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『統率者(2018年版)』のデザイン

Gavin Verhey
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2018年7月24日

 

 ここ数か月の間、多くのプレイヤーが『統率者(2018年版)』についての質問を私に送ってきてくれた。が、そのたびに私は、7月になったら話すよと返答してきた。私は書けそうなことをTwitterやRedditに書き込もうとして、しかし結局消してしまった。そこで書くにはちょっと長くなりそうで……

 ああ、お待たせ。ようやく、待ちに待ったプレビューの時間が始まる!

 統率者戦のためのカードを制作することは、私がウィザーズでかかわる仕事の中でもお気に入りのものだ。私はこれまでにも『統率者(2017年版)』と『バトルボンド』でリード・デザイナーを務め、そして今回の『統率者(2018年版)』も担当することになった。開発部はこれまでずっと統率者戦に尽力してきたが、『統率者(2018年版)』もそれら過去のセットから学んだすべての教訓をこのセットに生かすことで、その流れに続くものとなっている。

 今現在、ソーシャルメディアで最も統率者戦について語る者の一人として、私は皆さんから多くの質問を受けてきた。この記事では、その中のいくつかに答えるつもりだ。おそらく聞かれていないことにもいくつか答えるし、新しいこともいくつか伝えられる――さらに、興奮もののプレビュー・カードも2枚紹介するぞ!

 続きが気になるだろう?

 はじめに、デザイン記事の伝統にならって、セットを作り上げたデザイナーたちを紹介しよう! まずは、展望デザイン・チームだ。

(編訳より:デザイナーの紹介はタイトルをクリックすることで表示されます。)

見事な展望デザイン・チーム

 ああ、これが展望デザイン・チームの面々だ。彼らは今年の製品のための初期展望とその骨格を生み出すために数か月働き、その後、彼らは私のチームにその成果を引き渡した。

見事なセット・デザイン・チーム

 以上でチームの紹介は終わりだ。このセットにかかわっている人物について知ったところで、お待ちかねの詳しいセット紹介へと移ろう。

要望に応えたセット

 我々が『統率者』セットを作る時、通常は我々自身が内々にアイデアやテーマ、あるいは目標を定めるところから始めて、それから外部へ向かうように構築する。

 しかし今回は、ケン・ネーグルがその定型をちょっとひっくり返してみた。

 彼は重要な任務から取り掛かる。それは統率者戦でよく言われている要求を探しだし、それを今回のセットに組み込むというものだった。

 『統率者』セットは、そのフォーマットを実際に体験し、そこで何が使えるのかを知る絶好の機会だ。ケンはこの素晴らしい理念を『統率者(2018年版)』へと最初に焼き付け、記事を綿密に調べ上げ、Redditの投稿やYouTubeの動画などを大量に調査していった。その内容に基づいて彼はいくつかのカードをデザインし、私はそれを採用することにした。これはある意味、「ボトムアップ」デザインと言える。このセットをひとつにまとめ上げられた理由としては、我々には一般的な戦略のためのカード(や統率者)、そして統率者戦における何らかの欠落を埋め合わせるためのカードを作る余地があったので、うまくまとまるようデザインできた、というところが大きい。

 ほんの1日前に、《宝捕り》や《結界師の破滅》といったカードを見たはずだ。

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 我々は、赤にもエンチャントと戦うための方法が欲しい、という要求をたくさん見てきた。しかしながら、それは赤のカラー・パイの外側にあるものだ! ああ、我々は赤がそうできる方法を見つけ出すため、マーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterと色の協議会の協力を得ることにした。赤の対戦相手が自分のエンチャントを残すかどうかは、常に相手が自分で決めることだ。赤は「ダメージを受けるほどの価値がそれにはあるのかい?」と聞くだけさ。

 マナ・アーティファクトは、どこの統率者戦でも見かけるものだ。プレイヤーはそれらへの対処法を求めるが、それらをまとめて吹き飛ばしたいわけではないらしい。これはおおよそ、他のプレイヤーがデッキにマナ・アーティファクトを満載していてそれに対処したいのだが、そのプレイヤー自身も自分のデッキにマナ・アーティファクトを満載しているということだ!

 この2枚はケンが私に提出したものだ。今回のセットには、こういったカードを多く見つけられるだろう。白のマナ・ランプ、何年も求められ続けているが実現するとは全く思われていない部族ロード、そしてついに、ジャンドの土地重視統率者まで……これらはほんの一部だ。

 プレイヤーが本当に見たい登場人物が何かを判断するために、私はこの手法をクリエイティブと共にもっと追求することにした。そしてこのセットでは、人気のある登場人物のうち何人かが、ついにお目見えすることになる――昨日のタウノスとヴァーチャイルドは確認したかな?

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 そして根っからのヴォーソスのためにも、何が好かれているのかを徹底的に調べ上げた――ああ、我々はあなたたちを放っておくつもりなんか無いんだ。《サルコマイトのマイア》のフレイバーテキストを元に完璧にデザインされたカードはいかがかな?

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 さて、これがあなたのために『時のらせん』、『次元の混乱』、そして『未来予知』を混ぜ合わせた成果のように見えるなら、私から言えることは……見たことを開発部の誰にも言わないように。そうすればおそらく、このまま発売されるだろう。シーッ、ここだけの秘密だよ。

 統率者戦は、プレイヤーが何を楽しむかをより理解していくための実験場としては最適な場所だ――まさに我々は、プレイヤーからの要望に基づいて、このセットでもいくつかの実験を試みたんだ。

 そしてもちろん、そのほとんどは、デッキの色やテーマとしっかり結びついている。ほとんどのテーマは、それのために統率者を作り出せるものを選んだ。例えばどんなものかって? よくぞ聞いてくれた!

テーマを構築する

 『統率者(2017年版)』から、我々は色ではなく何らかのテーマに焦点を当てるようになった。実際、今回の4つのデッキは色のバランスが完璧ではないと気づくだろう。3色のデッキと2色のデッキがある。我々は色のバランスを気にしなくなったわけではないが、この新しい手法は、各デッキをそれぞれ違ったものにするために必要な柔軟性を与えてくれるんだ。

 というわけで、ここに今回のデッキを作り上げた方法を示そう。

 まず何よりも先に紹介したいのは、各デッキには顔となるプレインズウォーカー・カードがあることだ! 『バトルボンド』のローアンとウィルはあなたの意欲を刺激したはずだが、そう、それを統率者戦でのプレインズウォーカーのための主要なメカニズムとして再利用するときだ……初めての多色カードを含めてね!

 これは最初に登場したときからとても人気だった。しかしながら、我々はこれらのデザインに大きな変更を加えることにした。今回は、どれも紋章を生み出さない――統率者戦を重視したプレインズウォーカーが生み出す紋章に対処するのは面倒だ、という意見を多く確認したためだ。というわけで、今回のプレインズウォーカーにはそれぞれかなり刺激的な効果があるものの、紋章については通常セットのプレインズウォーカーに譲ることにした。

 それで、誰が登場するのか? 我々は、それを新たな登場人物2名と過去の登場人物2名の半々に分けた。

 昨日はサヒーリが紹介された。さらなる登場人物をここで紹介できるのは嬉しいよ!

 緑白青(バント)デッキでは、自身とその友人のために、極めてユニークな仮面を作り出す能力を持つ魔術師、エストリッドという新たな登場人物が指揮をとる。それがカードでどのようなメカニズムとして表現されることになるのか、いずれ見ることができるだろう。

 白青黒(エスパー)デッキは、私たちが知る中でも最も異質なプレインズウォーカー、アミナトゥによって治められている。少女のような外見だが……騙されてはいけない。彼女はその手を一振りするだけで、わずかな微調整から世界全体を丸ごと変化させることまでやってのける。歴史を書き換える力を持つ観測者――そう、時を超越しているようにも思える風貌を持つ彼女は、運命を改変する者なんだ。

 我々は全能の子供という不気味さが持つ美を追求していた……そしてある日、ケリー・ディグスがこう言ってきた。「セブ・マッキノン/Seb McKinnonがプレインズウォーカーを描いたらどうかな?」

 私はその場では即座に賛同できなかったが、彼がその考えに尽力した結果はすぐに見られるだろう。

 あと1つ、黒赤緑(ジャンド)デッキが残っている。そしてここまでを注意深く読んでいたなら、それが過去の登場人物であるとすでに気づいているだろう!

 それは私たちがよく知る人物だ。彼はウルザに助力しファイレクシアを打倒するという、物語の中心となる役割の一部を果たした。我々は彼を『ドミナリア』でカード化しようと考えたが、ひとつ問題があった。彼はもう死んでいるんだ。

 幸いにも、『統率者』セットは時間と空間の彼方からそれらを呼び出すことができる! 刮目せよ! ウィンドグレイス卿の登場だ!

 
ウィンドグレイス卿》 アート:Bram Sels

 さて、これなる人物は何をするものか?

 ああ、単なる代表としてのプレインズウォーカーというだけでは足りない。各デッキにはテーマがある!

 『統率者(2017年版)』のテーマは部族だった。では、『統率者(2018年版)』のテーマは? カード・タイプだ! 我々は、それらを中心にデッキを作り上げたくなるような、人気のカード・タイプの組み合わせを選ぶことにした。

 ……まあ、少なくとも4つのうち3つのデッキでは。

 我々は常に、その年のテーマに興味が無いプレイヤーのためにも、何かがあるようにしておきたいと思っている。我々は去年、部族テーマを扱ったことについて、部族に興味のない人のためのデッキがない、という意見を確かに受け取った。そこで今年は実験的に、4デッキ中3デッキをカード・タイプ中心に構築したものとし、のこり1つはテーマとはまったく異なる独特なものにする、という形式を導入した。

 まず、サヒーリが指揮を執る青赤アーティファクト・デッキ。

 次に、エストリッドが指揮を執る緑白青エンチャント・デッキ。

 それから、ウィンドグレイス卿が指揮を執る黒赤緑の土地デッキ。

 では、テーマと違うものは? ライブラリーの一番上に注目した、白青黒デッキだ。いったい全体、それはどういうデッキなのか? ああ、もうちょっと待っていてくれ!

 というわけで、代表するカードとしてのプレインズウォーカーであり、カード・タイプ重視であり、プレイヤーが求めることを実行する……

 ウィンドグレイス卿その人を紹介するときだ!

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 ジャンド・カラーの土地を重視した統率者が欲しいという要望は、これまでに信じられないほど多く寄せられた。ようやく実現できた事がとても嬉しいよ! ジャンドが抱える――あるいは土地を多く入れたデッキが基本的に抱える――問題の1つは、それを生かすために別のカードやら何やらが必要になるということだ。

 ウィンドグレイス卿がいれば、いつでも余分な土地をより多くのカードへと変換できる……しかも、他の能力を使うために必要なマナは残しておける!

 いくつかの統率者デッキでウィンドグレイス卿が採用されるだろうと期待している。オール・ハイル・ロード・ウィンドグレイス!

メカニズムの層

 よしよし。プレインズウォーカー。いいよね。ほかには何か?

 メカニズムの話をするとしよう。

 さて、まずはこの話からだ。プレイヤーが求めるものが何で、どうすればそれを与えられるかをつかむためにケンが試したのは、過去のメカニズムを実際に使うことで私に理解させるというものだった。多くの古いメカニズムが、まったく新しいカードとして登場する! 想起から授与から回顧に至るまで、いくつかの新カードが何らかの懐かしいお気に入りを模していると気づくだろう! これらを再び取り上げるのはとても楽しいものだった。

 次に、このセットでは副官が帰ってくる! きのう公開された《忠実なドレイク》で、それがどんなものかは見たことだろう。しかしこれら5つのアンコモンは、前回のように副官自身を強化するのではなく、あなたが統率者をコントロールするたびに効果を発揮してくれる! これら新しい副官が――特に《忠実なドレイク》が――あらゆる場面で見られることを期待しているよ。

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 プレイヤーからの意見で重要なものとしては、何かを実行するために次の自分のターンまで待つ必要があるカードは、多くの対戦相手がそれを邪魔に思う可能性が高いような本当に強いものでもないかぎり、統率者戦では使えない、というものだった。そこで我々は、出したターンにすぐ効果を発揮できるように、戦闘で誘発するものを作ることにした。

 その結果、それらはレアのサイクルになった。昨日、その最初の1つを垣間見たはずだ。

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 これら「統率者ストーム」カードにはかなりの経歴がある。デザインから引き継いだ後、その効果はかなり変更されたが、メカニズムの中核は変わらなかった。自身の統率者を何度も唱えることにこだわる部分だ。(それと、もちろん、『バトルボンド』の共闘持ち統率者との相性も抜群だ!)このメカニズムはとても楽しいぞ!

 どうしてこれをキーワード能力にしないのか、不思議に思うかもしれない。我々はそのために色々と考えてみた。「統率者ストーム」は理想よりも少しかっこ悪い。そこで我々は一般的なもの(「増強/intensify」)から奇妙で特別なもの(ストームから転じて「旋風/cyclone」)に至るまで、色々と他の言葉を考えていった。とはいうものの、我々が最終的に選んだのは、その名前に「嵐/Storm」を入れたままにしておく、というものだった――その名前にしておけば、この命名法が今後も使われるかもしれないからね。以上、そういうわけだ!

 この5枚はどれも極めて強力だ。そこで、私のお気に入りを紹介しよう――もしこれが統率者戦の主要カードになっても私は驚かないだろうね! 目にも見よ、これが《憤怒の嵐》だ!

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 《Fork》はいいものだ。2枚ならもっと素晴らしい。3枚以上なら……ああ、そんなの馬鹿げてる!

 このカードは、そんな馬鹿げた領域に簡単に踏み入ることができる。絶好の機を得た《憤怒の嵐》は確実にゲームを終わらせるだろう!

 これらはマナ・コストの軽い統率者や共闘であれば特に有効だ。しかしながら、我々はこのセットでは低マナ・コストがすべてだとなるような問題を抱えたくはなかった……そこでこのセットには、重い統率者を助けるための特別なカードがいくつかある。昨日発表された《晶洞ゴーレム》を見ただろう。

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 これもその1つだ。数が多いわけではないが――いくつか用意した。

 そして最後に、メカニズムとしての名前は無いが、我々は伝説についても追加の選択肢を持たせたいと思った。各デッキには、統率者にできない伝説のクリーチャーが存在する。これらは、それを意識して新しいデッキを組むための、格別な伝説のクリーチャーだ。ヴァーチャイルドを昨日見ただろう――これら4体の伝説のクリーチャーすべてが、社内で行われたこのセットのレア・カード人気投票で最も高い評価を受けていた。すべてを確認するため、今後も注目してくれ!

ルール委員会への要請

 最後に、我々が『統率者(2018年版)』を制作する上で本当に助けとなった、新しいことについて大いに語りたい。

 知っての通り、多人数統率者戦のフォーマットは、実際には我々ウィザーズで管理しているわけではない。このフォーマットの大元の先駆者、シェルドン・メネリー/Sheldon Menery、ガヴィン・ダガン/Gavin Duggan、トビー・エリオット/Toby Elliot、スコット・ララビー/Scott Larabeeによる、禁止リストを管理しルールについて決定するための外部の委員会が存在する。

 これはカジュアルなフォーマットで、それを担当するのは我々にとって喜びだ。しかし我々と委員会との関係は、主に製品販売後のやり取りに集中していた。

 そこに、デザイナーとしてスコット・ララビーが参加した。

 委員会の一員として、スコットには素敵なアイデアがあった。もしこのセットについての意見がすべて事前に得られるのであれば、意見をルール委員会と循環できるとしたらどうだろう?

 というわけで、そうすることにした。

 スコットは、委員会で実際にプレイテストを行うため、4つのデッキについて記録を取っていった。我々は、セット内のすべてのカードについて、何度も何度も意見を求めた。そして委員会も、製作の一員であろうと熱心に対応してくれた!

 私は委員会からの意見をしっかり受け止めた。他のプレイテストやカードについての意見と同様に、その一部については採用するのが正しいと考え、また別の一部については取り入れないことにした。いずれにせよ、委員会とその洞察力が得られたのは素晴らしいことだったし、それによってセットははるかに良くなった。委員会には特別な感謝を捧げたい――そしてあなたがこれらのデッキを使うときは、委員会の提案した要素についても楽しんでもらえると思う。

コマンド・アンド・コンカー

 ほかの機会では作ることができないようなカードを生み出せるため、私は『統率者』セットのことが本当に大好きだ。そして私にとっては、『統率者(2018年版)』はその精神を具現化したものなんだ。これらのデッキはあらゆる時間軸と広いカード・プールのメカニズムから要素を集め、そしてプレイヤーからの意見を念頭に置いて構築された。我々が今回やり遂げたことを、私はとても誇りに思う。

 チームの全員を代表して……私はこれをあなたが楽しんでくれるよう、心から願うよ!

 何か考えや意見はあるかな? ぜひとも聞かせてほしい! 私に伝えてもらえれば嬉しいよ。いつでもTwitterTumblrでメッセージを送ってくれてかまわないし、BeyondBasicsMagic@Gmail.comにメールしてくれても大丈夫だよ。(編訳注:英語でお願いいたします。)

 プレビューシーズンに紹介されるカードを目にする素晴らしい時間を過ごし、デッキを楽しみ、そしてあなたが感じたことを私に伝えてくれることを願うよ。

 楽しんでくれ!

Gavin / @GavinVerhey / GavInsight

(Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing)

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