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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ プロツアー『異界月』&グランプリ特集
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ プロツアー『異界月』&グランプリ特集
こんにちは!晴れる屋の津村です。
今週は今月の頭に開催されたプロツアー『異界月』、そしてその翌週に行われた「グランプリ・リミニ2016」、「グランプリ・ポートランド2016」の結果から、スタンダードの変遷を追っていきたいと思います。まずは各大会でトップ8に残ったデッキをご覧ください。
プロツアー『異界月』 トップ8デッキ(8月5~7日開催)
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グランプリ・リミニ2016
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グランプリ・ポートランド2016
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事前の予想では「バント・カンパニー」一色になるのではないかと危惧されていたスタンダード環境ですが、いざ蓋を開けてみれば「グランプリ・リミニ2016」以外はアーキタイプがばらける結果となりました。少し大雑把なまとめになってしまいますが、今の環境は(1)「バント・カンパニー」、(2)「《約束された終末、エムラクール》系のデッキ (黒緑、ジャンド、ティムールなど) 」、(3)「青赤《熱病の幻視》バーン」、(4)その他のデッキという構図になっていると思います。
「青赤《熱病の幻視》バーン」はプロツアーで登場した驚きのデッキで、今週はそんな今をときめくデッキを中心にお届けしたいと思います。まずは、『異界月』登場後にで新たに誕生した「現出」デッキから。
「現出デッキ」~「ティムール」・「ジャンド」~
「現出」デッキは『異界月』のカードをふんだんに使用した新デッキで、《老いたる深海鬼》や《膨らんだ意識曲げ》、そして《約束された終末、エムラクール》と《コジレックの帰還》のギミックが特徴的なアーキタイプです。
「現出」デッキで最もポピュラーな組み合わせは「ティムール (青緑赤)」と「ジャンド (黒緑赤)」で、「ティムール」は速度に長けているため《約束された終末、エムラクール》の入ったデッキ同士の対決に強く、「ジャンド」はボードコントロールに優れているのでクリーチャーデッキに対して強いという差異があります。
「ティムール現出」
7 《森》 3 《島》 1 《山》 4 《ヤヴィマヤの沿岸》 3 《獲物道》 3 《シヴの浅瀬》 -土地(21)- 4 《節くれ木のドライアド》 3 《巡礼者の目》 2 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》 1 《不憫なグリフ》 3 《老いたる深海鬼》 3 《約束された終末、エムラクール》 -クリーチャー(16)- |
2 《崩れた墓石》 4 《発生の器》 4 《群れの結集》 4 《過去との取り組み》 4 《コジレックの帰還》 4 《ニッサの巡礼》 1 《炎呼び、チャンドラ》 -呪文(23)- |
2 《ヴリンの神童、ジェイス》 1 《棲み家の防御者》 2 《失われた業の巫師》 2 《払拭》 2 《焦熱の衝動》 2 《侵襲手術》 1 《翼切り》 1 《否認》 1 《久遠の闇からの誘引》 1 《即時却下》 -サイドボード(15)- |
オーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwaldたちが持ち込んだリストは、3枚もの《約束された終末、エムラクール》が印象的な「ティムール」バージョンでした。《発生の器》や《群れの結集》といったカードで《コジレックの帰還》を墓地に送り込みつつ墓地を肥やしていき、マナが伸びれば《老いたる深海鬼》と《約束された終末、エムラクール》で一気に攻勢へと転じるデッキです。
このリストの秀逸な点は、《ニッサの巡礼》を採用することで、《老いたる深海鬼》を「現出」コストだけでなく、普通に唱えられるように工夫されているところです。
「現出」クリーチャーを最初に見た際に、おそらくほとんどのプレイヤーはこのキーワード能力をどうやって生かすかに注目したと思いますが、オーウェンたちはそうではありませんでした。「現出」をあくまでおまけ程度の存在にとどめておくことで、対戦相手の除去呪文に邪魔されて《老いたる深海鬼》のキャストが遅れてしまう、という展開を未然に防ぐことができるというわけです。
また、《崩れた墓石》と《ニッサの巡礼》によるマナ加速に加え、数多くのカードタイプを採用したこのデッキは、環境内でも屈指の速さで《約束された終末、エムラクール》をキャストできるデッキです。もしも《約束された終末、エムラクール》系統のデッキが増えるのであれば、最適なアプローチと言えるでしょう。
「ジャンド現出」
4 《沼》 1 《山》 6 《森》 4 《燻る湿地》 4 《ラノワールの荒原》 1 《燃えがらの林間地》 4 《進化する未開地》 -土地(24)- 3 《巡礼者の目》 2 《巨森の予見者、ニッサ》 1 《精神壊しの悪魔》 3 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》 2 《膨らんだ意識曲げ》 1 《約束された終末、エムラクール》 -クリーチャー(12)- |
3 《焦熱の衝動》 3 《ウルヴェンワルド横断》 3 《発生の器》 4 《過去との取り組み》 3 《コジレックの帰還》 2 《餌食》 3 《衰滅》 3 《最後の望み、リリアナ》 -呪文(24)- |
1 《竜使いののけ者》 2 《棲み家の防御者》 1 《約束された終末、エムラクール》 1 《強迫》 1 《焦熱の衝動》 3 《精神背信》 1 《究極の価格》 2 《知恵の拝借》 2 《ムラーサの胎動》 1 《衰滅》 -サイドボード(15)- |
こちらは「Team EUreka」がプロツアーで使用し、翌週に「グランプリ・ポートランド2016」を制した「ジャンド」バージョン。こちらのリストも過度に「現出」を意識することなく、序盤を除去呪文で凌ぐコントロール要素の強い構成に仕上がっています。
《コジレックの帰還》に強いとされる《無私の霊魂》も、このデッキならば容易に対処することが可能です。《老いたる深海鬼》の陰に隠れてしまいがちですが、《膨らんだ意識曲げ》もかなりのパワーカードです。今のところ「現出」デッキの中でも最も完成度が高いと思うので、ミッドレンジやコントロールデッキがお好きな方はぜひお試しください。
「昂揚デッキ」~「赤緑」・「黒緑」~
「昂揚」を軸に据えたデッキは、「赤緑」と「黒緑」が結果を残しています。色こそ違えど、どのリストも素早い「昂揚」達成から《墓後家蜘蛛、イシュカナ》や《ウルヴェンワルド横断》を流用する点は同じです。
また、先ほどの「現出」と同じような側面を持っており、「赤緑」型は《約束された終末、エムラクール》をキャストする速度に特化していて、「黒緑」型は例によって除去能力に長けています。
「赤緑昂揚ランプ」
7 《森》 5 《山》 4 《獲物道》 2 《燃えがらの林間地》 2 《見捨てられた神々の神殿》 4 《進化する未開地》 -土地(24)- 3 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》 1 《世界を壊すもの》 4 《搭載歩行機械》 3 《約束された終末、エムラクール》 -クリーチャー(11)- |
4 《焦熱の衝動》 4 《ウルヴェンワルド横断》 4 《苦しめる声》 4 《集団的抵抗》 4 《ニッサの巡礼》 3 《コジレックの帰還》 2 《炎呼び、チャンドラ》 -呪文(25)- |
3 《不屈の追跡者》 3 《稲妻織り》 3 《ゴブリンの闇住まい》 2 《龍王アタルカ》 1 《世界を壊すもの》 2 《龍詞の咆哮》 1 《面晶体の記録庫》 -サイドボード(15)- |
10 《森》 2 《山》 4 《獲物道》 1 《燃えがらの林間地》 2 《溺墓の寺院》 2 《見捨てられた神々の神殿》 1 《進化する未開地》 -土地(22)- 2 《面晶体の這行器》 1 《森の代言者》 1 《巨森の予見者、ニッサ》 2 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》 1 《ウルヴェンワルドのハイドラ》 2 《龍王アタルカ》 2 《世界を壊すもの》 2 《約束された終末、エムラクール》 -クリーチャー(13)- |
2 《面晶体の記録庫》 4 《ウルヴェンワルド横断》 4 《発生の器》 2 《焦熱の衝動》 4 《過去との取り組み》 2 《群れの結集》 4 《ニッサの巡礼》 3 《コジレックの帰還》 -呪文(25)- |
2 《節くれ木のドライアド》 2 《不屈の追跡者》 1 《巨森の予見者、ニッサ》 1 《失われた業の巫師》 2 《ムラーサの緑守り》 1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 3 《引き裂く流弾》 1 《焦熱の衝動》 1 《焙り焼き》 1 《コジレックの帰還》 -サイドボード(15)- |
行弘君とリード・デューク/Reid Dukeが組み上げたデッキは、《約束された終末、エムラクール》対決をこれ以上なく意識した高速仕様の「昂揚」デッキでした。行弘君は《搭載歩行機械》や《集団的抵抗》といった一風変わったカードで、デュークは往年のランプデッキよろしく《ニッサの巡礼》と《面晶体の記録庫》で他のデッキを凌駕する速度で《約束された終末、エムラクール》をキャストします。
どちらのリストも《約束された終末、エムラクール》の入ったデッキや黒系統のデッキに強くできているので、今後環境が遅くシフトしていくのであれば大いにチャンスのあるアーキタイプです。唯一の懸念材料は《無限の抹消》なので、行弘君のようにサイドボードに追加のクリーチャーを用意するか、デュークのようにメインからクリーチャーの種類を散らしておくといいでしょう。
「黒緑昂揚」
7 《沼》 5 《森》 4 《ラノワールの荒原》 4 《風切る泥沼》 4 《進化する未開地》 -土地(24)- 4 《森の代言者》 1 《棲み家の防御者》 3 《不屈の追跡者》 2 《巨森の予見者、ニッサ》 2 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》 1 《約束された終末、エムラクール》 -クリーチャー(13)- |
3 《ウルヴェンワルド横断》 3 《発生の器》 4 《闇の掌握》 2 《精神背信》 1 《究極の価格》 3 《破滅の道》 1 《餌食》 2 《衰滅》 4 《最後の望み、リリアナ》 -呪文(23)- |
2 《ゲトの裏切り者、カリタス》 1 《光り葉の選別者》 2 《強迫》 1 《死の重み》 2 《精神背信》 1 《無限の抹消》 2 《衰滅》 2 《闇の誓願》 1 《過ぎ去った季節》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -サイドボード(15)- |
多くのデッキに対してバランス良く戦える「黒緑昂揚」。もとより《不屈の追跡者》や《最後の望み、リリアナ》のおかげで消耗戦に強いデッキですが、サイドボードにはそれをより強固なものにする《闇の誓願》と《過ぎ去った季節》パッケージも搭載されています。
ただし、これと言った得意なマッチアップが少なく、《約束された終末、エムラクール》の入ったデッキ同士の対戦では不利なので、今後更なる活躍を見せるためには、大幅な改変が必要かもしれません。このリストのように《発生の器》を採用してトップスピードを上げたり、《精神背信》などの手札破壊を増量するのは良い変更だと思います。
「青赤《熱病の幻視》バーン」
9 《山》 3 《島》 4 《シヴの浅瀬》 4 《さまよう噴気孔》 3 《高地の湖》 1 《ガイアー岬の療養所》 -土地(24)- 4 《熱錬金術師》 3 《氷の中の存在》 2 《ヴリンの神童、ジェイス》 -クリーチャー(9)- |
3 《焦熱の衝動》 2 《払拭》 2 《稲妻の斧》 4 《焼夷流》 2 《苦しめる声》 2 《非実体化》 4 《集団的抵抗》 4 《熱病の幻視》 4 《癇しゃく》 -呪文(27)- |
2 《稲妻織り》 3 《黄金夜の懲罰者》 2 《騒乱の歓楽者》 1 《払拭》 1 《焦熱の衝動》 1 《引き裂く流弾》 2 《否認》 2 《ナヒリの怒り》 1 《呪文萎れ》 -サイドボード(15)- |
プロツアー以降、着実に勢力を伸ばしているのが「青赤《熱病の幻視》バーン」デッキです。《熱錬金術師》と大量の火力呪文を駆使することで、瞬く間に対戦相手を焼き尽くします。
このデッキのキーカードは《熱病の幻視》です。20点のライフを火力呪文だけで削るのは困難ですが、《熱病の幻視》さえ残ってしまえば恒久的にダメージを与えることができますし、息切れすることもなくなります。
このデッキは、大量の火力呪文と《熱病の幻視》というその他のデッキとは異なる戦略を軸にしているため、中速以降のデッキに対して無類の強さを誇ります。《ドロモカの命令》擁する「バント・カンパニー」や「白緑トークン」には多少の苦戦を強いられるものの、《払拭》もあることですし、決して勝てないほどの相性差ではありません。
このデッキに対しては、とにかく《熱病の幻視》をしっかりと対処できるかどうかが重要になるので、サイドボード後には《帰化》系のカードをサイドインされることが多いです。そのため、「青赤《熱病の幻視》バーン」側はサイドボードからクリーチャーを投入してその裏をかきにいきます。
《黄金夜の懲罰者》は黒系のデッキに強く、《騒乱の歓楽者》はミラーマッチを筆頭に多くのマッチで重宝します。
誕生して間もないデッキということで、メインボードに《嵐追いの魔道士》を採用している人もいたりと、カード選択にはまだばらつきがあるようですが、Magic Onlineで見かける機会も多く、今現在最も勢いのあるデッキだと思います。《熱病の幻視》は破壊されなければ1枚でゲームを掌握してしまえるほどの力があるので、近々スタンダードの大会に参加しようとお考えの方は、《熱病の幻視》対策をお忘れなく!
「バント・カンパニー」
3 《森》 6 《平地》 1 《島》 3 《要塞化した村》 3 《大草原の川》 4 《ヤヴィマヤの沿岸》 2 《伐採地の滝》 4 《進化する未開地》 -土地(26)- 4 《薄暮見の徴募兵》 4 《無私の霊魂》 4 《森の代言者》 1 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《反射魔道士》 4 《呪文捕らえ》 3 《不屈の追跡者》 2 《大天使アヴァシン》 -クリーチャー(26)- |
4 《ドロモカの命令》 4 《集合した中隊》 -呪文(8)- |
3 《節くれ木のドライアド》 1 《ヴリンの神童、ジェイス》 2 《巨森の予見者、ニッサ》 1 《不屈の追跡者》 1 《支配の天使》 1 《否認》 2 《オジュタイの命令》 2 《意思の激突》 2 《実地研究者、タミヨウ》 -サイドボード(15)- |
4 《森》 4 《平地》 1 《島》 3 《梢の眺望》 3 《大草原の川》 4 《ヤヴィマヤの沿岸》 2 《伐採地の滝》 4 《進化する未開地》 -土地(25)- 4 《薄暮見の徴募兵》 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《森の代言者》 4 《反射魔道士》 4 《呪文捕らえ》 4 《不屈の追跡者》 2 《巨森の予見者、ニッサ》 -クリーチャー(26)- |
4 《ドロモカの命令》 4 《集合した中隊》 1 《オジュタイの命令》 -呪文(9)- |
1 《苛性イモムシ》 3 《ラムホルトの平和主義者》 2 《ランタンの斥候》 4 《否認》 2 《石の宣告》 2 《神聖なる月光》 1 《即時却下》 -サイドボード(15)- |
プロツアー『異界月』では、事前の予想を下回る19.20%しか使用者がいなかった「バント・カンパニー」。その原因のひとつに、ミラーマッチを避けたかったプレイヤーが多かったことが挙げられると思います。もちろん、「バント・カンパニー」以上のデッキができあがったからという理由も考えられますが、世界屈指のプレイヤーたちが集うプロツアーで、プレイング技術が勝敗に直結する「バント・カンパニー」ミラーマッチを避けたかったというプレイヤーは思いのほか多かったのではないでしょうか。
そんな中で、LSVとあんちゃん(高橋優太)はミラーマッチに自信があったであろうプレイヤーで、奇抜なカード選択などのない基本に忠実な構成なことからも、ミラーマッチへの自信のほどがうかがえます。両者ともにサイドボードに《悲劇的な傲慢》を採用していないのが印象的で、《集合した中隊》合戦を制する《神聖なる月光》、膠着したゲームを一瞬で終わらせる《支配の天使》をミラーマッチ対策にあてています。
「バント・カンパニー」は上記2種類のリストが主流になるかと思いきや、翌週の「グランプリ・ポートランド2016」で興味深いアプローチがあったので、そちらも紹介させていただきます。
4 《森》 5 《平地》 1 《島》 3 《梢の眺望》 4 《大草原の川》 3 《ヤヴィマヤの沿岸》 2 《伐採地の滝》 4 《進化する未開地》 -土地(26)- 4 《薄暮見の徴募兵》 4 《無私の霊魂》 4 《森の代言者》 4 《反射魔道士》 4 《呪文捕らえ》 4 《不屈の追跡者》 2 《巨森の予見者、ニッサ》 1 《異端聖戦士、サリア》 2 《大天使アヴァシン》 -クリーチャー(29)- |
4 《集合した中隊》 1 《オジュタイの命令》 -呪文(5)- |
1 《節くれ木のドライアド》 2 《ヴリンの神童、ジェイス》 1 《巨森の予見者、ニッサ》 1 《異端聖戦士、サリア》 1 《老いたる深海鬼》 2 《ドロモカの命令》 1 《石の宣告》 1 《否認》 1 《次元の激高》 1 《悲劇的な傲慢》 1 《意思の激突》 1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 1 《実地研究者、タミヨウ》 -サイドボード(15)- |
アメリカの殿堂プレイヤー、ポール・リーツェル/Paul Rietzlは、まさかまさかのクリーチャーが29体も入った衝撃のアプローチを生み出しトップ8入賞を果たしています。《ドロモカの命令》と《集合した中隊》。「バント・カンパニー」でお馴染みだったこの呪文の枠に、ついにメスを入れるプレイヤーが現れたのです。
《ドロモカの命令》が抜けた理由としては、《無私の霊魂》や《呪文捕らえ》、さらには《異端聖戦士、サリア》などが加入したおかげでクリーチャーでできることが増えたこと、そして《約束された終末、エムラクール》の入ったデッキに対して《ドロモカの命令》の効果が薄いことが挙げられます。
このリストを選ぶ利点は、他の「バント・カンパニー」以上に安定した展開が望めることです。このリストであれば《集合した中隊》が外れてしまうことも少ないでしょうし、メインデッキでクリーチャーを多めに採用しているため、「サイドボード後にクリーチャーを減らし過ぎて《集合した中隊》のヒット率が下がってしまう」ことも少なくなっています。
前述の「青赤《熱病の幻視》バーン」が増加傾向にあるので、《ドロモカの命令》の需要は増すばかりだと思っていましたが、だからこそこのリストにたどり着いた着眼点と、結果を残したその実力に感銘を受けました。「バント・カンパニー」は完成されたデッキである。誰もがそう思うほどに「バント・カンパニー」はデッキの完成度が高く、これまでにいくつもの栄冠を掴み取ってきたデッキではありますが、もしかするとまだまだ改善の余地があるのかもしれません。
「白黒コントロール」
9 《沼》 4 《平地》 4 《コイロスの洞窟》 4 《乱脈な気孔》 4 《放棄された聖域》 1 《荒廃した湿原》 -土地(26)- 3 《ゲトの裏切り者、カリタス》 3 《大天使アヴァシン》 1 《保護者、リンヴァーラ》 -クリーチャー(7)- |
4 《闇の掌握》 2 《神聖なる月光》 2 《精神背信》 2 《究極の価格》 3 《骨読み》 2 《苦渋の破棄》 2 《破滅の道》 4 《衰滅》 3 《最後の望み、リリアナ》 2 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 1 《死の宿敵、ソリン》 -呪文(27)- |
4 《強迫》 2 《死の重み》 1 《精神背信》 1 《究極の価格》 2 《無限の抹消》 1 《苦渋の破棄》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -サイドボード(15)- |
新環境を制したのは、ルーカス・ブロホン/Lukas Blohonの駆る「白黒コントロール」でした。「世界選手権2016」の参加権利を取るために手堅いデッキを選択したものの、予想以上に《約束された終末、エムラクール》デッキが多くてつらいフィールドだった。とはご本人の弁ですが、それだけにブロホン選手の的確なプレイングやサイドボーディングが際立つ結果となりました。
前環境との違いは、メインの勝ち手段であった《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》がメインボードから退いていることです。代わりに採用されているのは《ゲトの裏切り者、カリタス》、《大天使アヴァシン》といったクリーチャー陣で、特に《大天使アヴァシン》は対戦相手に予想されづらく大活躍だったとのこと。
また、新戦力の《最後の望み、リリアナ》もフィニッシャーとして縦横無尽の活躍を果たしており、このようなクリーチャーの少ないデッキであれ十分に使用に値すると示されました。
このデッキの今後は《約束された終末、エムラクール》デッキの活躍次第ということになりそうですが、手札破壊の増加であったり、《約束された終末、エムラクール》でターンを奪われてもいいように《リリアナの誓い》、《次元の激高》、《罪人への急襲》でしっかりと対策しておきたいところ。
「今週の一押し~Cat Pact~」
1 《島》 6 《沼》 1 《山》 3 《詰まった河口》 3 《窪み渓谷》 4 《シヴの浅瀬》 4 《燻る湿地》 2 《凶兆の廃墟》 2 《進化する未開地》 -土地(26)- -クリーチャー(0)- |
1 《焦熱の衝動》 3 《予期》 2 《分散》 2 《闇の掌握》 4 《チャンドラの誓い》 3 《ジェイスの誓い》 3 《光輝の炎》 2 《無害な申し出》 4 《悪魔の契約》 3 《衰滅》 3 《闇の誓願》 1 《シルムガルの命令》 1 《意思の激突》 2 《最後の望み、リリアナ》 -呪文(34)- |
1 《龍王シルムガル》 2 《払拭》 3 《否認》 2 《精神背信》 1 《無害な申し出》 1 《無限の抹消》 1 《衰滅》 1 《即時却下》 1 《闇の誓願》 1 《意思の激突》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -サイドボード(15)- |
誰もが一度は考えたであろう、《悪魔の契約》と《無害な申し出》を組み合わせたコンボデッキ。各種妨害手段、そして《悪魔の契約》の力をもってして対戦相手の動きを抑え込み、最終的には《無害な申し出》で用済みの《悪魔の契約》を差し出して一撃で勝利をもぎ取ります。
《ドロモカの命令》全盛期にこのようなコンボデッキが成立するなんて!と驚かれた方もいらっしゃるでしょうが、《悪魔の契約》を《ドロモカの命令》から守るため、避雷針としての役割も兼ねる《チャンドラの誓い》、《ジェイスの誓い》が合計で7枚採用されています。
Botelhoさんは予選ラウンドを13勝1敗1分で堂々の首位通過を果たしており、この結果を機に今後のさらなる活躍にも期待ができます。青赤《熱病の幻視》バーン」の影響で、多少なりとも《帰化》系のカードが増加傾向にあるのは気掛かりですが、《悪魔の契約》や珍しいデッキがお好きな方はぜひ一度お試しください!
おわりに
今週の「スタンダード・アナライズ」は以上です。例によって新デッキが大活躍するプロツアー&グランプリとなりましたが、本編でも触れたようにどのデッキもまだまだ伸びしろがあると思いますし、「Cat Pact」のようなまだ見ぬ奇想天外なデッキも潜んでいるかもしれません。
次回は世界各国のRPTQ (プロツアー地域予選) を特集する予定です。それでは、また次回の連載で!
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