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なかしゅー世界一周2012・第8回:マンチェスターの書架と食文化と

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2012.04.26

なかしゅー世界一周2012・第8回:マンチェスターの書架と食文化と

By 中村 修平


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 私の記憶が確かならば。
 いやちょっと自信が無いので、バックナンバーを開いて確認したところによると、「日本に帰って桜でも見るか」とか書かれていますね。
 桜は無事見られました。問題は桜以外をあまり見なかったことでしょうか。

 日本に帰ってからやったことといえば、日本にいるのも2ヶ月ぶりなので誰彼かまわず会いにいったり、そのついでに桜を見に近所の浅草、上野から始まり山梨まで行ってみたり。
 あまりにはしゃぎ過ぎたせいか風邪をひいてしまったり。

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 マジックに限った話ではありませんが、物事が予定通りに進むことなどそう滅多になく、細々とした用事も積もり積もればかなりの分量となってしまっていて一苦労でした。
 ほとんどなんでもオンラインでできるようになった今の世でも、直接現地にいかなくてはならない諸々の用事をこなすのにさらに数日が経過・・・
 と、予定していたスケジュールを消化するのに一苦労で、今年に入ってから日本滞在が1ヶ月を超えたのを祝う間もなく、気がつけば日本を離れなければならない時間になってしまっていました。

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 アメリカ滞在中、その場の勢いとばかりに、次のヨーロッパ行きを1ヶ月滞在にしてしまいましたが、冷静になって考えてみると本当に自分が日本在住なのか疑いたくなってくるスケジュール。
 ついでにその先についてもまた別の計画が進行中であったりするのですが、そんな中期展望は置いておくとして・・・
 何はともあれ、大阪の実家での用事があったので関空からが旅の起点となります。

 今回はグランプリの間にプロツアーが挟んである旅なので、プロポイントによる支給旅券を使うことができるのですが、結果的に私に認可された旅券は、大阪からイギリス・マンチェスターまでと、帰りはチェコ・プラハから東京までというもの。
 最後に参加するグランプリ・マルメはスウェーデンなので、そこからチェコまでの移動を含めてヨーロッパ域内の移動は全て自費で賄わなければいけませんが、それは先のことにしてしまいましょう。

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 中継地のソウル・仁川空港で飛行機が遅延、時代衣装の行列を眺めていたら危うく飛行機に乗り遅れそうになりましたが、なんとか間に合って数時間の睡眠と3本ほどの映画を消費してロンドンへ。
 ただ広いヒースロー空港内をターミナル間バスと徒歩で移動、そして発券手続きに3時間ほどかけた後にマンチェスター行きの飛行機に乗り込み、さらに1時間くらいでしょうか、合計で18時間ほどの移動時間。
 時差の都合もあって、朝9時に出発して、午後10時を過ぎたあたりでマンチェスター到着です。

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 ここでちょっと問題が発生。
 現地に到着するまで、マンチェスターには来たことがあるものだとばかり思っていましたが、どうも空港に見覚えがありません。
 よくよく思い返してみたら、来たことあるのはマンチェスターではなくバーミンガム。
 記憶を頼りに市内へ、という当初のプランの再修正を迫られたのですが、幸い鉄道駅を発見したことと、携帯のGPSが機能してくれていたことによって事無きを得ました。

 10年前には想像もつかない便利な時代になったものです。
 問題はその機能に振り回されて、当のホテルが目の前にあるのにそれを通り過ぎて、地図上に表示された誤住所の前で途方に暮れてしまったことですかね。
 結局、定番の人に聞くという作業を経て、元来た道を戻ってそれらしきホテルを発見。

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 というより、改めて見るとこれ以上ないくらいしっかりと『Britannia Hotel』と書かれていますね。
 なんとか日付が変わる前にロビーにまでたどり着きました。

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 出発前の慌ただしさの中で適当に取ったホテルの割にはかなり豪華。
 チェックイン手続きの際になかなか予約票が出てこなくて、もしかしてこのホテルではないのではないかと心配になってきましたが、さすがにそれは杞憂でした。
 歴史があるというのはともすれば設備が古いということですね。


グランプリ・マンチェスター

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 ほとんど準備らしい準備もできないまま、というのが適切な表現だったグランプリ・マンチェスターですが、マジック的な結果の方も散々なものでした。
 弱いカードプールに、お粗末なプレイ。
 全体的に集中力を欠いているのが自分でもわかるくらいだったのですが、ただでさえ悪い状況の中で、冷静さを欠いてしまっていっては勝てる道理がありませんね。
 どうにか良かった点を探すと、まだ自分が下手を打ったというのをやってしまった直後に感じることができたことで、より悪かった点は、よりにもよってその直後に想定内の最悪のパターンが待ち構えていたことでしょうか。

 3敗目を喫した時点で体力的にも限界を感じてドロップアウト。
 即ホテルに戻って翌日の昼まで寝っぱなしだったあたりで、自分がいかに疲れていたか再認識しました。

 今回のマンチェスターが、2011-2012シーズン最後となるプロツアー・アヴァシンの帰還の前の最後のグランプリ。
 ワールド・マジック・カップの参加権を考えれば、現状でプロポイント上位者枠の圏内にいるとはいえ、誰かのプロツアー上位入賞で簡単にひっくり返る位置。少しでもプロポイントが欲しかったところでした。

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 まあ、過ぎ去ったことをいつまでも考えたところで仕方がありません。
 日曜日は代わりにマンチェスターの市内観光。
 とは言っても事前の下調べすらできなかったので、フロントにお勧めの観光スポットを聞くところからスタートです。
 検討の結果、歩いて回れる範囲内にあるものを見て回ることにしました。

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 まずはマンチェスター大聖堂を眺めてから、

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 ジョン・ライランズ図書館。

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 19世紀後半に建てられた図書館なのですが、日本語の稀覯本の展示や書架が開放されていて、見学するだけではなく、申請すれば実際にスペースを使えるみたいです。


 情報伝達装置としての本はたぶんこれから先も更に価値を失っていきます。
 それはインターネットで促進された電子化からというわけではなく、ゆっくりとですが確実なひとつの方向性としてです。
 100年前の図書館をこうして覗いてみればその差が歴然としています。
 良いか悪いかは別にして、必然的な流れなのでしょう。
 ここの書架もほとんどがガラスケースで保護されており、代わりににフリーのWi-Fiネットワークが完備。
 使用者のほとんどはノートPCを持ち込んでそれぞれの作業に打ち込んでいます。

 ですが、たくさんの本自体が放つ、一種独特な、古い紙の匂いと静寂が好きなのはどこに行っても同じなのでしょうね。
 何をするわけでもありませんでしたが、気がつけば結構な時間をここの書架で過ごしてしまっていました。

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 そういえば何も食べてなかったのを思い出して、何やら催し物をやっている市庁舎を横切って、チャイナタウンへ。

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 「イギリスの食事は不味い」という話がありますが、実感としては半ば否定、半ば同意といった感じですね。
 グローバル化した今の世の中では、世界のどこに行っても、ある程度は品質が保証されています。
 これは現地のプレイヤーに逆に尋ねられたことですが、
「日常的な日本の食事って何?」
 という質問に回答する場合、そこで真っ先に、いわゆる古来からの日本食が思い浮かぶ人は稀でしょう。
 フレンチ、イタリアン、中華、系統立ててはありませんが、日本固有のものとは言いがたいものが思い浮かんでしまうものだと思います。それと同じことです。
 日本で食べられるものの大半は同じようにイギリスでも食べられるし、お金を出さなければファーストフードで、出せばそれなりに、特にかつて植民地だったインドの料理などはかなり美味しいものが楽しめるのです。

 その一方で、イギリス固有の食べ物はというと・・・残念ながら風評通りの品質ですね。
 ミートパイはどれも同じような味付けですし、フィッシュ&チップスはアンチフライドポテト党の私としては残念ながらただの白身魚のフライに余計なものがくっついているだけ、ステーキを頼むと、まあ可もなく不可もなくですが、付け合わせの野菜はほとんど必ずと言っていいほどグリンピースに茹でただけの味気ない人参、あとフライドポテト。
 もちろん北のスコットランドやお隣のアイルランドに行けば状況は変わるかもしれませんが、今のところ、これがイギリス式だ、という食べ物で格別美味しいと感じた経験はあまりないですね。
 あ、紅茶とスコーンは別ですが。

 で、どこへ行っても同じようでいながら意外と地域にあわせて味が変わる中華料理に関して言うと、ここで食べたものは、

 不味い

 の一言でした。
 いや、もちろんこれがマンチェスターの料理全てに当てはまるという訳ではなくて、たまたま適当に立ち寄った適当なチャイナレストランの適当な料理がただただ不味かったというだけですから。もしかしたらこの認識も間違いで、実はイギリスの中華料理が本当は美味しいという可能性ももちろん大いにあります。

 ただ、ここのチャイナはその後気分が悪くなってホテルに急いで戻って、そのままベッドでうんうん唸るくらいの破壊力があったということです。

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 今は何処にいるかというと、再びの空飛ぶジェラルミン製のホテル、もしくは棺桶の中。
 イギリスを離れ、次の目的地であるチェコはプラハに向けて、高度1万メートルの上空から2時間少々の合間に、といったところです。
 おかげ様でなんとか翌日には動けるようにまで再び快復し、無事にこれからお世話になるマーティン・ジュザとチェコ軍団、そしてベン・スタークとも合流。飛行機に乗り込む事ができました。

 まだ、1ヶ月のヨーロッパ行は始まったばかり。
 早くも生命の危機を味わってしまいましたが、まだ何とか生きています。

 それではまた次回、次はヨーロッパの何処かでお会いましょう。

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アヴァシンの帰還

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