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ブロックの構築

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ブロックの構築

Sam Stoddard / Tr.Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2013年5月17日


 今日(訳注:この記事の原文が掲載された5/17のこと)この後、世界中のプレイヤーがサンディエゴの会場で行われるプロツアー「ドラゴンの迷路」で、ラヴニカへの回帰・ブロック全てを使った構築とドラフトでその技術を競います。私はプロ・プレイヤー達がどのようにドラフトと構築のフォーマットを楽しむか、我々のカードパワーの評価が彼らのものにどれぐらい近いかを見られるので興奮しています。どんな種類のデッキがプロツアーのトップ8に到達するか予想はしていますが、それが外れて驚くべき結果になる覚悟もできています。


Frankenstein's Monster》 アート:Anson Maddocks

 ブロック構築は興味深いフォーマットです。我々はプロツアー予選のフォーマットにブロック構築を使うことはもうありませんが、少なくともプロツアーの1つ、グランプリのような他のいくつかの高レベルのイベント、そして Magic Onlineのためにサポートを続けています。他の主要なフォーマットに比べてサポートのレベルが低い理由の1つは、我々は各ブロックのカード総枚数を削減したから(そしてそれは『アラーラの断片』から開始されました)で、そしてもう1つは楽しいスタンダード環境を作り出すための我々の戦略が、できうる限りで最良のブロック構築の経験を作り出すことと必ずしも両立しないからです。私はこのフォーマットが少数のプロツアー・レベルのイベントに留まらないぐらいに十分楽しく興味深いと信じていますが、必ずしもプロツアー予選シーズンを支えられるほどの深さを常に持っているとは限らないのです。

 しかしながら、それはブロック構築から学ぶことが少ないという意味ではありません。様々な意味でブロック構築は我々が次の年のマジックがどうなるかを予測する唯一最良の資源であり、これを読んだ皆さんがどのカードが次の年に頭角を現すかを理解するための素晴らしい資源です。構築に現れそうになったカードがしばらく大人しくしていることが極めて頻繁にあるのはフォーマットの他の選択肢がそれらを締め出すからですが、そのカードが実際にはブロック構築で輝き、次の年にある種の復活を遂げることもあるでしょう。ワールド・マジック・カップでは《オリヴィア・ヴォルダーレン》と《ファルケンラスの貴種》の両者を備えたいくつものデッキが目立ちました。これらのカードは大抵《四肢切断》と《蒸気の絡みつき》の存在によって追いやられていました。ミラディンの傷跡・ブロックがスタンダードから姿を消すと、両者はメタゲームに自分の居場所を見出しました。プロツアー「ドラゴンの迷路」とその後にあるブロック構築のイベントで同じことが起きて、次の年の確固たる地位を固めるラヴニカへの回帰・ブロックの強力な戦略が明らかになるのではないかと私は睨んでいます。

 長年にわたって我々は多くの事柄をブロック構築から学びました。単に個々のデッキについてだけではなく、マジックのより良いデザインとデベロップの方法、そしてプレイヤーが可能な限り最高の経験をできるようにする方法も学びました。崇高に始まり、最後には我々に牙をむくことになるその目標は、単一のブロックのシナジーを非常に強固に推すことでした。見せたいデッキを単体で成立させるカードがブロック内に十分にあるようにしていました。その時はそれが名案に思えました。当時、ブロック構築は構築のプロツアー予選フォーマットの1つで、そのフォーマットが楽しく興味深いものであるのに十分なサポートを受けることは重要なことであり、そしてそれは自然にスタンダードへとこぼれていくはずでした。そのことが一般的に上手く働いたフォーマットは多くあり、強いと同時にスタンダードの他のカードと結びついたときには楽しく健全なメタゲームの一部になるようなデッキを生み出しました。時のらせん・ブロックといえば《神秘の指導》や青単ピクルスが思い出されますし、より古い話をすればオンスロート・ブロックの《霊体の地滑り》やゴブリン、オデッセイ・ブロックの黒単コントロールやマッドネス、そしてはるか昔に遡ってテンペスト・ブロックでは赤単デッキなどがあります。歴史上のブロックがこのように総じて巧くいったなら我々は戦略を変えなかったかもしれませんが、この場合はそうではなかったのです。我々が発見した問題は有名なフランケンシュタイン博士の発見と同じでした――素晴らしいものを作ったと思ったら、それは実は怪物だったのです。

 近年の開発部はブロックの怪物に注意を払います。つまり、メタゲームで上位レベルのスタンダードの戦略において、プレイするのにそのブロックの前後の支援をあまり必要としないような、単独のブロックでのデッキパワーを厳しく管理しています。カードプールのあらゆるデッキを見つけて適正に測ることができないことは分かっていますが、フォーマットの柱となるものを見つけ、一般的な戦略が何を企てているのか、そしてそれが概ねどれぐらい強力かを知ることに関してはかなり良い仕事をしています。それらの柱の1つが他のものよりも突出している場合、全体の構造は不安定です。最初のサインは、全体的にスタンダードよりも弱いブロック構築の環境において、他のデッキはバランスが取られていながら、問題のデッキによってブロック構築フォーマットが完全に支配されることです。もしブロックの怪物を抑制できなかったら、その危険をスタンダードに持ち越し、次の年に印刷される全てのカードを圧倒し、フォーマットは急速に陳腐なものになってしまいます。我々は過去に親和、ジャンド、フェアリーなどでこれを見てきました。私が長年に渡って会話してきた多くのプレイヤーは、これらのデッキがスタンダードの状態を乱すことによって苛立ちを作り出したことを指摘していました。苛立つには相応の理由がありました。1つのデッキが全てを支配することは、あらゆる個性的なデッキ構築やそのデッキをメタゲームの中でプレイする興味深い決定の余地を極めて小さくします。あなたはそのデッキをプレイするか、それと戦うためにデッキを捧げます。中立はありません。これらのデッキから学んだ教訓のおかげで、将来再び特定のデッキが問題を起こす可能性は低くなっています。

 我々はこの種の支配を軽減するために、ブロックを越えたシナジーの整備をして、次の年のブロックのテーマを強調し、同じように前の年のカードを支援し、そして最後に前の年の恐ろしいデッキに対する安全策を含ませる、ということにここ数年間にわたって取り組んでいます。『イニストラード』の敵対2色土地はその次元には場違いに見えたかもしれませんが、『マジック基本セット2013』の友好2色土地やラヴニカのショックランドと協力することによって真価を発揮しました。これは偶然の一致ではありません。我々は1年前にその種を蒔いたことによって、ラヴニカの金色の環境を本格的にプレイするために基本セットを10種類の2色土地で満たしたり、門を2色デッキの次善のマナ基盤としてプレイしたりする必要がない、そうした手段を手に入れました。ミラディン/イニストラードのスタンダードで《鍛えられた鋼》と他のアーティファクト・デッキが手に負えない場合、《古えの遺恨》がその解答になりましたが、同じようにブロックを越えたシナジーとして、『イニストラード』にあるいくつかの強力な金色のカードや他の色が必要なフラッシュバック呪文が唱えにくい場合には、『ラヴニカへの回帰』のカードが唱えるための助けになったのです。

 マジックの基本セットは、スタンダードにおけるブロックの戦略の単純な強さをより良くコントロールする本当にいい助けとなっています。基本セットはフォーマットを出入りするカードをより巧く調整できるようにし、フォーマットに入ってくるデッキを支えるものが十分にあるようにして、次のブロックに前のブロックと相性のよいカードを入れすぎなくてもそのデッキがスタンダードで働くようにします。これには《遥か見》、《東屋のエルフ》、《火打ち蹄の猪》のようなものが当てはまります。何年か前かの例として、我々は《鋼の監視者》を『マジック基本セット2011』に入れることによって、来るべきフォーマットの金属術デッキが強力なものを得られるようにしましたが、それはスタンダードでは1年で使用不可能になるものでした。我々が基本セットをデザインしている段階では次の年にどうなるかは正確には分かりませんが、いくつかの足場となるものを基本セットに入れることで(『ミラディンの傷跡』の金属術のような)奨励したいと我々がわかっている戦略が十分に良いスタートを切るようにし、その後の1年間におけるそれらの働きとカードパワーを適切に作ることができるようにします。基本セットのデベロップのスケジュールは、前の年の現実世界からの戦略に反応し、そして我々が見逃したかも知れないカードに対する安全弁を提示するのに十分なように、遅くなっています。

 マジック全体の生態系を俯瞰すると、それぞれの新しいブロックはマジックの少し新しい方向の経験を約束しますが、それはまた既存のカードと一緒に機能できるカードもあなたに与えてくれます。はっきりさせておきたいのですが、デベロップの仕事というものは、単に面白いもの全てを叩き潰したり、あらゆるものをリミテッドやスタンダードのバランスで評価したりするものではありません。デザインが我々デベロップに渡してきたメカニズムや狙いが、それに相応しい尊敬と、プレイヤーの手に渡った時に成功する機会を手に入れられるようにするために、我々は多くの時間を費やしています。つまるところ、マジックのセットの狙いはあなたがプレイしたいと思うような面白いカードを提供することで、また我々はそのカードの楽しさとカードパワーのバランスが取れた状態を探そうとします。この問題に完璧な比率は存在せず、状況に応じて片方をもう片方よりも評価することになるでしょう。

 ラヴニカへの回帰・ブロックの終わりに到達し、我々は物事がどのように我々の予想と一致してプレイされるかと、マジックをプレイする人々によって我々の見逃した物事がどれだけ発見されるかを注視しています。これら全ての物事が発見されるのは良いことです。もし我々がセットの全てを開発中に解明できるようなら、そのセットにはマジックをプレイする人々を繋ぎ止めるのに十分な深さと長さはないでしょう。全てのブロックと同様に我々が期待した以上の成功を収めた物事もあれば、我々の期待に応えていない物事もあります。我々はデベロッパーという仕事柄、それらの結果を将来のより良いマジックのセットを作ることに変換する方法を考え出して整備する、そんな過程を繰り返すことを楽しみにしています。

 サムより

 プロツアー「ドラゴンの迷路」イベントカバレージ

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