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市川ユウキの「プロツアー参戦記」

2017.05.25

市川ユウキの「プロツアー参戦記」 プロツアー『アモンケット』 前編

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yuukiichikawa.jpg

 こんにちは!チーム「武蔵」の市川です。

 今回も前回のプロツアー『霊気紛争』(前編後編)に引き続き、プロツアー『アモンケット』への調整記/大会レポートを綴っていこうと思います。よろしくお願いします。

 前回のプロツアー『霊気紛争』では11勝5敗と好成績を残せ、来シーズンのゴールドレベルが確定しました。

 ただ、プラチナレベル到達(52点)を目標とするとそれは余りにも遠く、プロポイントを上乗せ14点(プロツアー参加点3点×2を含めず)と、それは険しき道のりです。

 グランプリキャップ(※編注1)も5つ埋まっておりキャップは残り1つと、グランプリでの加点もほとんど望めないため、求められるのはプロツアーでのホームラン級の当たり!

(※編注1:プロ・プレイヤーズ・クラブの制度において、グランプリで獲得したプロポイントの算入は「獲得した点数が高いものから6大会分」と定められており、俗に「キャップ制」と呼ばれます。この枠が高い点数(好成績)で占められると、算入されるプロポイントの更新は難しくなり、これは俗に「グランプリキャップ」「キャップが埋まる」と呼称されます。)

 特に12勝4敗はトップ8ではないものの、プロポイント15点取得、上乗せ12点と私の目指すべきホームラン(三塁打の説もあり)。

 ともすれば、私は(いつも通り)鼻息荒くプロツアーへの準備を進めるのでした。


0.発売前

 発売前、全カードリストが出たのでざっと新カードをチェック。

 出し得カード。

 不朽もついててソーサリータイミングの除去に耐性があると言っても良い。

 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を越える試練に耐えられなさそう。

 《誤算》と《魔力の乱れ》のあいだ。

 しかし私の心の中に空虚感など無い、きっと構築級。

 X=2で《目録》の下位互換、X=3で《ジェイスの創意》の下位互換。X=4で《好機》の下位互換と、なかなか何かの下位互換から逃れられないドローソース。ただX=5以降で打ったら大体勝ちと言う噂もある。

 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》釣りたい......《墓後家蜘蛛、イシュカナ》釣りたくない?

 《賞罰の天使》も......と考えていくとデッキの5マナがタワーになってしまって考えが霧消される、を繰り返すのであった。

 頼むから《英雄の破滅》をください。

 格好いいドラゴン!

 能力も強いぞドラゴン!

 《狼の試作機》の出番だああああああああああああああ!!!!!!!

 《狼の試作機》の出番だああああああああああああああ!!!!!!!

 序盤中盤終盤隙の無い(そして緑)のクリーチャーが好きです。

 機体の《キランの真意号》をなぎ倒し、《霊気池の驚異》をタップインさせたり破壊したり、尚且つ《サヒーリ・ライ》コンボも地味に抑制する(《サヒーリ・ライ》から出て来るトークンがアーティファクトであるため)。凄いぞ《刻み角》!(どこが顔か良くわらかないけれど)

 豆腐並みの耐久力を前にニッサ愛好家の私も苦笑い。

 《不屈の神ロナス》と噛み合ってないように見えて、実は噛み合っているように見えて、やっぱり噛み合っていない。瞬足と速攻がどちらかが大体活きないのでなんか損した気分になる。

 各種サイクリングランド。

 評価に困るけれどコントロールデッキとかで結構使われるでしょう。(適当)


 と、気になるカードたちの評価をつらつら書いてきましたが、ひとつわかったことが......。

1.禁止?

『うわっ......アモンケットのカード、インスタントタイミングのカード少なすぎ......?』

 そうです、にっくき《サヒーリ・ライ》コンボは未だご健在。

 6マナがあれば、まっさらな盤面からでも即決められるこのコンボを前にして、6マナ以上(なんなら5マナも)のソーサリータイミングのカードなどアンプレイアブルも同然。

 簡潔に述べますと、《サヒーリ・ライ》コンボを前に『アモンケット』のカードのほとんどはアンプレイアブルとなります。

 なんでこんなことになってんねん!と突然似非関西弁になってキレかかるも、《サヒーリ・ライ》コンボは開発時に意図していなかったコンボ(参考)なため、致し方ありません。

 逆に4色《サヒーリ・ライ》は《刻み角》を得て機体デッキや霊気池デッキに対して耐性を持ったり、《栄光をもたらすもの》は《サヒーリ・ライ》でコピーしたり《守護フェリダー》でブリンクしたりと相性抜群なカードが出たりと大幅に強化。

 まぁでもこれは流石にね......。

 《反射魔道士》君も《約束された終末、エムラクール》君も、《密輸人の回転翼機》君も禁止されている大禁止時代、そんな戦国の世で《サヒーリ・ライ》コンボが禁止にならないわけがないでしょう。

 おあつらえ向きに全カード公開翌週に禁止改訂を新たに設けているわけですし。

 いやーよかった、プロツアー《サヒーリ・ライ》コンボになるところだったー。


 と、思いきやエーッ!!!!!

 まさかの《サヒーリ・ライ》コンボ禁止にならず!!

 どうしたWotC......。と首をかしげるばかり。

 いわく、

  • ヤバいとは思っている。
  • でも『アモンケット』で変わるかもしれないし、
  • プロツアーで変わらなかったら禁止にします。

 とのこと(意訳)。

 そんなぁ......絶対プロツアー《サヒーリ・ライ》コンボだらけになるよ......。

 っていうかプロツアーの結果を見てから決めるならなぜこのタイミングで禁止改訂を設けたのか?

 と、この改訂に疑問不満噴出の世界のプロプレイヤーたち。

 しかし、改訂が決まってしまったからにはしょうがない。

 私は、気は進みませんが最強であろう4cサヒーリ使いとなるべくMagic Onlineに籠るのでした......

 完。


 と、思いきや。

 なにあったのか。

 唖然茫然まさかの追加の禁止改訂。

 そして当然禁止の《守護フェリダー》。

 どんでん返しとはまさにこのこと。

 予定されていたスケジュールでの禁止改定発表を見て既に検討/練習を始めている私としては、こういった手のひら返しは本当に困ります(本当は大量にモノを申したいのですが、この記事を私の愚痴だけにしてしまうのは何分読者の皆様に申し訳ありませんので、便宜上この表現を用いています。)が、後出しにせよ環境最大のガンであった《サヒーリ・ライ》コンボを禁止にしたのは英断と言えるでしょう。

 と、いうことで、

  • 新カードの追加
  • 《サヒーリ・ライ》コンボの禁止

 から新スタンダード環境はスタートしていくことになります。R.I.P.《守護フェリダー》。


2.発売週

 と、言うことでいつもの発売週の大規模トーナメント「StarCityGames.com Standard Open」(以下SCG Open)。

 SCG Openは参加人数も多く、賞金制のトーナメントなだけあり、昔では考えられないほどに完成度高いデッキが出てきます。

 「バント・カンパニー」然り、「赤白機体」然り。

 プロツアー参加者の中でも練習環境に乏しいプレイヤーなどは、SCG Openのデッキをブラッシュアップして持ち込むことが多いため、プロツアーの仮想メタゲームとなり得ます。

 さて、結果の方は......。

Andrew Jessup - 「マルドゥ機体」
StarCityGames.com Standard Open Atlanta 優勝 / スタンダード (2017年4月29~30日)
4 《平地》
2 《沼》
1 《山》
4 《秘密の中庭》
2 《乱脈な気孔》
4 《感動的な眺望所》
2 《泥濘の峡谷》
4 《産業の塔》
2 《霊気拠点》

-土地(25)-

4 《スレイベンの検査官》
4 《模範的な造り手》
4 《屑鉄場のたかり屋》
2 《歩行バリスタ》
2 《異端聖戦士、サリア》
2 《大天使アヴァシン》

-クリーチャー(18)-
4 《致命的な一押し》
4 《無許可の分解》
1 《木端+微塵》
4 《キランの真意号》
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-呪文(17)-
1 《マグマのしぶき》
2 《精神背信》
2 《リリアナの誓い》
1 《苦渋の破棄》
1 《苦い真理》
1 《燻蒸》
1 《木端+微塵》
2 《グレムリン解放》
2 《先駆ける者、ナヒリ》
2 《死の宿敵、ソリン》

-サイドボード(15)-
StarCityGames.com より引用)

 《守護フェリダー》が禁止になったらそりゃあそうか。と前環境《サヒーリ・ライ》コンボと2トップを担っていた「マルドゥ機体」が堂々と1位に。

 新カードは赤黒のサイクリングランド《泥濘の峡谷》2枚と、1枚挿しの《木端+微塵》だけですが、これらが十分にマルドゥ機体を強化しています。

 マルドゥ機体はフラッドもスクリューもやや受け辛く、サイクリングランドはデッキの潤滑油と言える存在です。

 また基本土地、および基本土地タイプを持つ土地がデッキに多く含まれているわけではないため、《燻る湿地》や《凶兆の廃墟》などの2色土地がアンタップインする確率は低く、確定タップインとなる《泥濘の峡谷》でもタップインリスクはほとんど変わりません。

 また《木端+微塵》は、《木端》こそやや対象に困る環境ではあるものの、《サヒーリ・ライ》コンボが禁止になった今、ポジションを上げた緑黒《巻きつき蛇》などへの良い対応になります。

 そして、《微塵》は強力そのもの。《模範的な造り手》や《キランの真意号》などのクロックで序盤にライフを攻めつつ、相手が盤面を盛り返してきても墓地に《木端+微塵》があればそれはさながらに時限爆弾。

 いずれ《微塵》で負けてしまうため、対戦相手はライフを詰めていかなければなりませんが、マルドゥ機体側にも睨みあっているクリーチャーたちがズラリと並んでいるため、それらに殴られてしまうと本末転倒。

「《微塵》で致死量のマナ域になる前にライフを詰めなければならないが、返しの相手のアタックも考えなければならない。」

 といった矛盾を抱える盤面になってしまいます。

Zach Stern - 「白赤人間」
StarCityGames.com Standard Open Atlanta 4位 / スタンダード (2017年4月29~30日)
8 《平地》
5 《山》
4 《霊気拠点》
4 《感動的な眺望所》
1 《ハンウィアーの要塞》

-土地(22)-

4 《探検隊の特使》
4 《スレイベンの検査官》
4 《町のゴシップ屋》
4 《栄光半ばの修練者》
4 《名誉ある門長》
4 《サリアの副官》
2 《金属ミミック》
4 《ハンウィアー守備隊》

-クリーチャー(30)-
4 《石の宣告》
4 《永遠の見守り》

-呪文(8)-
3 《無私の霊魂》
4 《栄光をもたらすもの》
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
4 《鋭い突端》

-サイドボード(15)-
StarCityGames.com より引用)

Caleb Scherer - 「黒単アグロ」
StarCityGames.com Standard Open Atlanta 6位 / スタンダード (2017年4月29~30日)
18 《沼》
2 《霊気拠点》

-土地(20)-

4 《戦慄の放浪者》
4 《夜市の見張り》
4 《光袖会の収集者》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《ホネツツキ》
4 《歩行バリスタ》

-クリーチャー(24)-
4 《致命的な一押し》
4 《闇の掌握》
2 《集団的蛮行》
3 《不帰+回帰》
3 《最後の望み、リリアナ》

-呪文(16)-
4 《才気ある霊基体》
4 《スカラベの饗宴》
3 《過酷な精査》
3 《精神背信》
1 《最後の望み、リリアナ》

-サイドボード(15)-
StarCityGames.com より引用)

 その他、「白赤人間」や「黒単アグロ」など意欲作もトップ8に入りましたが、このSCG Openのトップ8のうち、なんと5つがマルドゥ機体!

 環境初期はまさにマルドゥ機体一色(マルドゥ機体は3色だけど)。「プロツアー『マルドゥ機体』にならないかな......。」と頭を悩ませる幕開けとなりました。


3.MOPTQ

 SCG Openと同日に行われたMOPTQ。

 今まではMagic Online(以下MO)では新セットはリアルでの発売日から1週間前後の時間を経てリリースされていましたが、今回は実験的にMOの方がリアルの発売日より少し早くリリースされていました。

 これによりリアルの発売日と同日にPTQ(プロツアー予選)を開催しても、参加者は十分な練習をMOでこなしてから望むことができたのです。

 注目の結果は......。

zeuth - 「ティムール・霊気池の驚異」
Magic Online Standard PTQ 優勝 / スタンダード (2017年4月29日)
5 《森》
2 《島》
1 《山》
4 《植物の聖域》
2 《伐採地の滝》
4 《尖塔断の運河》
4 《霊気拠点》

-土地(22)-

4 《ならず者の精製屋》
3 《つむじ風の巨匠》
1 《奔流の機械巨人》
3 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》

-クリーチャー(11)-
4 《霊気との調和》
2 《マグマのしぶき》
4 《検閲》
4 《蓄霊稲妻》
4 《織木師の組細工》
1 《予期》
4 《霊気池の驚異》
4 《天才の片鱗》

-呪文(27)-
3 《不屈の追跡者》
2 《奔流の機械巨人》
2 《払拭》
3 《霊気溶融》
3 《否認》
2 《人工物への興味》

-サイドボード(15)-
MTGO Standard PTQ より)

 前環境の終盤、rizerこと石村信太朗が開発した《奔流の機械巨人》、《天才の片鱗》などを擁したコントロールタイプのティムール《霊気池の驚異》。

 それに新カード《検閲》、《マグマのしぶき》を投入した形がMOPTQを突破していました。

 《検閲》はこのデッキ待望の2マナのアクションです。先手であれば戦場に出ると《蓄霊稲妻》でしか対応できない《キランの真意号》を打ち消すすることができ、またこれも戦場に出ると早急な対応が求められる《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》へのけん制となります。

 リアクションカードではありますが、サイクリングが付いているため後半に引いても腐らないのは素晴らしい。

 また、《マグマのしぶき》はこれまた今までは対応に困っていた《屑鉄場のたかり屋》をスマートに除去できますし、もちろん《模範的な造り手》などの相手の序盤の猛攻をいなすことが可能です。

 このように新カードの2枚はいずれもいぶし銀ではありますが、デッキの要所を締め、特にマルドゥ機体への相性を改善しています。

fujimura_deck.jpg
グランプリ・上海2015 イベントカバレージより

 また、この「zeuth」というMagic Onlineのアカウント。これは日本のプレイヤーの藤村和晃(以下レインボー)さんのものです。

 レインボーはデッキ構築能力もさることながら「デッキ選択のセンス」が自称抜群の筆者も舌を巻くほどで、国内プロプレイヤーからの信頼もとても厚いです。

 そんな彼が使って、また勝利を収めたデッキとなればこれはグッドデッキの御用達あり。「ティムール霊気池」もまた仮想敵の一つとなるでしょう。


4.調整

 ともなれば調整の時期でしょう。

Musashi.jpg

 今回は今まで活動していた調整チーム「The Sun」ではなく、チームシリーズ同様の「チーム武蔵」での調整となりました。

 理由を簡潔に述べますと、「このチームで勝ちたくなったから」です。

 正直前回のプロツアーが始まるまではチームシリーズというモノにとかく関心が無く、勝ったらお金がもらえるらしいけど、マジックって個人競技だしなぁ......といったような感じで全く乗り気ではありませんでしたが、いざプロツアーが始まってみるとそれはもう別世界。

 チームメイトの勝敗に一喜一憂する様はまさに団体競技。

 スイスラウンド最終戦を前に、「全員勝てば多分1位だから全員勝とう!」と発起する感じに学生の頃の部活動を思い出してしまいました。

 それで実際に暫定1位タイになってしったのであればモチベーションもメキメキ。

「トップ2になって世界選手権でドリームチームとこの6人で戦いたい。」

 目標と行動は一貫性があった方が良い。渡辺雄也さんの「次の調整は一緒にやらないか」という提案に断る理由はありませんでした。

harane.jpg

 また「チーム武蔵」以外に、前回の私の調整チーム「The Sun」に参加していて、かつ全カードリストが出た後に「チーム武蔵」の行弘賢さんや覚前輝也さんとよく一緒に練習している原根健太さんが加わった7人で調整を開始しました。

 基本的な調整方法として、八十岡翔太さんの練習部屋、いわゆる「ヤソルーム」に夜半時間の取れるメンバーが集まり、大会で上位入賞したデッキだったり、思い思いのオリジナルデッキを持ち込んでリーグ戦を行います。

 それによって体感したことをお互いに話し合い、それをテキストに起こしてチーム内に共有。それへのフィードバックが他のメンバーからあり......。みたいな形で行われていた「よう」です。

 なぜ「よう」なのかと言うと、実は私はほとんどこの「ヤソルーム」での調整に参加していませんでした。実に数えて私が参加したのは2回です。

 あまり言い訳はしたくないものですが、どうにも仕事が忙しくて平日は時間の都合がつけられず。

 週末となると「プレリリース」、「ドラフト合宿」、「グランプリ・北京2017」とイベントが目白押しで、構築の練習会は概ね平日夜に絞られてしまい、そうすると多忙で(以下略)。

 ただ、前述した通りMagic Onlineでの新セットのリリースが早くなったことが救いになりました。

 これにより時間を合わせることなく、彼らが回しているデッキや、自分が試したいアイディアをネット上で試すことができ、それをメンバーに共有することができるからです。


5.デッキ選択

 行弘さんの《選定された行進》をフィーチャーした白黒のトークンデッキだったり、

 渡辺さんの《むら気な召使い》と《疫病吹き》を搭載し、飛び道具で相手を倒す白黒のゾンビデッキだったり、

 原根さんの《残忍な剥ぎ取り》で《賞罰の天使》を落として爆アド!なアブザン昂揚だったり

 山本さんの《キランの真意号》→《不屈の神ロナス》→《難題の予見者》=勝利!な緑黒エルドラージだったり、

 八十岡さんの《暗記+記憶》の《記憶》を《奔流の機械巨人》でプレイして相手のエンドに7枚ドローだ!なティムール《電招の塔》だったりと、意欲作はザクザク。

 「同系戦を制する」「サイド後アーティファクトを抜くため《産業の塔》に依存しないマナベースを」のロジックで、覚前さんは《乱脈な気孔》、《鋭い突端》のミシュラランド計7枚を組み込んだマルドゥ機体を組み上げていたりと、デッキ選択は難航を極めます。

 ちなみに私は《媒介者の修練者》と《大天使アヴァシン》の相性に着目した緑白トークンなどを回していました。

 《媒介者の修練者》から《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》も強いし、《大天使アヴァシン》がいる状態で《媒介者の修練者》の-1/-1カウンターを適当なトークンに載せて自滅させて能動的に爆発! しかも《媒介者の修練者》はサイズが3/4であるため残る! これは......これはシナジーの宝石箱や~!

 もちろんダメダメでした。

 その中でチームの7人のうち、実に5人が選ぶこととなったのは「ティムール・霊気池の驚異」。

 基本的な構成はMOPTQを突破していたレインボーのリストに即してします。

 ただ、「マルドゥ機体」また同型が多くいると見越して、メインに《造反者の解放》を投入することにしました。

 《マグマのしぶき》も悪くはなかったのですが、地上のクロックである《模範的な造り手》、《屑鉄場のたかり屋》は《ならず者の精製屋》や《つむじ風の巨匠》で迎え撃てること、序盤の最大のガンである《キランの真意号》への回答とならないことを理由にクビに。

 同系戦においては、《造反者の解放》などの除去呪文では《霊気池の驚異》を概ね1回は起動されてしまうことはデメリットであるものの、一発で《絶え間ない飢餓、ウラモグ》をめくられない限りリカバリーはできると判断。

 逆に《霊気池の驚異》が相手に残り続けると、いずれ《絶え間ない飢餓、ウラモグ》が出てきて負けてしまうため、《霊気池の驚異》が戦場に出てからも触れるカードはデッキ内に必要という結論に。

 また、どういうわけかプロツアーまでのMOでの5-0リストにコントロール型の《霊気池の驚異》デッキが全く残っていないことが選択の追い風となりました。

 勝っていたのは《導路の召使い》から《ルクサの恵み》や《反逆の先導者、チャンドラ》に繋ぐ赤緑ビッグマナ型の《霊気池の驚異》のみ。

 《導路の召使い》は賞味期限が短いカードですし、エネルギーが溜まっていない状態でマナ加速して3ターン目に《霊気池の驚異》を置く意味が全くありません。

 《ルクサの恵み》もなんだかすごいことをやっているようで出たターン何もせず、次のターンにドロー、その次のターン、つまり6マナがある状態で3マナが出る......。

 噛み合っているようで絶妙に噛み合っていない!

 《反逆の先導者、チャンドラ》は戦場に定着すれば強いですが、環境は「マルドゥ機体」全盛期。

 返しのアタックで概ね落ちてしまいますし、また《大天使アヴァシン》の代わりに《栄光をもたらすもの》を入れた形も増えてきていて、まさに泣きっ面に蜂。残るわけなし。

 また、MO上では「とある」デッキと併せて、《奔流の機械巨人》を主軸にした打ち消し呪文マシマシの「青赤コントロール」が結構な頻度で5-0していて、それらに対してすべての呪文がソーサリータイミングのマナランプ型の《霊気池の驚異》は相性最悪。

 つまり「プロツアー参加者の想定している《霊気池の驚異》デッキ」が私たちが持ち込もうとしている形と違う可能性が高く、それなら相手の対策からわずかにズラすことが可能だろうという判断に。

 ともなればコントロール型の《霊気池の驚異》を選ぶのは合理的判断。

 フライト前にこのデッキを手に取ることを決めた私は、意気揚々と決戦の地、アメリカに向かうのでした。


6.転

 そして飛行機に乗ること十数時間で、気付いたらアメリカに到着。

 今日は「チーム武蔵」での写真撮影があるとのことで予定の時間には会場へ。

ptakh_ichikawa.jpg

 個人写真も撮りました。

 そんなこんなをしていると......なにか会場に異変が......。

 なんか臭い......死臭のようなものが......。

 会場で薄気味悪い声が......「ぞんび つよ」。

 なんだかすごいイヤな予感がする......このままティムール《霊気池の驚異》で行ったら逝ってしまうようなナニかが......。

 そしてとある日本人プレイヤーから聞いた言葉から、とうとう現実と直面します。



「ブース、ゾンビが人気だってよ」......"あなたのプロツアーを妨害する"



 な、なんだってーーーーーー!!!!!!!



 後編に続く。

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