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プレインズウォーカーのためのカルドハイム案内 その1

Ari Zirulnik
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2021年1月8日

 

ヴァイキングの世界へようこそ

 カルドハイムは北欧の伝説と神話を元にしており、古の英雄譚というテーマがセットの全てを貫いています。ここはいくつもの個別の領界からなる巨大な次元であり、どんな旅人も多くを学ばなくてはなりません。「案内」の初回では、この次元の基本的性質の概略と、人間の領界ブレタガルドを俯瞰します。

10の領界と世界樹

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 世界は一つの種から生まれ、その種は世界樹へと成長し、さらにそこから他の全てが生まれ出た。その葉は想像が及ぶ限りのありとあらゆる色彩をまとい、枝は広がるにつれ世界そのものとなった。やがて十本の太枝が伸びると、それらは果実をつけた。それが星界の怪物。最初に生まれたのは蛇であり、時の始まり以来止まることなく成長を続けている。

――始まりの英雄譚

 

 カルドハイムの各領界はそれぞれが小さな次元であり、それらを生み出した宇宙的構造で繋がっているとともに、その周囲を予測不能の軌道で周回しています。領界の人々はこの構造を、巨大で生きた樹――世界樹と認識しています。広大な無の中に伸びる、あらゆる生命の源です。領界の内において世界樹は物理的な樹としてそびえ、枝は空に見ることができます。カルドハイムの十の領界の外にはさらに他の領界もありますが、今はまだそれらを語る時ではありません。

シュタルンハイムの光
冠雪の平地》 アート:Sarah Finnigan

 領界の至るところから「戦乙女の聖堂」を見ることができます。寒空の太陽の周囲に現れる「幻日現象」とよく似たそれは「シュタルンハイムの光」と知られており、人々はそれを現すシンボルを身に着けています。

星界

 領界の間は、オーロラのような光が揺れ踊る不明瞭な空間となっており、星界と呼ばれています。ひとつの領界の住人が星界を渡って他の領界へ向かうことは、困難ですが不可能ではありません。

星界の怪物たち

 魔法的なクリーチャー、星界の怪物が領界の間の空間に生息し栄えています。そのほとんどは狼や鷲などありふれた動物に似ていますが、桁外れな大きさに成長し、神秘的な能力と超自然的な知識を保持しています。カルドハイムの人々は、星界の怪物が生まれた際、世界のあらゆる秘密が――未だ起こっていない出来事も含めて――それらの精神に封じられたのだと信じています。多くの領界の魔道士だけでなく、神々すらもそれらの秘密を解明することに生涯を捧げてきました。

 星界の怪物は極めて古い存在です。それらは世界樹の最初の「果実」だと言われており、現在ではその守護者の役割を担い、次元全体と領界の構造を維持しています。星界の怪物のほとんどは領界の間を自由に行き来し、ひとつの領界に入った際にはしばしば大混乱と破壊をもたらします。

 星界の怪物たちに、星界に住んでいるという以外に共通点はほとんどありません。体格ひとつをとっても、想像を絶するほど巨大な星界の大蛇から、とても小さく腕白なリスのトスキにまで渡っています。後者などはエシカの掌に乗るほどの小ささです。星界の怪物の多くは有名で、多くの英雄譚に登場しています。一方で誰も見たことのない、知られていない怪物もまた存在します。あるものは世界樹よりも巨大かもしれません――それを想像するだけで、神々の心にすら恐怖が呼び起こされます。

星界の大蛇、コーマ
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 星界の大蛇は星界の怪物でも最初に生まれた、最も古きものです。自らをいくつもの姿に分断してそれぞれが世界樹の周囲を独立して動きまわるため、真の大きさは知られていません。

 星界の怪物のほとんどは自由に各領界へと入ります。ですがスコーティがアイニールの神々を屈服させた際、彼らは自らが崇める星界の大蛇へと、領界の侵入を禁じました。コーマがスケムファーに入ってアイニールを解放するのを怖れたのか、あるいはその超巨大な蛇がやがて、どの領界にも入りきらないほどに成長するのを怖れたのかもしれません。何にせよ、コーマの信奉を続けるエルフたちは、その追放が世界樹を害していると信じています。領界の外で絶えず動き続けるコーマの興奮は世界樹を不安定にし、ドゥームスカールにおける危険を増大させているのです。星界の大蛇が領界を自由に行き来するようにならない限り、世界樹は確実に枯れる――そしてすべての領界も道連れになる、エルフたちはそう信じています。

星界を渡る

 並みの人物が適切な魔法なしに広大な星界に踏み入ると、まず迷い、そして恐怖し、まもなく狂気に屈服するでしょう。星界の怪物たちは無力な旅人に引き寄せられ、おそらくはすぐに彼らを食らいつくします。もし怪物たちを回避できたとしても、食料も水もなく、星界を進むのはほぼ不可能です。とはいえ適切な類の魔法があれば――特別な呪文、神の武器、強力なルーンを刻んだ船など――星界を渡ってひとつの領界から別の領界へと旅することも可能なのです。

領界路

 領界が世界樹に接近すると、領界路と呼ばれる通路が領界の間に時々開きます。ある領界の住人は、領界路を通って別の領界へ至ることができます。時に領界路は風景の中を通過するゆらめく光のように単純ですが、時にはもっと危険です。不安定なトンネルをくぐり抜け、見知らぬ領界の山頂に思いもよらず吐き出されることもあります。ひとたび領界の間に開いた領界路を、自由に開閉できるような強大な魔道士もいます。領界路が開くのは、しばしば二つの領界が激しいドゥームスカールに重なる徴候です。

ドゥームスカール

 各領界は独立した存在ですが、すべてが世界樹を絶えず周回しており、時に領界同士が重なり合います。そのような重なりはドゥームスカールと呼ばれています。地形をすっかり変えるほどの大規模な地震と地質的大変動を伴う、荒々しく爆発的な現象です。必然的に、重なり合う領域の住人たちは争いに突入します。

神々

 星界の霊薬が神々を神々たらしめているため、彼らは星界の方向感覚を失わせる効果に耐性があり、他種族よりもたやすく領界の間を渡ります。それでも単純に次元の間を渡るのは困難な旅であるため、神々はしばしば領界路を開くための魔法的な物体を用いるほか、稀に、別の領界へと自分たちを直接送り込みます。

多相と領界路探し

 姿を変化させる多相の能力と、領界路探したちが用いるルーンで強化された長艇は、領界の間を渡ることを可能にしています。

カルドハイムの神々

 現在、支配的な神々の家門スコーティは、数世紀前に古のアイニールに取って代わりました。アイニールの子孫たちは影のエルフと森のエルフであり、その力ははなはだ小さくなっています。

 神々には複数の「家門」がありますが、全員が世界樹の精髄との宇宙的繋がりを保持しています。アイニールはコーマとの繋がりを用いてその力を引き出していた一方で、スコーティは世界樹の神エシカが作り出した魔法的な「星界の霊薬」を飲んだのだとエルフたちは信じています。星界の霊薬は同時に、エルフたちの加齢速度を緩め、超自然的な力を持続させています。

 スコーティは途方もなく強大ですが、同時に身勝手で血気盛んであり、絶えず領界へとトラブルをもたらします。並外れて強く、素早く、鋭敏であることに加えて、神々それぞれが影響範囲とする特別な力と能力を保持しています。神々には強烈な個性があり、それぞれが血縁内での複雑な関係の中にあります。各神々が強大であるため、彼ら同士の争いは次元にとってますます問題となっています。

タイライト
タイライト剣の鍛錬》 アート:Kieran Yanner
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 神々は世界樹の「樹液」からもたらされた高い魔力を持つ物質を用います。タイライトはまるで、星界のオーロラのような光が形を成したもののように見えます。神々はそれを安全に取り扱いますが、定命がタイライトに直接触れるのは極めて危険です。

 世界樹の神エシカがタイライトから星界の霊薬を作り出したため、スコーティの皮膚や彼らの他の徴候には、曖昧な(時にはそれほど曖昧でない)形でオーロラの光の影響が現れます。

スコーティ

 アールンドは知識の神です。彼は星界の怪物との戦いを経て、その途方もない知識を勝ち取りました。

星界の神、アールンド》 アート:Kieran Yanner

 正義の神レーデインは若く傲慢で熱狂的、そして正義の行いに全身全霊を捧げています。

 戦闘の神ハルヴァールは無欲で固い信念を持ち、動じることなく、いかなる時いかなる場所においても最も分別ある存在です。

戦闘の神、ハルヴァール》 アート:Lie Setiawan

 死の神イーガンは最年長の神の一柱ですが、歳を経るごとに若返っています。そのため外見は(そして苦々しく否定的な態度は)十代の少年のそれです。

 雷霆の神トラルフは荒々しい妙技と英雄譚に相応しい冒険への情熱を持った、怖れ知らずの勝負師です。

 ビルギは自慢好きな神です。楽しみに生き、カリスマ的な彼女はいくつもの領界を渡りながら、常に衆目の中心となっています。

 海の神コシマは非常に好奇心旺盛で狂暴です。星界の怪物として生まれた彼女は、長いことひとつ所にじっとしていられません。

 恐怖の神ターグリッドは名高い戦士であり、その影までも恐ろしい生命を持つに至っています。

 ヴァルキーは嘘の神です。悪辣で身勝手な彼は他の神々へと終わりのないトラブルをもたらします。無論、目的あってのことです。

嘘の神、ヴァルキー》 アート:Grzegorz Rutkowski

 エシカは世界樹の神です。彼女が作り出した星界の霊薬によって、神々は超自然的な力を維持しています。

 コルヴォーリは種族の神です。話好きで活気に満ちた彼女は、神々の家族の運命を深く気にかけています。

 ヨーンは気候の神です。彼は並外れた追跡者であり、あらゆる領界を渡る(繋ぐ)最も早く安全な道を知っています。

ブレタガルド

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 人間の領界ブレタガルドは絶えず相争う五つの人間氏族の故郷です。各氏族それぞれに、異なった肉体戦闘と魔法の流儀があります。ブレタガルドはひとつの広大な大陸と、それを取り巻く危険な嵐の海から成っています。陸地にはフェルトマークと呼ばれる緩やかな起伏の平原が広がり、それは海岸から古のアルダガルドの森まで何百マイルにも及びます。陸には多種多様な動植物が栄えています。

フェルトマーク
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 広大な草原フェルトマークはブレタガルドの陸上全域の半分以上を覆い、最大の人口を擁しています。またこの肥沃な大地にはヘラジカやトナカイ、ムース、ヤギ、レミング、狐、山猫、猛禽類、野生のペガサスが生息しています。獰猛な戦士と、氏族の掟を執行する法官で知られるベスキール氏族は、このフェルトマークに居住しています。幾つもの小村が平原に散在していますが、そのほとんどは最大の居住地、ベスキール会堂から馬で1日以内の距離に集中しています。

 ベスキール会堂は賑やかな村であり、海から1マイル程離れた丘の上に建っています。村へと至る険しい登り坂は陸からの攻撃を容易に防ぎ、そして西海が眺望できるため、ベスキールは近づく略奪船に余裕をもって対応できます。村の名の由来となっている中央の長広間は、伝説的な手柄や血なまぐさい決闘、そして氏族の掟を記す精巧な彫刻で飾られています。高い木の壁には防護印が刻まれ、侵入者に対する防衛を強化しています。

ベスキール
ブレタガルドの要塞》 アート:Jung Park
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 ベスキール氏族は、その名の由来となった壮大な長広間を取り囲む草原に居住し、その領土に平和と秩序と法を維持することに打ち込んでいます。公明正大な判事として広く知られるベスキールのクレリック、法官たちは氏族の掟を執行し、氏族内部だけでなくブレタガルドの全氏族間の対立を調停します。ですが法と平和に献身していることからベスキールが弱いと思うのは愚か者だけです。その戦士たちはスケレやタスケーリの略奪者と同等に恐ろしく、しかも数では遥かに勝ります。ベスキールは二人の女性、メイヤとシグリッドが率いています。氏族の精神的指導者シグリッドは、神アールンドの命を救ったと言われる伝説的な戦士ハリックにまでその血統を遡ります。

 ハリックは狩りの途中、一人の男が巨大な狼と戦う場に出くわした。普通の狼ではないと彼はすぐに察した――世界樹の果実から生まれ出た星界の怪物。そしてその男もまた、普通の男ではなかった。知恵の神アールンド、最古から最新まで、あらゆる星界の怪物と戦うと決意した者。星界の怪物と戦うことで、星界の性質が明かされるとアールンドは信じていた。彼は怪物を殺すことは望まず(とはいえ、彼にとって事態が悪化したならそうしたが)、ただ彼らから学びたいとだけ願っていた。

 ハリックが近づくと、アールンドはその巨大狼に対して優位に立っていた――だが神はその狼の牙が毒で覆われていると気づいていなかった。敵対する神が与えたものだ。その牙が上腕を貫くとアールンドの身体は麻痺し、無力に倒れてしまう。狼がアールンドの喉を噛み切ろうとしたその時、ハリックはその目を矢で貫いた。狼は苦痛に吠え、逃げ去った。

 救われたアールンドは喜び、素早い介入に礼を言うと、ハリックとその子孫たちへとフェルトマークの全土を与えた。そして彼はブレタガルドを離れ、死に瀕しても惑うことなく、あらゆる星界の怪物との戦いの旅を続けた。

――狼破りの英雄譚

 

氏族の掟

 何世代も昔、五氏族の代表たちが血の契約に署名をしました。氏族間の関係を統治する共通の法文に従うというものです。氏族の掟は、ある氏族の者が他氏族の者へと危害を与えた際に執行される応報の制度を定めています。例えば、殺人者は犠牲者の家族への負債を課されます――そしてその負債の厳しさは、その家族と犠牲者との関係によります。弁償は黄金や家畜やその他の資産、一定期間の労役、あるいは血で支払われます。

 氏族の掟はベスキール氏族をその守り手、裁定者と定めています。彼らの役割は証拠を量り、罪に対する適正な罰や賠償を布告することですが、その執行を強要はしません。罪の当事者は弁償を支払うべきとされていますが、それが不可能であれば、その氏族が支払わなくてはなりません。氏族がその義務を果たせない場合は、犠牲者は自らの手で問題を解決すべきとされています。

 比較的無法のタスケーリやカナーの氏族ですら、自分たちと他氏族との不和を審判のためにベスキールへと持ち込みます。ですがフェルトマークの外、より無法の地で法官の影響はそれほど強くありません。スケレの略奪者たちは血空の虐殺の際に氏族の掟を捨てており、今や自分たちはベスキールの法官の手の届かない所にいると彼らは考えています。

 ベスキール氏族の正義と秩序への献身は、その法にはっきりと表れています。彼らの法は氏族の掟が要求するものを越え、ベスキールとしての振る舞いを定めています。品行についての厳格な掟が、互いや異邦人、客人、敵や捕虜すらもどのように扱うかを定めています。この掟によって、他の領域から訪れる人間以外の種族の間でも、ベスキールはその厚遇で有名です。ベスキールの英雄譚の中には、神々や他の強大な存在が変装してベスキールの家を訪れ、彼らをもてなした者には褒美を与え、そうしなかった者は罰するというものが存在します。

キルダ海
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 ブレタガルドの大地はキルダ海、荒々しい氷の海に囲まれています――ほとんどの人間は何としてでも避けています。無数の英雄譚が、船を海の墓所へ引きずり込み、人の姿をとって夜のうちに村人を殺す怪物を語っています。怪物がいなくとも海そのものが危険であり、そびえ立つ海食柱や険しい岩が沿岸に並び、しばしば深い霧がそれらを覆い隠しています。

 キルダ石柱群は海食柱の迷路であり、凍えるような霧で常に覆われ、沿岸海域でも最も危険な地域を成しています。当然、領界路探したちは――ルーンの航行魔法を用いる、ブレタガルドでも最も熟達した船乗りたちは――キルダ石柱群を我が家と呼んでいます。

 季節に一度、全氏族の航海士たちが石柱群の中心にある入り組んだ船着き場へと帰還し、長艇を停泊させ、海図と新発見を分かち合います。残りの月日にはその船着き場は完全に無人となり、領界路探したちは旅と探検の日々を過ごします。

 石柱の多くには星図や地図、領界全域からもたらされた秘密が刻まれています。ですが領界路探したちは自分たちの知識を頑なに守っており、その記録は氏族員のみが解読できるルーンの魔法でぼやかされています。

領界路探し
ルーン目のインガ》 アート:Bram Sels

 星界の秘密を理解したいと切望し、怖れ知らずの領界路探したちはブレタガルドの海や領界の間の空間を渡り、秘儀の知識と新たな驚異を探し求めます。この神秘の航海士たちがたどる星図には、通常の夜空の星と、世界樹の高みから輝くシュタルンハイムの光の両方を記すルーンの魔法が刻まれています。入念な航路作成と大胆な探検によって、領界路探したちは二つの領界が重なる際に起こるドゥームスカールを予測したいと願っています。彼らは季節に一度、ブレタガルドのキルダ石柱群に集合し、他の領界から集めた秘密を分かち合います。とはいえ大体においては長艇を家としながら、自分たちは星界の住人であると考えています。領界路探しを率いるのはルーン目のインガ、氏族の航海によって集められた全ての知識を保有する、盲目の予見者です。

ヴェドルーンの魔術師

 ヴェドルーンは領界路探しの魔術師の精鋭集団であり、海流や風、オーロラの光といった自然世界の要素を用いて未来の出来事を予測するとともに、星界を航行して他の領界へ渡ります。

 ヴェドルーンの魔術師でも最も力ある者は他の領界への領界路を開くことができ、さらなる領界に触れることで自分たちの魔法力を高めると信じています。彼らは純粋な戦闘よりも策略と戦略的な立ち回りを好みますが、戦いが避けられない時は、エレメンタルの魔法と生物を用います。ヴェドルーンは霜巨人と強い繋がりを持っており、セルトランドで霜巨人に弟子入りして雪と氷の扱いを学ぶヴェドルーンの姿を見るのは珍しいことではありません。

スケレのぬかるみ
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 アルダガルドには広大な沼地もまた含まれます。幾つかは夏の太陽が雪と凍土を融かしてできる季節性のものですが、他は永久的なもので、寒冷な季節には凍りつき、ぬかるみます。そういった恒久的な沼地でも最大のものがスケレのぬかるみ、アルダガルドの中心に近い闇の地です。

 スケレのぬかるみは、その沼地内と周囲に居住する荒々しい略奪者氏族の名の由来となっています。スケレ氏族はぬかるみの至る所に魔法の通路を張り巡らせており、それらは氏族員にしか見えません。よそ者はすぐさま沼の中で迷い、もしくは泥にはまり、徘徊するスケレの略奪者のたやすい餌食となります。

 スカルダーの土山がスケレ氏族を動かす中央拠点となっています。沼に半ば沈んで苔に覆われた、死して長い獣の頭蓋骨があり、スケレ氏族はその上に粗末な長広間を築いています。不吉に輝くルーンがその危険な建築物を覆いつくすように刻まれ、奇妙で物騒なスケレの魔法を見せつけています。

スケレ
荒廃踏みの小道》 アート:Jenn Ravenna

 かつて狂暴な追放者の群れであったスケレ氏族は、沼地の貧弱な生物を漁るよりも他の氏族から力ずくで奪う方がたやすいと遠い昔に気づきました。

 物騒に、かつ不思議なほど素早く、彼らはスケレのぬかるみにある拠点から何マイルも略奪に出て、開けた草原にすら足跡も残さず消え去ります。彼らはブレタガルドにて群を抜いて最も恐れられており、多くの者が、彼らの名を口にしたなら村に破滅を招くと信じるに至るほどです。

征服の戦略

 スケレは狂戦士的な狂暴性に頼るだけでなく、邪悪な魔術を用いて村々を征服し、貢物を要求します。彼らは定期的に略奪行に赴き、食物や貴重品や金銭を要求して、生きることを許可する「特権」を与えます。支払いを拒否した村は全て、即座にかつ完全に破壊されます。

 スケレがひとつの村を征服する際には、村人のほとんどを生かしておきますが、村の権利を主張し、軽蔑の柱を立てて生存者を支配します。黒く焦がされ、ルーンが刻まれた柱が、村人の肉体的な力と反抗心を魔法的に吸い上げるのです。その柱を倒すことは反逆を意味し、スケレは反抗的な村に生存を許しません。

 反乱を助長する可能性のあるような極めて頭の固い村人には、スケレの独特かつ暴力的なルーン魔法で作られた死の印が記されます。死の印はその保持者の生命力をゆっくりと吸収し、印を作った略奪者にその力を与えます。

ヴェラゴス
血空の主君、ヴェラゴス》 アート:Tyler Jacobson

 イマースタームから脱出した悪魔ヴェラゴスの後見を受け、今日のスケレ氏族は恐るべき勢力となりました。その悪魔はイマースタームに送り返されて長いながらも、スケレ氏族は今も彼を信奉し、暴力的な行いを真似し、その危険極まりない魔術を学び、彼の姿を模倣して装うことすらします。いつの日かヴェラゴスは帰還し、彼が始めた行いを終わらせるために導き、他の氏族を完全に滅ぼすか服従させ、スケレだけが残る――そう彼らは信じています。

 ヴェラゴスは凄まじい苦痛と奮闘を乗り越えてイマースタームを脱出した。ブレタガルドに至ると、彼は素早くスケレの略奪者の長という座を確立し、氏族の全員が悪魔との結びつきを大いに喜んだ。悪魔は氏族をベスキール会堂へ導き、そこに至るまでに遭遇した全員を虐殺した。数人のベスキールが逃げ延び、スケレが氏族を一人残らず殺す前に神々へと介入を懇願した。神々は他の領界からの侵入者によってもたらされた惨劇を見て立ち入り、領界じゅうで一か月に及ぶ戦いの末、ヴェラゴスをイマースタームへと押し返し、悪魔たちをその地に束縛する魔法印を修復した。ブレタガルドにおいて冬の季節は今も血空として知られている――その虐殺の記録として、そして氏族の掟を見捨てた者によってもたらされた惨劇を忘れないために。

――血空の虐殺の英雄譚

 

牙の山
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 尖って荒れ果てた「牙の山」が大陸の東側を占拠しています。山頂は一年を通して雪に覆われていますが、猪、熊、山猫、そしてさまざまな小型哺乳類といった多くの頑健な動物種がそれでも繁栄しています。

 タスケーリ氏族の騒々しい戦士たちはこの山々に名を由来し、低地に住む「貧弱な」氏族には軽蔑以外のものを抱いていません。彼らは食料のために猪やヤギを狩り、農業にはほとんど関心を示しません。彼らがフェルトマークへ降りるのはもっぱら略奪や、風変りな手柄を立てるためですが、ごくまれにベスキールの饗宴に参列します。

タスケーリ
針縁の小道》 アート:Adam Paquette

 タスケーリの社会は混沌としており、栄光と誇りが最も重要とされています。彼らは危険な行いを完遂し、荒々しい冒険に赴くことに駆り立てられています――何世代にも渡って謳われる英雄譚となるような冒険に。彼らは全員が、あらゆる領界の誰よりも大規模で素晴らしい手柄を立てようと狙っています。そして力や技術を風変りに競うことで互いを刺激し合います。彼らはしばしばアクスガルドを訪れ、終わりのない冒険に同行してくれるドワーフのスカルドを探します。スカルドの言葉は、その物語の信憑性を証明するための、最も手堅いものであるためです。

 タスケーリは戦いに赴くのを好みます。退屈した、しばらく戦いを楽しんでいない、もしくはいつもより侮辱を耳にしたというような理由だけで、いかなる弁解も聞く耳を持ちません。彼らは非常に熱狂的ですが秩序立ってはおらず、戦略や慎重な戦術は全く重宝しません。それよりも、個々の戦士たちが思いつく限り最も突飛な英雄的妙技を試みます、仲間が何をしていようとも。戦いの中で英雄として死ぬことこそが、彼らにとって最高の栄誉です。同時に、タスケーリの戦士たちは他のどの氏族よりも戦乙女によってシュタルンハイムの栄光へと連れ去られることが多いというのは、偶然ではありません。

 功績による戦利品、記念品、褒賞はタスケーリの物語の中心となっています――事実、彼らが故郷と呼ぶ広間はとある巨人が落とした兜から作られているのです。奪い取った武器、神秘的なアーティファクト、そして珍しい獣の頭蓋骨や毛皮といったものがあらゆる壁に下げられ、そのひとつひとつにタスケーリの全員が知る物語があるのです。

 タスケーリは大酒飲みであり、蜂蜜酒を多量に醸造しています。広間の中央では常に少なくとも1体の山羊が開かれて焼かれています。

 タスケーリの指導者の座は、いついかなる時にも最強であり、最も大胆であり、そして最も熟達しているとみなされた氏族員に委ねられます。指導者の地位は、特に注目に値する偉業に対する報酬として授けられることもあります。つまりいつでも、途方もない偉業を成し遂げた次の戦士にその職を渡すことができるのです。

 タスケーリ氏族の現指導者はかつて山羊裂きのアーニとして知られていましたが、他のタスケーリと同じく、彼はその二つ名を最新かつ最高の行いに基づいて変えました。彼の場合、1体のトロールとの頭突き勝負を制したのです――いくらかの個人的な対価を伴って。

アルダガルド
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 アルダガルドは松やイチイ、落葉樹からなる古き森で、フェルトマークの平原の間を西と南に延び、東は牙の山の山腹にまで達しています。森のへりには木漏れ日が差し込んで友好的な雰囲気が漂いますが、中心に向かうにつれて木々は次第に絡み合って伸び、継ぎ目のない黄昏の梢となります。

カナー
世界樹への道》 アート:Daniel Ljunggren

 この森は放浪の民であるカナー氏族の故郷です。彼らは森の中に一時的な居住地を維持していますが、絶えず探検隊を送り出しています。カナーはシュタルンハイムへ至る道を精力的に探しているため、そういった探検は他の領界にまで及ぶこともあります。アルダガルドはあまりに広大であり、森を離れることなく数年も放浪するカナーもいるほどです。

 森の東端近く、牙の山へと続く高地の中に、呪いの樹が立っています――常に雪に覆われた樫の巨木です。これはシュタルンハイムの聖なる広間に入る望みのないとある神が、永遠にアルダガルドに残るようにカナーを呪った場所である――彼らの英雄譚はそう伝えています。もしカナーが森を離れたなら、冬が彼らを追い、絶えず苦しめ、雪は深くなり、やがて前進を不可能にして引き返させるのだとされています。カナーは呪いの樹の近くに小さな居住地を維持しており、いつの日かその呪いが解けることを願ってルーンの儀式を執り行っています。

 カナーは蛇狩りのフィンが率いています。星界の蛇に傷を与えることに成功した唯一の人間です。

呪われた者と呪う者

 スコーティがアイニールを打ち負かした際、カナーはその呪いが解けることを期待しました。そして新たな支配者である神々へと事情を嘆願しました。ですがスコーティは自分たちの自慢と喧嘩に忙しく、カナーの叫びに耳を傾ける者はおらず、呪いは残りました。

 粗末な扱いを受けたため、カナーは星界の怪物を含めて神々に関わるあらゆるものを軽蔑しています。星界の大蛇を殺せば、立ち上がってスコーティを倒すだけの力が得られると、そして呪いを終わらせてシュタルンハイムを手に入れられると彼らは信じています。

その1はここまで

 「案内」のその1はここまでです! その2は残る九つの領界と、その中に待ち受ける友や敵を解説する予定です。

世界構築 クレジット

 そしてカルドハイムに命をもたらしてくれた全員に特別な感謝を!

コンセプト・アーティスト
  • Alix Branwyn
  • Chris Rahn
  • Daarken
  • Jehan Choo
  • Jenn Ravenna
  • Jonas De Ro
  • Nick Southam
  • Randy Vargas
  • Sam Burley
  • Steve Prescott
  • Rebecca On
  • Taylor Ingvarsson
  • Tyler Jacobson
  • Viktor Titov
  • Zack Stella
世界構築 執筆チーム
  • Jenna Helland
  • Ethan Fleischer
  • Emily Teng
  • James Wyatt
  • Annie Sardelis
  • Hans Ziegler
  • Doug Beyer
  • Katie Allison
アートディレクター
  • Cynthia Sheppard
クリエイティブ・プロデューサー
  • Meris Mullaley
首席クリエイティブ
  • Jenna Helland
クリエイティブ・ディレクター
  • Jess Lanzillo

(Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori)

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