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マジックの過去、現在、そして未来

Gavin Verhey
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2019年5月28日

 

 『モダンホライゾン』は盛りだくさんのセットだ。

 元々「時のらせん2」というコンセプトで作成されたこのセットは、とんでもないカードでいっぱいになるだろう。モダンで使用可能になるセットとして発売される『モダンホライゾン』は、この人気フォーマットへ影響を与える強力なカードを、大量に提供することになる。

 しかし私にとっては何よりも、『モダンホライゾン』はマジックを祝賀するセットなんだ。

 そこにはフレイバーとメカニズムの両方がふんだんに含まれていることに、すぐ気づくだろう。2001年からマジックをプレイしてきた一人として、『モダンホライゾン』には着眼鋭いリメイク、お気に入りの(そして、時おり面食らってしまうような)メカニズム、そして懐かしい再録カードがいっぱいだ。

 『モダンホライゾン』の開封はまさに喜びを生む。モダン、統率者戦、あるいはレガシーにまで――さまざまなデッキに入るカードが山とあり、コモンですら見れば笑顔になるだろう。まあ、うろんなカードが一定数存在しているのは確かだが、『時のらせん』にあったような奥深すぎるお遊びは削減されているので(《隻眼の巨人》が《Cyclopean Tomb》1つと《隻眼のミイラ》2人から出来てたって知ってた?)、新規プレイヤーであっても目にしたカードを楽しめるはずだ。

 『時のらせん』ブロックが好きだった人々は、大好きだったそれらのものを再検討してさらに良いものを作るための機会がいつか巡ってくるはずだと確信し、開発部でゆっくりと時を待っていた。そして『モダンホライゾン』で、我々はついにそのチャンスを得たんだ! 我々は『モダンホライゾン』のために、『時のらせん』ブロックのテーマや戦略からいくつかをピックアップした。

 つまり、これは私たちが今までいたところ、今いるところ、そしてこれから行くところを祝うセットなんだ。今日は、今これを読んでいるあなたのために、各カテゴリーから1つずつ、3つのプレビュー・カードを用意した。(過去としての)『時のらせん』、(異なる現在としての)『次元の混乱』、そして(未来としての)『未来予知』という感じにね。見ていこう!

時のらせん

 『時のらせん』は再録にあふれたセットだった――過去のマジックから回帰してきた、旧枠の「タイムシフト」カードが121枚も収録されていたんだ。それは本当に私の想像力を掻き立てたし、オールドスクール・プレイヤーお気に入りのカードたちを再び世に送り出すことになった。

 そして、『モダンホライゾン』ではもう一度、過去の素晴らしいカードを数多く再録してプレイすることに注目したんだ。

 さて……あなたのお気に入りのカードは何だろうか?

 誰しもお気に入りの1枚があるだろう。その1枚を選ぶのは本当に難しいことかもしれないが、もしすぐに思い浮かばないとしても大丈夫だ。私もその難しさはよくわかるよ! とはいえ、その答えを出す必要があることは理解していたので、私は十分と言えるまで自問してみた。

 あるプレイヤーにとっては、それはマジックを始めたときからの郷愁を誘う1枚かもしれない――私にとっての神秘の蛇》のようにね。

 他のプレイヤーにとっては、それは対戦相手を叩きのめせる強力なカードかもしれない。《稲妻》は強さと懐かしさを兼ね揃えているので、お気に入りの1枚という人も多いだろう。

 他にも数多くの要素がある。フレイバー、純粋な面白さ、アート――そのほか何でもね。

 おそらく『モダンホライゾン』で、あなたのお気に入りのカードをオマージュした新カードを見ることができるだろう。しかし『モダンホライゾン』がもたらしてくれるものはオマージュだけではない。私のお気に入りのカードも再録としてモダンに登場するんだ! とても嬉しいよ!

 ようこそモダンへ、《未来予知》!

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 ああ、皮肉にも『時のらせん』の項目で《未来予知》を扱うことになった――ちょっと面白いことだが、まあ再録についての項目なのでね。

 私がこれを好きな理由はいくつもある。

 まず何よりも、プレイしていて楽しい。無限に手札があるかのごとしだ! ライブラリーの一番上のカードを唱えれば、その次のカードが表になっていくわけだが、そこに何があるかはめくるまでわからない。土地だろうか? 唱えられる呪文かも? ああ、期待してしまうね! キューブドラフトで遊んでいるときに《未来予知》が出たら、私は取らずにはいられないね。

 次に、これは私にとって懐かしい思い出をいくつも思い起こさせるものだ。このカードが私を初めてのグランプリ・トップ16へと導いてくれた――今でいうミシックチャンピオンシップの参加権を得られたんだ。そのグランプリはエクステンデッドという、モダンの前身のような過去のフォーマットで開催され、そのイベント全体で《未来予知》が使われた枚数は10枚以下だった。しかし友人であるダニエル・ハンスン/Daniel Hansonとアレックス・ウェスト/Alex Westのおかげで、我々は同系対戦で《未来予知》をうまく機能させるシークレット・テクを見つけ出し、実際に何度も同系対戦を制した……カードのプレイを大いに楽しみながらね。

 最後に、このカードは創造性を大いに刺激する。「タイトサイト/Tight Sight」と呼ばれるデッキについて、今までどれほど耳にしたことがあるだろうか?

 これはブライアン・デイヴィッド=マーシャル/Brian David-Marshallとエルデン・リー/Elden Leeによって制作されたデッキで、彼らが2003年にMagic Onlineで出会ったとあるデッキに触発されて生み出されたんだ。

 どういうデッキか理解できるだろうか?

 やばい動きをするんだ。

 まず可能な限りのドロー呪文を使って、欲しいカードをより分けつつライブラリーを空にする。それから、戦場に《未来予知》がある状態で《クローサ流再利用》を使えば、墓地にある《早摘み》1枚と別の《クローサ流再利用》1枚をライブラリーに戻せる。これらを戻しながら繰り返し使用すれば、マナを無限に増やすことが可能だ。そのマナを利用して、今度は対戦相手にカードを引かせる呪文を何度も使い続ければいい。

 このデッキについて知った時、私はまだマジックを始めたばかりだった。衝撃を受けたよ。これはただのデッキじゃない。芸術品だ。美しい作品だった。

 ともかく、このカードがセットに再録されてとても嬉しいよ。私はこれがモダンで使われると予想している――長期戦用の切り札に1枚だけ、というようなものかもしれないけどね。そしてリミテッドでは爆弾だ。最高さ!

次元の混乱

 『次元の混乱』は、マジックのセットとして大きな挑戦を試みたエキスパンションだった。

 「もちろんこれはマジックだ……ただし、ちょっと違うけれど。」これはもう一つの現実だった。それらのカードはいくつかの項目に分けられる。

 そのうちの1つが、元のカードの色を変更したカラーシフト・カードだ。いくつかはその色にとって良い門戸の解放となったが、中には《海賊の魔除け》や《調和》のように、私が今座っている席からでもマーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterをけいれんさせられるものも存在した。(いやまあ、実は数メートル程度の距離なんだが。言っておきたくてね。)『モダンホライゾン』にも、確かにそのようなカードがいくつかある。《過大な贈り物》は受け取っただろうか?

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 ああ、白の《内にいる獣》だ。素敵だろう!

 別の項目には、有名なカードの並行世界版新カードというものもあった。その要素として、『次元の混乱』作成チームは往年の有名カードを探し、それを基に新しいカードをデザインした。見出されたのはこのカードだ。

 1998年に発売された『ウルザズ・サーガ』に収録されていたこのカードは、その能力の万能さからスーパーマンの愛称で呼ばれていた。現在のクリーチャーの基準ではそれほど強力に見えないかもしれないが、当時の環境では決定的な1枚だったんだ。

 それでは、並行世界の《変異種》はどのようなものだろうか? 赤いやつだ! というわけで、約10年後の2007年に、こんなカードが生み出された。

 これはプレイヤーに好評だった! トーナメントで活躍することはほとんどなかったにも関わらず、このリメイクはプレイヤーに愛され、ほかの色だとどうなるかを夢想されるようになった。

 このようにして、長きにわたる伝説が始まったんだ。

 2年後の2009年には、『コンフラックス』で《茨異種》が登場した。

 確かに、これには象徴となる鏡写しのアートは用いられていない――我々はいずれどこかで、新しく素敵な鏡写しのアートを用いて《茨異種》を再録するだろう――それでも、サイクルに新たな1枚が加わった! これは緑なので、サイズは4/4になった。

 それからしばらくの間は、音沙汰がなかった。2013年の『ドラゴンの迷路』では《霊異種》が登場したものの、これは《変異種》を青で再演した別の1枚にすぎず、本当の意味でのサイクルの1枚というわけではない。《変異種》のスーパー・サイクルは休止状態にあった……

 ……それから、何かが起こる。

 私は『バトルボンド』のリードを担当していて(あなたが『バトルボンド』を遊んでいて、私が記事の中で『バトルボンド』に言及するのを待ち構えていたとしたら、まさにビンゴだ。おめでとう)、いくつかの刺激的なレアや神話レアを必要としていた。その枠は昔のカードをリメイクしたり、何らかのサイクルを埋めてみるのに最適な空間だった。そこで私はマーク・ローズウォーターに向かって問いかけてみたんだ。「マーク、サイクル・プレイヤーが好きなもの、完成させてほしいとよく言われるものは何だろう?」

 彼はこちらを見て肩をすくめた。「《変異種》サイクルかな?」

 そこから《光異種》のアイデアが生まれたんだ。

 私はカードの制作に取り掛かり始めた。《茨異種》以降、このサイクルから魅力が失われたと考える反対者がいたのも確かだ。しかし私はこれを保護し、去年ついに印刷された。

 さて、《光異種》については面白い点がある。その1つはマナ・コストの変更だ。私はこれが誰かのキューブ・ドラフトに採用されたり、レガシーで試されたりするカードになって欲しかった(それは最終的には完璧にうまくいった!)が、5マナ3/3でそういうクリーチャーにデザインするのはほぼ不可能だとも思っていた。そして、もし私が白い《変異種》をデザインする機会があるとすれば、白は軽量クリーチャーが得意な色だからコストを少し軽くできると考えていたので、近年用いられている強豪クリーチャーと肩を並べられるようにマナ・コストを下げたんだ。

 私が『バトルボンド』を完成させたのと同じころ、イーサン・フライシャー/Ethan Fleischerは『モダンホライゾン』にふさわしいものは何かという問題にどっぷりはまっていた。彼は私の《変異種》の変種を見て、過去の『次元の混乱』デザイナーと同じく、別種を制作するよい機会だと考えたようだ。

 結局のところ、マジックの歴史に敬意を表するこの新たな回帰セットよりも適切な機会などあるだろうか? 私は彼に1つ要望を伝えておいた。「5マナには(あるいは3/3には)しないでくれ」とね。他のものから1つを変更するなら、それぞれ違うように変更するというのが私の基本的なデザイン・ルールで、そうすれば5つすべてを1つのサイクルとして見たとき、きちんとそう見えると考えているんだ。1つだけの例外は奇妙に思えるが、2つの例外ならおかしくなくなるからね。

 というわけで、彼はやってくれた。このカードは数多くの調整とやり直しを経て――あらゆる能力やスタッツが試され、しばらく6マナ4/4だったがより軽くされ――最終的にはかなり良い位置に定まった。

 というわけで、2019年の今、我々はこの1998年に始まったサイクルをついに完成させた。これはただのスーパー・サイクルではない――スーパーマン・サイクルだ。すべてを目撃するほどの長きにわたるマジック・プレイヤーに祝福を!

 皆々様にこれを発表できるのは光栄なことだ。その名は《終異種》!

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 サイクルの象徴である能力構成。見事なアートワーク。4マナ。死亡すれば3/3から4/4になりうる。

 除去されにくく、回避能力持ちで、大きなダメージを与えられる――いやあ、私ならこのカードは使うね!

 この工程の一部にかかわれたのは素晴らしいことだ。我々がこれらを楽しく生み出したのと同じぐらい、楽しんで使ってもらえればと思うよ!

未来予知

 『未来予知』は最高にお気に入りのセットだ。

 私はとにかく『未来予知』が大好きなんだと思う。お気に入りのセットで、お気に入りのカードで、お気に入りのデッキの多くにかかわっていて……もし未来予知という名前のレディがいるなら連絡をいただきたいぐらいだね。『未来予知』はまさに私好みなんだ。

 そしてここで『未来予知』の話をする理由は? 私はその尽きない可能性が好きなんだ!

 あなたもその世界を垣間見たはずだ。

 どこの世界なのか? どんなものなのか? いつの日かそれを見ることはできるんだろうか? 誰か知らないか!?(これについてだが、『モダンホライゾン』の5つの対抗色カード・シリーズはもう見ただろうか? チェックしてくれ!

 余談だが、私はこういったカードのための場所を見つけるのが好きだ。ここになら入れられるだろうとみんなが考える場所を想像し、セットに潜ませられるか検討するのが楽しい。『バトルボンド』のデザインで行わなければならなかった最もつらいことの1つは、《皇帝の仮面》を抜く決定だった(『バトルボンド』ビンゴにご参加の皆さん、また1つ埋まったね!)――とは言うものの、最終的に、自分の仕事には満足しているよ。

 『未来予知』には、思わず二度見してしまうような、真新しく珍奇なキーワード能力やカードがあった。

 城砦化? 墓地のインスタント・カードにエンチャント? ええ? どこの世界の? どうなってる? マジックのカードにこんな言葉を書けるものなのか!?

 私は実行可能なことの拡張を、マジックそのものにすら求めるのが好きだ。将来、そういったデザインをいくつも見ることができるかもしれない。未来のセットのために、ちょっと変わったカードをデザインしようとするもののうまく思いつかない、という場合は、私はひらめきを得るために2つのカードリストを眺める。『アルファ版』と『未来予知』だ。どちらもその時代を開拓したセットで、素晴らしいアイデアにあふれている。

 さて、『モダンホライゾン』は未来よりも現在と過去の比重がわずかに大きいと言えるだろう。しかしここで話したい『未来予知』から得られるデザイン空間の1つは、新能力のことではない。それは1枚のカードに、全く別種のキーワード能力を2つ組み合わせるというものだ。

 召集とキッカー? ああ、なるほど――キッカー・コストを支払うためにクリーチャーをタップね! サイクリングとマッドネス? 待てよ――コンボになるじゃないか! それらの多くは単体でコンボになったり、相互にうまく作用したりしていた。

 『モダンホライゾン』で、アダム・プロサック/Adam Prosakは穴埋め用のカードを募集した――何枚か補充が必要だったのだ。私は「でたらめな贈り物/Random Presents」という名前で赤の4マナのソーサリーを提出してみた。それには2つの言葉しか書かれていない!

 ネイト・プライス/Nate Priceもまた、同じ2つの言葉が書かれた赤の4マナのソーサリーを提出していた。

 何が書かれているかわかるだろうか? ヒントだが、『未来予知』が初めて印刷されたときには、まだどちらも生み出されていない言葉だ。

 考えてみるのも面白いと思うよ。当てられるかな?

 よし、いいかな――思いつくことができたなら、すごいよ! 当てられたかどうかをTwitterで教えて欲しいな。

 この楽しいクイズの答えが知りたくなったら、プレビュー・カードへと進もう――私とネイトが提出したものと全く同様に、そのまま印刷されたよ。

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 ああ、懐かしい2つのキーワード能力からなる端的なルール・テキストと、大長文となる注釈文だ。《時間停止》に勝ったぞ!

 これはとんでもないカードだ! 土地はすべてライブラリーの中にある呪文となる。これを唱えられるのにそのつど我慢するというのは、私にはかなり難しいことだ。これは何にでもなる! 熊にだってね!(もちろん、そう望むならという話だ。)

 これは使うのが楽しいというだけでなく、赤を含むデッキであれば、どんなに土地ばかり引いたとしても長期戦でガス欠にならないということでもある。ああ、それと言っておくべきことがあるね。もちろん、適切にデッキを構築すれば、《悪魔の戦慄》、《暴力的な突発》、それと《死せる生》を欲しいだけ入れて繰り返し続唱しまくることもできる。いや、言ってみたかっただけなんだけどね。

モダンホライゾン

 私をここまで興奮させるマジックのセットは久しぶりだ。モダンの祖父として、このセットは私にとって多くの意味を持つ――私は2010年に「オーバーエクステンデッド」と呼ばれた小規模なファン・フォーマットのプレイヤーになったのだが、そのフォーマットを活性化するためのマジック・セットのデザインを手伝うことになり、途方に暮れていた……そして『時のらせん』は私に多くの驚きをもたらしたが、その中でも特に感情を揺さぶられたのは回帰カードだった。

 そんな時もあったが、ここまできた。これ以上の興奮はない!

 このセットはマジックへの――そして素晴らしいファンの皆さんすべてへのラブレターだ。楽しんで、面白さを感じて、素敵な新デッキをたくさん構築してくれることを願うよ!

 このセットや、プレビュー・カードや、何か他のことについて考えていることがあるだろうか? ぜひとも伝えてほしい! いつでもTwitterにつぶやきを送ったり、Tumblrで質問したり、Instagramでメッセージを伝えたり、メールを書いたりしてくれ。みんなの話を喜んで聞かせてもらうよ!

 残りわずかとなったプレビューを、更新されるビジュアル・カード・ギャラリーを、そしてこのセットを、プレリリースを楽しむ素晴らしい時間を過ごしてくれ! また会おう!

――ガヴィン

(Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing)

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