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シングルカードストラテジー
シングルカードストラテジー:《宝物の魔道士》
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シングルカードストラテジー
By 大礒 正嗣
ミラディンの傷跡。
ミラディン包囲戦。
これらのカード・セットはその名の通り、2003~2004年に発売されたミラディン・ブロックと同様にアーティファクトに溢れている。当時のミラディンがキーワード能力「親和」に支配されていたり、現在のミラディンがファイレクシアの侵攻を受けていたり、と異なる部分が目につくが、昔懐かしのカードも潜んでいる。
マイア・シリーズや《精神隷属器》と並び、数少ないミラディン生まれ&生き残りの一枚だ。かつてのミラディン・ブロック最後のセットであるフィフス・ドーンで登場したこのカードは、セット特有のコンセプトである「ほぞ」(=1マナ以下のアーティファクト)をフィーチャーしており、好きなほぞ1枚を探して手札に加えることが出来る。
書いてあることはシンプルだが、このカードが取りうる姿は多種多様だ。長いマジックの歴史の中では、170種類余りのカードが該当し、現在なら
などなど。デッキにほぞを仕込んでおく必要はあるものの、そのサーチ能力の柔軟さが評価されてレガシーや当時のエクステンデッドでは活躍の場を見つけていた。もちろん、持ってくるのは所詮1マナ以下のカード達であり、そのカードパワーたるや推して知るべし。つまり、《粗石の魔道士》の仕事はあくまでサポート役、縁の下の力持ち、といった具合に落ち着く。
では、こいつの場合はどうだろうか?
突然ご登場頂いたが、これこそが今回紹介するミラディン包囲戦の新カードであり、《粗石の魔道士》の兄弟分と言える存在だ。
《宝物の魔道士》の仕事も《粗石の魔道士》と同じくアーティファクト・カードを1枚持ってくることだが、こいつの場合は「6マナ以上のカード」。どうしてこう両極端なのかは知らないが、ともかく彼らはそういう運命にある。《粗石の魔道士》がマナの用意から墓地の掃除まで器用に立ち回るデッキの潤滑油なら、《宝物の魔道士》は一撃必殺の決定打をもたらす代打の切り札といえる存在だ。
とまあ、長い前置きはこれくらいにして、実際にこのカードを使うことを考えてみたい。ちょうどいいことに、つい先日のプロツアー・パリにおいて早速《宝物の魔道士》を取り入れたデッキがあったので、これをお手本にして《宝物の魔道士》を掘り下げていくとしよう。
3 《島》 2 《山》 4 《沸騰する小湖》 4 《忍び寄るタール坑》 3 《闇滑りの岸》 1 《黒割れの崖》 3 《地盤の際》 2 《墨蛾の生息地》 -土地(22)- 1 《宝物の魔道士》 1 《ワームとぐろエンジン》 -クリーチャー(2)- |
4 《永遠溢れの杯》 2 《オパールのモックス》 3 《太陽の宝球》 4 《予言のプリズム》 4 《定業》 2 《感電破》 2 《紅蓮地獄》 2 《金屑の嵐》 2 《冷静な反論》 3 《転倒の磁石》 1 《精神隷属器》 4 《ボーラスの工作員、テゼレット》 3 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(36)- |
1 《カルドーサの再誕》 3 《強迫》 4 《広がりゆく海》 2 《紅蓮地獄》 1 《瞬間凍結》 1 《漸増爆弾》 2 《冷静な反論》 1 《精神を刻む者、ジェイス》 -サイドボード(15)- |
このデッキで《宝物の魔道士》がアクセス出来るのは《ワームとぐろエンジン》《精神隷属器》の2種類だ。この2枚は基本的に
- 《ワームとぐろエンジン》:対ビートダウン
- 《精神隷属器》:対コントロール
として用意されており、どちらのカードも一方には劇的に強さを発揮する。《宝物の魔道士》は相手を見て、都合のいい方に化けることができる。このあたりは《粗石の魔道士》と同じことが言える訳だ。
また、《宝物の魔道士》は"カードスロットの圧縮"という意味でもいい仕事をしてくれる。
《宝物の魔道士》が持ってくる6マナ以上のカードはゲームをひっくり返せるほど強力なものだ。しかし、率直に言って、6マナ以上の重いカードはデッキに何枚も入れたくないものだ。もちろんたくさん入れても構わないが、最初の7枚にそいつらがゴロゴロしていたら頭を抱えることになるのは必至だ。しばらくキャスト出来ないカードを抱えていても、マリガンしたのと変わらない。
ここでもう一度、カードのマナコストに注目して上のリストを見なおして欲しい。《永遠溢れの杯》等が入ったデッキであるにも関わらず、サイドボードまで含めても6マナ以上のカードは《宝物の魔道士》用の2枚のみに抑えられている。このデッキで言えば、
- 《ワームとぐろエンジン》《精神隷属器》は対戦相手のデッキ次第なので、2枚ずつ用意したい。
- 6マナの重いカードはデッキに4枚も入れたくない。
というジレンマがあり、これを《宝物の魔道士》によって緩和している。各1枚+《宝物の魔道士》という構成をとることで、
- 見かけの枚数を減らさず、
- でも重いカードの総数は減らす
ことに成功している。
ただまあ、このリストはプロツアーで活躍した実践的なものなので、《宝物の魔道士》を使うという意味では少々物足りない部分がある。そこで、もっと《宝物の魔道士》を大々的にフィーチャーしたデッキを用意しつつ、現環境の"宝物候補"に焦点を当ててみよう。
6 《島》 4 《平地》 4 《天界の列柱》 4 《氷河の城砦》 2 《金属海の沿岸》 4 《地盤の際》 -土地(24)- 3 《宝物の魔道士》 1 《ワームとぐろエンジン》 1 《白金の天使》 -クリーチャー(5)- |
4 《永遠溢れの杯》 4 《太陽の宝球》 4 《定業》 1 《通電式キー》 3 《伝染病の留め金》 3 《転倒の磁石》 2 《冷静な反論》 3 《光明の大砲》 2 《審判の日》 1 《伝染病エンジン》 1 《イシュ・サーの背骨》 3 《滞留者ヴェンセール》 -呪文(31)- |
このデッキについて簡単に説明すると、《滞留者ヴェンセール》の+2能力によって「戦場に出たとき~」能力を使い回し、《光明の大砲》や《イシュ・サーの背骨》で対戦相手を戦闘不能に追い込む。《宝物の魔道士》も《一瞬の瞬き》すればお得感満載だ。
デッキに入った"宝物"は4種類。
先程のチャピンのデッキにも入っていた絆魂持ちのこいつは、とにかくダメージで押すビートダウンデッキに無類の強さを発揮する。除去されても分裂するだけなので、6マナでキャストしても隙が無い点も素晴らしい。また、この除去耐性お陰で対コントロールでもそこそこの活躍が見込める。
早速イロモノの登場。このカードの能力自体は非常に強力だが、とはいってもメインデッキでこれを除去出来ないデッキはほとんどいないだろう。
しかし、サイドボード後まで見越すと意外と悪くない。リストを見ていただけば一目瞭然だが、このデッキはクリーチャーがほとんど入っていない。対戦相手としては除去呪文を残したくないが、いざ生き残ると負けてしまうというのは嫌な感じだ。また、枚数が少なければ《冷静な反論》で退けることも可能になる。もしくは裏をかいてサイドアウトという手もある。・・・元々サイドでいいという説もあるが、今回はメインデッキのみなので。
このデッキでは一番のキー・カードとなるのがこれ。7マナの《名誉回復》ではちょっと割りに合わないが、《滞留者ヴェンセール》と組み合わせると一気に凶悪になる。揃えば勝ちと言っても過言ではない。《イシュ・サーの背骨》は「墓地に落ちた時に手札に戻る」という奇妙な能力があるため、そちらの方向から使い回すことも可能だ。《ゲスの玉座》のように、生け贄に捧げることがメリットとなるカードとの組み合わせは面白い。
このカードも《滞留者ヴェンセール》と組み合わせた時がすごい。毎ターン‐1/-1カウンターを撒き散らし、相手の場にはまずクリーチャーが残らない。さらに、増殖×2回という能力は《滞留者ヴェンセール》の忠誠度をとんでもない速さで積み重ねるので、最終奥義にもすぐ届くだろう。お互いを補完するシナジー、すばらしい・・・!
せっかくなので、一応チャピンのデッキの宝物その2のこいつも。コントロールデッキがターンを奪われるとどうなるか? 例えば自らのクリーチャーを《審判の日》で全滅させ、場の《精神を刻む者、ジェイス》と手札のジェイスが対消滅し、一人カウンター合戦で手札を使った上でマナをフルタップしてしまう。このデッキでは見送ったが、コントロールが流行っているならこいつは当然メインデッキに入るだろう。
《宝物の魔道士》のようなカードを使ったデッキ構築は、持ってくるカードをあれこれ考えるのが一番の醍醐味だと思う。
今回挙げたカード以外にもまだまだ活躍の見込めるカードはたくさんあるし、先週末に開催されたプロツアー・パリでもスタンダード構築戦が行われ、世界中から集まったさまざまなデッキが覇を競っていた。最高の宝物はこの中に眠っているのかもしれない。
ミラディン包囲戦参入の影響で、まだまだスタンダード環境は目まぐるしく移り変わっている最中だ。そんな今だからこそ、宝物を自分の手で探り当ててみてほしい。
なお、今回ご紹介した《宝物の魔道士》の特製プロモカードが、 3月5日~6日 に全国各地で開催されるミラディン包囲戦ゲームデーで参加賞として配布されます。
ゲームデーはスタンダード構築戦で開催されます。上位 8 人に入賞した方には、《黒の太陽の頂点》特製プロモカードも贈呈されるとのことなので、ぜひチャレンジしてみてください!
そのほかゲームデーの詳しい内容は、WPN通信第33回や、公式サイトの案内をご確認ください。
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