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MAGIC STORY
神々の軍勢
懲罰者への貢納
懲罰者への貢納
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2014年2月28日
マジックの働きの神髄はプレイヤーが選択を行うときに現れます。このゲームの基本システムの性質は多くの選択をもたらします――マリガンするか否か? どの土地をプレイするか? 何体で攻撃するか? この呪文をいつ唱えるか? これを今プレイするかそれとも1ターン待って、何を引いたか見てからにするか? しかしながらマジックを興味深いものにし続ける手段は、プレイヤーに新しく異なる選択を絶えず与え続けることです。墓地やクリーチャーが死亡することをテーマにしたブロックや、同様に1ターンに2回呪文を唱えることに注目したものなどは、このゲームの基本的な決定に関する我々の評価を変更する助けになります。マジックの決断が絶え間なく揺れ動くことは、ゲームをしている両方のプレイヤーにとって、このゲームを興味深く楽しいものであり続けさせる事柄のひとつです。これは重要な部分です。と言うのも、我々はセットをデザインとデベロップするに際し、プレイしたときとプレイされたときの両方について考えなければならないからです――そして対戦相手が自分でもそのカードを使えると思うようなカードをプレイすることで、その強力なカードは誰にとっても満足できるものになるのです。
私がこれまでの中で最も気に入っているカードのうちの1つは《脅迫するオーガ》で、それはプレイヤーにミニ・ゲームを提供してくれるからです。プレイヤーが《脅迫するオーガ》をプレイしたなら、私の目標は相手が考えている数を正確に言い当てようとすることです。私の対戦相手の目標は私が決めたよりも1多い数を考えることです――私がまともな数を選んだ場合、ですが。20を選べばミニ・ゲームに勝つ可能性は高いのですが、私はほとんどのゲームでプレイヤーが0から3を選んでいることを知りました。また、このような数当てが正解かどうかがゲームの決め手となることはめったにありませんでした。
デベロップがセットに取り組んでいるとき、どれぐらいカードを読んで(そして考えて)楽しいか、どれぐらいプレイしてもプレイされても楽しいか、そしてどれだけ強くするかのバランスを取ります。これらの項目は相反するものではありませんが、全てのカードでこれらの基準全てにおいて大成功を収めるのはかなり困難です。これはまさにデベロップが苦心している中心的な事柄のひとつです。我々はカードの改良と、どのようなバランスが卓の両側のプレイヤーにとって良いものかを考え出すことに多くの時間を費やします。全体的には、我々は読んでみて強力で、かつゲームを楽しくする、強力なカードを作れるようになってきたと信じています。
選択することは楽しいことなので、我々はしばしばセットに両方のプレイヤーがその呪文の解決に関して決断を下すカードを入れています。導入された『オデッセイ』ブロックで、常に片方の選択肢がプレイヤーにダメージを与えるものであったため、これらは懲罰者カードと呼ばれています。
懲罰者のバランス調整
懲罰者カードのバランスを取るコツは、両方の選択肢をそのマナ・コストにおける平均よりも良いものにすること、そして決定を相手にさせることをバランスを取る要因にすることです。対戦相手のクリーチャーに《ショック》を打つか、3点を本体に受けるかの選択を与える4マナのカードでは、デッキに入れるには弱すぎます。これがクリーチャーに《稲妻》か対戦相手が《溶岩の斧》を受ける《炎の斉射》のようなカードになると、『オデッセイ』のリミテッド環境での必需品となりました。
《羽撃王》を例に取ってみましょう。我々は多分{3}{W}{W}で5/5の飛行クリーチャーや、{3}{W}{W}で戦場に出たときに1/1の飛行を持つトークンを出す3/3の飛行クリーチャーをアンコモンで印刷したりはしないでしょう。このどちらもリミテッドにおいては少し効率が良すぎます――が、対戦相手が選択できるようにすれば、相手はその手札と戦場に与える影響を最小限にする選択を取ることができます。あなたは除去対策でトークンを得るか、単に大きなブロッカーが欲しいとして5/5を得るかを選ぶことができないわけです。
これは評価の難しいカードを作り出します――これは我々にとって良いことでも、悪いことでもあります。我々は初めて読んで100%明らかになるようなものは望んでいませんが、我々がたくさんプレイする一方で現実世界ではプレイヤーがほとんど使わないカードもまた望んでいません。カードにとって最悪のシナリオは、一見とても弱いように見えて、実はプレイすると驚異的に強い場合です――それらはほとんど騒ぎにならず、しかしそれをプレイしても全然楽しくない環境を作り出します。その次はとても強そうに見えて、使ったときにがっかりする場合です。我々は時間をかけて見出されるカードをある程度必要としますが、そのセット全部がそうあるべきではありません。
貢納のような懲罰者メカニズムは伝統的にとても魅力的に見え、そして初期に騒がれて、しばしば全く強くないという問題を抱えています。人々は派手な効果を好む傾向にありますが、そうするとこれらのバランスを取るために我々は最初のものとはできるだけかけ離れた選択肢にしなければなりません。驚異的に強い(しかしかけ離れた)2つの効果をカードに与え、そして可能な限りお互いを独立させた場合、そのカードを効果的に使うことはほとんど不可能になってしまいます。過去において、このことが新たなカードにあったこのメカニズムを人々に完全に突っぱねさせてしまいました――これは過去に焼き付けられた後になって理解できたことです。
下記のようなカードがブースターに入っていると思い浮かべてみてください。
{3}{U}{B}
〈九分九厘〉
ソーサリー
プレイヤー1人を対象とする。九分九厘を唱えたとき、どのプレイヤーも自分のライブラリーの上から30枚を追放してもよい。そうするプレイヤーがいないなら、そのプレイヤーは毒カウンターを9個得る。
どこからどう見ても、このカードはあなたの勝利を九分九厘確かなものにします――が、それが実際に完遂されることはありません。あなたがライブラリーを削りきって勝つことができたとして、上から30枚削っても構築フォーマットで勝つにはかなり遠く、9個の毒カウンターもそのフォーマットに他の感染クリーチャーがなければまったく些細な問題です。2枚目のこのカードを唱えても、対戦相手はほぼ間違いなくもう片方の選択肢を選び、3枚目が唱えられるまで生き延びます。多分《溶岩の斧》を3回唱えるほうがずっとマシでしょう。
『オデッセイ』の最初の処罰者カード群の中で、唯一構築フォーマットで成功を収めたのが《怒鳴りつけ》でした。このカードは強力でしたが、決定を面白くするような素晴らしい仕事を特にしたわけではありませんでした。我々は楽しく興味深いカードを作りたいと思っていますが、過去において常に成功を収めたわけではないことは認めます。他にも、《焚書》などは2つの効果が離れすぎることの罠に陥り、《限界点》は興味深い決定をするにはあまりにも限定された盤面を必要としました。言うまでもなく、我々は全ての新しいメカニズムで最初から適正な地点を見出せるわけではなく、懲罰者カードには多くの改良の余地がありました。
懲罰者の未だたどり着かぬ境地
先ほど書いたように、かけ離れすぎた効果を懲罰者カードに持たせると、実際のところ良いゲーム・プレイの役には立ちません。選択肢の間の幅が狭ければ狭いほど、選択はより興味深いものになり、より競技レベルのプレイで見られるカードを作ることが簡単になります。もちろん、片方の選択肢がダメージしかない『オデッセイ』の懲罰者カードではこれは容易なことではありませんでした。当時このメカニズムが他の色にもあれば可能で、より興味深い選択ができたでしょうが、そうではありませんでした。
貢納を伝統的な懲罰者メカニズムよりも上手く機能させている工夫は、クリーチャーであるということです――従って、その効果の全てが厳しい決断に左右されるわけではありません。単に対戦相手の決断を難しくする以上に、それらが対処しにくいので、貢納はいくつかのカードに伝統的な懲罰者よりも多くのリスクとリターンを持たせることを可能にしました。《ゼナゴスの狂信者》は、ある意味ではとても小さく、しかし他では大きな決断の最も良い例のひとつです。こんなときには決断は簡単です――対戦相手が次のターンに《神の怒り》系の呪文を唱えるなら、相手はほとんど常にあなたのケンタウルスの上にカウンターを置くことを選ぶでしょうが、相手にブロッカーがいる場合は、しばしば速攻を与える方を選ぶでしょう――しかし、そのような状況は伝統的な懲罰者カードよりも起きることは少ないでしょう。
『神々の軍勢』で貢納が怪物化の発展形として機能したので、このメカニズムはマナ・コストの大きいクリーチャーにだけ存在し、それは例えそれらの呪文の能力が理想的でない場合であっても、クリーチャーのサイズがほとんどの場合で大きな影響を与えることを意味しています。ゲームの後半で、手札がないときに引いてきた《骨の神託者》はそれでも3/1速攻であり、まだゲームに影響を与えるチャンスを持っています。《苛立たしい小悪魔》のような以前のバージョンの懲罰者クリーチャーの最大のリスクのひとつは、あなたが不利なときに最悪のトップデッキになってしまうことでした。貢納クリーチャーは完璧ではないかもしれませんが、とても手堅いゲーム・プレイを提供してくれます。
さて、あなたは貢納、あるいは一般的に懲罰者カードをどう思われますか? ご意見ご感想があれば何でも送ってくださればとても幸いです。
ではまた来週お会いしましょう。
サム (@samstod) より
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