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コモンのデベロップ
コモンのデベロップ
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2014年10月3日
今週の「Latest Developments」は、マジックのブロックを形成しているもの――コモンについてお話ししようと思います。コモンはパックの約3分の2を占めており、このゲームにとって実に重要なものです。今回は、コモンのいくつかの役割と、それらがその役割を担う理由、そしてより大きな物事の構想での役割についてお話ししたいと思います。
新世界秩序
新世界秩序は少し誤解されています。人々は新世界秩序がコモンをどんどん弱くしていると指摘しますが、実際にはそうではありません――新世界秩序はコモンの複雑さについて語っているのであり、強さについて語っているのではありません。《火花鍛冶》や《黒死病》は我々がコモンに望むよりも盤面を支配していたかもしれませんが、《マハモティ・ジン》のようなカード(や構築向けにコストを変えたものでさえも)をコモンに作ることを止めるとは新世界秩序の中には書かれていません。これは、デベロップがセットをどのくらいリミテッド向けに作りたいか、から来ています。しかしそれについては少し待ってください。
最近の構築フォーマットのデッキを見てみると、多くのコモンがそれらの中に出てきています。例えばプロツアー『マジック2015』では、《エルフの神秘家》、《ショック》、《予言》、《稲妻の一撃》、《骨読み》、その他多くのカードがトップ8のデッキでプレイされています。これらのカードが最も複雑でないとしても、これらはマジックの生態系において重要な部分を構成しています。これらのカードは我々にリミテッドと構築の両方にシンプルで強力な基準となる効果を設定させ、そしてプレインズウォーカーや魔除けのようなアンコモンなどのより本質的に面白いカードにマジックの複雑さを集中させます。
リミテッドの懸案
デベロップがセットに、特にコモンに注ぐ労力の多くはリミテッドに向けられています。デザインもこの部分に大きな役割を持っていますが、最終的にそれらのカードを適正なパワー・レベルに仕上げなければならないのはデベロッパーです。コモンが現在のような動きをするようになった最大の理由はリミテッドのためです――コモンは(明らかに)最も一般的なカードであり、リミテッドのゲームでプレイされるカードの大多数を占めています。リミテッドの素晴らしいことの1つは、カード間の異なる相互作用によって実に様々な方法でプレイされる、膨大な数のゲームを作り出すことです。リミテッドでのより直接的なカード・パワーはより高いレアリティからもたらされ、ゲームを変化に富んだものにし、上手くいけば新しいセットが出るまで、そのフォーマットを興味深いものに保ち続けるでしょう。劇的に盤面の状態を変えるレアを持っていることは、コモンが行う場合よりもやはり楽しく、それはそのレアが頻繁には起きない新しい経験をもたらすからです。《硬化した鱗》はたまにしか出てこなければとても楽しいカードですが、信じられないほど頻繁に使ったり使われたりする場合は楽しさがなくなってしまうでしょう。
我々が遠い昔に多く犯してしまった過ちは、《黒死病》、《火花鍛冶》、《トゲ撃ちゴブリン》、《森林守りのエルフ》のようなゲームを変化させすぎるコモンを作り、それらの多くがゲームを決めてしまうことを許したことです。これらのカードはそれの属するリミテッド・フォーマットの要のひとつであり、プレイヤーはそれらを中心にデッキをドラフトすることを強いられました。しかし、それらがコモンであるがゆえに、圧倒的大多数のドラフトで複数枚見かけることになりました。時々強力なレアに負かされることがありますが、《火花鍛冶》に何度も負けた場合、それは信じられないぐらい苛立つだけでなく、その環境自体の再プレイ性を損なってしまいます。ドラフトで3回に1回ぐらい《群れネズミ》が(もしくは5回に1回エルズペスが)出るのではなく、1回のドラフトで3枚ぐらい《火花鍛冶》が出るのです。例えば『オンスロート』3つのドラフトでは、2ターン目の《火花鍛冶》に対処する方法がないので、赤か黒をやらないことは相当リスクの高い行動でした。
これはコモンではゲームに勝てないと言っているわけではありません。平凡な《灰色熊》や《風のドレイク》から、《稲妻の一撃》のような除去呪文に至るまで、あらゆるものは組み合わせてゲームに勝つことができます。ですがそれらは我々がより高いレアリティで容易に行える「捌かれなければ勝ち」になることは稀でしょう。ほとんどコモンだけのデッキであっても勝つことは可能です。これらはただ直接的なカード・パワーよりも、カード間のシナジーの力に依存しているだけなのです。
コモンのクリーチャー
先程書いたように、我々はコモンのクリーチャーを、それだけでゲームを変えることができるような巨大な盤面への存在感を持ったものではなくしました。我々はクリーチャーをより基本的な盤面の存在を提供し、いくつかのプレイの組み合わせによって簡単にゲームに勝てるような方向へと向けました。例えば、『テーロス』の《天馬の乗り手》はそれ単体で勝つことができます......10ターンの間攻撃してブロックされたり殺されたりしなければですが。しかし《希望の幻霊》のような授与クリーチャーを加えた場合は......そうです、突然10ターンのクロックは半分になり、絆魂は単純にダメージレースをほぼ不可能にします。2つのコモンが集まり、普通はアンコモンやレアでしか見られないであろう「捌かれなければ勝ち」な脅威を生み出すのです。
同じように、リミテッドのゲームでは《エルフの神秘家》のようなシンプルなカードがファッティをより早く、それらが出てくると思われるよりも1ターン早く出すことが定期的に起こります。もしくは優秀な地上のブロッカーが守りを固めている間に、少数の飛行クリーチャーが対戦相手のライフを削ります。この手の、明白で再現可能なゲームの状況は、ほとんど変わることのないリミテッドの基準線のようなものを考慮しています。これらは我々に、それぞれのリミテッド環境を興味深いものにするため、他との十分な違いを作る方法に関するより良い判断を可能にさせますが、以前にプレイしたことがなく、何をして良いかか分からないプレイヤーには大して違いがありません――『エルドラージ覚醒』のリミテッドにあった問題です。
キーワード能力を持つコモンのクリーチャーを作る場合、それらはよりそのキーワード能力のシンプルで明白なデザイン空間を使う傾向にあります。コモンはほとんどのプレイヤーが新しいキーワード能力に最初に出会うところなので、我々はそのキーワードの素晴らしくてシンプルな基礎知識を、人々がアンコモンとレアがどれぐらい強力でイカれているかを見る前に学べるよう、コモンが提供することを求めています。例えば、長久を持つコモンは他にはほとんど特徴のないクリーチャーです。高いレアリティに上がると、+1/+1カウンターの乗っているクリーチャーにキーワード能力を与える長久「ロード」が見え始め、レアでは長久に基づかない他の誘発型能力を持っているクリーチャーさえも現れます。これら全てはクールな効果ですが、人々にこのメカニズムをコモンで理解させることによって、より一層特別なものにします。
コモンの除去
ここ数年にわたって多くの人々が気づいたことの1つは、我々が実際にコモンの除去のパワーを弱くしていることです。これはある程度真実ですが、我々の傾向としては、大部分を条件付きか、より重いかのどちらかにするというものです。
『インベイジョン』のようなセットを見てみると、そのリミテッドが面白くないところの1つは、除去がとても強力でクリーチャーが相当弱かったところです。このことは、しばしばプレイヤーが対戦相手のプレイしたい興味深いクリーチャーを全て殺し、除去する価値のない《灰色熊》や《灰色オーガ》で殴り合うだけという状況に繋がりました。最終的には1人が何とかして勝てるだけのカードを揃えるでしょうが、その環境の最高にクールなカードの多くは単純に小さなカード・アドバンテージを提供するカードに見劣りしてしまいました。たまにはこのような環境にすることにも一理ありますが、いつもではありません。
我々のコモン除去の基本的なルールは《闇への追放》よりも強くしないことです。『基本セット2013』の《殺害》のようなカードでさえ、本当にこのラインギリギリであり、将来これに対抗するようなコモンが印刷されることは多分ないでしょう。これはコモンのクリーチャー除去が使い物にならないというわけではありません――むしろ逆です。これは単に、ほとんどのコモンのクリーチャー除去では対戦相手のプレイしてくるかもしれない脅威の全てを対処はできないだろう、というだけなのです。それは対戦相手の繰り出す脅威に対して最も上手く対処するために、どの除去をいつ使うかを決めるプレイヤー、あなたにかかっています。《垂直落下》を《風のドレイク》に使うことは序盤のいくらかのダメージを得るためには最良かも知れませんが、ゲーム後半の《マハモティ・ジン》に対して無防備になるでしょう。また一方で、ドレイクに(《鞭の一振り》のような)他の除去を使ったところで、《垂直落下》が地上クリーチャーに対処できず負けてしまうことに気づくかもしれません。
コモンの除去のパターン
赤は3~4枚の除去がある傾向にあり、それらは小さいクリーチャーを殺すことにはとても優れていますが、タフネス5以上のものを殺すのが難しい傾向にあります。一方、黒の除去は(プレイヤーを対象に取れない)小さいクリーチャーを殺すのに効果的なものと、少数の何でも殺せるものに分かれている傾向にあります。これらの「何でも殺せる」除去は大抵(《骨の粉砕》のように)追加のコストを要求するものか、(《一口の草毒》のような)重めのコストのものです。《一口の草毒》は爆弾カードのドラゴンを殺すのには素晴らしいカードですが、必然的にウィニーに負けてしまうので、それでデッキを一杯にするには素晴らしくないカードの一例です。
他の色は赤や黒よりも除去が少なくなります。白は通常ほとんど何でも殺せるが、何か制限がついているか、能力を止められないもの――《平和な心》や《神聖なる評決》です。青は時々《閉所恐怖症》型の効果を得ますが、ほとんどのコモン除去は打ち消しやバウンスの形になる傾向があります。これらはテンポを取る目的では最良のコモン除去の一部ですが、ウィニーに入れすぎる可能性があり、入れすぎたプレイヤーがしばしばカードに文句を言います。
最後は緑です。ごく最近まで、緑は実際にコモンの――あるいはどのレアリティでも――除去を得られませんでした。《ハリケーン》型の効果がアンコモンにあったり、いくらかエンチャントやアーティファクト破壊がありましたが、そんなところです。しかしながら格闘が緑に移ったことはこの色にとって良いことで、リミテッドでの緑の見た目を多様化させました。現在では緑には1~2枚の除去があり、大抵1つは格闘で、もう1つはおおむね飛行を殺せる除去になる傾向にあります。
時々外れることがありますが、これらのパターンが我々のコモン除去で行うことの大多数を構成しています。これはつまり、あなたがリミテッドのゲームをプレイする場合、何を中心にプレイするべきかに関するより良いアイデアを持っているという意味です。それはこのゲームにもっと劇的な影響を及ぼすために異なったルールに従う、高レアリティの除去呪文を考慮しています。
構築フォーマットでのコモン
最初の方で書いたとおり、コモンはリミテッドほど強くないとしても、構築フォーマットにおいて担当する役割があります。我々がコモンのバランスを取る方法は基本的にリミテッドのためで、従ってそのパワー・レシオは単純に構築フォーマット向けのものと同じではありません。例えば《マハモティ・ジン》は「それ自体がゲームを決めることができるデカくて止まらないクリーチャー」の基準の1つですが、1997年頃のエイドリアン・サリバン/Adrian Sullivanの「Baron Harkonnen」デッキ以来、構築フォーマットで姿を現していません。リミテッドで強くないとしても、構築フォーマットでの《エルフの神秘家》は《マハモティ・ジン》や《シヴ山のドラゴン》よりも強いカードです。同じように、《闇への追放》は実際に構築ではそれほど強くないので、《肉貪り》や《稲妻の一撃》、《送還》のような「劣った」除去がプレイされるでしょう。
我々がセットを作るとき、例えそれらが高いレアリティと同じ方法で構築フォーマットでの基準を動かしそうになくても、我々のやり方から外れていくつかのコモンが構築フォーマットで意味を持つようにします。《波使い》がこれ以上新しいデッキを作っては困るとお思いかもしれませんが、コモンがデッキをトップメタに近づける十分な支援を提供するか、もしくは難しい対戦の答えを与えてくれるかもしれません。
今週はここまでです。来週はフューチャー・フューチャー・リーグのデッキをいくつかご紹介して、プロツアー『タルキール覇王譚』の準備のように見えるかもしれない、我々がスタンダードについて考えていたことをお教えします。
ではまた来週お会いしましょう。
サムより (@samstod)
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