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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
第86回:グランプリ・オーランド トップ8デッキ特集
読み物
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
2012.01.19
第86回:グランプリ・オーランド トップ8デッキ特集
こんにちはー。
今週は先週お伝えした通り、アメリカで行われたグランプリの結果を見ていきたいと思います。
その前に、先週の記事でグランプリ名を間違えてしまったことをお詫びいたしします。先週はグランプリ・オークランドと記載しましたが、正しくはグランプリ・オーランドでした。あまり大きなことではないかもしれませんが、今後はより慎重にやっていきたいと思います。
グランプリの名前は間違えてしまいましたが、先週の記事は今週の内容と関連があるので、そちらもご覧になっていただければ、より一層今週の記事をお楽しみいただけるかと思います。
それでは、気を取り直してトップ8のデッキ分布を見ていきましょう。
~グランプリ・オーランド トップ8デッキ~(リンク先は英語カバレージ)
優勝 | 「黒緑タッチ赤《ケッシグの狼の地》」 |
準優勝 | 「グリクシス(青黒赤)コントロール」 |
3位 | 「青白Delver-Blade(第85回)」 |
4位 | 「青白イリュージョン(第79回)」 |
5位 | 「太陽拳(青白黒)(第74回)」 |
6位 | 「青白人間ビートダウン(第77回)」 |
7位 | 「赤緑《ケッシグの狼の地》(第80回)」 |
8位 | 「青白Delver-Blade(第85回)」 |
今現在のMagic Online(以下MO)のメタゲームと同じく、「青白」系のデッキが半数を占める結果となりました。
「青白」には、大きく分けて3つのタイプがあります。
ひとつめは、先週も紹介した《不可視の忍び寄り》《聖トラフトの霊》といった「呪禁」クリーチャーを多めに採用したもので、それを《ルーン唱えの長槍》と《戦争と平和の剣》で強化する「Delver-Blade」。
ふたつめは、《幻影の熊》《非実在の王》といった幻影軍団を主軸に据えた「イリュージョン」タイプ。
そしてみっつめは《教区の勇者》を筆頭とした人間・クリーチャーを主力とする「青白人間ビートダウン」です。
グランプリ・オーランドでは、この3種類全てがトップ8入賞という快挙を成し遂げたのですが、その中でも特に目覚ましい活躍を見せたのが「Delver-Blade」でした。
「青白Delver-Blade」
9 《島》 1 《平地》 4 《金属海の沿岸》 4 《氷河の城砦》 3 《ムーアランドの憑依地》 -土地(21)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《瞬唱の魔道士》 3 《不可視の忍び寄り》 2 《マーフォークの物あさり》 3 《聖トラフトの霊》 -クリーチャー(16)- |
3 《ギタクシア派の調査》 3 《はらわた撃ち》 4 《思案》 3 《蒸気の絡みつき》 4 《マナ漏出》 2 《深夜の出没》 2 《ルーン唱えの長槍》 2 《戦争と平和の剣》 -呪文(23)- |
2 《幻影の像》 1 《精神的つまづき》 1 《蒸気の絡みつき》 2 《神への捧げ物》 1 《否認》 2 《四肢切断》 2 《雲散霧消》 2 《忘却の輪》 2 《機を見た援軍》 -サイドボード(15)- |
9 《島》 1 《平地》 4 《金属海の沿岸》 4 《氷河の城砦》 3 《ムーアランドの憑依地》 -土地(21)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《瞬唱の魔道士》 3 《不可視の忍び寄り》 2 《マーフォークの物あさり》 3 《聖トラフトの霊》 -クリーチャー(16)- |
3 《ギタクシア派の調査》 3 《はらわた撃ち》 4 《思案》 3 《蒸気の絡みつき》 4 《マナ漏出》 2 《深夜の出没》 2 《ルーン唱えの長槍》 2 《戦争と平和の剣》 -呪文(23)- |
2 《幻影の像》 1 《精神的つまづき》 1 《蒸気の絡みつき》 2 《神への捧げ物》 1 《否認》 2 《四肢切断》 2 《雲散霧消》 2 《忘却の輪》 2 《機を見た援軍》 -サイドボード(15)- |
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世界最強のチーム「ChannelFireball」。大会直後の特集では、彼らに触れないことはないというくらいの常勝チーム。特にPVことPaulo Vitor Damo da Rosaは、プロツアートップ8入賞回数が8回(歴代4位タイ)を誇る世界でも有数のトッププロで、今回のグランプリにおいても、我々にその力を遺憾なく見せつけてくれました。
まずは初日を不戦勝3つのあとに6連勝を飾って無敗で通過し、これでトップ8入賞にグッと近づいたPVだったのですが、圧巻だったのは2日目のパフォーマンス。2日目でもあっさりと4連勝を果たし連勝記録を13まで伸ばすと、残り2回戦を残して自身11回目のグランプリトップ8が確定。続く14回戦では、チームメイトのConley Woodsに勝ち星をプレゼントして彼のトップ8入賞もほぼ確実なものとし、さらに最終ラウンドでは当落線上にいるチームメイトのDavid OchoaさんのためにID(合意の上での引き分け)を行わずに普通にプレイ。当然と言いますかなんと言いますか、鬼神のごときPVはこの最終ラウンドを制し、見事にOchoaさんのトップ8入賞をもアシストしたのでした。
そんなPVの圧巻のパフォーマンスもあり、トップ8の席のうち3つを確保した「ChannelFireball」。今年も彼らの勢いが衰えることはなさそうです。
予選ラウンドを、実質無敗と圧倒的なスコアで勝ちあがったPVと、12勝2敗1分けとこちらもすばらしい成績を残したOchoaさんが選んだのは、75枚全く同じ「Delver-Blade」でした。
今まで何度となく紹介してきた「イリュージョン(参考:第79回)」デッキの幻影クリーチャーたちを、壊れやすい幻影軍団とは対極に位置する「呪禁」持ちの《不可視の忍び寄り》と《聖トラフトの霊》に置き換えたような構成で、それに加え《深夜の出没》まで搭載することで、単体除去への耐性をこれ以上ないほどまでに高めたリストになっています。
これは世界選手権を制した彌永君の「赤緑《ケッシグの狼の地》(第80回)」のように、単体除去をこれでもかと投入しているデッキに突き刺さる戦略で、《不可視の忍び寄り》《聖トラフトの霊》の前に、単体除去を握りしめたまま負けてしまうことも頻繁に起こります。
仮にそれらのクリーチャーを、《金屑の嵐》や《黒の太陽の頂点》のような全体除去で対処されようとも、《ムーアランドの憑依地》が息切れを防いでくれます。
ある程度ライフを削ったあとに出てくる1/1「飛行」持ちのトークンは、それだけでも十分な脅威となりえますが、そこに更なる力を与えてくれるのが、今をときめく《ルーン唱えの長槍》と《戦争と平和の剣》。
先週紹介した「青黒感染」よろしく、《ルーン唱えの長槍》はこのデッキでも+4~+5ほどの修正が見込めますし、《戦争と平和の剣》の破壊力は言わずもがな。どんな相手にも強力なカードですが、とりわけ「青白人間ビートダウン」や「赤単」といった、付随させる「プロテクション(白)(赤)」が効果的な相手に刺さる1枚ですね。
「スピリット・トークン」や《瞬唱の魔道士》でさえ、これらの装備品を持てばハードパンチャーに早変わりするわけで、そんな凶器を《不可視の忍び寄り》や《聖トラフトの霊》が手にしようものなら、ゲームが終わるまでにそう長くの時間はかからないでしょう。
余談ではありますが、今回のグランプリトップ8インタビューでも、「《ルーン唱えの長槍》と《戦争と平和の剣》はどちらが強いか」という質問がされており、《ルーン唱えの長槍》の注目度の高さが伺えます。
しかし、このデッキはあまりにも目立ちすぎました。グランプリの前の週に行われた「StarcityGames・オープントーナメント・アトランタ」を制しただけでも世間の注目を集めるには十分でしたが、それに加えその後はMO界でも活躍が目立つようになったため、このデッキへのマークは日に日にきつくなっていきました。
そして、グランプリ・オーランドの決勝の席へと辿り着いたのは、それを体現したかのようなふたつのデッキだったのです。
「黒緑タッチ赤《ケッシグの狼の地》」
7 《森》 5 《沼》 1 《山》 4 《森林の墓地》 1 《竜髑髏の山頂》 4 《墨蛾の生息地》 2 《ケッシグの狼の地》 1 《幽霊街》 -土地(25)- 1 《極楽鳥》 1 《裏切り者グリッサ》 4 《真面目な身代わり》 2 《酸のスライム》 4 《原始のタイタン》 4 《墓所のタイタン》 -クリーチャー(16)- |
4 《太陽の宝球》 4 《不屈の自然》 3 《破滅の刃》 2 《ゲスの評決》 1 《漸増爆弾》 3 《黒の太陽の頂点》 2 《緑の太陽の頂点》 -呪文(19)- |
1 《ヴィリジアンの堕落者》 1 《最後のトロール、スラーン》 1 《解放の樹》 2 《虚無の呪文爆弾》 1 《漸増爆弾》 1 《喉首狙い》 1 《古えの遺恨》 2 《死の支配の呪い》 1 《黒の太陽の頂点》 2 《殴打頭蓋》 1 《ヴェールのリリアナ》 1 《原初の狩人、ガラク》 -サイドボード(15)- |
世界選手権を制した彌永君の「赤緑《ケッシグの狼の地》」の特徴は、2マナ→4マナ→6マナへのジャンプアップが安定して行えること、そして《感電破》《ショック》《金屑の嵐》といった除去の多さでした。
このデッキも2→4→6のジャンプアップという長所を受け継ぎつつ、メタゲームの変化に合わせて赤緑の2色ではなく、黒を補色に据えた3色になっています。
世界選手権において、彌永君が当時は「赤緑《ケッシグの狼の地》」の確定パーツとして認知されていた《原初の狩人、ガラク》を抜いて、その枠を《感電破》などの軽量除去に置き換えるセンセーショナルな戦略をとったのは記憶に新しいところですが、これはメタゲーム内に蔓延していた《ミラディンの十字軍》に対するアンチテーゼでした。
しかし現在では《ミラディンの十字軍》は影を潜め、その代わりに《聖トラフトの霊》の台頭が目立つようになりました。
それどころか、今回のグランプリでPVたちが使用した《不可視の忍び寄り》まで入った「呪禁」過多のリストまで登場する始末で、対象にならないクリーチャー陣の前には《感電破》《ショック》はおろか、以前は切り札と呼べたはずの《業火のタイタン》ですらその力を発揮することができません。こちらが《業火のタイタン》をキャストする頃には、相手の手札に《蒸気の絡みつき》が溜まってくるタイミングでもあるので、最悪のケースだと《マナ漏出》を使わせることすら叶わず、本体に3点与えて手札に戻されるだけ、ということにもなりかねません。
しかしそれが《墓所のタイタン》ならばどうでしょう?
《墓所のタイタン》ならば、仮に本体が《蒸気の絡みつき》されようとも、2匹の「ゾンビ・トークン」が《聖トラフトの霊》に睨みをきかせてくれますし、「Delver-Blade」以外のデッキと対峙する際にも、《破滅の刃》やその他の単体除去に強いクリーチャーとして活躍が見込めます。
《緑の太陽の頂点》用に1枚だけ採用された《裏切り者グリッサ》も、主な用途は《聖トラフトの霊》に対するブロッカーという側面が大きいと感じていて、後手でもマナ加速経由なら3ターン目に《緑の太陽の頂点》から出せるので、《聖トラフトの霊》を牽制するのにもってこいのクリーチャーです。
《裏切り者グリッサ》も《業火のタイタン》と同じく、《蒸気の絡みつき》で簡単に対処されるという弱点がありますが、3マナと6マナということでキャストできるターンに開きがあります。《業火のタイタン》をキャストする頃には、こちらのライフが1桁なんて状況も多いでしょうが、《裏切り者グリッサ》(またはX=3の《緑の太陽の頂点》)をキャストする時には、まだライフに余裕があるはずです。
Conleyのデッキには、一般的な《真面目な身代わり》に加え、《裏切り者グリッサ》と《酸のスライム》が採用されているので、《蒸気の絡みつき》か《マナ漏出》を使わなければ《聖トラフトの霊》がアタックにいけない、という状況を作りやすくなっています。
こうすることで《聖トラフトの霊》を抑え込む、またはスペルを使うことを強制できますし、そこでもしも相手が《マナ漏出》を使ってくるようであれば、後続の《墓所のタイタン》や《黒の太陽の頂点》が通りやすくなるというわけですね。
2色目を黒にしたことで除去選択にも融通がきくようになっており、「呪禁」持ちのクリーチャーにも対処可能な《ゲスの評決》や、繰り返し使える全体除去、《黒の太陽の頂点》が採用できるのも黒の利点です。
《ゲスの評決》は{B}{B}というキャスティングコストの都合上、序盤にキャストできないことが多々あるので、3枚以上の採用は難しいかと思いますが、もしもメタゲームが今以上に「Delver-Blade」に傾くようであれば、《破滅の刃》を減らして《ゲスの評決》を追加してもいいでしょう。
《黒の太陽の頂点》に関しては、赤にも《金屑の嵐》という優秀な全体除去があるため黒の特権とまではいきませんが、Xを調節することで《金屑の嵐》よりも広範囲のクリーチャーに対処できるのが魅力です。
そしてこれぞ黒の特権と言えるのが、サイドボードに潜む《死の支配の呪い》。
海外では「青白」デッキのことをまとめて「UW Moorland」と表記したりするんですが、《死の支配の呪い》はそれらに劇的に刺さる1枚です。《ムーアランドの憑依地》から出てくるトークンはもちろんのこと、《不可視の忍び寄り》《深夜の出没》など、単体除去で対処しづらいカードを一掃できます。
《ムーアランドの憑依地》の入ったデッキ相手には概ね強いですが、なかでも効果覿面なのが上で紹介した「Delver-Blade」です。リストをご覧になっていただければ分かるように、変身後の《昆虫の逸脱者》と《聖トラフトの霊》以外の全てのカードは、《死の支配の呪い》に耐えることができません。
《昆虫の逸脱者》も、装備品のバックアップがなければただの2/1に成り下がるため、一度《死の支配の呪い》の設置に成功すれば、《聖トラフトの霊》以外で負けることはほとんどなくなります。
《聖トラフトの霊》も1/1になりますし、これなら《墨蛾の生息地》で相打ちにとることもできます。あとは《蒸気の絡みつき》→装備品の突然死にだけ気を付けて、きちんとブロッカーを残すようにするといいでしょう。
《死の支配の呪い》は現環境を語るうえで欠かせないカードで、最近ではあまり目立った活躍のできていないコントロール系のデッキが復興するきっかけになるのではないかと思っています。
「グリクシス(青黒赤)コントロール」
4 《島》 2 《沼》 2 《山》 4 《闇滑りの岸》 2 《水没した地下墓地》 4 《黒割れの崖》 4 《硫黄の滝》 1 《銅線の地溝》 2 《ゆらめく岩屋》 -土地(25)- 2 《瞬唱の魔道士》 2 《オリヴィア・ヴォルダーレン》 1 《業火のタイタン》 -クリーチャー(5)- |
3 《清純のタリスマン》 2 《思案》 4 《捨て身の狂乱》 3 《マナ漏出》 1 《古えの遺恨》 2 《漸増爆弾》 2 《鞭打ち炎》 1 《破滅の刃》 1 《喉首狙い》 3 《禁忌の錬金術》 2 《死の支配の呪い》 1 《小悪魔の遊び》 1 《黒の太陽の頂点》 1 《殴打頭蓋》 2 《ヴェールのリリアナ》 1 《ソリン・マルコフ》 -呪文(30)- |
2 《古えの遺恨》 2 《否認》 1 《マナ漏出》 1 《漸増爆弾》 2 《雲散霧消》 1 《死の支配の呪い》 1 《生命の終焉》 1 《ソリンの復讐》 2 《青の太陽の頂点》 1 《ヴェールのリリアナ》 1 《解放された者、カーン》 -サイドボード(15)- |
コントロールデッキをこよなく愛する「The Innovator/革新家」Patrick Chapinが持ち込んだのは、新型の「グリクシス(青黒赤)コントロール」でした。このリストには、今のメタゲームでコントロールデッキが生き残るための術が詰まっていて、それは大きく分けて以下の3点です。
ひとつめはConelyのところでも紹介した《死の支配の呪い》の採用。コントロールデッキにとって悪夢のような《ムーアランドの憑依地》を完封できるだけでなく、一見効果のなさそうな「赤緑《ケッシグの狼の地》」系のデッキに対しても、《原始のタイタン》から導かれる《墨蛾の生息地》を抑え込むことができるため、完全な不要牌になってしまうことはありません。他にも「白単《鍛えられた鋼》」デッキにも効果的ですし、無駄カードになる相手が非常に少ないため、このカードのメイン採用を躊躇する必要はないと思います。
環境を牛耳る「青白」系のデッキは、メインボードでこのカードに触る術をほとんど持ちませんし、カウンターも《マナ漏出》くらいのものなので、3マナ浮かせて出せばカウンターされることもあまりないので、メインボード戦ではエンドカードになりえます。
しかしながら、最近ではこのカードの強さが知れ渡ってきたために、「青白」系のデッキはサイドから《否認》や《雲散霧消》のような確定カウンターか、《天界の粛清》や《忘却の輪》のような《死の支配の呪い》に触れるカードを入れてくることが多いため、サイド後は設置に成功しても過信は禁物ですね。
ふたつめの《清純のタリスマン》は、《ムーアランドの憑依地》に対する回答となりえるマナ加速。これも現在のメタゲームを象徴する1枚で、毎ターン1点のライフゲインは、《不可視の忍び寄り》《瞬唱の魔道士》《深夜の出没》といった小さなクロックを軽減するのに役立ち、コントロールデッキにとって重要な「時間」を与えてくれます。
これにより、《マナ漏出》を意識して3マナ浮かせて行動するだけの余裕が生まれたりだとか、自身のライフが少ない状況であろうとも、小さなクロックならば無視することが可能になります。ライフゲインのみならず、マナ加速という役割もあるため、土地の総数が重要なコントロール対決でも重宝しますね。
ここ最近のコントロールデッキには必ずと言っていいほど採用されているカードであり、《死の支配の呪い》と同じく、コントロールデッキが復権するきっかけになるカードだと思っています。まだ試したことがないという方は、ぜひ一度手にとってみてください。
みっつめはコントロールデッキにとって必須項目である除去カードの取捨選択。
ここまででも何度か触れてきましたが、最近のトレンドは「呪禁」付きのクリーチャーで、これに対処できるかどうかがひとつの鍵となっています。
比較的見かける機会の多い《漸増爆弾》《黒の太陽の頂点》《ヴェールのリリアナ》は当然として、さすがChapinと世界を唸らせたのが《鞭打ち炎》です。
2マナと軽いので「青白」系に入っている《マナ漏出》をケアしやすいですし、その軽さゆえに《瞬唱の魔道士》での「フラッシュバック」も容易に行うことができます。
今現在のメタゲームは、《聖トラフトの霊》を中心にまわっていると言っても過言ではないので、赤いデッキであれば《鞭打ち炎》を入れておいて損はないでしょう。
他に目を引くのは《ソリン・マルコフ》でしょうか。《清純のタリスマン》同様に、これもまた《ムーアランドの憑依地》を意識したチョイスで、継続して除去とライフゲインを実行できるうえに、初期忠誠度が高いので、《ムーアランドの憑依地》に対して有効なカードです。
《聖トラフトの霊》で一撃で死んでしまうのが悲しいところですが、《聖トラフトの霊》に関しては他のカードできっちりと対策してありますし、《蒸気の絡みつき》の効かないフィニッシャーということで、今後に要注目の1枚ですね。
ChapinのデッキもConleyのデッキも、オリジナルデッキでありながらもTier1のデッキと渡り合える力を持っていますし、特に「Delver-Blade」に強くできています。これはメタゲームをきっちりと把握したうえで、自分の好きなことを追及する意欲がなければできないことですし、それでいてちゃんと結果を残すあたり、さすがというほかないですね。
来月の10日に行われる「プロツアー・闇の隆盛」でも、彼らの力作に期待しましょう。
トップ8の中で、今まで深く考察する機会のなかったデッキは以上になります。ここからはその他のデッキを、少し駆け足で見ていきましょう。
「青白イリュージョン」
9 《島》 4 《金属海の沿岸》 4 《氷河の城砦》 3 《ムーアランドの憑依地》 -土地(20)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《幻影の熊》 4 《幻影の像》 4 《非実在の王》 4 《瞬唱の魔道士》 1 《聖トラフトの霊》 -クリーチャー(21)- |
4 《ギタクシア派の調査》 3 《はらわた撃ち》 4 《思案》 4 《蒸気の絡みつき》 4 《マナ漏出》 -呪文(19)- |
3 《縫い合わせのドレイク》 2 《神への捧げ物》 1 《否認》 2 《四肢切断》 3 《雲散霧消》 2 《機を見た援軍》 2 《戦争と平和の剣》 -サイドボード(15)- |
メインボードはオーソドックスな構成ですが、サイドボードには工夫が見られます。
最近では《聖トラフトの霊》が採用される枠に《縫い合わせのドレイク》が投入されていますが、これは《鞭打ち炎》や《金屑の嵐》を意識してのことかと思います。
個人的には、今現在はまだ《聖トラフトの霊》でいいような気もしますが、今後《鞭打ち炎》と《金屑の嵐》が増えるようであれば、このリストのように《縫い合わせのドレイク》を増量するといいでしょう。
それともう1点気になるのが《戦争と平和の剣》の採用です。ご存じの通り、このデッキの主力である《幻影の熊》と《幻影の像》の幻影コンビには装備品が付けられないのですが、それを差し置いてまで《戦争と平和の剣》が採用されているということは、それほどまでに「青白人間」を意識していたという裏付けでもあります。
以前であれば、「イリュージョン」対「青白人間」は少しだけ「イリュージョン」側が有利という印象でしたが、「青白人間」も《ギデオンの法の番人》や《迫撃鞘》で「イリュージョン」を対策してくるようになったため、「イリュージョン」側もなにかしら策を講じる必要があるでしょう。
《戦争と平和の剣》は、「青白人間」対策としては最上級のものなので、サイドボードにぜひとも忍ばせておきたい1枚です。
「青白人間ビートダウン」
11 《平地》 1 《島》 4 《金属海の沿岸》 4 《氷河の城砦》 3 《ムーアランドの憑依地》 -土地(23)- 4 《教区の勇者》 4 《宿命の旅人》 3 《先兵の精鋭》 4 《堂々たる撤廃者》 2 《レオニンの遺物囲い》 3 《聖トラフトの霊》 2 《ミラディンの十字軍》 2 《悪鬼の狩人》 4 《刃砦の英雄》 -クリーチャー(28)- |
4 《清浄の名誉》 2 《マナ漏出》 2 《忘却の輪》 1 《戦争と平和の剣》 -呪文(9)- |
2 《マナ漏出》 2 《存在の破棄》 2 《四肢切断》 3 《機を見た援軍》 1 《忘却の輪》 3 《迫撃鞘》 1 《戦争と平和の剣》 1 《ギデオン・ジュラ》 -サイドボード(15)- |
これと言ってリストに今までと大きな変化はありませんが、強いて言えばメタゲームが変わったことにより、「青白人間」には「Delver-Blade」にないひとつの強みが生まれました。
それは《死の支配の呪い》が環境に増えたことです。これは「イリュージョン」にも言えることなのですが、「青白人間」と「イリュージョン」にはタフネス2以上のクリーチャーが多いので、《死の支配の呪い》が出てしまっても逆転の目があります。
特にこの「青白人間」は、《清浄の名誉》があるおかげで《死の支配の呪い》環境下でも《ムーアランドの憑依地》を起動できますし、《レオニンの遺物囲い》で《死の支配の呪い》を追放したりもできます。
どのタイプの「青白」で大会に出るにしろ、《天界の粛清》、《忘却の輪》のような《死の支配の呪い》対策は必須でしょうが、Chapinのようにメインボードから《死の支配の呪い》を搭載するようなアプローチまで出てきたので、《死の支配の呪い》が多いメタゲームであれば、「Delver-Blade」よりも「青白人間」か「イリュージョン」を選択するといいと思います。
「赤緑《ケッシグの狼の地》」
5 《森》 6 《山》 4 《銅線の地溝》 4 《根縛りの岩山》 4 《墨蛾の生息地》 3 《ケッシグの狼の地》 -土地(26)- 1 《極楽鳥》 4 《真面目な身代わり》 1 《最後のトロール、スラーン》 4 《原始のタイタン》 4 《業火のタイタン》 -クリーチャー(14)- |
4 《太陽の宝球》 4 《不屈の自然》 4 《感電破》 4 《金屑の嵐》 2 《緑の太陽の頂点》 2 《小悪魔の遊び》 -呪文(20)- |
1 《ヴィリジアンの堕落者》 1 《最後のトロール、スラーン》 1 《解放の樹》 1 《酸のスライム》 3 《秋の帳》 2 《古えの遺恨》 1 《漸増爆弾》 1 《内にいる獣》 2 《饗宴と飢餓の剣》 1 《殴打頭蓋》 1 《原初の狩人、ガラク》 -サイドボード(15)- |
こちらは世界選手権優勝の「赤緑《ケッシグの狼の地》」のアップデート版。当時とそこまで大きな違いはありませんが、「呪禁」クリーチャーの隆盛を受けて、《金屑の嵐》がメインから4枚採用されていますね。今のメタゲームであれば、Chapinのように《鞭打ち炎》まで入れてもいいかもしれません。
「太陽拳」
4 《島》 4 《平地》 1 《沼》 4 《金属海の沿岸》 4 《氷河の城砦》 2 《闇滑りの岸》 3 《水没した地下墓地》 2 《孤立した礼拝堂》 2 《幽霊街》 -土地(26)- 2 《幻影の像》 3 《太陽のタイタン》 1 《大修道士、エリシュ・ノーン》 -クリーチャー(6)- |
3 《清純のタリスマン》 3 《熟慮》 3 《破滅の刃》 1 《平和な心》 2 《マナ漏出》 1 《否認》 4 《禁忌の錬金術》 3 《忘却の輪》 1 《雲散霧消》 1 《機を見た援軍》 3 《審判の日》 1 《堀葬の儀式》 1 《白の太陽の頂点》 1 《殴打頭蓋》 -呪文(28)- |
1 《幻影の像》 1 《大修道士、エリシュ・ノーン》 2 《虚無の呪文爆弾》 2 《漸増爆弾》 2 《存在の破棄》 2 《雲散霧消》 1 《忘却の輪》 2 《機を見た援軍》 1 《白の太陽の頂点》 1 《青の太陽の頂点》 -サイドボード(15)- |
《堀葬の儀式》が入っているということで、名目上デッキ名は「太陽拳」にさせてもらいましたが、どちらかというと「エスパー(青白黒)コントロール」に近い非常にまとまったリストに仕上がっています。ここでも《清純のタリスマン》が採用されているのに注目です。
《聖トラフトの霊》が環境に増えたことにより、《幻影の像》は除去のような役割をはたすことも多いですし、以前に比べると環境から墓地対策が減ってきているので、《太陽のタイタン》もその力を発揮しやすくなっていますね。常日頃から「太陽拳」が嫌いだと豪語している僕の目から見ても、このリストはすばらしいと思います。コントロールフリークのみなさんはぜひ試してみてほしいですね。
トップ8デッキ解説は以上になります。
来週は、今週末に行われる「StarCityGames・オープントーナメント・ワシントン」の結果を追いかけるか、最近お気に入りの「青黒コントロール」の特集をしようかと思っています。
現状ではどちらにしようか決めかねているので、もしも「こっちの特集をやってほしい!」というご要望を下のボタンからツイートしていただければ、そちらを採用させていただくかもしれません。
それでは、また来週ー!
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