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なかしゅー世界一周
なかしゅー世界一周2012・第19回:マジック・プレイヤー選手権とお祭り
読み物
木曜マジック・バラエティ
2012.09.20
なかしゅー世界一周2012・第19回:マジック・プレイヤー選手権とお祭り
By 中村 修平
マジック・プレイヤー選手権
トーナメントプレイヤーにとって最高のパーティーの開幕です。
会場となったのはシアトル中心部、パイク・プレイス・マーケットほど近くのショウボックスシアター。
映画館ではなく演劇用の劇場で、入って真ん中の舞台にはカメラとフィーチャーマッチ席が3つ。
後からウェブ上に残っているテキストカバレッジ写真で確認するとカメラマッチと同格のように思えてきますが、実際は全然違うもの。
カバレッジ用のマッチ、というよりフィーチャーマッチ以外のマッチは入って左側、客席のようなスペースに5つのテーブルが置かれていてそこでやるという形式。時代の流れか、映像として配信するというのを主眼に置いた構成でした。
個人的にはせっかく中央のスペースが空いているのだからそこで残り5卓もやればよいのにと思ったのですが、案外照明上の問題かもしれません。
右手の半分はカバレッジスタッフ用のスペース、逆に左手のバーのようなところはプレイヤー用のスペースとして開放されていて、常に新しい食べ物、飲み物が提供されていたり。
かつてあったプロツアーラウンジよりかなり豪華、どちらかというとプロツアートップ8のみが参加できるサンデーランチの、ちょうどアメリカ品質バージョンといったところでしょうか。
初日にランチバスケットを食いっぱぐれてしょげていると、係の人がすぐに
『ピザなら用意できるけど?』
と言って食べきれないくらいのピザを持ってきてくれたのが印象に残っています。
ちなみに本当に食べきれなかったので、ピザと聞いてちょっと反応したルイスに1ホール丸ごと押し付けたり。
しきりにお腹を気にしていましたが、結局引き取ってもらえました。
順調にリバウンドしつつあるルイスを話題に出したのでプレイヤーについても少々。
スポンサードロゴ付きのグッズが認められているので、みんな大体普段と同じような格好での参加なのですが、いつもと違う出で立ちがいます。
ジャケット・ネクタイ着用のルイス、所属しているゲイリーゲームズの新ゲーム『ソウルフォージ』Tシャツに換装済みのキブラー。
むしろ普段から変わってないけど、最後に会った時から大きく変わったのがデイヴィッド・オチョア。
長身撫で肩、普段は物静かな立ち居振る舞い、博識なことからウェブスター辞書、『ウェブ』というあだ名の持ち主なのですが、実際はかなりお茶目。
噛めば噛むほど味があるキャラで、滅多なことでは動じない彌永をして、
『見た目の印象とギャップがありすぎ』
と言わしめる逸材。
そのウェブが何を思ったかヒゲを生やし始めたのです。
しかも何故かカイゼルヒゲ。
そんなウェブとは第4ラウンドに対戦することになったのですが、
いつものごとくの機材の準備に開始が遅れている合間に、写真担当のクレッグが手招きして一言、
『ひとつ、面白い写真を撮ろうか』
その結果、完成したのがこれ。
実はこんなヤツです。
ギャップと言えば、これはちょっと違いますがスコット・ララビーについても。
トーナメント進行の総責任者でウィザーズの偉いさん。見た目はかなりいかつく見える人で、今回のキューブドラフト用のカード、しかも16人分2セット全てララビーさんの私物から供出なのですが、前日の説明会の際に、
『ちょっとでも傷つけたり無くしたりしたら、解ってるだろうな。』
と、ちょちょいと目をつり上げるだけでハートマン軍曹の前に立たされた新兵よろしく『サー、イエスサー!』の復唱が起こりそうだったほど。
ですが困った時に相談すれば必ず親身になってくれる頼れる最高のおっちゃん。
埒があかない時はよくララビーに泣きついて助けてもらったりしています。
今回もドラフトが始まればスリーブを配ってくれたり、ドラフトしたいならボックスごとやるよ、参加者各位に投げつけてくれたり。
そして件の《オリヴィア・ヴォルダーレン》を貸してくれた人でもあるんですが、さすがスコットさん。統率者が1枚制限ということを知らないバカでアホでマヌケな日本人のお願いにもちゃんと2枚持ってきてくれまし...た?
あら、えらいかわいらしいスリーブを使っていらしゃるんですね。
どうみても頭がお花畑、失礼、頭にお花畑を生やしている日本のアニメ的キャラクターです。
ああ、ララビーよ。お前もなのか!!
なんてことを当然、表には出せず主に日本語でこっそりとネタにしてたのですが、予選ラウンド終了時に実はララビーの友達から無理言って貸してもらっていたことが判明。
なんだなんだ、いやあ良かった。心の中のララビー像が崩れずにすんで良かったよ。
HAHAHAHAHA。
『ああ、「それ」は好みじゃないね』
ん、私の英語力では「それ」が指しているのが果たしてどういう範囲なのか。
解らないことは解らないままにしておいた方が良い気もします...
さてプレイヤー選手権の成績の方はというと、7勝5敗。
予選道中を11勝1敗で駆け抜けた八十岡無双さんはともかく、
最後に残った4敗のジョン・フィンケルを最終戦で引きずり落とせたおかげで5敗の2位タイが4人となったのですが、同点内の順位規定により同点内の最下位となって5位。
大会前のアナウンスでは、同点内において
「まず直接対決の結果、次にプロポイントの多寡で優越を決める」
とされていたので、フィンケル倒したしこれで翌日に行けた。
と、思っていたのですが直接対決の条件に『同点内の全てプレイヤーが互いに対戦していること』というルールがあったらしく、かくして素敵な未来予想図は15分でご破算に。
期待してしまった分、がっかり感も相当でした。
ちょっと私怨も混じっていることは否定できないのですが、タイブレーカーについては紛らわしい上に役に立たないことが多そうなので改定した方が良いと思いました。
そうだPAXへ行こう
失意の金曜日は置いておいて翌々日の土曜日、サミュエル・エストラティだけは即帰国しましたが、それ以外の15人はウィザーズの厚意による延泊を選択。夜のスペシャルパーティーに加え、ついでに無料でシアトル最大級のゲームイベントPAXの入場券をもらえるというのだから行かない理由はありません。
日本人達で開場時間に合わせて待ち合わせをしているところに、朝食を隣のパン屋に買いに行っていた、改め暇そうなルイスを発見。
気がつけば総勢10名くらいの集団で一路、それらしき人――入場券がタグバッジになっているのですぐ判別がつきます――についていくだけで目的地に到着。
どうやらコンベンション・センターだけではなく、近隣のホテルの会議室も使った上で複数の会場に跨っての開催のようです。
そこまでは理解できたものの、そもそもこの手のお祭りに参加したことはほとんど無いのでさっぱり勝手が解りません。
ここはルイスの後ろにくっついて行くのが無難と判断、エスカレーターを乗り継いで乗り継いで、最上階まで登った先にあったのは。
なんだか異様な熱気に包まれたトーナメント会場でした。
『リーグ・オブ・レジェンド』
それがこの大会に使われるゲームの名前らしいです。
説明を聞いた感じと画面を見ていると『ワールド・オブ・ウォークラフト』のような対戦式のシミュレーションゲームのようですが、実際にゲームの進行を見ているとシミュレーション的な要素はほとんどなくて、とにかく一定のマップ内で相手の操作しているユニットを倒せば勝ち点ゲット。でも序盤はレベルが低いので周りを徘徊してモンスターなりアイテムを手に入れてレベルを上げれば良いよ的なシステム。
ちょっと変わっているのは5対5のチーム戦ということですね。
試合前にお互いのチームが使用キャラクターを交互に選択していくのですが、解説を聞く限りではそれにも駆け引きがあるみたいです。操作キャラクターが決まる度にギャラリーが大歓声を上げています。
とまあ、なんとなくルールが解ったとはいえ、それだけではさすがにゲームの妙を理解できたとは言えません。
キャラクターの基本スペックという根本的な部分の知識がゼロなので、試合を見ていてもどちらが勝っているかが解りづらくてしかたありません。
その辺りは次に解説の仕事があった時に意識しようという教訓にしつつも、そろそろ別のエリアに行こうかとした時にルイスが一言、
『優勝賞金100万ドルだってよ』
いやいやまさかまさか、だってこれ北アメリカ地区選手権なんでしょ?
『ちなみに大会の賞金総額は500万ドル』
な、ん、だ、と、
思わず2回くらい確認してしまいました。
その事実に遭遇した時の我々マジックプレイヤーの心境たるや、まあ皆考えてしまうことはだいたい同じだったようで、この15分後にはフィンケルが、
『俺、やるゲーム間違えたわ』
とツイートしていました。
こっちも8桁とまでは言わないから、7桁くらいにはなってもらえないかなあ・・・
ゲーム全般のイベントと謳っているだけあって、先々週のジェンコンとは違い、より電源系ゲームの比重が高い構成になっています。
すぐ下の階はゲーム会社の新作発表会ブースのようで、日本でもお馴染みのメーカーが数々出展しています。
天職を間違えたと失意に包まれていたオーウェンとジュザのテンションがにわかに復活。特にオーウェンは目についた先からツーショット写真を取ってもらっている始末。このアグレッシブさは見習いたいところではあります。
入り口近辺は私の知らないゲームだらけでしたが、中に入っていくと今度は正真正銘、日本の有名ゲームメーカーが軒を列ねているエリアに遭遇。
もちろん、シアトルにアメリカ本社がある赤と緑のイタリア人兄弟が看板な会社もやる気満々。
近々発売する予定の新型ゲーム機の試遊場は大混雑の盛況ぶり、それにしてもなぜアメリカ人はこんなにゾンビが好きなのか、看板タイトルを押しのけて一番人気だったのはそのものずばり『ゾンビなんとか』。
ちょっとやってみようかなとも思ったのですが、順番待ちの前に早々に見切りをつけて、違うブースを見て回ることにしました。
そういえばここシアトルがお膝元という意味では、我々のウィザーズ・オブ・ザ・コースト社もそうです。
そして気合の入り方では中々どうして、相当なものを感じます。
というのも、そこら中にジェイスとニヴ=ミゼットらしきイラストのナップサックを担いだ人が往来しているのです。
これはどこかで配っているのだなとあたりをつけて探してみると、意外と近くにありました。
電源系ゲームブースのすぐとなり、巨大スクリーンが設置されているエリアに、ご自由にどうぞとPAXのパンフレットなどと一緒にマジックのグッズとナップサックがあるではないですか。
これは良い記事のネタになると思って手に取った瞬間、ある意味で別の衝撃が全身を貫いてしまいました。
アメコミ冊子と見せかけたぬりえ帳。そして横のケースはクレヨン。
時々、ウィザーズのことが本気で理解不能になるのですが、これがまさにそれ。
なぜぬりえ? そしてなぜにクレヨン??
まあ、もしかすれば私の感性の方が間違っていて、アメリカ人にゾンビよろしく、ぬりえにクレヨンこそ今最高にCool。
であってもらいたいという希望的観測なのか、むしろそんな訳無いだろうと突っ込みたいのか...
狐につままれたような、なんとも言えない不思議な気分になりつつ、ホテルに引き上げることにしました。
あ、帰る途中に立ち寄ったモノレールエスプレッソというコーヒーストアは抜群に美味しかったです。
『ラヴニカへの回帰』発表パーティー
ぬりえの衝撃はかなり大きかったらしく、気がつけば結構な時間が経過してしまっていたようです。
昨日までの試合の地、ショウボックスシアターに向かうこと5分少々。
物凄い行列です。1ブロック先からと言ったレベルではなく、折り返しを重ねているので3ブロック分くらいは優にあるでしょう。
でも私に限って言えば心配は無用。プレイヤー選手権の最終日にもらったこの優先入場券をかざせば大丈夫。
と思ったら優先入場者の列もあってこちらも結構な長さになっています。
しかもようやく自分の番にまで来たところで、どうせアルコールは飲まない/飲めないからいいやと思って、パスポートを持っていかなかったことが裏目に。
身分証として提示を求められて、今回ばかりはララビー念力も通じず、ホテルを往復するはめに。
もっとも、並び直すのは嫌だなと思っていたら、さすがに直で通してもらえましたので実被害という意味ではそこまで大きなものはありませんでした。
精々パーティーに饗されたものに食いっぱぐれるくらいです。
それにしても凄い数の人。大会中はがらんどうだったホール中央には怪しげな檻が設置され、中で変なのが踊っています。
そして舞台にはスクリーン。隣には謎の椅子。
プロツアー・アムステルダムのウェルカムパーティーのような感じ。辛うじてここがマジックに関係していると解るのは、至る所にラヴニカへの帰還のお披露目カードが展示されているから。そのあたりもアムステルダムを思い出させます。あの時は《メムナイト》が初披露でしたっけ。
と、ここで一端会場が暗転。
浮かび上がった司会から初公開、ラヴニカへの回帰のトレイラーを上映するというアナウンスに大盛り上がりのギャラリー。
この辺のノリの良さは日本では全く想像できません。新しいシーンに切り替わる度に大歓声。
特にラヴニカへの帰還のタイトルが出た時は最高潮。
パーティーの参加者が本当にマジックをやってるのかちょっと疑っていた私でしたが、この反応を見るとどうやら本当にマジックプレイヤーのよう。
アメリカでは今絶好調とのことですし、このままどんどん拡大してもらって、ゆくゆくはリーグ・オブ・レジェンド並になってほしいところです。
それはそうと、ヤソも同じ悲劇を味わってホテルに一度引き返したりと日本人勢は全体的に食いっぱぐれた感が強く、花より団子早めに引き上げてご飯を食べに行こうということで、正装しているパウロとルイスが踊っているのに参加するもそこそこに、早々と退散することにしました。
ところがどっこい土曜の夜に待ち時間も無しにまともな店が空いてるなんて奇跡があるわけもなく、男4人でチーズケーキをテイクアウトして部屋で談笑という結末になってしまいましたとさ。
そして次の旅へ
そんな訳で私の2012年シーズンは終わりを告げ、帰国の途には...実はまだついていません。
今はラス・ベガス滞在を経てヒューストンから南米コスタリカへ向かう機上。
これからグランプリ・コスタリカに参加した後、予定通りいけば丸々2日かけて日本へと帰国することになります。
できれば、取りっぱぐれたプロポイントをコスタリカで回収できれば良いのですが・・・(編注:中村プロはこのあと見事優勝を果たしました!)
それではまた次回、世界のどこかでお会いしましょう。
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