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たった3語の、偉大なる1枚

2020年7月22日
「すべての クリーチャーを 破壊する。」
私はコントロール・プレイヤーなので、「Destroy all creatures.(すべてのクリーチャーを破壊する。)」という3つの単語がマジック:ザ・ギャザリングのカードに印刷されているのを見るのが好きです。クリーチャーを大量に除去する呪文はマジックの初期から定番として存在し続けており、さまざまな遊び方において主要な役割を持ち続けています。リミテッドでは大きな影響力を持ち、競技的な構築フォーマットに不可欠な存在であり、統率者戦でリセットボタンを押す方法の1つです。自分の判断で全体除去呪文を使えるようにしておくことは大きなアドバンテージとなり、その効果は塩のように欠かせない存在としてコントロール・デッキに無条件で採用されるほどです。(対戦相手の涙にも塩分が含まれるでしょうね。)
私がリセットされる側であったとしても、そのデザインのシンプルさと、マジック全体が提供してくれるリセットを含んだバランス感覚には感心せざるを得ません。「すべてのクリーチャーを破壊する。」というフレーズは、マジックが始まったときからその一要素として備わっていた戦略的な手法への道を開いた言葉でもあり、クリーチャー愛好家へは極度の緊張を与える原因ともなるのです。
近年、この効果には基本的に条件がつくようになっています。《空の粉砕》などは、マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2019でよく用いられました。最終的にチャンピオンになったパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosaといったプレイヤーにわずか{2}{W}{W}で全体除去効果へのアクセス手段を与えたのです。対戦相手がカードを1枚引く可能性を考慮する必要はありますが、《王国まといの巨人》で使用できる《脱ぎ捨て》や《時の一掃》のような5マナのカードと比較すれば{2}{W}{W}はお得と言えます。『ラヴニカの献身』で登場した《ケイヤの怒り》は当時追加で採用されていた全体除去呪文で、こちらも点数で見たマナ・コストは4マナでした。
最も使用されるタイプの全体除去呪文は、基本的に4マナのものであるということが理解されます。結局のところ、それはなるべくしてなるそれなりの理由があります。マジックの最初のセットで既に、展開しているクリーチャーはあきらめ、他のカードでどうにかするしかないというかなり強力な事例を確立しました。
そういうわけで、『ダブルマスターズ』のためにこの特別なカードが収録されるに至るのです。これは全体除去呪文の始祖であり、その効果が単に「ラス/wrath」と呼ばれている理由でもあります。

《神の怒り》(ラス・オブ・ゴッド)はもともと『アルファ版』、つまり最初のセットから登場しており、マジックの歴史の中で何度も再登場しています。「ラス」という言葉が――厳密にいえばこれは名詞ですが――マジックの枠を越えて、テーブルトップ・ゲーム全般で場のすべてのものを取り除く行動を意味する略語としての動詞となるほどに、これは象徴的存在です。マジックの歴史の一部である《神の怒り》は、『第10版』までのすべての基本セットに収録されていました。そして、この全体除去呪文の起源が、『第7版』で初お目見えしたケヴ・ ウォーカー/Kev Walkerによる近代の象徴的なアートを伴い帰ってきたのです。
リミテッドでこの呪文を唱えた経験から言えば(ほとんどキューブ・ドラフトですが――これを適切に唱えることで対戦相手のキューブ・プランを何度も台無しにしたことをお詫びしておきます)、『ダブルマスターズ』のリミテッドでもこのカードは高く評価すべきでしょう。これはあらゆるリミテッド・フォーマットで大きな影響力を持つ素晴らしいカードです。なので、対戦相手が白を使ってきた場合は、戦場にクリーチャーを並べすぎないように注意しましょう。
しかしこれは『ダブルマスターズ』です! 楽しさは2倍、プレビューも2倍――そしてこの場合は――同じカードが2倍になります! 過去の『マスターズ』製品とは異なり、『ダブルマスターズ』にはプレリリースがありますし、参加者には特別なものが待ち受けているでしょう。

そうです、これは《神の怒り》のプレリリース・プロモ版で、トーマス・M.バクサ/Thomas M. Baxaによる全く新しいアートが用いられます。このプロモはパックからは入手できません。『ダブルマスターズ』のボックスを購入するか、発売記念イベントへの参加で入手することができます(在庫がなくなり次第終了となります――新型コロナウイルス感染症「COVID-19」関連の規制や安全のため、一部の店舗では発売記念イベントを開催できない場合があります。詳細については最寄りの店舗にお問い合わせください)。
最後に、ラスに対する私の感情についてですが、この引用に要約されています(本当の本当に引用ですからね)。
「マジックのゲームにおいて多くのクリーチャーを得ている対戦相手が、本当に望んているのは、あなたの神の怒りに違いないのです。これこそ真理です。」
――たぶん、小説家ジェイン・オースティンによる言葉っぽい。
(Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing)
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