MAGIC STORY

神々の軍勢

EPISODE 11

一問一答の軍勢

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一問一答の軍勢

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2014年2月7日


 皆さんは『神々の軍勢』をお楽しみいただけているでしょうか。私はこのセットのリミテッドでの使われ方にとても満足していますし、スタンダードにとって素晴らしいカードがかなりの数あると信じています。どんなものか見てみたいと思われるなら、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストのオフィスで開催される『神々の軍勢』スーパー・サンデー・シリーズ決勝のカバレージをTwitch.TV(リンク先は英語)でご覧ください。

 しかし、今回の記事はそれについてお話をするわけではありません――今回は読者の皆さんからTwitterやメールで寄せられた質問にお答えしようと思います。もし今後の一問一答で答えてほしい質問があるのなら、この記事にある"Email Sam"をクリックしてください(訳注:質問は英語でお願いします)。

さて、細かい話はこれぐらいにしまして――

『神々の軍勢』のデベロップについての一問一答を「Latest Developments」でやります。質問大募集!


@samstod 黒のリミテッド用カードはみんなアグロ向けに見えます。これじゃ『テーロス』と180度逆方向です。どうして急激に方向を変えたの?

 『神々の軍勢』のリミテッドは全体的にアグレッシブなデザインをしています――それらのうちいくらかは『テーロス』に加えて追加の選択肢を与え、クリーチャーの強化にとても深く関わっています。私は実際に失われ、その代わりに得たものがこのフォーマットの黒に関する最大の変更だと思います。『テーロス』最強の黒いカードの1枚である《アスフォデルの灰色商人》は、出現率が以前の3分の1減りました。黒いデッキが『神々の軍勢』・『テーロス』環境のリミテッドで勝ち残るには、ビートダウンをも含め、より多角的な戦略に焦点を当てて行かなければならないでしょう。

@samstod FFLで考えついた最近のスタンダードのアーキタイプはどれぐらいある? それは『神々の軍勢』のカードの選択にどんな影響を与えているんだ?

 フューチャー・フューチャー・リーグには『テーロス』のスタンダードのメタゲームにある主要なデッキは全て存在しましたが、我々のバージョンは基本的にちょっとカードが足りないものでした。例を挙げていくと、我々は黒単で《群れネズミ》や《冒涜の悪魔》をプレイしていませんでしたし、エスパー・デッキではもっと《悪夢の織り手、アショク》が多く使われていました。青単では《閉所恐怖症》のようなカードが使われていました。赤緑信心デッキには《恭しき狩人》がしばしば入っていました。赤の信心デッキでは《ボロスの反攻者》が多く見られました。

 我々にとって鍵となるのは、多くの主要なアーキタイプを見つけることはできても、それらのデッキを調整するのは困難であるということです。これはカードが変更され続けているときに起こるものです。我々はカードプールの大まかな輪郭を考え出し、それからその環境が楽しく興味深いものになるように、十分な新しく興味深い事柄があるようにします。我々が『神々の軍勢』をデベロップしていたとき、青単の《宿命的心酔》や黒単の《胆汁病》のようなカードによって、よい選択肢をあまり採用していないと思われるいくつかのデッキを試し、それらのデッキに新たな選択肢をもたらし、新セットの後に異なる雰囲気を感じられるよう試す機会を得ました。

『神々の軍勢』のデベロップについての一問一答を「Latest Developments」でやります。質問大募集!


@samstod ドラフトにおいて、2番目のセットを最初のセットよりも強くして、『神々の軍勢』1つが『テーロス』2つより目立つようにしていますか?

 目立つことは今では目標ではありません――我々がドラフト環境全体で行われることを望むものは、フォーマットを揺るがすパックを加え続けることと、異なる雰囲気を作り続けることです。過去においては、新しいパックが最後にドラフトされるために、このようなことのいくらかが起きてしまいました。『アラーラ再誕』、『アポカリプス』、そして『モーニングタイド』は大戦犯でしたが、それらは我々が取り去ったものです。環境を変化させる手段として後発のセットのパワー・レベルを上昇させることの問題は、最後のセットを多く使えることが重要な環境を作ってしまうことです。

 最新パックからドラフトをするようになり、従来の2番目と3番目だったパックにデッキの核となるカードを入れることで環境の変化をより良く形作ることができるようになりました。例えば前の質問にあったように、我々は黒を『神々の軍勢』でよりアグレッシブにして、その結果プレイヤーは『神々の軍勢』『テーロス』『テーロス』環境ではよりアグレッシブな黒いカードをドラフトする傾向になり、《エレボスの加護》や《肉餓えの馬》さえも速くピックされるようになりました。

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@samstod 『テーロス』から『神々の軍勢』に変わって、神々に対処するのをとても簡単にしたのは何ですか?

 このブロック全体に関してのデベロップの心配事の1つは、最も目立つカードのいくつかが破壊不能を持つクリーチャーだということでした。我々は基本的にカードのパワー・レベルを正確なものにすることについてはかなり自信がありますが、全てのカードで間違った方向に進む可能性があり、時折かなりの間違いをするかもしれません。いくつかの神々が強すぎた場合、環境に存在するそれらに対する回答として、メタゲームが変化と進化を遂げられるのに十分な強さが必要でした。我々は間違いを犯していた場合に備えて、緑の神々に対する回答として『テーロス』に《古代への衰退》を収録しました。そのような比較的弱いものでさえ、サイドボードにないよりはましでした。我々は、神々がメタゲーム内で流行しすぎた場合により多くの使い物になる回答があるように、『神々の軍勢』に《存在の破棄》(限定的ですが《金箔付け》も)を加えました。

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@samstod 《存在の破棄》はいつもの優秀な「中心的メカニズム」対策よりも早く収録されているように感じます(いつもは第3セットですよね)。これは意図的なものですか?

 はい。その意図については上の質問の答えのとおりです。しかしながら、タイミングの観点からもう少し説明をしたいと思います。我々が伝統的に第3セット、もしくは次の大型エキスパンションまで中心的メカニズム対策を印刷するのを待っていたのは事実ですが、我々はより積極的であることが基本的に重要だと気づきました。

 例えば、我々が『ミラディン包囲戦』に《忍び寄る腐食》を収録したのは、旧『ミラディン』のときのようにメタゲームが歪められるのを恐れたからです。極めて効率的な単体除去(もしくは『イニストラード』で再録された『ミラディンの傷跡』対策の《古えの遺恨》)ではなく、《忍び寄る腐食》を、皆がアーティファクトを少ししか使っていない場合は使いづらく、多くの人々がデッキをほとんどアーティファクトにしている場合は驚くほど強力な対策カードとなるよう収録しました。似たような方法で、『テーロス』にはより効率的なエンチャント除去がありますが、追放除去はごく少数です。全体的に見て我々が求める追放除去は、メタゲームがそれを必要としない限りちょっと使いづらいぐらいのものです。

 『テーロス』がどのようにプレイされたかを見た後で、私はプレイヤー達が《存在の破棄》をメインデッキに入れ始めるほど神々が問題を起こしていないと思っていますが、万一に備えて安全弁を用意してあることに満足しています。

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@samstod 『ミラディン』のアーティファクト・土地みたいな土地・エンチャントを考えたことはありますか?

 一度やらかすと、二度目からは臆病になるものだ――私はマーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterのこの言葉がこれを最も的確に言い表していると信じています。デベロップはこれについてちょっと話をしましたが、我々は結局それが弱すぎるか、ブロック後半の面白さを奪ってしまうかのどちらかになるだろうと分かっていました――《天上の鎧》や《安全の領域》がかなり恐ろしいことになるのは言うまでもありませんね。

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@samstod 小神の顕現に必要な信心が7に落ち着くまでどれぐらいの数を試した? そのときのデッキリストは公開可能かな?

 今回はデッキリストの公開はできませんが、混成マナをどう数えるかがこの質問のほとんどを占めていました。小神は大神よりも自身の信心が1多いのですが、混成マナを2回数えた場合、必要な信心を8から9ぐらいにしないと《夜帷の死霊》のようなカードは単体で神を顕現させてしまいます。

 最終的に、我々は1回だけ数えるのが最良で、信心を(その神自身のコストに含まれる上昇分に加えて)1だけ追加すれば、多くのプレイヤーが十分2色デッキをプレイできるようになり、しかし『テーロス』の神々とはちょっと違った雰囲気になると判断しました。

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@samstod プレイテストしていて一番笑えたカードは何?

 《狼育ち》です。『神々の軍勢』には(一般的に小型セットにあるよりも多くの)独自のトークンがあり、リード・デベロッパーのトム・ラピル/Tom LaPilleはすでにブロックに存在するトークンを使うよう圧縮を試みました。そうです、このブロックには2/2の緑のトークンはただ1つしかありませんね。従って、このカードはしばらくの間〈豚育ち/Raised by Pigs〉でした。私の猪トークンへの揺るぎない愛を考えれば、クリエイティブが元ネタを考えて新しいトークンを作る価値があると判断したときはちょっと悲しい思いをしました。

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@samstod コモンのニクス生まれサイクルが完成するまでにどれぐらいかかりましたか? その中で形を整えるのが一番難しかったものはどれですか?

 これらは実際にはかなり速く完成しました。デザインが授与をブロック全体に渡ってどのように進化させていくかを計画したとき、その計画はまず第1セットは正方な修整とキーワード能力、そして第2セットでは正方でない修整を持たせるようにしました。《加護のサテュロス》は最終的にデベロップが非正方な修整にしましたが、そのほかの非正方な修整は『神々の軍勢』まで温存されました。

 これらのカードのデベロップで起こった最大の変更は授与コストの見直しでした。これらのカードは実際にリミテッド用に意図されており、その多くは強力だったために最終的に授与コストが1マナ重くなりました。結果的に、このサイクルのカードは非常にシンプルであるにもかかわらずこのセットの最強のコモンの一角であり、素晴らしい出来映えだと思います。

 デュエルデッキは最初の企画から印刷されるまでどれぐらいの時間がかかりますか? 例えば『英雄 vs. 怪物』はどれぐらい前に考え出されましたか? 『テーロス』の企画と同時でしたか?――サイモン・R

 最初の企画された時をいつと考えるかによります。私は最新のデュエルデッキのリーダーで、2017年のテーマを頭に描いていますが、それらを構成するセットはまだデザインとデベロップの最中なので変更されるのは明らかでしょう。


太陽のタイタン》 アート:Karl Kopinski

 もしもより個別化されたレベルで考えるなら、一般的な作業はこんな感じです。デュエルデッキが完成する約18ヶ月前に、私はクリエイティブや開発部の他のメンバーと私が選んだテーマにゴーサインをもらうために話し合います。その後最初のバージョンのこのデッキを作成する外部契約者のクリス・ミラー/Chris Millarに情報を送ります。数週間後に、私はリストを受け取り作業に取りかかります。最初のプレイテストの後で、私はどのカードをデッキに入れるか、そしてクリエイティブと新規アートに最も適しているのはどれかを選ぶ作業をします。

 そこから先はプレインズウォーカー・デュエルデッキかプレビュー・デュエルデッキかによって違ってきます――それらの目標は異なるものです。プレインズウォーカー・デュエルデッキはキャラクターの関係性を表すことを重視し、プレビュー・デュエルデッキは次のブロックのテーマを紹介することを重視しています。そのプレビュー・デュエルデッキの必要に応じて、実際に先行収録されるカードはデベロップ中に何度か変更されるでしょう。それらのデッキはお互いにバランスが取れるよう常に変化と進化を続けます。

 今頃、私や他のデベロッパー、そして週に数時間プレイテストのために上の階から下りてくるカスタマー・サービスの代理人がプレイテストをしているでしょう。それから数週間して私が持っているデッキリストが完成に近づき、クリエイティブはデッキリストの見直しにいくらか時間を費やし、デッキが最終プレイテストと調整に入る前に何か反対意見を出します。全体で見ると、この過程は5〜6ヶ月を要し、実際のデッキは発売の9ヶ月前に編集に回されます。


 では今回はここまでです。今後のコラムのための質問は引き続き募集中ですので、どんどん送ってください。

 ではまた来週お会いしましょう。

 サム(@samstod) より

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