘発させて盤面を更地にすることができるので、相手のクリーチャーを上手く引き付けてから叩き付けたいところだ。エムラクールの決定力については他のエムラクール・デッキの回でも散々っぱら述べてきたので、ここでは「ゲームに勝てる能力」くらいで留めておこう。

 《世界を壊すもの》は対戦相手の土地やマナ・アーティファクトを追放して大物降臨を足止めしたり、《熱病の幻視》のような厄介なエンチャントを追放できる。このカードは手札になくても墓地から回収することができるので、ライブラリーを掘り起こすカードでめくれた時に「フィニッシャーだし......」と無理して拾わなくても良いという点は評価できる。《龍王アタルカ》はエムラクール系のデッキがやや苦手とする《最後の望み、リリアナ》にダメージを与えて、ゾンビワラワラ紋章の作成を遅らせることができる(何だったら除去してしまえる)えらいお方である。もちろんクリーチャーを薙ぎ払っても良いし、8/8飛行トランプルというスペックは一筋縄ではいかないのはどんな環境でも同じだ。

 マナを伸ばして大物を叩き付けるランプ戦略に墓地肥やしの要素も絡ませた「赤緑昂揚ランプ」はこれまでの赤緑のデッキとは様相が異なり、デッキの動きも独特だ。一見粗雑なデッキに見えなくもないが、使用者はプロポイント世界ランキングにも名を連ねるあのリード・デュークだ。実際彼がこのデッキを回しているのを見ると、単純なデッキに見えてプレイングが難しそうで......特に《発生の器》《過去との取り組み》の取捨選択や、多数の1枚挿しで作られた複雑なサイドボードのイン/アウトなど、練習を重ねなければわからなさそうな部分が多い。このデッキを巧みに使いこなしてプロツアー・サンデーに進出した彼の実力には敬服の外はない。

 よく「ランプにはプレイングがない」と言って食わず嫌いしているプレイヤーを見かけることがあるが、とんでもない。まだまだ構築もいじり甲斐がありそうだし、奥の深いジャンルだと思うよ!

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