READING

読み物

翻訳記事その他

『統率者レジェンズ』の伝説たち その1

Ari Zirulnik, Ethan Fleischer
2018_Daily_WOTC_icon_0.jpg

2020年10月30日

 

 1週間をかけて、古今東西のさまざまなキャラクターを描いた『統率者レジェンズ』のカードを公開しました。皆さんが知っているキャラクターも、新しいキャラクターもいたことでしょう。ですがそれぞれに語るべき物語があるのです。

 以下に、公開済みの『統率者レジェンズ』の新規伝説カードの短いプロフィールを掲載します。次週、新規「レジェンド」のもう半分も掲載の予定です。名だたる顔ぶれをご覧ください。そして来週の「その2」もお楽しみに!


ケッシグの罠師、アレイナ

 ウルヴェンワルドの森はイニストラードでも最も恐るべき生物の棲処です。狼男、吸血鬼、そして取り憑かれた者たち。

 アレイナはウルヴェンワルドを渡る旅人を守りつつ、彼らを近隣のガツタフの街へと案内しています。彼女の隣には常に(仕事でも人生でも)パートナーであるハラナがいます。アレイナは非常に腕のいい追跡者であり、全感覚を用いてケッシグ州の善き人々を脅かす怪物を発見します。彼女は特に狼男狩りに長けていますが、さらに大きな脅威がエルドラージの姿をとってイニストラードに迫ると、人狼たちとともにこの次元を救うために戦いました。

//

映し光るもの、アマレス

 とある辺境の次元において、ドラゴンの鱗は歳を経るごとに硬度を増し、美しいクリスタルへと変化します。アマレスは他のあらゆるドラゴンよりも長い時を生きており、そのきらめく鱗を大いに誇っています。事実、その誇りがあるため、彼女はつまらない黄金を所有することには興味を示しません――そうではなく、自身のようにきらめく宝石やクリスタルばかりを収集しているのです。もしもあなたが偶然にもアマレスの巣を発見し、そこから何も奪う様子を見せないならば、アマレスは喜んで自らのコレクションでも最高のものを何時間もかけて見せびらかすでしょう。

//

邪悪な選督使、ベルベイ

 ラース次元のスカイシュラウドのエルフ、その王であるエラダムリーにはアヴィラという姫がいました。あるファイレクシアの工作員が彼女を暗殺し、その屍をファイレクシアへと持ち帰りました。アヴィラの屍は改造され、「完成」され、機械部品を組み合わされて新たな人物、ベルベイとなりました。ベルベイの存在理由はファイレクシアの闇の神ヨーグモスの目となり、ラースの新たなエヴィンカー(支配者)の選定を監督することにありました。栄誉あるその座を争うのは嗜虐的な吸血鬼クロウヴァクス、残忍な戦士グレヴェン、そして早熟な若き魔術師アーテイ。ですが少しして、ベルベイは自身の存在理由を逸脱して自らの決断をするようになります。彼女はアーテイと恋に落ち、彼が勝利するために画策し、またファイレクシアのドミナリア侵略を妨害しようと試みます。ですがその計画は実を結びませんでした。クロウヴァクスが新たなエヴィンカーとなり、ファイレクシアの侵略はドミナリアの歴史でも最も破壊的な出来事となり、そしてベルベイ自身もエラダムリーによって殺されたのです。

//

喜劇の天才、ブリム

 ラクドス教団では、どんなに楽しいショーやゲームでも、やがて酷いことになります――そして大笑いが巻き起こります。ブリムはラクドスでも一世一代の喜劇の天才と自負しており、自分のショーは笑い(と血の海)で溢れていると主張しています。彼曰く、かつてとあるショーは楽しすぎて文字通り観客全員が殺戮されたのだと。また彼いわく、あなたもそこにいるべきだったが、その場合は死んでいたので、自分の言葉を信じるしかないのだと。

 実際には、ブリムは三流の芸人です。とはいえ酒はいつも安く、いつでも野次を好きなだけ飛ばせます。ただ、トマトだけは投げつけないように――ブリムはもっと尖ったものを投げつけ返すことで知られていますから。

//

鉄面連合の略取者、ブリーチェス

 ゴブリンの海賊ブリーチェスは砲術の腕と縄結びの技術、そしてとても巧みな叫びでよく知られています。あらゆる物事について、いつでも、どんな理由でも、声の限りに熱狂的に繰り返すその心意気は一種の伝説となっています。

 先だってブリーチェスはオラーズカへ向かい、不滅の太陽を手に入れようとしました。その旅は一番の目的を達成できませんでしたが、彼や仲間の海賊たちはその後に黄金都市を略奪し、途方もない儲けを手にしました。ブリーチェスと友人のマルコムは鉄面連合の大物となり、「キンカとホウセキとヤクソクテガタ!」の中に埋もれています。

//

月のクラーケン、ブリネリン

 ブリネリンはゼンディカーのアクーム大陸、その沖合の海を支配する非常に歳経た月のクラーケンです。固い甲殻、たくさんの鉤爪と触手は年齢を経て強さを増すばかりです。その海域でブリネリンに劣る生物は全てが服従し、またブリネリンは縄張りを通過する船に貢物を要求しています。彼が怖れる存在はごく少数ですが、古の吸血鬼にしてプレインズウォーカーであるソリン・マルコフはその一人です。ソリンはその血魔術でブリネリンの命を終わらせられると彼は知っていますが、その時は最期の抱擁とともに深淵へと道連れにするつもりです。ブリネリンはエルドラージとの戦いを生き延び、今日までアクーム沖合の支配を確立しています。密かに、彼は最も近しい友人であったエルフ、エルドラージが覚醒して早々に殺されたタジュールの言論者スティーナの死を悼んでいます。

//

最後のイチイ、コルフェノール

 コルフェノールは真に古代から生きる赤イチイのツリーフォークであり、ローウィンにおける最後の生き残りでした。遠い昔、彼は一族の秘儀的伝承と知識、魔法、古代からの伝統的な儀式の全てを受け継ぎました。彼は偉大な賢者であり、短命の種族よりも遥かに早く異変を知覚することができました、コルフェノールは大いなる試練がローウィンに迫っていると知っていました。彼自身も、少なくともそのままの姿では生き永らえられないと思われるほどのものが。彼はひとつの球果に自らの精髄を込め、最後の弟子である光り葉のエルフ、ライズに教えを残しました。そして彼はライズへと、その球果をつぶやき林へ植えるように課しました。そこから若木が成長し、ローウィンがもはやローウィンでなくなった時に、大オーロラによってシャドウムーアへと変貌した時に、コルフェノールの知識を伝えるのです。

//

岐路の占い師、エリゲス

 多元宇宙の秘密を探り、解明する以上にスフィンクスが喜ぶことはありません。何世紀も昔、エリゲスは他に知る者はないと思われるひとつの真実に行き当たり、今や彼は現在から先の五分のあらゆる未来に存在しています。簡単に言うと、もしエリゲスと話をするとしても、彼は既にあなたとの会話を終えており、その会話のあらゆる展開を経験しているのです。従ってあなたの目には、エリゲスは何を言おうと全くの無感心であるように思えるかもしれません。ですが現実には、彼はあなたから無限回もの話を聞いており、可能な限り徹底的かつ思慮をつくして既に返答しているのです――あなたはただ、その答えを聞くべきでない時間軸に存在しているだけなのです。

 もっと簡単に言うと、エリゲスとの会話は極めて苛立たしいものであるということです。

//

ラミレス・ディピエトロの幽霊

 この幽霊の海賊は何世紀にも渡ってジャムーラ沖合の名物です。波が呼んでいると感じたなら、彼は新たな乗組員として加わるのです。ラミレスはその流儀と豊かな機知によって、死者への偏見を持たない者たちの間で人気者となっています。

 話をしたい気分(いつもです)の時、ディピエトロは主張します。兄弟戦争の時代に、南海にてクルシアス船長の「悪口」号に乗りこんでいたと。ヨハン戦争の際には静寂海にて大トー・ウォーキとともにロバラン傭兵団と戦ったと。そしてマダラ帝国の再征服の際にエデミ諸島の船を襲っていたと。また彼は海賊女王アディラ・ストロングハートとの戦いで死んだと、片割れデーンとだけ知られるトレイリアのシェイプシフターに暗殺されたと、そしてアーボーグにてグウェンドリン・ディー・コアシーに敗北したとさまざまに主張しています。これらの物語が、ひとつでも真実であったとしても、それを知ることはできません。

//

アンフィン学者、ゴー・ムルドラク

 水陸両棲の人型生物であるアンフィンはさまざまな海の深淵にて、何世代にも渡って平和に生きてきた。だが人口が増えるにつれ、アンモナイトの寺院洞窟はもはや彼らの数を支えきれなくなった。アンフィンの司祭たちは視界をシャンダラーの沿岸へ向け、狩人たちは戦闘準備に入った。その一方で、記憶魔道士たちが各大都市の下水道に侵入した。彼らは精神支配魔法を用いて、人類の精神からアンフィンの存在に関するあらゆる知識を消し去っている。アルデスタンからレシュに至るあらゆる主要な大学においても、アンフィンについてはほとんどわかっていない。これは同時に彼らの力と極悪な意図を示しているのだ。

  ――ゴー・ムルドラク「秘史」

//

ケッシグのレインジャー、ハラナ

 イニストラードへのエムラクールの到来は、一連の非常に奇怪かつおぞましい出来事をもたらしました。殺人や密教信者の活動が数を増し、ウルヴェンワルド近隣の人々は変質を始めました。彼らは繊維質の格子や触手を身体に生やし、奇妙な崇拝とともにエムラクールの名を詠唱しました。ハラナは仕事と人生の両方でのパートナーであるアレイナとともに、エムラクール信者の活動を追ってそれに対峙しました。差し迫った脅威に、狩人ふたりはかつての敵である狼男の軍勢と協力し、エムラクールによって歪んだ群衆と戦いました。

//

三度の再誕、ジェスカ

 ジェスカの人生はドミナリア次元、オタリア大陸のパーディック山のバーバリアンとして始まりました。ですが彼女は三度の再誕を経て、多元宇宙を股にかける人生を過ごすことになります。

 兄のカマールがミラーリの剣で彼女を刺した際、その傷はただれて広がり、彼女はわずかな接触で死をもたらす「触れられざる者フェイジ」へと変質しました。これがジェスカの一度目の再誕です。

 カマールがフェイジ、アクローマ、ザゴルカを魂狩りの斧の一撃で倒した際、三人は融合して邪神カローナとなりました。これがジェスカの二度目の再誕です。

 後にカローナは信頼する二人の従者、サッシュとウェイストコートに背かれてミラーリの剣で刺され、三人の女性は再び分離しました。アクローマとザゴルカは死亡しましたが、ジェスカの「プレインズウォーカーの灯」が点火しました。これがジェスカの最後の再誕でした。

 プレインズウォーカーとなったジェスカは、銀のゴーレム・カーンの保護下に入りました。数世紀後に彼女はドミナリアへ帰還し、その各地に開いた時の裂け目を塞ぐために奔走しました。最終的にジェスカは自らの身をもって最大にして最後の裂け目を塞ぎ、ドミナリアと多元宇宙の全てを救ったのでした。

//

クローサの心胆、カマール

 ドミナリア次元の蛮族カマールはある時、強大な魔法のアーティファクトであるミラーリを手にします。ですがそれは彼の生来の気質を刺激し、暴力的かつ力に飢えた人物へと変質させてしまいました。その中でカマールはパーディック山の全氏族を従わせようとしました。ですが自制を失い、不自然な憤怒に突き動かされてカマールは妹のジェスカをその剣で刺し、瀕死にさせてしまいます。

 自責の念にかられ、カマールはクローサの森に隠遁しました。ナントゥーコの長老スリスからドルイドの道を教わり、自然とともに生き、他者を守ることに身を捧げました。カマールは死して長いですが、カマール教のドルイドたちはクローサの森にて彼の行動と記憶を今も称えています。

//

燃えさし爪の使い魔、ケディス

 時に、溶岩使いの使い魔が、主人の魔力の影響を多大に受けることがあります。貧相な(言わせてもらうなら、「片意地な」)使い魔が呪文詠唱を阻害して新発見の邪魔をする一方で、ケディスのような素晴らしい使い魔は途方もない規模の呪文を唱えてのけるのです。ケディスとともにいれば、あなたは火力の増大や範囲の拡大に気付き、また敵を焼き尽くす新たな方法を不意に思いつくでしょう。それだけでなくこの子はあなたの炉を照らし、岩滓を食し、長い一日の終わりには優しくあなたの頬に鼻先を擦り付けてくれるのです。

//

陽光たてがみの使い魔、ケレス

 戦場においては、適切な乗騎が生と死を分けることがあります。そしてケレスに騎乗したいと望むなら、適切さが全てです。一部からは「王を擁立するもの」と知られるように、ケレスに認められた騎士には戦場での栄光とその先が約束されます。しかしながら、戦いが終わってその乗り手が褒賞を得る時になると、ケレスは姿を消します――そしてまたいつか、別のどこかの戦場で、新たな乗り手を探すのです。

//

肉体彫刻家、ケスキット

 ケスキットはファイレクシア人であり、法務官シェオルドレッドの熱心な信奉者です。彼はシェオルドレッドこそが完成の縮図であると信じており、その理想の通りに世界を作り直すことだけを求めています。ケスキットはシェオルドレッドの支配下に入った新たな被験体を「完成」させるという光栄な義務にあずかっており、それらはしばしば最終的に、その法務官を模した蜘蛛のような姿となります。エリシュ・ノーンがシェオルドレッドの領域を破壊した後、ケスキットの運命はわかっていません。

//

東の樹の木霊

 この木霊は東の樹の精霊です。「神の乱」以前、東の樹の修行僧たちはこの精霊とともに繁栄を享受していました。木霊は浮遊する胞子を用いて地域一体に新芽を広めていましたが、神の乱が勃発すると眠りにつき、根を地面に沈めて無反応となりました。

 不幸にも、現実はそれほど平和ではありませんでした。この木霊は根を東の樹の領域の隅々にまで広げており、修行僧たちがかつて見たこともないような新たな胞子が地面から弾け出ました。これらの胞子は一斉に爆ぜ、人間へと掴みかかって生気を吸い上げ、そこから新たな精霊が成長しました。

 二十年続いた戦乱が終わると、この木霊は再び眠りにつきました。以来それは身動きすらしていませんが、生き残った修行僧たちは不安に今も祈りを捧げています――安全な距離を保って。

//

親指なしのクラーク

 クラークはミラディン次元、オキシダ山脈に住まう大胆なギャンブラーです。彼はヘリオンのレースにてダーグとの賭けに負け、両方の親指を失いました。一番幸運な親指もです。クラークはこの親指を取り戻したがり、再びダーグと親指一本を賭けました。題目は、ミラディンの中心へ行って帰って来られるかどうか。クラークにもう親指は残っていないとダーグは指摘しますが、上手くやると彼は答えました。クラークはミラディンの奥深くへと旅立ちました。数週間後、彼は自らが記した一冊の書物を携えて帰還し、そこには旅の詳細がぎっしりと書き込まれていました。ダーグは溜息をつき、クラークの幸運の親指を渡しました。彼は死の時まで(その旅によってクラークは異端として処刑されたため、長くはかかりませんでした)、他の幸運のお守りとともにその親指を首から下げていました。彼の死後、「クラーク教」と知られる教団がその書物をもとに成立し、ミラディンの中に秘密の世界があるという説を広めました。

//

薄暮の埋葬布、リーサ

 千年ほど昔、イニストラードでは大天使の四姉妹が人類を守っていました。生者を守るシガルダ、死者を守るブルーナ、怪物と戦うギセラ、そして怪物たちと交わるリーサです。四姉妹それぞれが下位の天使の飛行隊を率いており、人類を守るという目的は同一でしたが、それぞれの手法は異なっていました。姉妹の中でも、リーサだけが敵を理解しようとし、またそうすることで邪悪性を抑えようとしました。その知識をもって怪物とさらに有効的に戦えると、不浄の者に善い行いを成すように取引できると彼女は述べました。

 ある日、新たな天使が何処からともなく出現しました。アヴァシンです。彼女には確固たる正義と、止められない力がありました。アヴァシンはリーサの思想を認めませんでした。そしてリーサが一体の悪魔王と契約を交わした際、アヴァシンはリーサを異端とみなし、その飛行隊の天使ともども斃したのでした。

//

誓いを立てた歩哨、リヴィオ

 フィオーラ次元は政治的駆け引き、欺瞞、裏切りに満ちています。貴族たちが互いを滅ぼし合う時、平民は耐え忍ぶしかありません。リヴィオは、そのようなものはもう見たくありませんでした。ある貴族の唯一の跡取りであった彼は、父がとある小村を滅ぼせと命令を下した際、無力に見ていることしかできませんでした。父はその土地を所有する他の貴族を困らせるためだけにそうしたのです。彼は家紋を衣服から引きちぎって父の足元へと叩きつけ、家名と将来の地位を放棄しました。

 その時から、リヴィオは平民を守ることに身を捧げてきました。彼は金で雇える最高の師から戦いの訓練を受けており、高層都市パリアノの街路を脅かす人殺しを打ち負かすのはたやすいことでした。マルチェッサは女王の座につく以前、リヴィオは政治的駆け引きを少しだけ面白くするワイルドカードとみなしていました。ですが無論それも、女王の部下が地元の商人を脅していたところを彼が追い払うまででした。今、リヴィオとは少し話をした方がいいと彼女は考えています。

//

鋭い目の航海士、マルコム

 マルコムはイクサラン次元、鉄面連合の海賊の一員です。セイレーンである彼は生まれながらに航海術に長けています。また地図やコンパスや天測儀、星空から情報を読み取る啓示魔法を用いてその才能を補っています。マルコムはヴラスカ船長に雇われ、海賊船「喧嘩腰」号に乗りこんで不滅の太陽探索に乗り出しました。マルコムは大抵、親友にして感情豊かな(そして黙ることのない)ゴブリンの海賊ブリーチェスと一緒にいます。

//

ジョラーガの酋長、ヌーマ

 ヌーマはジョラーガのエルフ一族全員が生き延びる責任を負っています。ゼンディカーは過酷で危険な次元であり、あらゆるところから脅威がやってきます。危険な生物、よそ者、そして大地そのものが。ヌーマはそれを知っており、彼の民は固く武装してゼンディカーが投げかけるあらゆるものに対抗しています、道具、武器、強力なドルイドの呪文。彼の氏族を脅かすものは殺されるか追い払われるかのどちらかです――そしてそのために、ヌーマは若きニッサを追放するという辛い決断を下したのでした。その精霊信者としての力は、ゼンディカーを怒らせたとジョラーガは信じたためです。

//

ウーナのトリックスター、ニムリス

 ニムリスはローウィン次元にて、フェアリーの一団を率いています。女王ウーナを熱烈に信奉する彼は、重要な任務を請け負っています。遭遇した人型生物を怒らす刺激して疲労させるのが彼の義務です。相手が憤慨するほど、ニムリスの魔法にさらされた者たちは深く眠るのです。眠りが深いほど、有力な夢がもたらされます。それをフェアリーたちが収穫し、謎めいた目的のためにウーナへと安全に運ばれるのです。

//

鋼軍団のプラヴァ

 プラヴァは鋼軍団でも最も低い死亡率を誇っています。彼女の戦術的感覚に並ぶものはなく、そのため彼女の軍勢は生きて帰れるような効率的な配置につけるのです。近頃、戦場での成功と兵士たちからのずば抜けた人望によって、彼女は将校の地位を獲得しました。

 プラヴァの軍事的ライバルは吸血鬼の司令官リシアであり、二人は数えきれない回数に渡って戦場で対決してきました。戦力と戦術は互角に見え、片方が優位に立つや否や、もう片方がすぐに挽回します。もし部下たちの生命を今ほど気にしないのであれば、プラヴァは勝者となれるのかもしれません。ですが彼女が求めているのは犠牲ではないのです。

//

セラの大天使、レイディアント

 レイディアントは古のプレインズウォーカー、セラによって最初に創造された大天使の一人です。レイディアントはセラの天使たちを率いて、堕落や闇と戦いました。セラがその世界を去る際に、彼女は後を託されました。

 以来ずっとレイディアントはセラの玉座に居続けましたが、彼女はそのために創造された存在ではなく、多大な苦痛を負い続けました。レイディアントの光は揺らがずにいましたが、ファイレクシアがセラの聖域を侵略すると、工作員が民を逆らわせました。飛翔艦ウェザーライト号が介入し、脱出を望む全員を救い出しました。最後の人間と天使たちが脱出に成功すると、次元は崩壊し、レイディアントを道連れにしました。レイディアントの神聖の光とセラの聖域の魔力はウェザーライト号の中心に座すパワーストーンの力となり、その飛翔艦は後にドミナリアを救ったのでした。

//

登る建築家、レベック

 古代のドミナリアにて、レベックはスラン帝国全土でも最高の建築家でした。彼女は自らの作品を「上昇の建築」と呼び、その通りにその建築は人々の視線を上昇させ、ついて来るように招きました。彼女は多くの設計にパワーストーンを組み込み、その傑作であるスランの寺院は首都ハルシオンの上空に浮いていました。

 レベックの才能は力と権威をもたらしました。夫が病に倒れると、彼女はその権威を用いてスランの医師ヨーグモスをハルシオンに呼び戻しました。知らず知らずのうちに彼女はヨーグモスの影響力を増大させており、やがて彼はスラン帝国を内戦に突入させ、首都とレベックの創造物全てを破壊しました。ヨーグモスが人工次元ファイレクシアにおいて歪んだ実験を行っていると知ると、レベックはファイレクシアに通じる門を閉じ、その過程で自らも犠牲となったのでした。

//

ロフガフフの息子、ログラクフ

 カー砦のコボルドたちは偉大なるドラゴンのプローシュを神のように崇めています。その信仰の核となる教えは、いわば、神に相応しい行いをせよということです――主に略奪し、燃やし、その足跡に恐怖を振り撒くのです。事実、これらの理想の中に生きるコボルドは、プローシュの卵のひとつからドラゴンとして生まれ変わると信じられています。

 ある日、彼らの指導者であるロフガフフはひとつ思いつきました。自分たちの神のように生きる一番の道は、彼自身のようになることだと。その瞬間から彼は暴君として振舞い、プローシュに捧げられるものと同等の貢物と生け贄を要求しました。ロフガフフの息子、ログラクフは父が自らの民から略奪するのを黙って見てはいられませんでした。代わりの略奪相手はたくさんいるのです。今や彼は父に対する抵抗軍を率いています、カー砦のコボルドに「正しい」道を取り戻させるために。

//

闇の男爵、センギア

 センギア男爵は古の吸血鬼の王であり、数多くの次元にて子供を怖がらせる物語に登場しています。男爵自身はプレインズウォーカーではありませんが、若いころに強大なプレインズウォーカーに召喚されて仕えました。古のドミナリアにて、男爵の下僕たちは大陸ひとつの血を飲み尽くしたとも言われています。鋭敏かつ聡明に、そして優雅な晩餐と達観した論議の間に、彼はウルグローサ次元にてドワーフの城塞を征服すると、ゆっくりとそれを力の拠点へと変え、闇の男爵領を築きました。以来数世紀をかけ、彼はホームランドのさらに多くの人々をアンデッドの下僕へと変えていきました。男爵が最後に目撃されたのは、大修復の前夜のことです。彼は城の地下迷宮にて、吸血鬼の軍勢の先頭に立ち、謎めいたドワーフの門を通っていきました――どこか別の次元へのポータルです。その先の世界は不運だったとしか言いようがありません。

///

嵐の目、シアーニ

 タルキールの「再編」されていない歴史において、シアーニはジェスカイ道の修行僧として、現実というものの真の性質を理解しようとしていました。ジェスカイの多くの者が修行と瞑想こそが啓発への道だと信じる一方、シアーニは、真の啓発とは戦いの静寂の中にのみ発見できると信じていました。事実、戦いの際、彼女は忘我に近い状態に突入し、そこでは古の龍たちの声を聞くことができると言うのです。

//

愚者滅ぼし、テヴェシュ・ザット

 宗教的妄信によってテヴ・ローングレイドの愛する妹が殺害された際、その古のプレインズウォーカーの唯一の自制理由は失われました。テヴェシュ・ザットと名を変え、自らの身体を歪んだドラゴンへと作り替え、彼はあらゆる生命を黙らせることを自らの使命としました。彼の手法は、微妙なものと直接的なものの両方がありました。ドミナリアの指導者たちへと妄想を掻き立てる言葉を囁いて無分別な行動をとらせる、あるいは操ることのできない者は魔法を用いて殺害するのです。ドミナリアの歴史に繰り返し登場する悪人として、彼はサーペイディア帝国の崩壊、ストルガード氷河大帝国の滅亡、エルダー・ドラゴンであるクロミウム・ルエルの殺害、そして上古族ドラゴンの破壊的な再誕に関わりました。

 ファイレクシアの侵略当時、プレインズウォーカー・ウルザは彼をナイン・タイタンズの一員に加えました。ファイレクシアを完全に滅ぼすことに専念するプレインズウォーカーの一団です。ザットはタイタンズを裏切ってそのうち二人を殺害しましたが、ザットの裏切りを予期していたウルザは彼を殺し、その精髄を魂爆弾の力としてファイレクシアに対して使用しました。

//

虹色の笛吹き

 多元宇宙の至るところで、絶体絶命の瞬間に魔法使いたちは不意に気づいてきました、これまで自分たちが唱えてきたどのようなものとも異なる呪文を唱えられると。ですが危険が去ると、その知識は跡形もなく消え去ってしまうのです。それらの出来事について尋ねると、魔道士たちは同じことを答えるのです――まるで、恐ろしいほど美しい笛が奏でる音楽で頭が満たされるようだった、と。

 最も有力な説をもとに、研究者たちはこの現象を「虹色の笛吹き」と名付けています。その説曰く、エレメンタル以上に純粋なマナの精霊が、あらゆる次元に同時に存在しえる。純粋なマナであるため自身の意志は持たないであろうが、その力は確かな基準を満たす者であれば潜在意識的に繋がることができる可能性がある。その基準を解明しようという努力はほとんど実を結んでおらず、そのため今のところ、その笛吹きに関しては謎のままです。

//

焦熱団のユルロック

 ユルロックはジャンドにおいてヴィーアシーノの一団を率いています。全くもって大胆不敵な彼は、あえて危険な状況で獲物を狩ります――熟知さえしていれば、溶岩流は素晴らしい地の利となるのです。もちろん、数体のヴィーアシーノも落ちるかもしれません。ですがそれは団全体の生存に比較したなら些細な犠牲です。「衝合」の後、ユルロックは狩猟場が非常に広まったと知り、エスパーを溶岩地形で幾らか改装してやろうとしています。

//

改革派の勧誘者、ザラ

 領事府への反乱を準備する中、改革派は戦力の底上げを必要としました。彼らの多様な新兵募集員の中でも、ザラほどに有能な人物はいませんでした。彼女の誘い文句は一種の伝説であり、意志の固い領事府の構成員であっても彼女の側につかせる説得力を持っていました。自らの飛行船の船長として、ザラはカラデシュでも最も下賤な乗組員を率いて一連の略奪を成功させ、それは改革派に勝利をもたらす鍵となりました。

//

(Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori)

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索