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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ナヒリ・バランス(モダン)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ナヒリ・バランス(モダン)

by 岩SHOW

 『エターナルマスターズ』には、強力すぎてレガシーでさえ使用を許されていない古のカードのが再録されている。《神秘の教示者》《吸血の教示者》《ネクロポーテンス》《魔力の墓所》......いずれもマジック史に名を遺す恐ろしいカードであるが、ここにもう1枚、ぶっ飛んだカードパワーのものが名を連ねる。《天秤》だ。

「各プレイヤーは、コントロールする土地の数が最も少ないプレイヤーがコントロールする土地の数に等しい数だけ、自分がコントロールする土地を選ぶ。その後、残りを生け贄に捧げる。同じ方法で、各プレイヤーはカードを捨て、クリーチャーを生け贄に捧げる。」 一見複雑なルールテキストだが、ザックリ言うと土地と手札とクリーチャーの数を一番少ない人に揃えましょうね〜ということ。

 何でも平等にしようぜってな1枚だが、これを使う側は意図的にこれらの枚数を少なく......平たく言うと0にして使い、対戦相手のリソースを根こそぎ持っていこうってなもんであるから平等でもなんでもない。これの悪用の最たるものが「ズーランバランス」、こちらはクリーチャーを展開せずに相手に好きなように殴らせ、頃合いを見計らって《Zuran Orb》で土地を生け贄に捧げてから《天秤》! すべてが消し飛び、こちらは土地でもクリーチャーでもないアーティファクトとエンチャントも展開しておいて勝つというデッキで、マジック黎明期を代表するイカれたコンボの1つである。

 この《天秤》をモダンで使うことができると言ったら...嘘だと思うかね? できるんだな、これが。今日のデッキは「ナヒリ・バランス」!

CharlieTheBananaKing - 「ナヒリ・バランス」
Magic Online Competitive Modern Constructed League 5勝0敗 / モダン (2016年6月30日)[MO] [ARENA]
2 《平地
1 《
1 《
1 《
1 《聖なる鋳造所
1 《草むした墓
1 《踏み鳴らされる地
4 《吹きさらしの荒野
3 《湿地の干潟
1 《血染めのぬかるみ

-土地(16)-

4 《猿人の指導霊
2 《ゴブリンの闇住まい
4 《大いなるガルガドン
1 《引き裂かれし永劫、エムラクール

-クリーチャー(11)-
4 《脈火の境界石
3 《火荒の境界石
2 《荒原の境界石
3 《均衡の復元
4 《悪魔の戦慄
4 《暴力的な突発
2 《苦渋の破棄
2 《血染めの月
2 《マルドゥの魔除け
1 《大渦の脈動
4 《先駆ける者、ナヒリ
2 《復讐のアジャニ

-呪文(33)-
3 《未練ある魂
2 《知恵の拝借
1 《クローサの掌握
4 《神聖の力線
3 《跳ね返りの罠
2 《虚空の力線

-サイドボード(15)-

 一見するとデッキの狙いがわからないと思うので、このデッキが如何にして《天秤》を唱えるのか、ステップごとに見てみよう。

(1) 3マナ揃えよう!

 まずは3マナ揃えるところから始めよう。ベストなのはゲーム開始時の手札に3マナあること。そしてそれらの組み合わせが{R}{G}か{B}{R}を含むこと。欲を言うならば、それらのマナは土地ではない《火荒の境界石》などの境界石サイクルのアーティファクトか、《猿人の指導霊》のようなカードが含まれていることが望ましい。1ターン目に基本土地を置いて境界石を出してGo、がこのデッキの1ターン目の動きとして最たるものである。

(2) なるべくパーマネントが少ない状況で続唱呪文を唱えろ!

 先に挙げた境界石は1マナで唱えることも出来るが、その際に基本土地を1枚手札に戻すという追加コストを要求してくる。願ったりかなったりだ。このデッキは、クリーチャーはそもそも軽いものがないので自分から展開はしないが、なるべく土地も戦場に置きたくない。そもそも土地を16枚と切り詰めているのでそんなに引くこともないとは思うが、境界石や猿人を引かずにマナソースは土地ばっかりになるということもあるだろう。

 そんな時に役に立つのが《大いなるガルガドン》。これを待機させておいて、{1}{R}{G}か{1}{B}{R}を捻出した後に、土地をすべてこれの起動型能力のコストとして生け贄にしてしまおう! 自身のクリーチャー0、土地0/相手はそれらが複数という理想的な状況から《暴力的な突発》《悪魔の戦慄》を唱えよう!

(3) 《均衡の復元》、バランスタイム!

 上記の2種類の呪文は「続唱」能力を持っている。これを唱えた時に誘発する能力で、ライブラリーの上からパラパラとめくっていき、その呪文よりも点数で見たマナ・コストが低い呪文が現れたらそこでストップ、他のカードはランダムにライブラリーの一番下へ送って、そのコストが低い呪文をマナを払わずに唱えることができる、というもの。

 これを利用しているデッキで最も有名なものが以前にも紹介した「死せる生/Living End」デッキだ。それと同様にこのデッキでも、マナ・コストを持たないために通常では唱えられない《均衡の復元》を続唱で無理やりに唱えてしまう! これぞ現代に蘇った《天秤》だ! (2)で記したように自分の戦場に土地もクリーチャーも0の状況で唱えることができれば、対戦相手のパーマネントをほぼ残らず吹き飛ばすことができるだろう。これは気持ちいいことこの上ない!

(4) 無人の荒野を駆けろ!

 このデッキの狙いは、対戦相手のパーマネントを吹き飛ばして盤面をまっさらにしたら、相手がリカバリーするまでに勝利することだ。さて何で勝つか?というところだが、土地を削る役目を持った《大いなるガルガドン》に残りのアーティファクトも食べさせてさっさと戦場に出して殴り勝つ、というのが1つ。

 もう1つはプレインズウォーカーによる勝利だ。相手がパーマネント0の状況で出てくる《先駆ける者、ナヒリ》と《復讐のアジャニ》なんて悪夢そのものだ。これらを先に出しておいて後から続唱呪文を唱えるのが一番の理想ではある。特にナヒリは、何の妨害も受けない状況で悠々と忠誠値を上昇させ[-8]能力に迎えればそれで勝負あり。《引き裂かれし永劫、エムラクール》で、ようやく回復してきた相手の戦場を跡形もなく吹き飛ばせ!

 唯一真面目に唱えるクリーチャーとして採用されているのが《ゴブリンの闇住まい》。これもリセット後には優秀なアタッカーとなるし、その墓地のカードおかわり能力も強力だ。《大渦の脈動》のような除去を使いまわしても良いし、《均衡の復元》も再度唱えることができる。相手が思いのほかリカバリーが早かった場合や、1回目の復元を打ち消されたりしたら、このゴブリンでちゃぶ台返しリベンジを狙うべし!

 《均衡の復元》によりクリーチャーは根こそぎ除去できるので、採用されている他の除去はエンチャントやアーティファクトにも触れるものか、他の役目を果たせるものとなっている。そして、大事なのはいずれも3マナ以上のカードであること。2マナ以下の呪文を入れてしまうと続唱の妨害をしてしまうからね。

 なのでサイドボードにも、他のデッキではなかなか見られないものが名を連ねている。《知恵の拝借》なんかは《思考囲い》の代わりに用いられているのであろうが、うまく昂揚達成しているときには本家を上回る活躍を見せてくれることだろう。このあたりも各自の調整で色々と楽しめそうである。プレインズウォーカー枠に《歓楽者、ゼナゴス》を採用して、バランスタイム後により速く攻めつつ、マナも出せる、なんてアプローチも面白そうだ。平等という名の不平等を強いることで、勝利の天秤をこちらに傾かせよう!

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