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横道戦略のドラフト
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横道戦略のドラフト
Sam Stoddard / Tr.Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2013年5月24日
先週、マーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterは門の成り立ちとそれらをどのように2色土地のヒエラルキーに当てはめたかについて語りました。とは言え、『ラヴニカへの回帰』の門はただの2色土地ではありません。これらの門は我々がリミテッドをより深くするために加えたドラフト戦略の横道の一例でもあります。これらのドラフト戦略は様々な形と規模でやってきて、『ゼンディカー』の同盟者のような大きなテーマだったり、オンスロート・ブロックの《稲妻の裂け目》や《霊体の地滑り》のような単独カードだったりします。横道であるドラフト戦略に重要な部分は、リミテッド環境においてプレイヤーができることをより多くすること、そして異なった種類のシナジーを作り出すことです。カードの深いシナジーを作り出すことで、ドラフトしたデッキとパックの中のカードの強さが流動的になるので重要なのです。あなたが前にピックしたカードは、今見ているパックからピックするであろうカードや、次のパックからピックするカードやそれ以降にも影響します。もしカードAがカードBよりも常に優れているならば、各カードの相対的な強さを見つけてしまえばそのリミテッド環境で学ぶことはもう何もありません。
我々が内部で発見したことの1つであり、現実世界でプレイされるのを見かけたのは、多くのプレイヤーにとって、リミテッドとは、カードプールで何ができるかを考え出し調査することをかなりの目的としていることです。それは与えられたシールドデッキで行う最良の事柄が何かを決断するかというシンプルなことだったり、またドラフトでそのセットで行う最良の事柄が何かを考え出すという包括的なことだったりします。もしプレイヤーがセットを数回しかドラフトしないという前提ならば、マジックの単純な基本をセットに入れ、それから現在の次元のテーマとメカニズムを少し追加して仕上げるのは簡単でしょう。我々がデベロップしているときの目標は、初めてや5回目だけではなく、10回目も、15回目も、20回目も、それ以上でもドラフトして楽しいセットを作り出すことです。
面白さを保ち続ける
これを達成するために我々が発見した最良の方法は、全ての主な戦略を数回試した後で、何か新しいものを求めているプレイヤーや、元から普通の方法以外で勝つことを楽しむプレイヤーのためにいくつかの横道戦略を存在させるようにすることです。これらの戦略のデッキは個々のカードパワーよりもシナジーに依存しています。これらは初手に《火炎収斂》をピックして、その後に援護するために《高射砲手》、多色クリーチャー、《フェアリーの騙し屋》をピックするようなプレイヤーが利益を得るように意図されています。その戦略を働かせるために複数のカード(《大規模な奇襲》のような)を必要とする場合、それらは通常コモンにあります。特殊な勝ち方を単独で提供するカード1枚を必要とする場合、それはアンコモンにあります。我々がこれらのカードをそのレアリティに設定したのは、そのフォーマットのドラフトをした時にこれらの戦略を毎回見かけないようにした上で(毎回見る場合ならそれらはピックの順番をかき乱すイカした横道ではなくただの基本戦略です)、プレイヤーとしてあなたがその環境をドラフトし続ければ時々その機会を得るのには十分存在するようにしたいからです。
単体で強いカードをドラフトするのが悪い考えにならないように、これらの戦略の個々のカードに素のパワーを詰め込まないことが重要です。単体で強いカードを取ることは常に最良の考えである必要はなく、悪くはないというだけです。デベロップのときに我々は、それぞれのドラフトで微妙な違いがあるようにシナジーと素のカードパワーの間でバランスを取るようにし、しかもあなたがパックを開けていくつかのうちから1つを選ぶ機会があるだけでなく、あなたが対戦する卓の他の人のデッキも異なっているようにします。
構築の中心となるカードを構築する
私は先週ツイッターで今までのドラフトの横道戦略で何が一番のお気に入りかを尋ねてみました。回答の上位は以下のようになっています(順不同)。
- 『イニストラード』の《蜘蛛の発生》
- 『神河物語』の《思考の鈍化》
- 『エルドラージ再誕』の《窯の悪鬼》
- 『エルドラージ再誕』の《孔の歩哨》+防衛クリーチャー
- アラーラ・ブロックの《ヘドロの徘徊者》
- 『神河物語』のずべら
- 『イニストラード』の《燃え立つ復讐》
- 『ミラディンの傷跡』の《炉の式典》
- 『エルドラージ再誕』の《オーラのナーリッド》
- 『イニストラード』の《血まみれの書の呪い》
これらの戦略に共通するのは、一般的にそれぞれが属するブロックでの最強の戦略ではないものの、欲しいパーツが全て手に入ればとても強力だということです。さらに他の人が回してきた12番目のピックのカードで勝利という満足感も与えます。私はリミテッド全般においてこれらの戦略が環境において勝ち組でないことが重要だと考えています。私はこれらの戦略は他に何もない状況でより単純な戦略に行くよりもわずかに悪い場合に狙い通りに働くと考えています。例えば、『イニストラード』のドラフトで初手に《硫黄の流弾》と《蜘蛛の発生》があったら、普通は《硫黄の流弾》を取るでしょう。《硫黄の流弾》のほうが最終的にデッキに入る可能性が高く、そしてこれは強力な除去です。《蜘蛛の発生》には、これを中心にデッキを構築することによって最大限に発揮できるという利点がありますが、これを初手でピックすることには多くのリスクが伴い、そして多分《蜘蛛の発生》を使ったあなたの勝率は平均的なプレイヤーよりも低いでしょう。とは言え、これを使ったデッキのタイプを楽しんだプレイヤーは《蜘蛛の発生》を初手でピックするでしょう。《蜘蛛の発生》を誰もが即ピックするようなカードにしないことで、それをドラフトしたい人が初手で取ることを強いられずに、卓を1周したそのカードを取れる可能性が増えます。
横道戦略の利点の1つは、人々があまり欲しがらないカードから力を得られるところです。それは多くのカードが卓を回って、横道戦略を狙う人のもとに回ってくることを意味しています。この例として、『ラヴニカへの回帰』3つで行うドラフトでの《天上の鎧》デッキが挙げられます。《天上の鎧》をいくつか手に入れたなら、《封鎖作戦》、《安全の領域》、《訓練されたカラカル》のようなカードを探し求めるでしょう。これが横道戦略に向かう利点です――あなたは他の基本的な戦略を取るプレイヤーよりも遅い時期に、より強力なシナジーを持ったカードを手に入れることができるでしょう。もちろん、この戦略に早すぎる段階で「完全に」向かった場合、デッキの動きを作る1枚か2枚のカードを引くことに極端に依存した、散々なデッキになりかねないという弱点があります。
デザインからデベロップへと移る時期のセットは、全体的なバランスが取れていない一方で、デザインが計画した主要なテーマを強調した環境になっています。それぞれの色の組み合わせはテーマを与えられ(例えば黒緑は墓地、白緑はトークンなど)、セットはそのようなテーマで色の組み合わせを働かせるカードで満たされています。これらはそのセットの第1の戦略です。通常、大抵単色か3色のどちらかに少なくとも5つ以上の戦略があります。これらはドラフトの第2の戦略です。デザインが出した最終結果はそのリミテッド環境においてあなたにさせたいことをとても大きく叫んでいます。過程においてはそれは良いことです。デザインが何を成し遂げようと試みているのかは明らかで、そしてデベロップがそれを受けて行うのは簡単です。しかし大量消費に備えたセットにするということは、一般的にデザインから手渡されたものをわずかに弱く調整することを意味しており、これらのシナジーをそのセットに初めて触れるプレイヤーには分かりにくくし、なおかつそのセットが十分にマジックの基本を十分に持っているようにします。さらに、2色の組み合わせのレベルがその「テーマ」をわずかに越えるようにします。白緑トークンがセレズニアの第1の戦略なのは明らかですが、《刷毛履き》のようなカードでデッキが攻撃的な動きをできるようにもします。
横道戦略は時にはデザインからもたらされ、そして時にはデベロップが作り出します。それらは途中で放棄された大きな戦略やメカニズムの残骸であることもあれば、セットの隙間を埋めるために計画されることもあります。マーク・ローズウォーターが言ったとおり、門はもっとも計画的な方で、コモンの2色土地の隙間を埋めるために作られ、門というサブタイプは有利になるシステムの入れ場として加えられました。
門の問題
内部では、我々は戦略の強さと目立ち方の両方について話します。あらゆる横道戦略にこの2つの間でのバランスが求められています。もし我々がある横道戦略を目立つように、しかしなにも実力を伴わないようにして作った場合、その種のデッキをドラフトする人々を期待に添えないもので騙すだけでしょう。同様に、我々がそれを強く作っても十分に明白にしなければ、自力でシナジーを発見できるプレイヤーはほとんどいないので、ドラフトの時に人々に何をするべきかの指標が十分に明らかにならないでしょう。
ラヴニカへの回帰・ブロックで最も目立った横道戦略は「門の問題」のサブテーマです。これは『ラヴニカへの回帰』と『ギルド門侵犯』の両方で力を与えています(《オーガの脱獄者》や、《はじける境界線》《緑側の見張り》など)が、シナジーが最も目立つのは『ドラゴンの迷路』です。これには門番が当てはまります。これらはデベロップ中に弱体化されましたが(もともとは、これらは門の数を参照していました)、それでもこれらは何か変わったことをする、この場合は門を他のほとんどの人よりも早くピックすることに強力な利益を与えるという目標を成し遂げました。しかしながら、金色テーマのセットでは多くのマナ基盤を取る先天的なアドバンテージがあり、この場合他の人よりも多くの金色カードを唱えることになるので、このテーマを強すぎないようにすることは重要でした。門のテーマが強すぎた場合、奨励された人があまりにも早く門を取ることになり、同時に現在主流の3色の戦略をプレイしようとする人がデッキをまともに機能させるマナ基盤を十分揃えられなくなります。
『ラヴニカへの回帰』『ギルド門侵犯』のどちらも、ドラフトは基本的に2色環境で門はそれほど重要というわけではありませんでした。一般的にあなたのオルゾフのデッキは《オルゾフのギルド門》によって良くなりますが、ブロック全体でドラフトよりもマナ基盤の重要度は低いものでした。門テーマのカードが入ったことは『ラヴニカへの回帰』3つや『ギルド門侵犯』3つのドラフトの経験を劇的に改善しましたが、最も大きな影響があったのはブロック全体でのドラフトだと私は思います。いつもではなく時々、誰かが他の人が金色カードを取っている間にドラフトを門番と門から始め、続く『ギルド門侵犯』と『ラヴニカへの回帰』を通して十分な支援をデッキに入れることで、ドラフトにおいてデッキをただ成立させるだけでなく、フォーマットの他のデッキと異なった決断を下せるようにします。
ここで議論した第1、第2、横道の全ての戦略は、もちろん次の大きなドラフト環境、『Modern Masters』へと繋がっていきます。残念ながら、来週まで待たないといけませんが。このフォーマットはマジックの歴史の至る所からいくつかの興味深いテーマを披露する素晴らしい働きをします。そして私は、この議論を続けるとともにそれらを明らかにする自分の役割に興奮しています。
それでは、また来週お会いしましょう。
サムより
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