MAGIC STORY

ニクスへの旅

EPISODE 08

Mファイル・『ニクスへの旅』編・パート1(白青黒)

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Mファイル・『ニクスへの旅』編・パート1(白青黒)

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2014年5月9日


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 マルチバースへの回帰の時間がまたまたやってまいりました! 熱心な読者の皆さんはマルチバースが、マジックのカードを既に印刷されたものもデザインの初期のものもその間の全てものも記録するために使う社内のデータベースであるとご存知でしょう。デザイナーとデベロッパーの使命のひとつは時折マルチバースのカードを訪れ、そしてコメントを残していくことです。1年前のファイルを振り返れば、デザインとデベロップの過程についての洞察と、そして少しの笑いを提供してくれます。あなたはこの記事でそのどちらも見ることができるでしょう。

 『ニクスへの旅』に関する多くの素晴らしいコメントがマルチバースに記録されていたので、私は今回2つの記事に分けてコメントをもっと多くご紹介できるようにしました。

 それではまず演者の紹介です。

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AF―アーロン・フォーサイス/Aaron Forsythe
マジック開発部の上席ディレクター。

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BH-ベン・ヘイズ/Ben Hayes
デベロッパー。

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DEL-デル・ロージェル/Del Laugel
マジックの上席エディター

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DE―ダン・エモンズ/Dan Emmons
マジックのデザイナー。

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DH―デイブ・ハンフリー/Dave Humphreys
『ニクスへの旅』のリード・デベロッパー、兼、デベロップ・マネージャー。

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EEF-イーサン・フライシャー/Ethan Fleischer
『ニクスへの旅』のリード・デザイナー。

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EVL―エリック・ラウアー/Erik Lauer
主席デベロッパー。

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GSV―ガヴィン・ヴァーヘイ/Gavin Verhey
マジックの経験デザイナーであり、「ReConstructed」を書いてる人。

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ID―イアン・デューク/Ian Duke
マジックのデベロッパー。

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Ken―ケン・ネーグル/Ken Nagle
マジックのデザイナーであり、ファッティをこよなく愛する男。

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Max―マックス・マッコール/Max McCall
元マジックのデジタル・デベロッパー。

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MJG-マーク・グローバス/Mark Globus
マジックの上席プロデューサー。

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SPS―サム・ストッダート/Sam Stoddard
これが私。

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TML―トム・ラピル/Tom LaPille
マジックのデベロッパー。


ID 2/11/13: タッパーはこのブロックの「高く積み上げる」メカニズム全般に対して横暴だ。
DH 2/25: これを弱めることもできるが、高く積み上げる戦略に寄りすぎることをいくらか押さえるために意図的にやっている。
TML 2/26/2013: これ好きだよ。

 最新の一問一答でも言いましたが、《アクロスの猛犬》はリミテッド向けで、通常のリミテッド戦略に対しては強すぎるわけではないのですが、高く積み上げようとする人々を咎めるものです――積み上げようとすることは今までのこのブロックを定義していた特性でした。


DH 2/21: 瞬速サイクルの新しいカード。
DH 2/25: {2}{W}{W}で《法の定め》のバリエーションは対抗馬がいるな。代わりに《栄光の頌歌》を試してみよう。
TML 2/26/2013: やったれ!
SPS 3/8/2013: つよい。
DH 3/12: 《ヘリオッドの槍》ともっと違いが出るよう目指そう。修正値を上げる。(サム注:この時点でのこのカードは{2}{W}{W}であなたの白のクリーチャー全てに+2/+2の修正を与えていました)
EEF 3/14/13: グワー!クソか!
TML 3/28/2013: 上手くいくといいが。
DH 4/2: {3}{W}{W}にして、「白」を削除してもまだ満足がいく。私が先にそれをするべきなのはおかしいかな?
TML 4/4/2013: いいと思うよ。
DH 4/9: 5マナに上げて白だけでなく自分の全てのクリーチャーに変更。

 白のアグロ・デッキを後押しするのにやりすぎだった{2}{W}{W}のバージョンのこれをテストするのに長い時間はかかりませんでした。我々ははるかに興味深いコスト――多分何枚かは使われるでしょうが、多分全てのウィニー・デッキに4積みはされない――を見つけたと思います。


EEF 9/26/12:新カードです。

 余談ですが、オリジナル・バージョンの「弱点授与」サイクルはもっと大きな弱点を持っていました――それらはクリーチャーにパワーとタフネスを与えることさえしませんでした。従ってこのカードはクリーチャーをアタックできないと書いてありましたが、追加のパワーとタフネスを与えませんでした。何らかの理由で授与されたクリーチャーが死亡したら、最終的に防衛持ちが戦場に残るでしょう。これは授与に新しい雰囲気を作る興味深い試みでしたが、本来の授与との違いのために大きな混乱が起きました。

EEF 11/13/12:授与コストを{1}{W}→{2}{W}に。
MJG 1/8/13: これらの授与クリーチャーがパワー/タフネスを増やさないのは実際おかしい。
AF 2/8: これがマジックのカードであることはまあ許せるけど、コモンにするのは受け入れがたい。私はそれが弱点授与クリーチャー全部にとっての事実だと思う。これらを理解するには高レベルで物事を理解している必要がある。
EVL 2/11: この「普通じゃないコモン」は十分ゲームを楽しんでいれば受け入れられると思いますが、今回の場合はこの交換条件はいいとは思いませんねえ。
DH 2/25: 弱点授与をコモンからアンコモンに格上げ。
Max 3/18: おーこのカードマジ好き。
DH 3/29: 理想的じゃないけど、ある意味ではいい感じだね。こいつらが全部この方向だったら好きじゃないだろうけど。
DH 3/29: IDとの会議に基づいて、現在我々が白でやり過ぎてると仮定した新しいパワーに変更。次にまたパワーとタフネスを参照する形にして、基本的には自分のクリーチャーに授与するけどたまには相手につけるように。

 このカードはデベロップ中に再びパワーとタフネスの修正を与えるようになり、変更された弱点のために自分のクリーチャーにつけることが多くなりましたが、対戦相手のコントロールするクリーチャー1体に追い込まれているときはトリックとして使えます。


EVL 4/26: FFLの目的のために新しいテンプレートの《忘却の輪》ができましたよー。
ID 4/29: これが最初の新テンプレート《忘却の輪》になるなら、再録や基本セットのために当たり障りのない名前にして欲しい。
GSV 4/30: IDに賛成。同じ事を最初に考えた。
TML 5/1/2013: 同意。

 ここでのカードの命名についての出来事は興味深いものです。カードの命名はクリエイティブの仕事ですが、デベロップは(基本セット以外に)再録したいかもしれないカードを抽出しようと試み、そしてそれらに当たり障りのない名前をつけて必要なときに他のセットで使えるようにしようと試みました。(かつての《忘却の輪》のように)《払拭の光》はどこにでも適応するフレーバーをつけることができました。もしこれに〈ヘリオッドの払拭〉のようなカード名をつけていたなら、2年後に同じカードがスタンダードに必要だと判断した場合、このカードの新しいバージョンを作らなければならないでしょう。


EEF 2/1/13: 新カードです。
ID 2/4/13: こいつを-5/-5してターンを得て、その後こいつで殴れないのは嫌な感じだ。「追加のターンを得る」を英雄的の誘発にすることは可能だ。「〜+1/+1カウンターを置く。その後+1/+1カウンターがちょうど3つあるなら、このターンの後に追加のターンを行う。」ループがより難しくなるし純粋に利点になる。
DH 2/5: これにはまだ強くなる余地があると考えているので、カウンター4つを試したいと思う。まだ乗せたり取り除いたりでループが簡単にできすぎるので、もっと厳密な書式を考えよう。
EEF 2/6/13: 5→4に。書式はどうしたらいいか自信がないので、デベロップとエディターに任せた。
Del 2/26: 編集からは他の書式を提案する理由はないわね。
DH 3/14: {2}{U}→{1}{U}に。
SPS 3/26: これと《英雄の導師、アジャニ》だけでほぼゲームが決まってしまいますな。危ないカードは危ないですぞ。
DH 4/2: 了解。その相互作用は確認した。FFLでこれの動きを見てみよう。 これは「[カード名]から全ての+1/+1カウンターを取り除く:これにより4つ以上のカウンターが取り除かれた場合、このターンに続いて追加の1ターンを行う」にする必要があるかも知れない。これで《英雄の導師、アジャニ》とかで強化しながら追加のターンを得ることはできなくなる。
DH 4/9: カウンターを5個に。
DH 5/7: さらなる調整案としてカウンターをいくつか(4か5)取り除いて手札に戻すようにしてもいいね。複数の追加ターンを得られないようにするカウンターの掃除手段だ。
ID 5/7: 手札に戻せると追加ターンを得る前これが死ぬリスクを負わずに攻撃ができる。
DH 7/10: 常に全てのカウンターを取り除くように調整。カウンターを大量に取り除けば複数のターンを得られるままにしてあるが、検討し直すことはできる。

 何回も使える 《Time Walk》効果がある場合はいつでも、それに多くの注意を払わなければなりません。初期バージョンのこれらは我々が心配になるぐらい強く、もし間違いを犯した場合、《英雄の導師、アジャニ》のようなカードと組み合わせると、すぐに殺さなければとても簡単にゲームが終わってしまうことになり、それは本当に良くないゲーム・プレイです。我々は多くのハードルを越えれば無限ターンを得ることができるが、偶然それができるような方法はないカードを得たと思います。頑張った場合にクールなものを得るのは素晴らしいことです。ただ強いからというだけで皆がそれを行うのは素晴らしいとは言えません。


DH 3/4: コンセプトにこだわってみよう。これは動くのか? 《稲妻の謎》の対になるカードを作ろう。しかしこれは私がレアに加えたスフィンクスと同じ基本効果だ。
TML 3/4/2013: 素敵だね。
SPS 3/8/2013: 『基本セット2014』の《好機》と比べて弱くても、これはいいカードですな。
ID 3/11: 満足行く《稲妻の謎》の対の存在になった。
KEN 4/11/2013: 《稲妻の謎》の最高の瞬間は占術3をして、全部下にやって、相手のクリーチャーに生き残るチャンスがある時だ。《溶岩の斧》が相手を殺すかも知れない瞬間で《マナ漏出》や使い捨ての《相殺》と同じようなドラマチックな瞬間を作れるだろうか?
TML 5/1/2013: 土地2枚と2CCのカードをめくればできると思うよ。
DH 5/13: 4CC→5Cに。

 新しいカードの神啓を受ける方法の1つとして、過去を参照するというものがあります。我々はこのセットの《稲妻の謎》が、ケラノスのフレーバーと我々の狙いである占術を多く行う赤青のメカニズムの方向性に適応しているところが特に好きでした。このサイクルは青に素晴らしい答えを持っているわけではなかったので、我々は《稲妻の謎》に非常に似ているように感じる新しいカードを作ることにしました。


『イニストラード』の《チフス鼠》の同型再版
DH 2/20: 1/2→1/1に。同型再版。
TML 2/26/2013: 『テーロス』にあるけどいいの?
DH 2/26: 接死授与{1}{B}がある。十分に違いがあると思うが?
TML 3/4/2013: うん、そうね。
SPS 3/8/2013: 私は{G}の接死持ちを思い出しましたな。{1}{B}接死ではなく。
Max 3/18: {G}の1/1接死は『テーロス』にあるね。
DH 3/18: 全然問題ない。どう思う?
Max 3/21: これは積み上げ戦略に対して超強いもう一枚のコモンで、大抵接死持ちにはうんざりする。
TML 3/28/2013: これは緑黒墓地デッキに必要なので、このままにしようと思う。

  以前簡単にお伝えしましたが、3つのセットからなるブロックではカードの被りを避けるのは困難です。この場合、緑と黒の両方に基本的に同じといえるカードがあるのですが、どちらもそれぞれふさわしいものです。


デザインのお気に入り

DH 2/21: 追加のターンをカット。2マナ追加。
TML 2/26/2013: それでは。
BH 3/6/2013: おー、このカードはエキサイティングだ!
ID 3/11/13: 『神々の軍勢』の貢納の奴でこれを唱えたくてたまらん!
KEN 4/4/2013: 今IDに貢納の大物を与えたことを知った。
DH 7/19: {6}{B}{B}→{7}{B}に。高レアリティのCCをいくつか減らそう。

 このカードは最初はもっと軽かったのですが、対戦相手に追加のターンを与えていました――つまりこれは《精神隷属器》の《Time Walk》部分がありませんでした。この書式は混乱を招き、そしてこのカードがはるかに狭いものであることを意味したので、実際の《精神隷属器》のテキストに変更しました。

 このカードに「デザインのお気に入り」とついてあるのに気づいたと思います。引き渡されたデザインの一部は、デザイン・チームのお気に入りであることを示しています――そのデザイン・チームのビジョンを完全に保ちたいカードなのです。デベロップ・チームは必ずしもそれら全てを、特にそのままの状態で保つ必要はありませんが、できる限りそのカードをファイルの中のままにする、もしくは少なくともデザイン・チームが満足する同じデザイン目標を持ったカードに置き換えるために誠実な努力をすることはデベロップ・チームにとって大事なことです。

 今週はここまでです。私は来週戻ってきます......『Vintage Masters』のプレビューと共に! しかし、その次の週は素敵な『コンスピラシー』のカードをあなたにご紹介する予定です! 3週後にはMファイルの続き、赤、緑、そして『ニクスへの旅』の神々を含む金色をお送りします。

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