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上位互換
上位互換
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2016年11月4日
カードを評価するためにあるカードと他のカードを比べて「完全上位互換」や「完全下位互換」といった言葉を用いること――これは私がセットを公開したときによく見かけることです。完全上位互換はマジックの初期から存在しました。「3点サイクル」のような上手くバランスが取れていないと簡単に言えてしまうものだけではありません。《灰色オーガ》は《ウスデン・トロール》の下位互換ですし、それは基本的に《Granite Gargoyle》に劣ります。そして《Badlands》があれば走り回る《Sedge Troll》もありました。
トレーディング・カード・ゲームの要点の1つは、カードの強さは均等ではなく、最強のカード全てが最高のレアリティに存在することは望まれない一方で、コモンの強さに関しては明確な上限が存在するということです。コモンが強すぎる場合、毎回全く同じカード――その強すぎるコモン――がゲームに影響を与えるので、リミテッド環境をとても「同じように」してしまいます。(全体として)強力なアンコモン、レア、神話レアを許容するということは、ゲームごとに最も強力なものが変化するということを意味します。
このようなセットを作ることの欠点のひとつは、人々がそのセットに目を通したとき、特にプレビュー・シーズンの初期に比較するカードが多くないときに、新しいカードがすでに存在するカードよりも弱いと彼らががっかりしてしまうことです。多くのコメントは「これは何々の完全下位互換だ」です。これにはある程度妥当な点がありますが、それは我々が内部で多くの時間を費やして話し合ったことではありません。我々はただある程度の起こる事柄を受け入れるだけです。我々はそれを行う回数を制限しようとします――人々はそれがそのセットの主なテーマであるとしようとします――が、我々はそれらを完全に直そうとはしません。
逆に、誰かがモダンやレガシーですでに使われているカードの強力なバージョンを提案した場合、それは基本的にとても危険なのですが、どの道そのようなものはパワー・レベルのテストをするときに捕まるでしょう。我々は毎年多くのカードを作る必要があり、全てのカードを独特で既存のものより強かったり弱かったりしないものにすることはできません。追加の制限があるとき、スタンダードやリミテッドどころか全体として正しいパワー・カーブの範囲に収まるのはごくわずかなカード・デザインしかありません。
役割のための正しい手段
長年に渡って我々は《稲妻》を印刷していましたが、現実的にこのカードは赤マナ1つで得られる強さの効果の限界でした。我々はバリエーションとして『レジェンド』で《稲妻の連鎖》(これもとても強力です)を作りましたが、特にローテーションのないマジックの世界では1マナの火力呪文の余地は本当に多くは残されていませんでした。『アイスエイジ』が出たときに、《火葬》が作られ、長い間《稲妻》とスタンダードで同居していました。《火葬》を見て、「よし、これは《稲妻》の完全下位互換じゃないな」ということはできますが、正直になりましょう――これは《稲妻》よりも弱いカードです。確かに、ごくわずかなゲームではこの再生対策の文が効果を発揮するでしょうが、《稲妻》を4枚入れる前に1枚目の《火葬》を使うことは難しいでしょう。もしもみんなが8枚の《稲妻》をプレイしたらマジックは楽しくなくなります。
何年か後、我々は《稲妻》の完全下位互換ですが、ほとんどのスタンダード環境で十分な強さの《ショック》を作りました。《ショック》のいいところは(《稲妻》と違って)45枚の《ショック》と15枚の《山》でデッキを作ってもうまくいかないところです。これにより、《ショック》に構築フォーマットの環境を助けることができる追加のテキストを加える多くの余地が生まれました。
とはいえ、これらのカードは大昔に作られたものです。おそらく大した新事実ではありません。そうではなく、パワー・レベルを考慮したもっと最近のもので語りやすいカードを見ていきましょう。
さて、これは強い呪文とはいえません。キューブに入るわけでもないし、どんな構築フォーマットのデッキにも入りません。これはひとつの理由のために存在しています――リミテッドで適正なパワー・レベルとなるためです。
我々はこれまでの5マナで最も優れた除去呪文にしようとしたことはありません。我々が求めたものは、これを取り巻く他のカードを考慮した、そのフォーマットにとって適正な強さのものです。我々はすでに黒の強力な除去として《消耗する負傷》を作っていて、そして《大蛇の儀式》はなんでも殺せました。なので我々はちょっと弱くて、しかしインスタントであることにいくらかの価値がある中間にあるものを必要としました。
6か月後、『タルキール龍紀伝』で我々が印刷したものがこちらです。
これは《絞首》と違いをつけるために長い間{2}{B}{B}でしたが、デベロップの後期にリミテッドのバランスの理由で引き戻されました。我々は暴れまわる多くのドラゴンに対してより強力な除去呪文を必要としていたのです。
一部の人々がこれに気づき、我々に呼びかけてきましたが、これについても、我々は分かっていたのです。誰もが毎回これが起こることを好きなわけではありませんが、我々は適正な環境に適正なカードを作る必要があり、そして似たような効果への変更をいくつか行うこともできましたが、可能ならばデベロップ後期での変更は少ないほうが良いのです。
しかしこの話はこれで終わりではありません。1年後、我々は『ゲートウォッチの誓い』でこのカードを再録しました。
この2つ目の黒マナはここで多くの役割を果たしています。基本的に同一である2枚のカードがあり、しかし片方のコストは1つ黒が濃くなって3マナ軽くなっています。《闇の掌握》はある程度リミテッド向けですが、また明確に《大天使アヴァシン》、《龍王オジュタイ》、《ゲトの裏切り者、カリタス》への解答としてスタンダード向けでもあります。
人々がスタンダードで《絞首》や《押し拉ぎ》をプレイするところまでたどり着く方法はありません。我々はスタンダードをプレイしたデッキの中で競争力のあるカードを必要とし、それはつまりリミテッドでは十分なものからいくらかマナを軽くし、『ミラディンの傷跡』からの再録をするということでした。
大きな風景の一部
マジックのセットを作るうえで重要なことは、我々は個別のカードを全て最高のものにしようとしないということです。我々はこのゲームを可能な限り全体的に楽しいものにしようとするのです。これはつまりスタンダードやリミテッドで強力な動きをするものを調節するということです。毎年同じものが強いとつまらなくなってしまいます。
我々は多くの時間と文章を費やして全ての新しいカードを独特で他のカードの上位互換ではないようにしようとすることができます。しかしそうすると、25年を超えるパワー・バランスの幻影のために全てのカードに複雑なテキストをもたせる必要があるので、新しいプレイヤーが参入するときにまっすぐでシンプルなカードが新しいマジックのセットに多く存在しなくなるかもしれません。我々がひとつのセットにまっすぐなテキストや有用なテキストを持つカードを作り、その後の全てのセットを心配しなくていい能力を持つことは重要なことです。
《陳腐化》 アート:Darek Zabrocki |
リミテッドでは、我々は各色ごとに数枚の除去呪文をコモンに作る傾向にあり、これはつまり多くの異なるデザインが必要であるということです。我々は「大きな」除去呪文(《一口の草毒》や《爆発の衝撃》)と《ショック》や《死の重み》のような「小さな」除去呪文を作る傾向にあります。我々はこれらを毎回同じ強さにしようとはしません――時には小さなものがより強力であり、時には大きなものが強いこともあります。これらの多くは我々がフォーマットの中で推奨しているものと、その個別の呪文を選んだ理由によって決まります。
例えば《一口の草毒》は、我々が黒の最高のコモンが何でも殺せる超強力な除去であることを求めていなかったので、かなり弱いものでした。黒の最強のコモンを万能除去にすると、このセットがあなたに求めていた物事を組み合わせることが悪いアイデアになっていたでしょう。我々が必要としたものは、その戦略に対して人々が回答を出せるのに十分な強さで、しかし総合的には答えが必要なプレイヤーに回ってくるぐらいに十分弱いカードでした。
同時に、我々はよく黒と赤の除去呪文が異なる数字に刺さるようにしています。基本的に赤は小さなものを殺すことに優れ、黒は大きなものを殺すことに優れていますが、時々「良い」赤い除去呪文は4点のダメージを与え、それは黒が小さなクリーチャーを殺す最も効率的な方法を持つことを残しています。
そういうわけで、あなたが《絞首》のようなカードを見たとき、我々が単にこれが強いか弱いか分かっていないのではないことや、《押し拉ぎ》がどこか強すぎることがわかります。これは我々が最も良いリミテッド環境を作ると感じて選んだ一連の除去呪文なのです。
また我々は、ごちゃごちゃと文章を付け足したカードよりもこれのようなシンプルなカードを何枚か使うことを好みます。確かに《絞首》に占術1をつけたものは良いカードですが、我々は多くのカードにそうした追加の文章を必要としていません。テストをするときに我々はいつも、黒が少し弱く《絞首》のようなカードは強化するよりもマナを1つ軽くすることが必要であると発見することができます。
今週はここまでです。来週はバニラ・クリーチャーについてお話しします。
それではまた来週お会いしましょう。
サムより (@samstod)
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