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Savor the Flavor
捨て札の山ではなく
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Savor the Flavor
捨て札の山ではなく
Doug Beyer / Translated by Mayuko Wakatsuki / Translation-Supervised by Yohei Mori
2011年11月16日
ああ、それは捨て札の山だ。フレイバーの層と想像のラベルを取り払えば、墓地は単純にカードが捨てられた場所だ。他のカードゲームの、プレイ済みカードや一回限りしか使用できない捨て札の山と何の違いもない。機能上、墓地は単純に、君の卓にあてがわれた任意の領域、今のところ重要でないカードを投げておく場所だ。
《墓地のシャベル》 アート:Martina Pilcerova |
だがここに今日の命題がある。フレイバーを一味加えれば、可能性の世界が手に入る。
捨て札の山? わかった。覚えておこう。カードゲームのコンセプトだ。ジン・ラミーみたいに。いいだろう。
墓地? おぉぉおおぉぉ。きしむ鉄の門。腐敗した死体の山。使用された魔法の残滓。月光の屍霊術と道徳に逆らう暗黒の技。我々の脳葉の暗い片隅で才気がひらめく。
それこそ、私がカードゲームのフレイバー的側面を作り出すのを愛する所以だ。ありふれたゲーム用語全てに情緒深く、叙事詩的雰囲気をまとわせる。数字は鋭い鋼と鍛えられた板金となる。必要なのは一つの単語だけだ。
「墓地」絡み
最近になってマジックはそのフレイバーの核心を多く取り入れている。場領域は戦場となった。ゲームから取り除かれた領域は(ヴォーソスは萎縮する)今やミステリアスな追放領域だ(あーあ)。基本セットとファンタジーの古典的大黒柱は一本の樹となって、同時に一つの字句を判読するとともに綴りに口付けをする。そしてイニストラード、墓地絡みとフレイバーを楽しむマジックの傾向との愛し子のようなもの。オデッセイ以来、我々は手札を捨て、スレッショルドを達成し、フラッシュバックしてはいたものの、ホラーのフレイバーに浸った世界に乗ってはいかなかった。イニストラードは可能性の回廊に潜んできた。そして今、ついに、墓地はそのフレイバー的正当さを得ている。
《スカーブの殲滅者》 アート:Chris Rahn |
全ては、それを「捨て札の山」ではないものに命名してくれたおかげだ。
「墓地」という単語がなくては、身の毛のよだつようなファンタジーの象徴の翼は失われてしまうかもしれない。黒という色はそのフレイバーの多くを失ってしまうかもしれない。君は悪魔の契約に署名せず、いくらかの昔ながらの捨て札の山を操作する力を得るために、骨で織ったローブをまとう。イニストラードの陰鬱メカニズム、新たな(だが常識的な)ルール用語「死亡」、召喚するために死体を必要とする青いゾンビ。これらは全て捨て札の山を墓地と同一視することによって可能となったものだ。
それこそ、フレイバーが行う事だ。ゲームに必須のメカニズム的構成要素を、ゲームの背後にある隠喩の中にまとわせる。通常、強いフレイバーの要素を追加することは明白に矛盾する二つの物事を引き起こす。そのどちらも、ゲームにとっては良いものだ。
それはカードデザインを切り開く
メカニズムが非常に重要なゲームにおいては、新たなメカニズムはしばしば現存するメカニズムを操作する所から生まれる。既に存在するメカニズムを結びつけ、ひねることによってゲームは広がる。それはゲームを成長させるには良いやり方で、マジックも確かにそうしてきた。サイクリングやキッカーといったメカニズムは一般的で抽象的なメカニズムであり、それらは広範囲に、抽象的なリソースをただ操作しカードを領域から領域へと移動させる方法だ。
だが君がそれらの領域にフレイバーをまとわせる時、ただ抽象的なカード操作メカニズムをひねることからは生まれない新たなメカニズムが突然降ってわく。墓地のフレイバーは、カードについて新たな考え方の扉をきしみながら開けさせてくれる。カード操作の特別な方法に焦点を当てること、そしてルールで表現するには野暮でさえあるかもしれない事に。その意味では墓地のフレイバーは、蘇生、復活、フラッシュバック、探査、転生、そしてより遠まわしには憑依、回顧、献身、マッドネスを生み出した。
フレイバーはデザイナーの頭脳を、過去のルールの中では単純明快だったものを拡大してくれる。時々それはルールテキストを奇妙にゆがませてしまう事さえある、フレイバーが意図するものに合わせるために。例として、憑依、ギルドパクトで登場したオルゾフギルドのキーワード能力は、ルール用語で表現するのは必ずしも簡単ではない(とはいえその注釈文は「死亡」「追放」といった用語を与えられた今日では遥かに綺麗になった)。だが憑依の、死亡したクリーチャーが生者に憑依するというフレイバーは心地よく把握できるもので、また幽霊の評議員に率いられたギルドへとクールで怪奇的な見地を加えてくれる。
イニストラードはこれをヴォーソス的極端さをもって採用している。イニストラードのデザイナー達は墓地をフレイバー的着想としてとらえ、フレイバーは彼らを1790年代ヨーロッパの怪奇の物語、肌寒く月光に照らされた森へと導いた。
それはカードデザインを強いる
とても奇妙なことに、フレイバーはカードデザインの新たな道へと錠を開け、ブロックのテーマをくれる一方、それは同時に新たなカードのデザインを強制させる。墓地のその気味の悪い、棺のようなフレイバーは堅固な独自性をくれる。それはテーマとメカニズムのうち意味を成すものと成さないものを固める。また墓地絡みセットでは白のカードをデザインすることが難しくなる場合がある。例えば、見込みのあるデザインをよりフレイバー的に中立な用語(「捨て札の山」)が囲ってしまわないかもしれない時は。
ここに捨て札の山あり |
だが究極的には、制約が生成されるのは良いことだ。墓地が持つフレイバーの強固な独自性のおかげで、5色のそれぞれはその領域とそれ自身との明瞭な関係を持ち、互いが類似しすぎているように見えることを防いでいる。
- 白は墓地へと失われたそれらを悼み、墓地を浄化し、時折過去の祖先や失われた魂に敬意を表することによって軍勢を追加する。
- 青は墓地を記憶や祖先の英知の源として使用し、しばしば他者の精神や記憶を枯渇させることによって墓地を埋める。
- 黒は墓地を屍霊術の資源として使用することによって、道徳の通常の境界を破る。そしてまた死の魔術によってクリーチャーを墓地へと直接送る。黒、死とアンデッドの色はこの領域のまぎれもない支配者である。
- 赤は破壊的で、しばしばクリーチャーや他のパーマネントをこの場へと送り込むが、過去に生きる傾向にはない。従って通常は、一度終わったものの場所である墓地とは影響し合わない。
- 緑が行うのは生命を促進することであるが、また死したものを新たにもする。緑は生命の循環の色であり、そこには死という段階も含まれている。緑は墓地で終わった生命を新たなものとしてもたらすことによって、それら循環を維持する。
これらフレイバーを基礎とした制約に沿わないカードは作られない傾向にある。だがこの相違は色の決定と、マジックにその深みを与えるのを助けてくれる。
だが、墓地とは一体何か?
我々は目の前の問題に触れ始めている。フレイバーの用語では、この場は一体何なのか? 読者Fabioからのメールを貼り付けさせてもらおう、「今週のお便り」と我々が呼んでいるものだ。
親愛なるダグ・ベイアーへ
墓地週間ということで、一体全体、墓地とは何なのでしょう? その名前と、クリーチャーが死んだ時に行く場所という事実から、ええ、墓地は墓地です。ですが捨てられた、またライブラリーから削られたカードもそこに行き着きます。パーマネントでない呪文も解決後にそこに行き着きます! それで、一体全体墓地とは何なのでしょうか?
ボーナス問題ですか? はい、ありがとうございます! タフネスの代わりに忠誠度カウンターを持つ、プレインズウォーカーは墓地に行き着かないのではないでしょうか?
Fabioより
生物のように、呪文にもライフサイクルがある。それらは領域から領域へ、それらの寿命を通してそれらのやり方で生きる。正常な状況のもとでは、呪文は君のライブラリーから、手札へ、スタックへ、戦場へ、そしてついには墓地へ(時々追放へ)。Fabio、君が言及したように墓地のフレイバーは二つの別個の考え方を一つの機能的単位へとまとめている。私自身の記事を引き合いに出してもいいのなら、2008年の記事「The Flavor of Zones」(私が書いた、ついでに言えば、いくつかの領域の用語を「戦場」や「追放」へと変更することを熟考していた頃だ ※訳注:リンク先は英語)より、
墓地はクリーチャー......とアーティファクト、エンチャント、そしてインスタントやソーサリーといった使い終わった呪文が死にゆく所である。ある点で、マジックのフレイバーは墓地を、屍が土の中で眠る文字通りの場所とみなしている。その領域が、まるでチャンプブロッカーや過去のプレインズウォーカーの交わした恐怖の犠牲者の屍が散らかっている文字通りの墓地であるように。別の点で、マジックのフレイバーは墓地をより概念的な過去とみなしている。《記憶の略取》や《過去の罪》が忘れられた魔法を点火する、もしくは《不可思の一瞥》によって君の貴重な頭の中身が送られてしまう、どこかの狂気のアンダーワールドだ。よって、墓地はもはや歴史が示す物理的な場所ではない。野球のイニングが終わった後、華麗なダブルプレーは何処へ行く? それはどんな場所へも行かない。それは起こる、そして今それは行われた。つまりは過去のものだ。墓地は過去というものの表現だ。
私はこれらのフレイバーに二つのタイプを見つけた。文字通り骨の山としての墓地と、哲学的な「過去」としての墓地だ。マジックで君が見るであろうほとんどの墓地関連のカードを取り巻き、そして我々が頭の中で考える、ヴォーソス的筋書きの類のほとんどを説明する。君は《墓暴き》をプレイする。《アヴァシン教の僧侶》を引き上げ、勇敢にも戦いへと命を捧げた彼女を召喚し直すために? 文字通りの墓地というフレイバーのストレートな表現だ。君は《墓暴き》の呪文を《喚起》する、他の何かを唱えるために? 今やその魔法は過去へと手を伸ばし、君の《墓暴き》呪文を唱える能力を呼び戻している。
《墓暴き》 アート:Alex Horley-Orlandelli |
Fabio、君のボーナス問題については? プレインズウォーカー・カードの扱いについては? ある点では、彼らが多元宇宙で特有の人々であると表現されて以来、プレインズウォーカー・カードと墓地との関係は、伝説のクリーチャー・カードと同じようなフレイバー的緊張状態にあった。君が彼らを殺した時、何故それでも君は手札やライブラリに彼らのコピーを持っているのか? 《野生語りのガラク》や《背教の主導者、エズーリ》が共に君の墓地と手札にある時、彼らは死んでいるのかいないのか? もし彼らが《火葬》や《次元の浄化》で死亡したなら、まずショベルを使うことなく彼らを召喚し直すことはいかにして可能となるのか? フレイバー的な私の回答は通常、君の手札、ライブラリー、そして墓地にあるそれらのカードはそのクリーチャーやプレインズウォーカーを召喚する「呪文」だというものだ。君はうろつく彼らをいかにして呼び出すかという知識のコピーを複数所有することができる。だが君はそれらを一度に一つしか召喚できないという訳だ(実際にそれらの一つを戦場に出す)。
それは決して型にはまったものではない。何故なら率直に言って我々はプレイヤーとして、状況があてはまるように墓地の二つのフレイバーの間を跳ねる。我々は「君のガラクを殺す」と言いながら自分のそれを唱える準備をする。ストーリー野郎として私は、ガラクが墓地にある時にそれは記憶であって身体ではないというアイデアを面白く思う。ガラクには将来語られる多くの物語があり、私はスタンダードの何百ものゲームで彼を殺すことを本当に望みはしない! だがプレイヤーとしてゾンビの軍勢を君のガラクへと攻撃させるために送りこむ時、私は確かに彼を殺そうと意図している。我々はライフポイントや何かではなくそれらを忠誠度と呼ぶことによって、違いを明確にし続けようとしている。公式のストーリーはプレインズウォーカーについて、忠誠度を使いきったならどこか別の次元へと去ると強く示している。だが文字通りの墓地というフレイバーの引きはより強い。
《ガラクの大軍》 アート:Steve Prescott |
Fabio、もしかしたら君はプレインズウォーカーと墓地について、何か思うところがあるかもしれない。もしかしたら忠誠度の無くなったプレインズウォーカーは追放されたり、ライブラリに切り直されたり、他の何かをされるのかもしれない。ルールは彼らが墓地に行き着くと定めていると私は思う、何故ならそれはほぼ全てのものが行く所だからだ。全てを同じ所......ああ、言おう、捨て札の山に置くのは簡単な簿記だ。
皆が墓地週間の残りを楽しんでくれますように。もし全てが計画通りに行ったなら、我が同僚Adam Leeがイニストラードからの絵葉書をさらに何枚か君達に送ってくれる予定だよ。
翻訳監修:森 陽平
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