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『神河:輝ける世界』の伝説たち

Ari Zirulnik, Grace Fong, Emily Teng, Gerritt Turner
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2022年2月11日

 

 再訪した神河次元は、前回の訪問から大きく様変わりした。今この現代にたくさんの新たな伝説たちを紹介しよう。それだけでなく、古の神や神河そのものといった幾つかの馴染みあるキャラクターも。

新登場の伝説たち

(みかど)(こえ)軽脚(けいぎゃ)
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 若い頃、聡明な軽脚は金之尾学院を首席で卒業し、精神と定命の領域が統合する地点を監督・管理する皇宮の職に就いた。彼女は純粋に人々の安全のみを考え、極めて真剣に職務をこなした。その経歴は約束されていると思われていた彼女だったが、ある日、統合のゲートから迷える神が飛び出して困惑の中で人々を攻撃し始めた。軽脚は命を賭し、丸腰のままで怒れる神に立ちはだかると外交術を駆使して宥めた。その瞬間、彼女は二本目の尾を得た。当時の皇は軽脚の機転と手腕に感服し、個人的な助言者として、また皇宮内に居住する若者たちの教育者として招いた。

 以来、軽脚は長い人生において何代もの皇の助言者となり、今や七本に増えた尾はその知啓の証として、彼女は皇宮の全てで大いなる崇敬を得ている。しかしながら皇宮とその法の確固たる信奉者である彼女ですら、皇なき神河という途方もなく大きな試練に直面するのは初めてのことである。

現実(げんじつ)設計者(せっけいしゃ)、タメシ
///

 タメシは才気にあふれるムーンフォークの科学者であり、サイバ未来派に所属している。神の魔法はより普及した技術よりも時代遅れであると多くの未来派が考える一方、タメシは神が定命と精霊の領域を行き来する方法を常に研究したがっている。だからこそ、彼は現実の性質についての新たな眼識を得たのかもしれない。

 タメシは少年時代に、高名なムーンフォークの科学者であるカツマサに弟子入りした。彼はそこで新たな、あるいは迷った神を宿す折り紙ドローンを製造した。彼はそのドローンを友人のひとりである漆月(しづき)魁渡(かいと)に贈り、魁渡は今なおそのドローンを愛用している。自身の研究室を手に入れると、タメシは神河という世界の本質そのものの研究を開始し、現実チップを開発した。それは皮膚に埋め込む奇妙な装置であり、次元物理との不可解な繋がりを使用者へと与えてくれる。

浅利(あさり)司令官(しれいかん)理想那(りそな)
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 理想那は山岳都市の霜剣山市(そうけんざんし)で生まれ育った熟達の工匠である。当初は皇宮に向けて武器や鎧を製作する仕事に就いていた。だが皇が失踪すると皇宮は混乱に陥った。官僚政治が支配を握り、続く政争によって霜剣山市は厳しい冬の間に困窮する羽目となった。以来、理想那は二度と皇宮を信頼することはなかった。

 そしてそのように考えたのは彼女だけではなかった。仲間の職人や戦士の多くが理想那に賛同し、浅利の蜂起軍が結成された。彼女たちは今、市民を第一に考える政府を立ち上げるため、皇国へのクーデターを計画している。

天才(てんさい)操縦士(そうじゅうし)、コトリ
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 コトリは早熟の天才として、少女時代から操縦士としての目覚ましい才能を見せていた。彼女は未来派の機体開発計画に加わり、研究者のカツマサに師事した。彼は神の力をメカに繋げることで操縦者と機械をよりよく同調でき、制御と火力を大幅に向上させられると理論立てていた。

 コトリはそれを証明しようと志願した。彼女はメカに収容された神と感情的な絆を確立し、カツマサのあらゆる予測を上回ってのけた。だがとある任務にて問題が発生し、試作機は敗北した自然の神にとどめを刺すことを拒否した。完全に制御できないとわかれば、未来派は勝利械を処分するだろう。果たして彼女は巨大メカの相棒を守るため、未来派としての前途を――そしてカツマサの信頼を――投げうつのだろうか?

(いのち)(あた)える(もの)、カツマサ
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 カツマサは未来派の高名な研究者である。高慢な性格であるため他者との協調は難しいが、彼は同輩から多くの尊敬を得ており、生徒たちは彼のもとで学ぼうと競い合っている。カツマサは初めて、神と現代技術との有用な繋がりを確立した研究者である。勝利械、神をその内に収容したメカは彼の最大の功績である。

()(やいば)のちし(ろう)
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 ちし郎は樹海の兵団に属する精鋭の侍として、その刀を通じて森の意識の神である怪磨と繋がっていた。この力は、ちし郎自身と強い心の絆を築いた仲間にまで与えることができた。だがちし郎は未来派の罠にはまった。友人たちは殺害され、怪磨は放逐され、刀は砕かれた。

 打ちひしがれ、他者の命を危険にさらすまいとしてちし郎は兵団を離れた。彼は放浪し、金と引き換えに戦士たちへと刀の腕を教えた。ある小村が無孤勢団(むこせいだん)の攻撃を受けた時、ちし郎はかつての友情のかすかな輝きを見出してともに戦い、苦しい戦いの果てにその村を勝利へと導いた。

(しず)まらぬもの、怪磨(かいま)
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 怪磨は母聖樹(ぼせいじゅ)の根に住まう、警戒心の強い神である。森の意識の顕現である彼は、自然の平穏と均衡を破壊するサイバ未来派と技術に深い不信を抱いている。そのため彼は住処である森を守るため、樹海の兵団に力を貸した。怪磨の姿は、熊の鉤爪を持つ巨大な猪に近い。

 怪磨はちし郎という大蛇人の侍が持つ刀に魔法を授け、ふたりは恐るべき力を誇った。怪磨はちし郎の仲間にまでその力を拡大できた。だが未来派は多くの敗北の後、異なる戦略を用いてきた。彼らはちし郎を罠にはめ、刀を砕き、彼の仲間を殺害した。怪磨は怒り狂い、ちし郎から追い出されて蹂躙を始めた。森の人々は挫けた神に恐怖して過ごしたが、ある日怪磨は馴染みのある仲間意識の痛みを感じ取った。ある村がちし郎に率いられ、自らを守るべく結束している! その仁義を見た怪磨は願った。友のもとへ帰還し、新しく始められるかもしれないと。

カエル()り、達成(たつなり)
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 無孤勢団がのけ者の集団だとすれば、達成はのけ者の中ののけ者だろう。同輩の中でも小柄で力も弱い彼は、万引きや器物破損といった些細な犯罪を繰り返してきた。そしてある日、とある僧の財布を盗もうとし――その僧と繋がる神に見咎められた。その瞬間彼は悟った。もし自分にも神がいれば、無孤勢団でも最強の構成員になれる。そして誰にも見下されなくなるのだと。

 だが神の魔法は誰にでも与えられるものではない。達成の動機は自分勝手である、どの神もそれがわかっていた。憤慨した達成は自らの手で解決しようと、下層街の運河から一匹のカエルを釣り上げた。彼は長年をかけて世話をし、カエルは馬ほどの大きさにまで成長した。達成はその背にまたがってカエル乗りとなり。都和市(とわし)じゅうの無辜の人々に恐怖を振り撒いている。だが彼が特別な遺恨を抱く相手は、母聖樹とその神に他ならない。そのため中古屋にて樹海の兵団のものであった刀の柄を目にするや否や、彼はそれを購入して自分用の新たな武器を作り上げた。

二天(にてん)一流(いちりゅう)一心(いっしん)
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 一心は神河の片田舎にて、皇国の政治家の護衛に就いていた。彼は自分の職を愛し、雇い主を尊敬していた――だが皇が失踪し、中央政権は分裂した。永岩城から遠く離れていたため、自分たちは安全だと一心は考えた。だがその混乱によって彼の主は困窮し、一心は解雇された。雑用で食いつなぎながら地方を放浪した後、彼は霜剣山市の鍛冶屋に雇われた。そこで一心は浅利の蜂起軍に出会った。皇国を倒し、人々の手に政治を委ねようと献身する集団。今や彼は国に自由をもたらすため、彼らとともに戦っている。

改悛(かいしゅん)大将軍(だいしょうぐん)恒征(こうせい)
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 大峨(おおが)の社会は必ずしも暴力的というわけではない。だが恒征が生まれた村は碑出告(ひでつぐ)を――鬼を貪ってその力を自らのものとした伝説の大峨を信奉していた。同郷の者たちは略奪行為を崇拝の形とみなしていたが、破壊行為は恒征に悲しみをもたらすばかりだった。恐怖のための恐怖、それはとても無意味に思えた。彼の考え方は、別の大峨の村を襲撃した時に変わった。その村は神の教えに従い、自然と調和して生きていた。そのような内なる平穏を得ることが可能と知った恒征は略奪の後にその村へと戻り、重労働を通しての贖罪を申し出た。彼は農地を耕し、壊れた建物を修繕し、やがて赦しと関係を得た。村は恒征をその一員として迎え入れた。今や彼が武器を手にとるのは、愛する者たちを守る時だけである。

沈黙(ちんもく)蜘蛛(くも)琴瀬(ことせ)
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 琴瀬は下層街の貧しい街路で生まれ育ち、生きるためだけに無孤勢団へと加わった。彼女は他者が捨てた技術を漁り、かろうじて細々と生活していた。だが屑鉄場に長年這い回ることで彼女は音もなく動くことを覚え、手持ちの道具だけで修理してのける技を身に着けた。上達するにつれ、彼女は大胆になっていった。そして最高機密の未来派の仕事場に狙いを定めたが、その首席研究員に捕らえられてしまった。だが警備をかわす琴瀬の能力に感銘を受けたその研究員は彼女を刑務所に送るのではなく、仕事を提供すると申し出た。ライバルの研究所から知的財産を盗み出し複写するのだ。琴瀬はその提案を受け入れ、同じ仕事を必要とする顧客リストを作り始めた。以来、彼女は捕まっていない。

(あらし)切先(きっさき)雷遊(らいゆう)
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 雷遊は浅利の蜂起軍の団長である。彼は部下たちを率いて、皇国の不当な徴税官から霜剣山の村を解放しようとした。だがその戦いは、頭上で膨れ上がる危険な雷雨に中断された。雷遊の仲間たちは雪崩に巻き込まれ、ただちに皇国兵に逮捕された。雷遊は仲間たちの命を救うため、崖の上にて膝をつき、刀を差し出した。その時、稲妻が彼の刀に落ちた。だが雷遊はなぜか死ぬことなく、嵐は稲妻と雷の力を彼に与えた。独力で友人たちを救い出すと、雷遊は浅利の蜂起軍の英雄となった。

永久(えいきゅう)忠義(ちゅうぎ)義丸(よしまる)
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 昔から皇国では警備と友誼のため、皇宮にて犬を飼っている。現在の皇も例外ではない。訓練の初日、師である軽脚は皇へと一匹の子犬を与え、その手で育てるように告げた。今この犬を慈しむように、将来この国を慈しむのだと。若き皇はその言葉を胸に留め、義丸は皇宮の歴史上最も賢く忠実な犬となった。皇は秘密を打ち明けられる、重責を和らげてくれる友を心から愛した。だが皇が失踪した日、義丸は途方に暮れた。あらゆる場所を探し回ったが、彼女の姿はなかった。そのため義丸は自分たちが過ごしたお気に入りの場所へと向かった。今日でも彼は皇の座を守り、その帰還を待ち続けている。

共同(きょうどう)目的(もくてき)御神体(ごしんたい)
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 神河の田園地帯に住む農民は、常に近くの川の氾濫に怯えていた。神の助力を求め、彼らは小さな社を建てて共同目的の神に奉納した。神は人々へと、力を合わせて水路を掘る方法を教えた。そして水が通ると、田畑は水没するのではなくむしろ広がった。人々の偉業に感銘を受けた神はその社に住まいを定め、以来自らの魔力を町へと与え続けている。

逸失(いっしつ)叡智(えいち)御神体(ごしんたい)
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 遠い昔、水面院(みなもいん)のとある師範が野心を抱いた。正しい神に繋がりさえすれば、宇宙のあらゆる秘密を学ぶことができると。彼女は逸失叡智の神を狙い、小さな社を建てた。好奇心旺盛な神はその師範に知識を授けたが、中には彼女がいつ、どのように死ぬかというものも含まれていた。その情報に怒り、師範はその知識を取り除くよう願った。神はそれに従ったが、今日でもその社の内に住まいながら不可解な謎で旅人をからかっている。

隠避(いんぴ)残虐(ざんぎゃく)御神体(ごしんたい)
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 ひとりの若き大峨が、狂暴な将軍によって洞窟から追い出された。大峨は人々が小さな社を用いて鬼を召喚する様子を見ており、そのため家なしの現状を解決してくれる神を自分でも召喚できるのではと考えた。奮闘の末、彼女は意図せずして隠避残虐の神を召喚してしまった。神は怒りと復讐心に満ちた言葉を大峨の耳へと囁きかけ、やがて彼女は武器をとってその将軍を殺害した。自らの行いに衝撃を受けて彼女は逃げ出したが、神は社に居残り、心に闇を抱える者へと復讐を囁いている。

古伝(こでん)戦争(せんそう)御神体(ごしんたい)
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 数百年前、霜剣山の反乱軍の一団が皇国軍に包囲された。戦力と糧食は減り、彼らは絶望の中で小さな社を築き、精霊の増援を呼び出そうと願った。古伝戦争の神が助けに現れ、彼らへと燃え立つ刃を与えた。反乱軍と皇国兵は数日に渡って戦い、雪に血が零れる度に神は喜んだ。最後の兵士がやがて倒れた時、両軍には誰も残っていなかった。神は今もその山頂の社に憑いており、次の戦いを始めてその瞬間の興奮を再び満喫したがっている。

無尽(むじん)活力(かつりょく)御神体(ごしんたい)
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 都和市の拡大によって、ある若き僧が樹海を追い出された。故郷の記憶を保つため、彼は小さな社を建てると壊れた庭園から持ち出した種を安置した。不思議なことにその種は土が無くとも育ち、無尽活力の神となった。僧は神と力を合わせ、森の土地を取り戻した。切り倒された木は全て、魔法によって翌日には元の姿にまで成長した。自らの死の前に、僧はその社を再生した森へと移した。それは今日も生きており、街に屈しない野生の力を与えている。

生命(せいめい)起源(きげん)御神体(ごしんたい)
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 神の死を見た者はほとんどいないが、ありえない話ではない。都和市の拡大で樹海が失われた際、多くの神が塵と化した。しかしながら、その塵は森の中心に座す古の社に落ち着き、新たな姿へと凝集していった。社そのものが動き出し、その力を持つ神となった。この新たな精霊は神河次元を彷徨い続け、死した神の名残を加えて成長を続けている。

詩人(しじん)山崎(やまざき)典華(のりか)
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 思慮深く内省的な山崎典華は、学者あるいは詩人を目指していた。だが優れた戦術の才で彼女は皇国内の地位を得て、最も有望な若き将軍のひとりとなった。ごく最近、彼女は皇国の統治を覆そうと力をつけつつある反乱軍、浅利の蜂起軍を鎮圧するよう命じられた。困難な任務、だが少女時代の親友にして従姉妹、山崎兵子と対峙するであろうという事実が、状況をいっそう複雑なものにしている。

将軍(しょうぐん)山崎(やまざき)兵子(へいこ)
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 山崎兵子は、皇国の助言者を長く務めてきた家の一人娘である。だが従姉妹との悲劇的な事故の後、彼女は皇国に幻滅するようになった。技術革新に対する帝国の規制は大衆の実情に合致していないと悟り、兵子はすぐさま浅利の蜂起軍へと転向した。彼女は最も才気ありゲリラ兵として、また指導者である理想那が信頼する助言者として名声を得た。兵子は霜剣山市に留まり、この山岳都市を統治しようと訪れる皇国兵を追い払い続けている――だがかつての友であり従姉妹、山崎典華と対峙したならば何が起こるのか、それは誰にもわからない。

()()けの(そら)猗旺(あおう)

 猗旺は神河の平地と永岩城の守護龍、陽星(ようせい)の転生体である。大口縄(おおかがち)との戦いで二つに裂かれるという凄惨な死の記憶に苛まれているため、永岩城が再建された後も猗旺はその守護者としての役割を当然のものとしては受け入れず、定命の社会からは可能な限り距離をとっている。だが時に、彼は自らの誓いを破る。非道な不法がはびころうとしている時に、何もせず傍観してはいられないのだ。

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(うず)()(そら)開璃(かいり)
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 島々の聖なる龍である京河(けいが)の転生体として、開璃は水面院を守り続けた。だが戦乱時代の終盤にその学府は衰退してしまった。学問と革新の中心として大田原が隆盛すると、その人々は開璃へと龍の守護を求めた。だが彼はムーンフォークの意図を疑問に思い、その願いを拒んだ。今日、開璃はその時間のほとんどを神河の海と空の探検に費やし、秘密を発見しては独占している。

真夜中(まよなか)(そら)殉至(じゅんじ)
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 他の神聖な龍たちの多くとは異なり、黒瘴(こくしょう)は神の乱の間も生き続けた。だがその数十年後、竹沼の住人たちを鬼の襲撃から守って命を落とした。殉至として転生した際、彼は沼とは完全に縁を切った。竹沼とその住民は見放され、自力で生き伸びていくことを余儀なくされた。殉至は都和市の下層街を網羅する運河の中に住まい、勢団の縄張り争いが過熱しすぎないよう、絶えずかつ静かに警告を放っている。

()()(そら)軋賜(あつし)
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 神聖なる龍たちの中でも、軋賜は自らの転生を最も素直に受け入れている。一度も死んだことはないながら、彼女は他の龍たちとともに再誕することを選び、新たな姿をとった。大体において軋賜は温和かつ楽天的であるが、その突発的な気性に火をつけてのけた者に対しては破壊的な怒りを見舞うと知られている。彼女は霜剣山の守護者の役割を担い続けており、しばしば霜剣山市を訪れてはいつも熱烈な歓迎を受けている。

()()(そら)空羅(くうら)
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 空羅は樹海のかつての守護龍、珠眼(じゅがん)の転生体である。彼女は大蛇人によって元の姿で蘇ったが、他の龍たちの大半は死し、自然の均衡は危うい状況にあると悟った。珠眼は他の龍たちの精髄を集めるとひとつの卵の中に安置し、それはやがて現在の五体の龍の転生体として孵化した。空羅となった彼女は樹海の守護龍であり続け、あらゆる侵入を獰猛に退けている――特に神河の騒々しい大都市、都和市の侵食するような成長から。

(むさぼ)混沌(こんとん)碑出告(ひでつぐ)
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 かつての碑出告は、全てを喰らう混沌の鬼を信奉する一体の大峨に過ぎなかった。だが主が大口縄に敗北すると、彼は手を尽くして精霊の領域へ赴き、その鬼を喰らうことで報復するとその残骸に融合し、神河でも最も極悪かつ恐るべき存在としての座を奪った。碑出告が次元にもたらす残虐さと破壊の凄まじさに香醍(きょうだい)が介入し、彼を精霊の領域へと幽閉した――少なくとも当面の間は。だが碑出告は機を伺っており、いつの日か今一度解き放たれて神河へと混沌を振り撒くだろう。

流星(りゅうせい)信奉者(しんぽうしゃ)、ゴロゴロ
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 若き悪忌ゴロゴロは、軋賜の転生前の姿である流星の昔話を聞いて育った。その物語に彼は偉大な龍への崇敬を深め、生涯を捧げると決心した。流星に数百年前に転生したという事実はどうでも良かった。ゴロゴロは精力的に山々を歩き、軋賜を追いかけては大声で流星の名を呼び、貢物を差し出した。軋賜は純粋な苛立ちからゴロゴロを殺すこともできたが、その捧げ物は十分に貴重であるため彼を生かしてやっている――少なくとも今のところは。

西(にし)()木霊(こだま)
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 陰気にして危険かつ獰猛、西の樹の木霊は何よりも狩りを評価し、適者生存の信条に従って生きている。この木霊は都和市とその内に住まう者全てを激しく憎悪しており、街と森の境界をしばしば徘徊しては神の祝福なくして侵入しようという定命を追跡し、襲いかかる。その静かな姿は見せかけに過ぎない。穏やかな輝きに引き寄せられた愚かな者は、しばしば素早く無慈悲な死を受け取る。

樹海(じゅかい)幻想家(げんそうか)、しげ()
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 樹海の兵団は、強大な自然の神と交感し、精霊の領域が砕け散るという予言的な幻視を得た大蛇人のしげ樹によって設立された。最新の技術的発展のストレスが精霊の領域を引き裂くと信じ、彼は現実の構造が回復不可能なほどに傷つく前に行動に出た。同じ幻視を受け取った者たちが加わり、兵団は速やかに拡大した。「森」とだけ名乗る謎めいた神の助力を得て、しげ樹は技術的革新の中心へと素早く破壊的な行動に出るように謳っている。

大牙勢団(おおきばせいだん)総長(そうちょう)脂牙(しが)
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 大牙勢団は都和市の下層街のストリートを駆ける暴走族であり、鼠人だけで構成されている。その総長である脂牙は、鼠だからといって見下されるのを許しはしない。彼女の統率の下で大牙勢団は数と影響力を増し、ただちに都和市の下層街において最も勢力のある一団として有名になった。彼女の勢団に加わった鼠人は全員が家族であり、同胞に対するどれほど小さな軽蔑にも報復を躊躇しない。彼女の主張は明白である――ひとりが馬鹿にされたなら、全員が馬鹿にされたと思え。

暁冠(あかつきかんむり)日向(ひなた)
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 麒麟は定命の生き様に首を突っ込みたがる性質を持つ。だが「出しゃばり」「詮索する者」と呼ばれる日向ほど好奇心旺盛な、あるいはお節介な麒麟はいない。とはいえ日向としては定命へと関心を抱き、単に相応しい賜物を授けているだけなのだ。他の麒麟はというと、日向のおせっかいを楽しく眺めては図々しくもけしかけている。

秩序(ちつじょ)(はしら)直美(なおみ)
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 皇国の助言者の娘である直美は権力の良さを知りながら育ち、神河に尽くすという願いに駆り立てられている。熟達の政治家である彼女は皇国の内外に慎重な関係を築き、常に皇国の政策を――そしてその結果として、自身の力と皇宮内での影響力を――改善する機会を伺っている。つまるところ、より大きな利益のために働いているからといって、個人的な利益を顧みてはいけないというわけではないのだ。近頃、彼女は都和市でも最も力のある勢団の長の何人かと接触している――それが何のためであろうと、彼女は自らへの警戒を怠らない。

梅澤(うめざわ)(さとる)
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 梅澤悟は神河でも最大にして最も有名な一団、氷山勢団(ひょうざんせいだん)の無慈悲な長である。その支配の下、氷山勢団の活動は大胆かつ図々しく拡大し、時に縄張り内を巡回する皇国兵を襲撃するにまで至っている。悟の悪名のひとつに、かつて彼に挑戦しようとしていた敵対勢団内の家族を、自らの意思表示のためだけに皆殺しにしたというものがある。彼はかの有名な梅澤俊郎の子孫を自称している。それを証明することは誰もできないが、あえて疑問を呈する者もまたいない。

花暁(かぎょう)明神(みょうじん)
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 花暁明神は希望の力を体現し、大抵は寛大な神とみなされている。この捕えどころのない神は決して他者に接近せず、遠くにかすかな姿が垣間見えるのみだが、大地を放浪してはその足跡に花咲く痕跡を残す。神河でも最古かつ最も伝統ある形式の詩の幾つかは、この神が鳴らす鐘の韻律が元となっている。

謎夢(めいむ)明神(みょうじん)
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 謎夢明神は閃きの力の顕現である。この神が定命の領域へと完全に姿を見せたことはない。代わりにそれは定命の夢を訪ね、鏡映しの姿でのみ現れて囁きかけ、心に新たな発想を植え付ける。映し身のひとつひとつが、この明神が持つ異なる一面である。そのような映し身の数は無限であり、それぞれがこの次元の誰ひとりとしてこれまで思いもよらなかった新たな発想を体現している。

酷叛(こくほん)明神(みょうじん)
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 酷叛明神は野心の力の体現である。遠い昔、とある将軍が次代の皇の座を欲して神へと祈りを捧げた。酷叛明神がその祈りに応え、比類なき戦いの技を与えた――そして多くの同じ祈りにも応えたと故意に告げずにいた。その後必然的に起こった衝突を皮切りに、後に戦乱時代と呼ばれる内戦の時代が始まる。

咆刃(ほうじん)明神(みょうじん)
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 咆刃明神は不穏の力の体現である。溶岩の微片でできたその刃は自ら欠け、攻撃を生き延びた者の内に埋め込まれる。微片はその者の体内で燃え続け、せわしなさで満たし、昼も夜もなく消耗させる。これは呪いであると同時に祝福でもある――犠牲者は混乱と絶え間ない不満に悩まされるが、同じほどに他者へと比類なき変化と影響を与える可能性もあるのだ。

頂力(ちょうりき)明神(みょうじん)
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 頂力明神は進化の力を体現している。大体においてこの神は樹海の奥深くに潜み、自然の営みに介入することはない。この次元の他の場所に姿を現すのは稀であり、それは大抵、精霊の領域に何か大規模な変化が起こる兆候とされている。前回この明神が現れたのは、樹海の兵団が設立される直前――あるいは、その創設者であるしげ樹が精霊の領域の荒廃を幻視する直前であった。この明神がまもなく再び顕現するという噂が囁かれているが、それがいつ、何処に、何故現れるのかは誰にもわからない。

再登場の伝説たち

神河(かみがわ)(たましい)香醍(きょうだい)
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 千二百年前、定命と精霊の領域は、大いなる神である大口縄が監視する障壁によって分かたれていた。だが当時の将軍がその神の一片を盗み出し、石の円盤に幽閉した。定命と神の全面戦争が勃発したが、それは将軍の娘である今田(こんだ)魅知子(みちこ)の尽力によって終結に至った。大口縄は滅び、領域間の障壁は消え去った。奪われた御物は香醍として生を得て、ひとつの世界としての神河の新たな神となった。香醍はその力を魅知子に与え、ふたりは調和の時代の導き手となった。

 魅知子の統治が終わると、香醍は次代以降の神河の皇と絆を結び続け、賢明な助言を与えてきた。だが今、現在の皇はプレインズウォーカーとして覚醒して多元宇宙を彷徨い続けており、香醍は困惑したまま取り残されている。

発展(はってん)暴君(ぼうくん)、ジン=ギタクシアス
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 ジン=ギタクシアスは神河とは異なる次元、新ファイレクシアからの訪問者である。その世界には機械生命種族が住まい、勢力を拡大すべく多元宇宙を取り込もうとしている。彼はファイレクシアンの勢力「発展の動力源」の法務官であり、極めて危険かつ非倫理的な実験を通して「完成」が成されると信じている。

 魂なき生物であるファイレクシアンは、プレインズウォーカーの力を先天的に獲得することはできない。別の法務官であるエリシュ・ノーンは多元宇宙を掌握するため、プレインズウォーカーをファイレクシアンに変える方法を探すようジン=ギタクシアスに課した。利己的なプレインズウォーカーであるテゼレットの助力を得て、ジン=ギタクシアスは神河を訪れた。ふたつの領域が重なり合うこの次元の性質が、その研究の参考になると彼は信じていた。その実験は成功し、彼はムーンフォークのプレインズウォーカー、タミヨウを最初のファイレクシアン・プレインズウォーカーへと変えた。

(つき)賢者(けんじゃ)養子(ようし)、ナシ
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 ナシは神河の片田舎、沼地に位置する鼠人の村で生まれた。だが悪しきプレインズウォーカーであるテゼレットによって村は焼き払われ、ナシの両親も殺された。テゼレットは鼠人たちが価値あるアーティファクトを所有していると信じ、それを手に入れようとしたのだった。幸運にもナシはすぐにムーンフォークのプレインズウォーカー、タミヨウの養子となった。

 ナシの毛皮は再び生えたが、火傷を負った箇所は白いままで、鼠人の中でも珍しい模様を成している。新たな家族に愛し支えられているが、自分は小さな余所者であるという感情と彼は今も戦い続けている。それでも彼はその悲嘆を抑える方法を見出し、技術への興味を通して新たな友までも得た。ナシはまた、母が収集する多元宇宙の物語に耳を傾けることに大いなる安らぎを得ており、いつの日か自らの目でそれらを見てみたいと何よりも願っている。

プレインズウォーカー

漆月(しづき)魁渡(かいと)
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 漆月魁渡は熟達の忍者であり、生来の念動力を用いて潜入者としての技術を強化している。彼は故郷である神河の技術を進歩させ、自分と家族のためにこの次元をよりよい場所にするという目的を追求している。魁渡は危険を冒すのを厭わず、そして神河の皇の幼馴染でありながらも、自らの目標を達成するためには躊躇なく規則を破り、あるいは無視してのける。

放浪皇(ほうろうおう)
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 正体も動機も謎に包まれた、並外れた手腕を持つ放浪の剣士。放浪者とはひとつの暗号である。幅広の帽子で顔を隠したまま、彼女は何の前触れもなく戦いに加わり、あるいは無辜の者を守り、現れた時と同じように説明もなく突然姿を消す。選ばれた数人だけがその正体を知っている。放浪者とは失踪した神河の皇であり、故郷へ帰る方法を探し求めているのだ。

完成化(かんせいか)した賢者(けんじゃ)、タミヨウ
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 多元宇宙の物語は、無数の次元と幾千の世代にまたがっている――そしてタミヨウはその全てを記録するまで休むことはない。深遠の真実と隠された秘密を求める大胆な研究者として、彼女は自らが学ぶ歴史への介入を可能な限り避けている。だが中立でいたいという努力にもかかわらず、タミヨウは今後の多元宇宙を形作ると思われる出来事の中心に身を置く術を不可解なほどに心得ている。

肉体(にくたい)裏切者(うらぎりもの)、テゼレット
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 金属を自在に操る悪意の工匠、テゼレットは目覚ましい速度で複雑な装置や危険な機械の下僕を作り出す。彼は自らよりも強大な主の下僕として長年を過ごしてきたが、ゆっくりと確実に力と信望を蓄え、侮れない存在として影から姿を現す機会を伺っている。

(Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori)

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