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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:青緑感染(レガシー)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:青緑感染(レガシー)

by 岩SHOW

 マジック初の大型エキスパンション・セット『レジェンド』。これが発売されたのは実に22年前。このセットには《The Abyss》《Chains of Mephistopheles》《Mana Drain》《The Tabernacle at Pendrell Vale》、そして先日『エターナルマスターズ』にて再録された《カラカス》などなど......強力なカードが目白押し。さらにはマジック史上初の多色のカード、伝説のカード、ワールド・エンチャントといった新たな試みで作られたメカニズムも登場。当時のプレイヤーははしゃぎながらパックを剥いたのではないだろうか。ワールド・エンチャントは例外(※1)ではあるが、これら初期に作られた概念が形は変えつつも現在のカードデザインにも引き継がれているのはすごいなと、改めて当時の開発スタッフに敬意を表するものである。

(※1:「ワールド」は特殊タイプの1つで、これを持つパーマネントは戦場に1枚しか存在できない。複数が同時に戦場にある場合、新しいものを残してそれ以外のワールドは墓地に置かれる。世界全体にかける呪文、と思ってもらえば良い。これらのタイプを持つエンチャントは《調和の中心》のように敵味方関係なく影響を及ぼすのが特徴。まあ、なんかややこしいしあんまり意味がないタイプではあるので......ひっそりとその姿を消した。)

 この『レジェンド』にて生み出され、そして現在でもバリバリに活躍している「あるもの」がもう1つある。それは......「毒」だ。プレイヤーが毒カウンターを10個得るとゲームに敗北するというルールは、この『レジェンド』にて《マーシュ・バイパー》などのカードとともに誕生した。以降、細々と毒カウンターを与えるクリーチャーは作られるも......いずれも線が細く、《墓所のコブラ》のように結局10回殴る必要があるという、ほとんど意味のない能力と化しており、そしていつの間にか姿を消していった。

 『第6版』には不採用となった毒に関するカードが戻ったのは(『未来予知』はまあ、オマケとして)『ミラディンの傷跡』となる。「感染」というブラッシュアップされた能力を持ったクリーチャーたちは、それまでのちまちまと1個ずつ毒カウンターを与える連中とは違って、プレイヤーに与えるダメージをすべて毒カウンターに置き換える=パワーの数だけ毒カウンターを与える、その名の通りの感染者たち。見た目の倍の打撃力を持つクリーチャーという強烈な存在で、新ファイレクシアがミラディンを蝕む様子を表現して見せると同時に構築シーンでも活躍するカードを多数生み出した。

 先日フォーマット・レガシーにて開催されたグランプリ・コロンバス2016でも、優勝したのはこの感染持ちクリーチャーを用いて毒殺を狙う、アグレッシブなデッキであった。「青緑感染」を紹介しよう。

Clay Spicklemire - 「青緑感染」
グランプリ・コロンバス2016 優勝 / レガシー (2016年6月11〜12日)[MO] [ARENA]
1 《
4 《Tropical Island
4 《霧深い雨林
4 《吹きさらしの荒野
1 《ペンデルヘイヴン
4 《墨蛾の生息地
1 《不毛の大地

-土地(19)-

4 《貴族の教主
4 《ぎらつかせのエルフ
4 《荒廃の工作員

-クリーチャー(12)-
3 《ギタクシア派の調査
4 《渦まく知識
3 《巨森の蔦
2 《Berserk
2 《輪作
2 《呪文貫き
4 《目くらまし
1 《森の知恵
4 《激励
3 《意志の力
1 《強大化

-呪文(29)-
1 《呪文滑り
1 《ヴィリジアンの堕落者
1 《ボジューカの沼
1 《不毛の大地
3 《狼狽の嵐
2 《自然の要求
1 《墓掘りの檻
2 《クローサの掌握
2 《水没
1 《意志の力

-サイドボード(15)-

 《荒廃の工作員》《ぎらつかせのエルフ》という軽い感染クリーチャーに加えて、感染持ちクリーチャーに化ける《墨蛾の生息地》。これらのクリーチャーを《巨大化》系の呪文で強化して速やかに毒を10個与えて勝利する、というビートダウンデッキだ。上記3種のカードが使えるモダンおよびエターナル環境で使用可能なデッキタイプだが、モダンとレガシーのそれは当然ながら趣が異なる。その最大の要因は......

感染持ち×《激励》×《Berserk》=毒10個!!!

 この最速2ターンキルを可能とする動き、もはやコンボと呼んでも差し支えない。《激励》が0マナで唱えられる8点火力だと言えば、そのエゲつなさは伝わるかと思う。レガシーの感染デッキには《怨恨》のようなカードは不要!

 デッキのその他の部分は、追加の強化呪文であり除去や《墨蛾の生息地》への《不毛の大地》対策ともなる《巨森の蔦》、後述するサブプランでも火を噴く《強大化》、そして《目くらまし》《意志の力》《呪文貫き》ら軽量打ち消し呪文、これらのカードを引き込むための《渦まく知識》《森の知恵》、堂々とコンボにいくか見定めるための《ギタクシア派の調査》というラインナップ。いわゆるクロックパーミッションの動きをするデッキで、クリーチャーを出して打ち消しで相手を妨害して殴っていく、隙あらばコンボを決めて速攻で勝利をもぎ取る!そんなデッキである。

 《貴族の教主》は土地を削り《目くらまし》を運用するデッキにとってはありがたいマナサポートであり、コツコツと感染持ちでアタックする際にも賛美がダメージを加速させてくれる頼もしい1マナクリーチャーで、感染を持っていなくても4枚投入は確定の大事なカードだ。

 この教主、時折おもむろに攻撃に行くこともある。例えば、《罠の橋》を貼られてこちらの感染持ちが沈黙してしまった場合。そんな時、パワー0なので攻撃にいける彼女に、《強大化》《巨森の蔦》などを撃ち込んだうえで《Berserk》でワンパンチ20点以上のダメージで勝利!なんていうプランもとれる。実際にこういう勝ち方はまあまああるらしく、このグランプリの決勝戦・最終ゲームでも《激励》《強大化》《Berserk》で22点ダメージを叩き込んで感染デッキが勝利している。まったく、恐ろしいデッキもあったものだ。

 今回のこのデッキを使用しグランプリ・チャンピオンに輝いたのは、なんと弱冠16歳の少年だ。22年前に生まれた毒殺DNAを受け継ぐカードを用いて、若い世代がプロのステージへと羽ばたく......なかなかにストーリー性が強いね。次のプロツアーでClay Spicklemire君がどんな戦いを見せるのか、注目したいところだ。

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